事例紹介

Category  空き家活用

2018年08月17日 更新

空き家バンクの使い方と空き家の活用方法

少子化や過疎化の影響により、空き家の増加が問題視されるようになりました。空き家の増加は、治安の悪化や周辺の住環境への悪影響、財政の問題など、様々な問題と繋がっています。

そんな中、空き家問題を解決するための手段として注目されるようになったのが、空き家バンクです。言葉は聞いたことあるけれど、その仕組みや利用方法については、まだ詳しく知られていません。

今は都心部でも、空き家の問題が取り上げられるようになってきました。今後さらに増える可能性のある空き家の活用方法として、空き家バンクの仕組みや利用方法などを確認していきましょう。

1. 空き家バンクとは

空き家バンクとは、空き家を所有しており、貸し出しや売却を希望している人と、空き家を利用したい人とを繋げるシステムのことです。空き家の増加が問題となっている地域の多くで、自治体や依頼された団体などが中心となって空き家バンクの運営を行っています。

1-1. 空き家バンクの仕組み

空き家バンクを通しての取引は、基本的に不動産会社を通して売買・賃貸するときと同じです。

空き家の所有者は、自治体に申請し、物件情報を登録します。自治体は、ホームページなどを通して空き家の情報を公開し、利用希望者の窓口となります。空き家の情報を見た利用希望者は、自治体に利用者登録し、内見や契約の手続きへと進みます。

契約に関する自治体の関わり方は様々ですが、基本的には関わらないというところが多いです。自治体は、空き家の所有者と利用希望者とをマッチングさせる役割なので、交渉や契約については当事者同士で進めることになります。実際の契約は、直接契約を結ぶケースもあれば、自分たちで不動産会社を探して契約するケース、自治体に登録してある不動産会社や宅建協会の会員を通して契約するケースなどがあります。

この他に、相談窓口や補助制度を設けていたり、既に不動産会社と契約を結んだ物件のみを扱っていたりと、細かい運用方法は自治体によって異なります。

1-2. 空き家バンクのメリット

空き家バンクの大きな目的は、空き家を有効活用し、定住の促進と地域の活性化をすることです。空き家を減らすために、撤去するのではなく、新たな居住者を見つける方が自治体にとっても利益が見込めます。

これまでは、空き家の所有者と利用希望者とがうまくマッチングできていませんでした。特に古くなった物件は、あまり利益も見込めないため不動産会社も積極的に動いてくれず、空き家の所有者にとってはなかなか売れない、利用希望者にとってはなかなか見つからないと、両者にとって好ましくない状況でした。

そこで、所有者と利用者とを繋げ、その地域への定住と促進と地域の活性化を目的とする空き家バンクが始まりました。

1-3. 空き家バンクの活用方法

空き家の所有者は、空き家バンクを利用することで、より多くの利用希望者に物件を見てもらうことができます。空き家には古い物件が多いため、不動産会社を通して入居者・購入者を探そうとしてもなかなか見つからないことも多く、そのままにしておくと売れない物件としてのイメージがついてしまったり、価格の見直しが必要になったりします。

移住を考えている人にとっては、空き家バンクを通して、移住地を検討したり、住居を探すことができたりします。特に空き家の多い田舎は、不動産会社が少なく、物件の情報を探すのに苦労することも多いです。空き家バンクであれば、簡単に物件情報を探すことができ、かつ、比較的安い価格で利用できます。

2. 空き家に対する地方自治体の取り組み

空き家バンクを利用する自治体が増え、利用希望者にもその存在が注目されるようになってきました。しかし、空き家バンクを効果的に利用できている自治体もあれば、利用が進まず苦戦している自治体もあります。

そこで、より多くの利用希望者に見つけてもらうための方法として、各地域の特色を出した取り組みや、独自の補助制度を設ける自治体がでてきました。

2-1. 補助制度

補助制度には、空き家所有者に向けたものと利用者へ向けたものがあります。補助の内容は、自治体によって様々で、所有者と利用者両方への補助制度を設けている自治体もあります。

2-1-1. 空き家所有者への補助制度

空き家所有者への補助制度としては、物件の改修費用を補助するものがあります。補助の対象や条件は自治体によって様々です。長期間使われていなかった物件は、住まいとして使うためには改修が必要なことも多いです。改修費を補助し、質の高い物件を掲載することで、利用希望者を集めようという狙いがあります。

他にも、固定資産税の減額制度や、契約が成立した場合の奨励金制度などを設けているところもあります。家具などの不要物の撤去費用を負担してくれる制度などもあります。

2-1-2. 利用者への補助制度

空き家利用者への補助制度としては、所有者と同様、改修費用を補助する制度や、家賃・購入費の補助、成約の奨励金などがあります。引っ越し費用を負担してくれる自治体もあり、移住を考えている人にとっては魅力的なものが多いです。

これらの補助制度は、所有者向けの補助制度と同じように、補助の対象や上限額、利用条件などがあります。利用者向けの条件として特徴的なものが、一定年数以上の定住を条件としているものです。その他にも細かい条件など自治体によって様々なハードルはありますが、移住を考えている人にとってはメリットになるものも多く、補助制度を理由に入居を決める人もいます。

3. 空き家バンクの活用手順

空き家バンクを探す方法としては、「自治体名 空き家バンク」や「自治体名 空き家情報」などと検索すると有効です。空き家情報を専門的に取り扱うサイトや、各自治体の空き家バンクのリンクをまとめたページなどから見つけることもできます。

その他にも、各自治体のホームページから、空き家の情報を見ることができるようになっているところもあります。

一般社団法人移住・交流促進機構の「ニッポン移住・交流ナビ」というページでは、日本全国の自治体の空き家情報を扱っています。自治体の空き家バンクへのリンクもあるので、参考にしてください。

また、2017年の夏から、国土交通省が推進する「全国版空き家・空き地バンクの構築・運営に関するモデル事業」として、全国版空き家バンクの利用が始まります。これは、各自治体の空き家バンクの情報を集約したもので、これまでより楽に日本全国の空き家情報を探すことができるようになると期待が寄せられています。

3-1. 空き家バンクが見つからない時は

空き家バンクが見つからないときは、自治体のホームページを確認してみるか、電話などで直接問い合わせる方法が有効です。空き家バンクを利用していない自治体や、民間団体に委託している自治体、空き家バンクという名称でない自治体などは、検索しても見つからない可能性があります。

4. 空き家バンクの使い方

空き家バンクの利用方法は自治体によって異なるため、実際に利用する場合には、各自治体に問い合わせて確認が必要です。ここでは、空き家所有者が、空き家バンクを利用する際の一般的な手順を見ていきます。

4-1. 空き家の登録手順

空き家バンクを利用するためには、空き家の情報を自治体の窓口へ申請し、登録する必要があります。

4-1-1. 必要書類(例)

一般的に、空き家を登録するためには、各自治体で用意されている登録申込書が必要になります。登録申請書など、他の名称の自治体もあります。自治体の窓口や郵送、ホームページからダウンロードするなどして入手することができます。

空き家の情報を記載した登録票も必要です。登録カードなどと呼ぶところもあります。登録申込書と同様に、様式は様々ですが、床面積や築年数、水道・電気・ガスなどの状況など、物件に関する基本的な情報を記載します。同時に、間取り図や写真の提出が必要になる場合もあります。こちらも、窓口やホームページなどから入手できます。

この他に、身分証明書や個人情報の取り扱いなどに関する同意書、住民税や固定資産税の納税証明書、登記簿謄本の写しなどが必要になることがあります。物件の所有者が複数の場合や代理人が提出する場合には、それぞれ必要事項が記載された委任状の提出を求められることもあります。登録の条件として、事前に不動産会社との媒介契約を結ばなければならない場合は、不動産会社との契約書も必要です。

4-1-2. 自治体の審査

空き家バンクに登録する際には、空き家の利用者が一定水準の生活ができる環境かどうか、自治体の審査が行われます。空き家バンクへの登録の申込手続きを行ってから審査が行われる場合と、登録申込手続き前に審査が行われる場合とがあります。

審査方法としては、物件の情報をまとめた登録票をもとにした書類での審査と、自治体の担当者が実際に物件を確認する現地調査とがあります。

これらの審査で、空き家バンクに登録する物件としてふさわしくないと判断されると、物件を登録してもらうことはできません。

4-1-3. 空き家情報の公開

空き家バンクへの登録が済んだら、ホームページなどで物件情報の公開が始まります。このとき注意しなければならない点が、どの情報がどこまで公開されているかということです。

多くの自治体が、個人情報保護のために、所有者の情報はもちろん、物件の住所は記載されないようになっています。そのかわりに周辺情報として、広範囲の地図や様々な施設までの距離と所要時間などが記載されている場合があります。

中には、これらの情報を合わせることで、物件の住所が特定できてしまうケースがあります。空き家という性質から、住所が特定されてしまうと、無断での立ち入りやいたずらなどのトラブルが発生してしまう可能性もあります。

情報の公開範囲を選択できる仕組みや、詳細情報を見るためには自治体に登録手続きが必要になるなどのシステムを設けている自治体も多いです。情報が公開される前に、公開される内容をきちんと確認するようにしましょう。

4-1-4. 希望者から連絡があったら

空き家バンクの情報を見た利用希望者は、自治体の窓口や仲介する不動産会社へ連絡をします。空き家を探している人が、実際に空き家バンクを利用するためには、自治体への登録が必要となります。登録前に情報を見た利用希望者が、空き家の所有者へ直接連絡をしてくるということはありません。

希望者の情報は、自治体の担当者や仲介する不動産会社などから連絡が入ります。中には、所有者の許可を得て自治体が希望者に連絡先を伝え、希望者から直接連絡がくるケースや、所有者の方から希望者へ連絡を入れるというケースもあります。

その後、希望者との物件の見学を行うことになります。このとき、自治体の担当者は同席しないこともあります。仲介の不動産会社が決まっている場合には、不動産会社の担当者が同席するケースが多いです。

4-1-5. 希望者と契約条件を決める

契約の段階に入ったら、自治体は関与しないケースがほとんどです。そのため、所有者と希望者とで契約の条件を決めていく必要があります。当事者同士での取引が難しい場合には、仲介する不動産会社を決め、契約を進めることになります。

空き家バンクへの登録の際に不動産会社との契約を済ませている場合や、自治体が不動産会社を指定している場合、指定された複数の不動産会社から選択する場合などであれば、契約を進める段階で一から不動産会社を探す必要はありません。

契約後のトラブルについては、基本的に自治体は責任を負いません。これは、所有者・利用者ともに、登録の際にこのことを説明され、同意した上で利用しているケースが多いからです。トラブルを避けるためには、できるだけ不動産会社を通して交渉・契約手続きを進める方が良いでしょう。

(a) 重要事項の説明義務も書面の作成義務もない

不動産の売買などでは、物件に関する重要事項の説明が必要になってきます。しかし、この重要事項の説明義務は、宅建業者が宅建業を行う場合に発生する義務であり、宅建法が適用されない者には、重要事項の説明義務が生じることはありません。

つまり、法律上は、空き家バンクを利用した当事者同士の取引であれば、空き家の所有者は、重要事項の説明やそれに関する書面を作成する義務はないということになります。

重要事項の説明の目的は、不動産取引時のトラブル防止のためです。しかし、重要事項の説明を行っていてもトラブルになるケースは多いです。

この為、当事者同士で契約をする場合に、できるだけスムーズにトラブルなく済ませるために、自治体が重要事項の説明を行うよう促しているところもあります。

(b) 自治体によっては不動産会社との契約が必要

他の項目で取り上げているように、自治体によっては不動産会社との契約が必要になる場合があります。

不動産の契約には、様々な知識も必要になり、当事者同士の直接取引を不安に感じる利用者もいます。このような不安の払拭や、万が一のトラブルを防ぐ方法として、空き家の所有者に事前に不動産会社と契約を結んでもらう自治体があります。

不動産会社を通す契約には、基本的に仲介手数料が必要になります。一部の自治体では、自治体が指定する不動産会社であれば手数料が不要になる制度を導入しているところもあります。

4-2. 賃貸借契約書の内容

当事者同士で直接取引をする場合には、契約書の作成が必要になります。特に、経験がない人であれば、契約書を一から作成していくのは非常に大変な作業です。

国土交通省のホームページでは、契約書のモデルとして、賃貸住宅標準契約書が用意され、解説なども記載されています。誰でもダウンロードできるようになっているので、作成する場合には参考にすると良いでしょう。

国土交通省:『賃貸住宅標準契約書』について

4-2-1. 家賃・支払方法

主に賃貸契約において、月々の支払いについてまとめた項目です。家賃に加え、共益費やその他の設備の利用料が必要な場合は、その金額を記載します。支払方法は、口座からの引き落としや、指定口座への振り込みなどがありますが、それぞれ必要に応じて金融機関名など口座情報を記載します。また、支払期限や、金融機関の手数料の負担についても明記しておく必要があります。

4-2-2. 更新料

契約期間と、それを更新する場合に必要な更新料についての項目です。金額と、その支払期間、支払方法について明記します。家賃と同様、口座や金融機関の手数料についても記載が必要です。更新料が不要な場合には、不要と記しておくことも大切です。

4-2-3. 禁止事項

契約期間中の禁止行為についての項目です。空き家の場合、リフォームや設備の交換などに関わる内容が多く、禁止したいことがあれば、両社で話し合いの上、記載しておく必要があります。一般的には、楽器の演奏やペットの飼育、その他近隣住民への迷惑行為などに関して記載してあります。

4-2-4. 契約の解除

契約期間中に、契約を解除する場合についての項目です。貸主側が契約を解除する場合について、借主側が契約を解除する場合についての2点を記載する必要があります。

貸主が契約を解除する場合としては、家賃などの滞納や、法律に違反する行為があった場合などが考えられます。借主が解除する場合としては、転居などが考えられます。それぞれの場合で、解約までの手順や必要な手続き、料金とその支払い方法なども取り決めておきましょう。

4-2-5. 特約条項

その他、特約がある場合に記載します。空き家の場合、改修費用に関してや、備え付けの家財道具に関してなど、利用者との間で問題になりそうなことは、契約の段階で話し合っておく必要があります。退去の際の原状回復費などもトラブルになりやすいので注意が必要です。

5. 空き家バンク以外の空き家活用方法

空き家バンクだけではなく、空き宅地や、空き店舗、空き農地などを扱っている自治体もあります。

5-1. 空き宅地

空き家と同様に、住宅用の土地の情報を公開している自治体もあります。基本的な仕組みは、空き家バンクと同じで、自治体に申請し、空き宅地の情報を公開するという流れになります。空き家に比べ、宅地の場合は、売却が多くなっています。

利用者には、新築工事の補てんや、自治体内の業者を利用した場合に適用される助成金など、住まいを建てることへの補助制度に力を入れるところもあります。また、空き家の賃貸などに比べ、費用の負担も大きくなるので、移住者へ直接話を聞けるサービスなど手厚いサポートを用意しているところもあります。

5-2. 空き店舗

新たに事業を始めようとしている個人や企業を対象に、空き店舗バンクを設けている自治体があります。自治体内の空き店舗を利用し、新たな事業者の参入、それに伴う移住者の増加を狙った事業です。

空き店舗バンクを利用し、新たな事業が始まったことで、地域の活性化やコミュニティの場の形成につながったというケースもあります。地方の空き店舗であれば、利用料が都心部に比べ安く、通勤や帰宅時の混雑による負担も少なくなるため、新たに事業を始めたい個人や、一部の企業からも注目されています。

5-3. 空き農地

空き家同様、空き農地と言われる耕作放棄地(遊休農地)の増加も問題になっています。空き農地の場合は、空き家バンクと同様に所有者と利用者とを自治体が仲介するシステムや、自治体が空き農地の所有者から一定期間土地を借り上げ、利用希望者に貸し出すシステムなどがあります。

農地であれば固定資産税は安くなりますが、農業をしていなければ固定資産税の負担が増えてしまうため、このようなシステムをうまく利用し、空き農地を活用しているケースもあります。

6. まとめ

このように、空き家の所有者、利用者、自治体、それぞれに利点があるよう考えられた仕組みが空き家バンクです。所有者にとっては、改修が必要であったり、契約の手続きが大変であったりする可能性はありますが、自治体からの補助などをうまく利用することで、困っていた空き家を有効的に活用できるようになります。

地方創生が話題となり、全国版空き家バンクの利用も始まることで、空き家の活用は今後さらに注目を集める可能性があります。空き家、空き農地、空き店舗などの活用方法に困っているという方は、一度自治体の取り組みについて調べてみてください。

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