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Category  不動産

2018年07月03日 更新

不動産売却時に必要な諸費用【税金・手数料など】

不動産の売却では、実にたくさんの種類の諸費用が必要となります。一般的に知られている仲介手数料だけでは足りません。不動産の売却において、必要になる費用の把握と準備は、非常に重要です。必要な費用をきちんと把握し、準備しておくことで、思わぬところで出費が発生し、赤字となってしまうリスクを防ぐことができます。

必要な費用の中には、見積りや確認、手続きに時間がかかるものもあります。お金の準備にもある程度期間が必要と思いますので、契約から物件の引き渡し、売却後まで、どのタイミングでどのくらいの費用が必要になるか、事前に把握しておくことが必要となります。

1. 不動産売買契約時に必要な諸費用

売買契約時に必要となる諸費用は、主に書類の作成に関わる費用と、登記に関わる費用があります。

1-1. 売買契約時にかかる諸費用

契約時に必要になる書類の準備に関わる費用です。証明書関係の取得費用はどれも少額ですが無料ではないので注意が必要です。印紙税は高額になる場合もあります。

1-1-1. 売買契約に必要な証明書関係の取得費用

契約を結ぶ時には、いくつかの証明書が必要になります。証明書の発行には、高額ではありませんが、発行費用がかかります。

(a) 住民票

住民票の発行手数料は、自治体ごとに異なります。200~500円のところがほとんどですが、中には無料の自治体もあります。金額は各自治体のホームページや、直接問い合わせることで調べることができます。

(b) 印鑑証明書

こちらも自治体ごとで金額は異なり、200~400円のところがほとんどです。実印の登録から行う場合は、別途、登録料が必要になります。無料の自治体もありますが、多くの自治体で200~500円ほど請求されます。

住民票の発行手数料と同様、ホームページや直接問い合わせることで金額を調べることができます。

(c) 戸籍謄本

戸籍謄本の交付手数料は、おおむね全国一律で、1通につき450円が必要です。以前は全国一律だったのですが、現在は各自治体の条例で定めることになっています。改正後、変更をしたのは一部の自治体で、多くがそれまでの450円を維持しています。正確な金額は、各自治体のホームページで調べたり、直接問い合わせたりして確認しましょう。

1-1-2. 印紙税

印紙税とは、契約書や領収書等、金銭のやりとりが伴う文書を使用する際に支払う税金です。印紙税を払い収入印紙が貼られた文書は、国が定めた決まりを守っている、信用できる書類であることが証明されます。税額は記載された金額に応じて変化し、高額になるほど、高くなります。

不動産売買において、誰が印紙税を支払うか定められていないため、買主と話し合っておく必要があります。一般的には、契約書を2通作成し、売主と買主の双方で1つずつ保管することになるため、それぞれが自分の保管用の契約書分の印紙代を負担することになります。法的には契約書は1通でも問題はありません。また、同じ文書を複数枚作成する場合には、全てに収入印紙を貼る必要があります。

1-2. 不動産の登記費用(登録免許税)

登録免許税は、登記を申請する時に納める税金のことです。登記する内容や不動産の件数によって金額が異なります。登記を専門家へ依頼した場合には、登録免許税に加え、専門家へ支払う報酬額も登記費用に含まれます。

1-2-1. 不動産ローンの抵当権抹消登記

抵当権とは、金融機関等からお金を借りる時、万が一返済できなかった場合に備え、不動産を担保として確保しておく権利のことです。抵当権の対象となった不動産の登記簿謄本には、債務額や貸主等の情報が追加されます。

これらの情報は、完済し抵当権がなくなっても、削除の手続きを行わなければ登記簿謄本に記載されたままになります。完済しているにも関わらず抵当権が残されていると、売却時、買主は完済されたかどうかの判断ができず、売主にも不利になってしまいます。

そこで、登記簿謄本から抵当権の情報を削除する必要があります。これを抵当権抹消登記といいます。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1物件につき1000円です。20物件以上になると、一律2万円が必要になります。

自分で手続きを行うのであれば、登録免許税以外に書類の郵送費や法務局までの交通費がかかります。専門家に依頼する場合には、別途依頼の費用がかかります。

売却金でローンを完済する場合には、決済と同時に行います。通常、買主もローンを使うことが多いので、銀行で司法書士の立ち合いのもとで決済手続きを行い、その司法書士が、抵当権抹消登記と同時に所有権の移転登記や買主の抵当権設定登記を行います。わざわざ、司法書士を二人雇う必要はないので、費用の負担について売主と買主で話し合っておくと良いでしょう。

1-2-2. 不動産の売主の表示に変更がある場合

売主(登記されている不動産の所有者)の氏名や住所が登記上の内容から変更されている場合、所有権移転登記ができなくなります。変更がある場合は、氏名変更登記や住所変更登記等を行う必要があります。

これらの登記には、不動産1件あたり1000円の費用がかかります。

また、登記の手続きにおいて、住民票等も必要になり、それらの発行手数料もかかります。専門家へ依頼する場合には、別途、依頼費用も必要です。

1-2-3. 建物に未登記部分がある場合

未登記部分を含む不動産売買では、売主と買主の話し合い次第で対応は様々ですが、売主が未登記部分の登記をするケースが多いです。未登記部分の登記には、建物表題登記(建物表題変更登記)が必要になります。

建物表題登記では、登録免許税はかからず、手続き上必要になる住民票の発行手数料がかかります。場合によっては、様々な確認書類や物件の図面等が必要になり、これらの作成を専門家へ依頼する場合には依頼費用がかかります。

1-2-4. 土地の分筆をする場合

土地を分筆する場合には、分筆登記が必要です。分筆登記をするためには、境界が明確になっていなければならず、境界を確定するための測量や測量図の作成、境界標の設置等、専門的な知識が必要になり、多くの人が専門家へ依頼しています。

費用は、土地の大きさや測量の難しさ、周辺の環境等で決まり、依頼する専門家によっても変わってきます。相談や見積もりをしてみると良いでしょう。

また、測量だけ依頼し、登記は自分で行うという方法もあります。登記の際の登録免許税は、分筆後の土地1筆につき1000円必要になります。

1-2-5. 司法書士への報酬額

司法書士へ登記手続きを依頼した場合は、報酬を支払わなければいけません。報酬額は一律ではなく、司法書士それぞれで定めているため、依頼する司法書士によっては高額になる場合もあります。

費用が高くなることはできるだけ避けたいですが、安ければ良いということでもありません。費用の算定方法等は、丁寧な説明をうけ、十分に確認してください。司法書士への報酬については、日本司法書士会連合会でアンケート結果がまとめられています。
日本司法書士会連合会ホームページ 司法書士の報酬

1-2-6. 土地家屋調査士への報酬額

土地家屋調査士へ登記や測量等を依頼した場合にも報酬を支払います。司法書士と同様、報酬額は土地家屋調査士ごとに異なります。測量が必要な場合は、地域や規模によって価格が大きく変動するため、一度相談してみると良いでしょう。

日本土地家屋調査士会連合会でも、報酬についての調査結果が公表されています。設問ごとに細かく条件が定められているため比較が難しいですが、参考程度に確認してみましょう。
日本土地家屋調査士会連合会 日調連の概要:情報公開

2. 不動産の引き渡し時に必要な費用

契約が成立し、買主へ引き渡す時に必要になる費用です。金額が大きくなるので、早めの確認が必要です。

2-1. 不動産の仲介手数料

仲介手数料とは、売却が成立した場合に不動産会社に支払う手数料のことです。仲介手数料は、上限が設定されています。具体的には、売買価格の200万円以下の部分は5%以内、200万円以上400万円以下の部分は4%以内、400万円以上の部分は3%以内を上限とし、これに消費税が加わった金額が仲介手数料となります。

売買価格が400万円以上であれば簡単に計算できる式もあり、(売買価格×3%+6万円)×1.08(消費税)を計算することで求めることもできます。

この金額はあくまで上限であって、必ずこの額を支払わなければならないということではありません。仲介手数料として上限額を提示してくる不動産売会社がほとんどですが、中には上限以上の金額を請求したり、最低限支払わなければいけない額だと説明したりする悪徳不動産会社も存在するので注意が必要です。

2-2. 不動産ローンの繰り上げ返済手数料(ローン解約手数料)

購入時に金融機関でローンを組み、完済前に売却する場合は、繰り上げ返済してローンを完済しなければなりません。その場合には金融機関に対して、ローンの残額だけでなく、手数料も支払わなければいけません。

手数料の額は金融機関によって異なり、契約の内容や借り入れた金額、期間、返済した額等でも変わってくるため、直接金融機関に確認すると良いでしょう。手続きには一定の期間が必要になります。ローンの完済ができなければ、抵当権抹消の手続きにも移れない為、計画的に進めましょう。

3. 不動産売却後に必要な費用

売却後にも費用がかかる場合がありますので確認しておきましょう。

3-1. 不動産の譲渡所得税

不動産を購入時より高い価格で売却した場合の利益を譲渡所得といいます。譲渡所得は所得税と住民税の課税対象であり、年度末に確定申告をして納税しなければなりません。

課税対象となる譲渡所得額は

売却価格 -(購入価格+購入時にかかった諸経費+売却時にかかった諸経費)

の式で計算することができます。

これに譲渡所得税率をかけた額が譲渡所得税額となります。

税率は不動産を所有していた年数によって変化し、5年以上所有した長期譲渡所得であれば所得税15%、住民税5%、5年以下の短期譲渡所得であれば所得税30%、住民税9%となっています。

この所有年数は、1月1日を基準にしていることに注意が必要です。また、平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として所得税額の2.1%分を追加で納税する必要があります。

3-1-1. 減税措置について

譲渡所得税は、ある条件下での減税措置が設けられています。例えば、所有期間が10年を超えた居住用の物件を売却した場合に軽減税率が用いられる特例、条件を満たした居住用の物件を売却し、代わりの物件を買い替えた場合の特例等があります。

物件によって条件が違い、対象となる減税措置も異なるため、税理士や税務署等で相談してみると良いでしょう。
国税庁ホームページ 税について調べる タックスアンサー 譲渡所得

4. その他の不動産売却時にかかる費用

上記の費用以外にも、売却のための片付けや整理等にもお金が必要になります。

4-1. 引越し費用

住んでいる物件を売却する場合には、引越しが必要です。引越し費用は、荷物の大きさや量、移動距離、引越しする時期によって変動します。特に、春の繁忙期になると、価格が大幅に上昇することもあるので、余裕があれば繁忙期は避けた方が良いかもしれません。

荷物の整理には時間がかかるので、売却前に済ませるか、売却が決まってからするか早めに決め、計画的に準備しなければなりません。

4-2. ハウスクリーニング費用

物件をきれいにする方法には、自分で掃除する以外に、専門の業者にハウスクリーニングを頼むという方法があります。ハウスクリーニングをしたことで、売却価格が上がったということは言い切れませんが、印象が良くなることで売りやすくなることは間違いありません。

きれいな状態で見てもらい、早めに買い手を見つけることを目指します。もちろん、ハウスクリーニングは義務ではありませんが、きれいであることに越したことはありません。

費用は、地域や間取り、クリーニングの内容によって異なります。年末などの大掃除シーズンなどの繁忙期には価格が高くなりやすく、また、部屋に家具や荷物がある状態より何もない状態の方が、作業がしやすいため、価格は低くなる傾向にあります。

部分的なクリーニングもできるため、自分では掃除が難しいところを業者に依頼するという形をとると、費用を抑えることができます。特に水回りはプロにお任せすると見栄えがまったく違うと言われる方が多いです。

4-3. 建物のリフォーム費用

大規模なリフォームをするか、簡易的なリフォームをするかで、費用は大きく差がでます。

一般的には、買主が自分で好きなようにリフォームをしたいと考えている場合もあるので、大規模なリフォームより、細かいところをきれいにする簡易的なリフォームが良いと言われています。

物件によって状態は異なり、リフォームせず、その分安く売りに出すという方法もあるので、顧客の様子を見ながら不動産会社と相談するのも一つの手です。リフォームにかけた費用は、回収できるとは限らない為、大きな負担にならない程度で検討しましょう。

4-4. 不要物の撤去費用

引越しや解体時には不要物がたくさん出てきます。日用品や生活ごみはすぐに処分できますが、大型の家具や電化製品になると簡単には処分できません。電化製品には粗大ごみとして出せないものもあるため、処分したいものは早めに処分方法を考えなければいけません。

処分方法としては、自治体の回収所へ持ち込む、回収業者へ依頼する、リサイクルへ出す等があります。自治体の回収所へ持ち込めば、手間はかかりますが、比較的安く済む場合が多いです。

料金は自治体によって異なるのでホームページ等で確認が必要です。業者に依頼する場合は、楽ですが、処分費用に加え人件費もかかるので費用がかさみます。不要物が多い場合には数十万円になることもあるので、まずは見積りを依頼しましょう。

意外なものが高く売れる場合がありますので、リサイクル業者に見に来てもらったり、ネットオークションを覗いて見ると良いかもしれません。

4-5. 建物の解体費用

古い戸建ての物件等で、解体して土地を売る場合など、解体費用がかかります。一般的な坪単価の相場は、木造が2~3万円、鉄骨造3~4万円、鉄筋コンクリート造4~5万円と言われています。

立地や広さ、重機の使用等で価格は変わるので、あくまで参考程度と考えてください。家屋の他にも、塀や庭石、車庫等、付帯設備の撤去にも費用がかかります。隣家が近い場合には解体が難しくなるため、費用も高くなります。

他にも人件費や処分費、仮設工事費、重機の使用料等、様々な料金が追加されていきます。まずは見積りを依頼し、複数の業者で比較し決めるのが良いでしょう。

4-6. 土地の測量費用

登記の手続き等で測量をしなければならない場合、専門的な知識が必要になるため、専門家へ依頼する人がほとんどです。依頼に必要な費用は、依頼した専門家や、土地の大きさ等によって異なります。

だいたい30万~40万円前後必要と言われており、広大で複雑な地形であれば、100万円以上必要になることもあります。土地が国有地等と接している場合には、役所の立ち合いの下、測量を実施しなければならず、30万円前後の追加費用がかかることが多いです。

4-7. 整地費用

通常、解体をした業者が作業終了後に整地します。しかし、整地されたという状態は、こぶし大の石がそのままのところもあれば、トンボやホウキできれいにされているところもあり、業者により差があります。

土地の売却の場合は、見栄えを良くした方が高く売れる場合が多いので、別途整地費用を払い、化粧砂等を敷き、きれいにしてもらうことを検討した方が良いでしょう。費用は地域や条件で異なりますが、一般的には工事費用の3~5%分が必要になります。

5. 不動産売却時に必要な諸費用-まとめ

このように、不動産の売却にはたくさんのお金がかかります。どういう時に、どれくらいのお金が必要になるか把握しておかないと、思わぬところで発生する費用に困ってしまうかもしれません。

物件によって価格が変動するものが多いので、早めに動きだし、見積りを依頼し、検討しておく必要があります。お金は高額になればなるほど、準備に時間が必要となることが多いと思いますので、計画的に準備を進めていきましょう。