山林の売却の方法と売却時の税金などの注意点

相続などで山林を手に入れた場合、キャンプ場や太陽光発電をするなどして活用される人もいますが、多くの場合はそのまま放置されています。

日本の山林において約60%が私有林であるとされており、その山林は代々受け継がれていくのですが山林を所有していても活用できずに処分に困る人も多いです。

いつか処分をするのであれば、自分の代で山林を売却してしまいたいという人もいるのではないでしょうか。山林の売却には様々な注意点があり、家の売却のように簡単にはいきません。

知っておくべき注意点について、確認しておきましょう。

1. 売却前に山林の現況を確認する

山林を売却するには、まず自分の所有している山林がどのような状況にあるのかを把握しておくことが大切です。

山林の現況を知ることで、自分の山林の価値を知ることができますし、売却時の相場もある程度把握しておくことができます。

 

1-1. 森林簿・森林計画図を入手する

各都道府県には、地域の森林計画の基礎資料として森林の現況をまとめた森林簿や、地域森林計画の対象になっている民有林などを記載した森林計画図というものがあります。

森林簿や森林計画図には、山林の面積や立木の種類、林齢などの情報が記載されていて山林に行かずとも図面で状況を確認することができます。また、森林の資源情報や施業履歴なども分かります。

森林簿や森林計画図の交付方法は統一されているわけではないため、各都道府県によって内容が異なります。入手する際には森林組合や市区町村の担当窓口にて問い合わせをする必要があります。

 

1-2. 山林をまでのアクセス

山林は場所によって、都心に近い方から順に都市近郊林地・農村林地・林業本場林地・山村奥地林地の大きく4つの地域に分類されます。交通の便がよく、道も整備されている都心に近い地域の方が、奥地の山林に比べて売却価格が高くなります。

また、山林に続く道は一般道との距離が近いかどうか、河川などで隔たりがないかどうか、山林からの搬入や搬出はスムーズに行えるかどうかなども重要になってきます。

 

1-3. 山林にどんな木が生えているのか

山林の価値を考える際には立木も重要な要素のひとつになります。所有している山林に生えている木の種類、木の太さや長さ、林齢などによって価値が上下します。

例えば、木の種類が杉の場合とヒノキ、松などの場合では価格も大きく変わってきます。真っすぐ育っていて病気のない健康な木と、曲がっている木でも価格は異なってきます。

そのため、間伐をしている場合は立木の価値があがるため、それに伴い山林の価値も上昇します。間伐をしていない山林は立木が正常に育たないことがあり、木材の質も低下します。

適切に間伐されている山林は立木にしっかりと日光があたり、健康に育っていくためいい木材が取れるようになります。間伐を行うことで山林の価値があがって立派な資産となります。

 

1-4. 山林にある特用林産物

山林にある資産は立木だけでなく特用林産物も含まれます。特用林産物とは、山林から産出される木材以外の生産物のことで、松茸や椎茸などのきのこ類、タケノコ、わさび、木の実、山菜などがあります。

日本の林業における生産額の50%以上はこれらの特用林産物が占めているので、松茸が豊富に取れたり、季節ごとに山菜が取れる山林は買い手が付きやすくなります。

また、特用林産物はきのこや山菜だけでなく、貴重な昆虫なども含まれます。カブトムシやクワガタには高価な値段がつくこともあるので、昆虫が獲れる場合はそこについても大きなポイントになります。

 

2. 山林を売る場合の問題点

いざ山林を売却したいと思っても、家を売るときのようにスムーズにいかないことが多いです。買い手が見つからない、土地の測量に費用が発生するなど、一般的な不動産売買とは違う点が多くあることが理由です。

実際にはどのような問題が発生するのか、以下で具体的に見ていきましょう。

 

2-1. 山林は登記上の面積と実際の面積が違うことが多い

マンションや住宅を購入した際などに登記を行う必要がありますが、日本では不動産登記という制度によって法務局が土地や建物の管理を行っています。不動産登記を行うことによって、その不動産の所有者が誰なのかが証明されます。山林も不動産ですので登記簿があります。

登記簿にはその土地の面積が公簿面積として記載されていますが、公簿面積と実測面積が異なることがあります。実際のやりとりは公簿面積で行われることが多いのですが、実測面積の方が公簿面積より広いと売り手側が損をしてしまい、実測面積より実測面積の方が広いと買い手側が損をしてしまいます。

山林の土地は境界をしっかりと決めて測量を行い、広さを決定するのですが、山林はその土地自体が広いため、少しの境界のずれが大きな面積となります。境界のずれや公簿面積と実測面積のずれをなくすためにはしっかりと測量を行うことが大切です。

しかし、土地が広いため測量には高額な費用が発生することがあります。最近ではネット上にて無料で測量ができるツールなどもあるので、そういったツールを使用する方法もあります。

 

2-2. 山林の買い手は少ない

通常の土地と違って山林を売却する際に問題となってくるところは、やはり買い手の少なさです。山林という使いづらい土地を個人で買おうという人はなかなか見つかりません。売り手と買い手の総数が少ない市場は活性化があまり進まず規模も小さくなります。

日本の山林は約60%が私有林だと言われていますが、実際に売りに出されている私有林はとても少なく、買い手も少ないため市場が成熟していません。そのため、なかなか買い手が見つからないことがあります。

また、売却する際の価格についても一般的な相場はありますが、売り手側と買い手側の交渉で最終的な価格が決定します。買い手が少ない山林売買の市場では、売り手は買い手を逃したくないため買い手優位の取引になりがちで、相場よりも安く買いたたかれる可能性もあります。

 

2-3. 木だけ売ることもできるがそのままでは無価値

土地をそのまま残して立木だけを売ることも可能ではありますが、立木の状態では木そのものに価値はほとんどなく、そのままでは売れません。立木を売るためには木を伐採して木材にしてから売却をしなければなりません。

立木を価値のある木材にするには、間伐をして病気のない健康な木を育てる必要があります。そのほかにも搬出経路の確保など様々な経費が発生するため、立木の売却はコストパフォーマンスがあまりよくありません。

総合的にみて、立木のみを売るよりも山林ごと売却する方が得になることが多いです。

 

3. 山林を売却する際の依頼先

山林を売却する際は、個人で買い手を見つけるのは非常に難しいため、一般的な不動産と同じく、仲介業者や専門家に間に入ってもらって買い手を見つけるという流れになります。

しかし、一つの場所で相談をして決定するのではなく、複数の場所で相談をして様々な情報を総合して決めることが大切です。

 

3-1. 一括査定で山林の相場を把握する

まずは自分の山林を売却するとどれくらいの価格で売れるのか、相場を把握する必要があります。1件1件不動産会社を探して査定をしてもらうことも可能ではありますが、非常に時間と工数がかかり現実的ではありません。

相場を知るのであれば、情報を入力するだけで複数の会社を比較できる一括査定が効率もよく便利です。不動産会社によって査定額も大きく変わってくるので、できるだけ高く売ってくれそうなところを探す方がお得に売却することができます。

 

3-2. 森林組合の斡旋サービスを利用する

不動産会社の一括査定を利用するのと並行して、他の斡旋サービスを行っているところへも相談にいきましょう。全国には森林組合という団体があり、団体によっては山林の売買を斡旋してくれるところもあります。

また、民間運営のサイトでは山林バンクというサイトがあり、山林の購入を希望している人とのマッチングが可能になっています。

山林という特殊な地目を取り扱っている会社は多くはないため、専門で扱っている会社に売却相談をすることが買い手を見つける近道になります。

 

3-3. 山林付近の不動産屋へ相談する

山林の近くにある不動産屋は地元の人とのつながりも強く、山林を購入したいと思っている見込み客の情報なども相談を受けて持っている可能性があります。大手の不動産屋はエリアごとに範囲が決まっていて対応ができないということもありますし、小さな会社であれば先に述べた一括査定のサイトに登録していないこともあるので、こういった山林付近の不動産会社への相談は有効であると言えます。

また、山林に近いということはそれだけ山林売却の経験値が高いということです。一括査定やサイトでは見つからない、山林売却を得意としている会社が見つかるかもしれません。

 

3-4. 山林売買時の相場を調べる

実際に自分の所有している土地がいくらくらいで売れるのかの相場を知りたい場合、土地総合情報システムがおすすめです。土地総合情報システムは、国土交通省が管理しているサイトで、不動産の取引価格情報を調べることができます。

このサイトでは、日本各地の都道府県、市区町村、地区からその周辺の土地がいくらで取引されたかを調べることができ、林地での絞り込み検索も可能です。土地の面積と取引価格、取引が行われた時期も分かるので、自分の所有している山林を売却する際の目安の価格を事前に調べておきましょう。

国土交通省が提供している土地総合情報システムの具体的な使い方についてこちらのページで紹介しています。併せて参考にしてください。
http://tochikatsu.site/hudousan-souba/#1-2

 

4. 山林の売却時にかかる費用

山林の売却には、様々な費用が発生します。

大きく分けて仲介手数料、登記費用、印紙税、所得税の4つに分類されます。この中でも所得税については山林所得と譲渡所得の2種類があり、確定申告の際にはそれぞれ別に申告する必要があります。

山林所得も譲渡所得もどちらも分離課税になるので、他の給与などの所得と合算しての申告はできなくなっています。少し複雑な仕組みになっているので、所得税や費用について以下で詳しく見ていきましょう。

 

4-1. 山林所得税

一般的に宅地では土地と上物に分けて考えられますが、山林も同じで土地(山林そのもの)と立木に分けて考えられています。山林は、木材の生産を目的とした用途でも購入されることがあるため、その土地にある立木にも価値つき資産となります。

そのため、立木の部分は山林所得として扱われることになります。

 

4-1-1. 山林所得の計算方法

山林にある立木をそのまま譲渡したり、あるいは立木を伐採して譲渡したりして生じた所得を山林所得と言います。

立木の伐採や譲渡が山林を所得してから5年以内であった場合は、山林所得の扱いではなく事業所得や雑所得の扱いになります。

山林所得の計算方法は以下の通りです。
山林所得=収入金額-必要経費
課税山林取得=山林取得-特別控除額

 

4-1-2. 山林の売却時に必要経費となるもの

立木を譲渡して得た収入から必要経費を引いたものが山林所得として計上されるのですが、必要経費には以下のものが含まれます。

必要経費:
植林費、仲介手数料や登記費用などの山林の取得にかかった費用、維持管理に必要な管理費、立木の伐採や搬出にかかった費用、売却にかかった仲介手数料など。

相続で山林を取得した場合などは、取得費用などが不明で必要経費として計上できないことも多くあります。

そのため、必要経費には概算経費控除という特例が設けられています。立木を伐採、または譲渡した年の15年前の12月31日以前から山林を保有していた場合、収入金額から伐採・譲渡費用を差し引いた金額の50%を伐採・譲渡費用に加算して必要経費とできるといった制度です。

計算式にすると以下のようになります。
概算経費控除額=(総収入金額-伐採・譲渡費用)×50%+伐採・譲渡費用

例えば、山林売却で得た収入が300万円、伐採譲渡費用が50万円だった場合、175万円を必要経費として計上することが可能です。

 

4-1-3. 特別控除の算出方法

立木を売却、譲渡して得た総収入金額から必要経費を差し引いた金額によって特別控除が決定されます。差し引き後の金額が50万円未満の場合はその金額が特別控除となります。

なお、特別控除の上限金額は50万円となっているので、差し引き後の金額が50万円を超えた場合でも50万円を特別控除として扱います。

 

4-1-4. 山林所得の税額は5分5乗方式で計算する

山林所得の税額は、一般的に「5分5乗方式」と呼ばれる計算式で算出されています。

山林所得は立木を売却譲渡した際に発生する所得で、毎年必ず発生する所得ではありません。そのため、税額が低くなるように設定されています。

計算式は以下のようになります。
税額=(山林所得×1/5×税率)×5

税率は、山林所得を5で割った金額によって以下のように決められています。
195万円以下 :5%
195万円超~330万円以下 :10%
330万円超~695万円以下 :20%
695万円超~900万円以下 :23%
900万円超~1800万円以下 :33%
1800万円超~4000万円以下 :40%
4000万円超 :45%

例えば、山林所得が600万だった場合、600万を5で割った120万円に税率がかかります。よって、(600×1/5×5%)×5で税額は30万円となります。

 

4-2. 山林譲渡所得税

立木部分は山林所得として扱われますが、土地部分に関しては譲渡所得として扱われます。譲渡所得も山林所得と同じく分離課税になっているので、他の給与などの所得と合算しての申告はできません。

 

4-2-1. 山林譲渡所得税の計算方法

譲渡所得の基本的な計算式は以下の通りです。

譲渡所得=収入金額-諸経費(譲渡費用や取得費用など)
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除額

取得費用は、その山林を取得したときにかかった費用のことですが相続で取得した場合など、費用が不明のことがあります。その場合には、収入金額の5%を取得費用として計上することができます。

また、特別控除について売却理由が公的な事業による収用である場合に適用されます。一般的な個人間での山林売買であれば特別控除は特に発生しないと考えていいでしょう。

上記の計算式で導き出された課税譲渡所得に対して譲渡所得税率をかけたものが、支払うべき譲渡所得税となります。

 

4-2-2. 山林を所有していた期間で税額が変わる

課税譲渡所得に対してかける譲渡所得税率には、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2種類があり、山林の所有期間によって税率が変更となります。

所有期間が5年以内の場合は短期譲渡所得として39.63%、5年以上所有している場合は長期譲渡所得として20.315%の税率が課せられます。

 

4-3. 山林売却時のその他の費用

山林売却にかかる大きな税金と言えば、上記の山林所得税と山林譲渡所得税の2種類になりますが、その他にかかる税金としては、印紙税と登記免許税があります。

印紙税は山林の売買契約書に貼付するための収入印紙を購入する際にかかる金額です。売買契約書を交わした際に、その売買の金額が1万円を超える場合は収入印紙の貼付が必要になり、必要な印紙の金額は契約書に記載の金額によって変わってきます。

例えば1000万円以下の売買であれば5000円、500万円以下の売買であれば1000円となります。

登記免許税は、土地の登記をする際の金額です。基本的には買い手側が負担することが多いですが、売却時の状況によっては売り主が負担することもあります。

そのほか、細かいところで言えば、仲介手数料にかかった消費税なども税金に含まれます。

 

5. 山林の売却の方法と売却時の税金などの注意点まとめ

山林を売却する方法と、売却時にかかる税金について説明をしてきました。山林売買は市場が小さく活性化していないとはいえ、長く続いている市場です。

最近では、日本の山林資源に外国が注目しているという背景もあり、外国からの買取り依頼なども多く見受けられます。せっかくの土地を余らせて放置しているのは非常にもったいないです。

ビジネスとして山林を使用したり、相続として遺す予定がないのであれば、これを機に売却を検討してみても良いかもしれません。