コンパクトシティのメリット・デメリットと事例を紹介

地方都市では、人口が中心市街地から郊外に流れるというドーナツ化現象が深刻な問題となっています。このドーナツ化現象に歯止めをかけ、効率的で無駄のない都市を目指すのがコンパクトシティです。

コンパクトシティでは都市機能が中心市街地にまとめられるため、行政サービスや日常生活が効率的になるというメリットがあります。

また、実際にコンパクトシティ構想に魅力を感じ、すでに取り組んでいる自治体もあります。

こちらでは、コンパクトシティのメリットとデメリット、事例について紹介いたします。

1. コンパクトシティとは

コンパクトシティとは都市計画のひとつで、商業地や行政サービスなとの生活に必要な都市の機能をコンパクトに一定の地域にまとめることにより、市街地を再構築することです。

1-1. ドーナツ化現象は財政負担が大きい

国内の多くの地方都市では、高度成長期以降は郊外に住宅整備が進められ、それに合わせて大型ショッピングセンターが郊外に建設されたり、大学や病院も移転するという、いわゆるドーナツ化現象が問題となっています。

この郊外への住宅や大型ショッピングセンター、大学、病院などの移転はほとんどが無計画で、開発業者などにより無秩序に行われました。その結果、道路や上下水道、学校などのインフラ整備は効率が悪いものになってしまいました。

高度成長期であれば国や地方自治体も十分な税収が確保できたため、そのような状況でもインフラ整備を行うことはできました。しかし、2000年代以降は税収も激減し、過去に整備したインフラの老朽化の対応も大きな負担となっています。

1-2. コンパクトで効率的な都市を目指す

そのような問題を解決するために注目されたのが、コンパクトシティです。コンパクトシティでは郊外に広がった生活圏を都市の中心部など一定の地域に集約することにより、効率的で無駄のない生活が実現します。

2. コンパクトシティのメリット

上記で、コンパクトシティは効率的で無駄のない生活が実現すると説明しました。具体的には、私たち住民にとっては、移動・通勤時間の短縮や医療・福祉の充実、コミュニティの形成という3つのメリットがあります。以下でこれらのメリットについてくわしく説明します。

2-1. コンパクトシティでは移動・通勤時間が簡単

コンパクトシティの1つ目のメリットは、移動・通勤時間が短縮できることです。コンパクトシティでは、会社や住宅も含めたすべての都市機能が一定の地域にまとめられます。そのため、会社への通勤や学校への通学、商業地への買い物のような日常生活での移動時間を短縮することができるというメリットがあります。

また、コンパクトシティでは電車やバスのような公共交通機関と徒歩による移動がほとんどなので、自動車の排気ガスによるCO2が削減されることにより、環境負荷の低減効果もあります。

このように、コンパクトシティでは日常生活での移動や通勤時間が短縮できるというメリットがあります。

2-2. コンパクトシティでは医療・福祉が充実する

コンパクトシティの2つ目のメリットは、医療や福祉が充実することです。

コンパクトシティではすべての都市機能がまとめられることにより、公的サービスが必要な面積が少なくなります。その結果として道路や上下水道のようなインフラの維持費用、除雪や介護のような行政サービスの費用が削減できます。そのため、医療や福祉のような行政サービスに多くの税金が投入されるのです。

ですから、行政の税収がこれまでと変わらなかったとしても、コンパクトシティの住民は手厚い行政サービスを受けることができます。

このように、コンパクトシティでは医療や福祉が充実するというメリットがあります。

2-3. コンパクトシティのコミュニティ

コンパクトシティの3つ目のメリットは、コミュニティが形成されることです。

日本では、高齢者が古い街並みで生活し、若い世代は郊外で住宅を購入して生活するという年齢層による分離が起こっていました。しかし、コンパクトシティであれば世代に関係なくまとまった地域で生活するため、このような年齢層の分離は起こりません。

その結果新たなコミュニティが形成され、地域の活性化や生産性の向上が期待できます。

このように、コンパクトシティでは年齢層による居住地の分離が起こらないため、コミュニティが形成されるというメリットがあります。

以上のとおり、コンパクトシティには移動・通勤時間が短縮できる、医療・福祉が充実する、コミュニティが形成されるという3つのメリットがあります。

3. コンパクトシティのデメリット

ここまで、コンパクトシティの3つのメリットを説明しました。どのメリットも地方都市の財政難を解決した上で、住民も手厚い行政サービスや充実した生活を送ることができるという魅力的なものです。

しかしその一方で、コンパクトシティには住民にとって居住地域が制限される、生活環境が悪化する、郊外の過疎化と地価の下落が進むという3つのデメリットがあります。以下では、これら3つのデメリットについてくわしく説明します。

3-1. コンパクトシティでは居住地域が制限される

コンパクトシティの1つ目のデメリットは、居住地域が制限されることです。ここまで説明したとおり、コンパクトシティは住民が一定の地域にまとまって生活することにより成り立ちます。そのため、基本的には行政が定めた居住地域でしか住むことができず、住宅の選択肢は少なくなってしまいます。

このように、コンパクトシティでは居住地域が制限されるというデメリットがあります。

3-2. コンパクトシティでは生活環境が悪化する

コンパクトシティの2つ目のデメリットは、生活環境が悪化することです。中心市街地では人口密度が上がるため、交通渋滞や犯罪、建物の高層化による日当たりの悪さ、騒音やプライバシーの侵害による近隣住民とのトラブルなどが増加する恐れがあります。

このように、コンパクトシティでは多くの住民が密集して生活するため、生活環境が悪化するというデメリットがあります。

3-3. コンパクトシティでは郊外の過疎化と地価の下落が進む

コンパクトシティの3つ目のデメリットは、郊外の過疎化と地価の下落が進むことです。

先ほど、コンパクトシティでは行政が定めた居住地域で生活する必要があると説明しました。しかし、すでに郊外で生活している住民に移住を義務付けることはできません。郊外で住宅を購入したばかりだったり、郊外での生活環境に満足していたりする人であれば、引き続き郊外に居住したいと考えるのは当然のことです。

3-3-1. コンパクトシティ郊外の過疎化

しかし、多くの住民がコンパクトシティに移住すると、過疎化が進んだ郊外の生活環境が悪化してしまいます。具体的には福祉や介護のような行政サービスの質が低下したり、上下水道や電気、ガスのようなインフラに不具合があったとき、対応が遅れたりします。

また、多くの住民がコンパクトシティへの移住に賛同している場合、移住をしない人への風当たりが強くなる恐れもあります。

3-3-2. コンパクトシティ外の地価の下落

さらには、行政が居住地域として定めておらず、過疎化が進む地域の地価は大きく下落することが予想されます。せっかく郊外の住宅を手に入れた住民の資産が目減りしてしまうことになるのです。

このように、コンパクトシティでは郊外の過疎化と地価の下落が進むというデメリットがあります。

以上のように、コンパクトシティには居住地域が制限される、生活環境が悪化する、郊外の過疎化と地価の下落が進むという3つのデメリットがあります。

4. コンパクトシティの事例

ここまで、コンパクトシティのメリットとデメリットについて説明しました。実際にコンパクトシティの構想を打ち出している自治体は多数あります。また、富山市と青森市は実際にコンパクトシティの構想を導入している代表的な都市です。これらの都市は先進的な取組事例として、視察や研究の対象となっています。

特に富山市は成功事例として、青森市は失敗事例として取り上げられることが多くあります。ここでは、これら2都市のコンパクトシティの取組内容と成功や失敗の原因について説明します。

4-1. コンパクトシティで一定の成功を収めた富山市

コンパクトシティの1つ目の取組事例は、富山市です。富山市は全国的に自動車保有率が高く、マイカーがないと生活できないと言われるほど住宅や会社が市内全域に分散している都市です。

特に居住地域が市内全域にわたるため、ごみ収集や冬季の除雪作業、医療や介護サービスの質の低下が問題視されるようになりました。

そこで富山市では、このような行政サービスの低下を改善して費用を軽減するため、「串と団子型コンパクトシティ」と呼ばれる以下のようなコンパクトシティを目指しました。

富山市ホームページ:中心市街地活性化基本計画資料(PDF)

 

富山市の計画では、市内の複数の主要駅を団子に、その主要駅を結ぶ公共交通機関を串に見立て、「串と団子型コンパクトシティ」と呼ばれています。

4-1-1. コンパクトシティでの路面電車の整備

具体的には、各主要駅を結ぶ「串」にあたる公共交通機関として、利用者の減少が目立っていたJR線を路面電車に再生しました。

この路面電車はLRT(次世代型路面電車)と呼ばれ、高齢者が利用しやすいように整備されています。具体的にはバリアフリーで乗り降りの負担が少なく、料金が押さえられているのです。

また、運転間隔や終電時間を見直すことにより、高齢者だけでなく通学や通勤にも活用されています。

4-1-2. 団子エリアへの居住支援

富山市では「団子」エリアへの移住を推進することにより、主要駅周辺のコンパクトシティ化を目指しています。具体的には主要駅周辺に市営住宅を建設したり、居住を支援するために補助金を用意しているのです。その結果、主要駅周辺の人口は増加しています。

このように、富山市ではLRTと呼ばれる路面電車の導入や居住支援により、コンパクトシティ構想は一定の成功を収めているとされています。

ただ、自動車を活用している20~40代は「団子」エリアへの居住があまり進んでおらず、主要駅前の商店街も当初期待していたほど活性化していないという課題を残しています。

4-2. コンパクトシティの失敗といわれる青森市

上記では、完璧とはいえないものの、一定の成功を収めた富山市の事例を説明しました。続いて、失敗事例といわれる青森市の事例を紹介します。

青森市は地域がら、都市の郊外化により冬季の莫大な除雪や融雪道路の維持管理費用が問題となっていました。

そのため、2001年に日本初のコンパクトシティ実現に向けて地下1階、地上9階建て商業施設ビル「AUGA(アウガ)」を185億円の費用を投じてオープンしたのです。

AUGAには市の図書館や商業施設、公共施設が入居し、開業当初はコンパクトシティの成功事例として取り上げられたものの、賃料不足で開業当初から経営不振が続きました。それが原因の1つとなって2015年には当時の市長が退任し、2017年からは施設の経営再建のため、すべての商業施設を閉店して市役所機能の一部が移転されています。

青森市の事例はハコモノ優先の施策として避難されることが多いのですが、計画段階でAUGAに開店する予定だった西武百貨店が撤退してしまい、当初から計画どおりに進んでいませんでした。

また、2008には郊外の大型商業施設であるイオンタウン青森浜田が開業するなど、行政による施策だけではコンパクトシティ構想の実現は難しいことを明示した事例となっています。

このように、国内でも富山市や青森市が、コンパクトシティの事例として取り上げられることが多くあります。富山市はLRTを活用して成功を収め、青森市も駅前の商業施設ビルをオープンすることにより、開業当初は一時的にコンパクトシティ化に成功しています。

ただ、どちらの自治体も共通して、中心市街地への居住の促進は計画どおりに進んでいないという点で共通しています。

5. コンパクトシティのメリット・デメリットと事例まとめ

こちらでは、コンパクトシティのメリットとデメリット、事例について紹介いたしました。

コンパクトシティとは、高度成長期以降郊外化が進んだ都市の機能を、行政が施策によって中心市街地にまとめることにより、効率的な行政運営を目指すものです。結果として行政の財政が健全なものとなり、住民サービスがより充実したものとなります。

住民にとっての具体的なメリットとして、中心市街地に都市機能がまとめられることによって移動や通勤時間が短縮できたり、医療・福祉が充実するというメリットがあります。また、住民がまとまって生活することにより、新たなコミュニティが形成され、地域の活性化も期待できます。

その半面、住民が決められた地域で生活することにより、居住地域が制限されるとともに騒音や犯罪の増加など、生活環境が悪化する恐れがあります。また、郊外化の過疎化と地価の下落を招くことから、郊外に住宅を持つ人の資産の目減りにつながります。

実際にコンパクトシティに取り組んでいる都市には、成功事例として富山市が、失敗事例として青森市があります。富山市は市内主要駅を路面電車を結び、主要駅周辺への移住を促進することにより、一定の成功を収めました。

一方の青森市では、中心市街地に大型の商業施設を整備したものの、経営不振のためコンパクトシティ化を計画どおりに進めることができませんでした。

両者の事例ともに共通していえるのは、郊外ではすでに大型ショッピングセンターが開業しているので、行政の施策で中心市街地への移住を促すことは相当に難しいということです。

特に郊外の住宅を手に入れて間もない若い世代に移住を勧めるのはかなりの無理があります。

そのため、コンパクトシティ化の成功は、郊外に住む若い世代を、どれだけ中心市街地への移住させることができるかにかかっているといえます。