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Category  土地活用太陽光発電

2018年10月02日 更新

野立て太陽光発電5つのメリットと7つのデメリット&トラブルとは?

近年、家屋の屋根等を活用した太陽光発電が盛んになっている一方で、田舎の安い空き地を利用した野立ての太陽光発電パネルによる発電への注目も強まっています。

この記事では、そんな野立て太陽光発電に興味を持たれている方に向けて、そもそも太陽光発電とはどのようなものなのか、またメリット・デメリットは何なのかをご紹介します。

さらに、実際に野立て太陽光発電を始めるにはどのような設備が必要となるのか、太陽光発電で得られる利益はどれくらいを見込めるのか、電気の売買の仕組みはどのようになっているのかといったことに触れながら、野立て太陽光発電に関する様々な疑問や不安を持っている方の悩みを解消することを目的に書いています。

この記事でわかること

1. 野立て太陽光発電への投資とは?

太陽光発電とは、太陽光を利用して電力に変換する発電方法のことです。近年では家屋の屋根に取り付けるタイプの太陽光発電が普及してきています。特徴は太陽光という自然にある再生可能エネルギーを利用するため、地球に優しい発電方法であることや、設備投資に対して収入の額がほぼ見込めるという投資の安定性が挙げられます。

また、2011年には国による固定価格買取制度が実施され、太陽光発電によってできた電力を電力会社が買取る価格が一定の期間下がらない固定制となり設備費用の回収の目途が立てやすくなりました。

太陽光パネルの設置などの太陽光発電を導入するにあたって必要となる設備投資に関しては約10年で回収が可能であるとされています。この記事では、住宅用ではなく、空き地などに設備を設置して比較的大規模な発電を可能とし、最近注目を集めている野立て太陽光発電について考えます。

2. 野立て太陽光発電のメリット

太陽光発電は、環境に優しいことや電力の買取制度の存在、一度設置してしまえば後の手間があまりかからないなど、様々なメリットが存在します。ここでは、とくに重要となるいくつかのメリットについて詳しくご紹介します。

2-1. 太陽光発電は自然エネルギーを利用

太陽光発電で必要となるエネルギーは太陽光であり、太陽光エネルギーは晴れの日であればいくらでも調達が可能であるため、エネルギーの調達に関してはコストが一切かかりません。

また、太陽光エネルギーは自然界に存在する再生(持続)可能エネルギーであるクリーンなエネルギーです。そして太陽光発電は発電に際して環境に悪い物質などを排出しない、エコな発電方法となっています。

2-2. 野立て太陽光発電は地価の安い田舎ほど有利

今回この記事で取り上げる野立て太陽光発電は、家屋の屋根に太陽光パネルを設置する住宅用のものではなく、空いた土地に直接太陽光発電の設備を設置して発電を行うものですので、導入する際には土地が必要となります。

土地の価格は発電量とは関係ありませんので、そうなると新しく土地を購入しようと考える方にとってはできるだけ安い土地を手に入れることが重要になってきますが、この際おすすめできるのは田舎の土地を利用することです。

広い土地が余っている上に、太陽光を遮るような建物があまりないというメリットがあります。また、地価が都市やその周辺と比べて安いため、投資コストを低く抑えて太陽光発電を行うことができます。

2-3. 太陽光発電はメンテナンスの労力が少ない

先にも述べたように、太陽光発電に必要な設備は寿命が長く、頻繁に故障するものでも無いためにメンテナンスには、ほとんどコストも労力もかからないといわれています。とはいえ10年程度でパワーコンディショナーや売電メーターなど交換しなければならない部品もありますが、他の設備と比較すると少ないです。

交換部品は少ないということは、それだけ労力少なくて済み、メンテナンスコストも安く抑えられるということですので、経済的にも負担は少ないと言えます。

2-4. 太陽光発電には電力の買取制度がある

太陽光発電には国が定めた買取制度があり、発電によって得られた電力を電力会社に売ることで利益を手にすることができます。また、思わぬ設備の故障などが起きる可能性の低さや設備の寿命が予測しやすいことに加え、買取制度によって得られる利益予想を基にして精度の高い収支プランを立てることが可能です。

2-5. 設置場所に合わせて規模が変えられる

太陽光発電を行うにあたって必要となる設備は、様々な規模に対応きる仕組みとなっており、その土地の広さや特徴に合わせた規模のものを導入することができるようになっています。広い土地が用意できれば、より大規模な発電を行うことができます。

しかし、個人での発電は、後述するキュービクルが必要とならない50キロワット以下の設備を設置することが一般的ですので、広大な敷地を準備すれば良いということではありません

3. 野立て太陽光発電のデメリットやよくあるトラブル

太陽光発電には様々なメリットがある一方で、コストやシステムの短所などの導入するにあたって考えておかなければならない点もいくつか存在します。以下ではそのようなデメリットについてご紹介します。

3-1. 太陽光発電は初期の設備費用がかかる

新しく太陽光発電を行う際には、発電を行うための設備を導入しなければなりません。家庭用の太陽光発電にかかる費用は平均すると180万円程度であると言われていますが、50キロワットの発電ができる規模の野立て太陽光発電を導入する場合には太陽電池モジュールや周辺機器、設置工事費などを含めて1500万円前後の費用がかかると見込まれます。

3-2. 太陽光発電は天候に左右される

太陽光発電は、その名の通り発電に際して十分な太陽光の存在が欠かせません。雨の日や曇りの日は日照時間も少なくなりますし、発電に必要な太陽光エネルギーを得ることは難しくなると考えられます。このことから、梅雨時期や秋の長雨の時期には発電量が少なくなってしまうことが分かります。

また、日本では季節ごとに日照時間が変化するため、冬場は夏に比べてやや発電量が少なくなることが予想されます。そして、当然ながら夜間は発電することができないということも念頭に置かなければなりません。

3-3. 太陽光発電は電力の買取需要が必要

太陽光発電を導入し、そこから利益を得るには、発電した電力を電力会社に売らなければなりません。つまり、電力の買い取り手が、電力を必要としていなければならず、電力会社と電力の売買契約を結ぶことが必要です。

以前は電力が不足していたため、発電した電力は全部買い取ってもらうことが出来ましたが、現在は太陽光発電をする人が増えたため電力があまることがあります。主に地方でのこととなりますが、東京電力、中部電力、関西電力を除く、北海道電力、東北電力、九州電力、四国電力、沖縄電力、北陸電力、中国電力において買取り制限を行っています。

尚、東京電力、中部電力、関西電力でも条件は緩いものの一部買取り制限が掛かっています。各電力会社の買取価格に関しては資源エネルギー庁の資料に詳しく説明されています。

資源エネルギー庁:固定価格買取制度の運用見直し等について

3-4. 土地の流動性が下がる

野立て太陽光発電の場合、空き地に太陽光発電の設備を設置することになりますが、太陽光発電は先ほども述べたように比較的長期にわたって発電を行うことができます。そのため、一度太陽光発電の設備を設置すると、少なくとも設備費が回収できるまではその土地は家を建てるなど他の用途に使用することができなくなります。

一度設置をしたら、20年は発電所として使うことになりますので、将来を見越した計画を立てることが必要です。

3-5. 太陽光発電のパネルの反射でトラブルになることがある

太陽光発電の設備の中には、光を集めて電力へと変換する太陽光パネルがありますが、そのパネルは素材の性質上、光を反射してしまうこともあります。太陽光が強いことは発電にはメリットですが、近隣に住宅などがある場合、その反射が住民の迷惑になってしまい、トラブルになることも予測されるため、設置の際には周辺の状況がどのようになっているのか注意する必要があります。

近隣に建物が少ない田舎の場合でも、周りに民家や田畑がある場合には反射によるトラブルが起きてしまうことを考えて対策しておかなければなりません。

3-6. 太陽光発電の電力は蓄電することができない

先ほど述べた太陽光パネルには、発電した電気を長い時間貯めておくことのできるような蓄電の機能は存在しません。つまり、発電したらその場で使用するか売電するかのどちらかしかありません。

野立て太陽光発電の場合はすべてが売電となりますが、この時に問題となるのが、買取り制限です。先ほど買取りの需要についてお話をしましたが、天気が良くて発電量が多いのに、休日で工場やオフィスでの消費が少ない時には、買い取り制限に合う可能性が高くなります。

電力を買ってもらえない時にためておいて、買ってもらえる時に売るという訳にはいきません。収支プランを考える際は、このようなことも含めて検討する必要があります。

3-7. 太陽光発電の基礎のため地盤改良が必要となることがある

太陽光発電の設備は野立ての場合地面に直接設置しなければならないため、設備を支えられるだけのしっかりとした地盤が必要となります。そのため、設備を設置しようとする土地の地盤が軟弱なものである場合、地盤改良の工事を行わなければならないということも考えられます。

これまで放置されていた土地などを使って野立て太陽光発電の設備を設置しようと考える場合には、あらかじめ地盤がしっかりとしているかどうかを確認することが重要となります。

4. 野立て太陽光発電の設置に必要なもの

4-1. 太陽光発電パネル

太陽光発電に必要な設備について紹介します。まずは太陽光発電パネルですが、その素材によって幾つかの種類があります。主に3種類に分けられ、まずはシリコン系、そして化合物家系、最後に有機物系があります。

最も普及しているのはシリコン系の素材を用いて作られたシリコン系のパネルであり、現在一般的に使用されているのはほとんどがシリコン系となっています。太陽光発電パネルは、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置で、近年は技術の発展により低価格化の傾向をたどっています。

4-2. パワーコンディショナー

次にパワーコンディショナーです。これは、太陽光発電で得られた電力を使用できるように変換するものです。そして、電力会社に売った電力の量を図る売電メーター、それにパワーコンディショナーをつなぐブレーカーを収納する集電箱、発電した電気をパワーコンディショナーに送る役割を行う接続箱があります。

そのほかには、50キロワット以上の発電を行う場合には電気の変圧を行うキュービクルといった設備が必要になります。これらの設備、特に太陽光パネルには様々な種類や性能のものが存在しているため、新規で購入する際には質と価格について、複数の会社から出ている設備を比較しながらしっかり検討する必要があります。

5. 野立て太陽光発電の設置費用

新たに太陽光発電を導入するとなると初期費用がかかりますし、導入後も稼働にかかる維持費用が必要となってきます。ここでは、おおまかにそれらの費用についての試算をお示しします。

5-1. 太陽光発電に必要な初期費用

野立て太陽光発電を新しく導入する場合にかかる初期費用は、1キロワットあたり25万円が相場となっているため、25万円×50キロワット=1250万円ほどかかることが予想されます。また、先に述べた設備がこのコストに占める割合を示しておくと、太陽光パネルが40%、パワーコンディショナーが11%、架台が12%、工事費用が23%、その他が14%となっています。

その他に土地の購入代金や造成工事の費用などが必要となる場合もあります。1キロワット発電する設備にかかる土地の面積は10平方メートルから15平方メートルとなっています。このため50キロワットの発電をしようとすると、だいたい750平方メートルほどの広さの土地が必要となります。

5-2. 太陽光発電のランニングコスト

次に発電を開始してから、その稼働や維持にかかるコストについて考えます。現在、野立て太陽光発電設備の維持にかかる費用は1年間につき1キロワット当たり6000円程度という試算があります。50キロワットの設備の場合、年間では6000円×50キロワット=約30万円になると想定されています。

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6. 太陽光発電の買取制度

先にも述べたように、太陽光発電は国によって定められた電力の買取制度が存在します。その制度の種類や仕組み、買取価格について簡単にご紹介します。

6-1. 太陽光発電の電力の2種類の買取制度

国が定める発電によって得た電力の買取制度は大きく分けて2つあります。1つは電力の余剰買取制度であり、これは設備の設置容量が10キロワット以下の時に適用されるものです。主に発電した電力を家庭などで使用した残りの電力を電力会社に売ることができるという制度です。

もう1つが、全量買取制度です。こちらは、設置容量が10キロワット以上の際に余剰買取制度とどちらかを選択することができるようになっています。これは発電した電力を全て売電することができるという制度です。

野立て太陽光発電は、投資として行うものですので、後者の全量買取制度を利用することになります。そのため、10キロワット以上の発電をすることが前提となります。

6-2. 太陽光発電の電力の買取価格の推移

電力の買取価格は、固定制となっており、太陽光発電を導入した際に定められている売電価格がそのまま継続して適用されます。導入後に売電価格が下がったとしても、導入した時のままの価格で電力を買い取ってもらうことが可能であるということです。

電力の買取価格は年々減少してきており、2017年現在は1kWhあたりの売電価格は28円から30円となっています。買取価格が下がって来ている背景には、太陽光発電の設備費用が下がっていることがあります。設備費用の回収までの期間は以前と同じくらいと言われていますが、以前にはなかった買取り制限がありますので、シュミレーションをする時は注意が必要です。

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7. 太陽光発電の収入

太陽光発電を新たに導入しようと考えられている方にとって重要となってくるのは、売電による収入です。ここでは、一般的な野立て太陽光発電の収入試算に基づいて、想定される収入についてご紹介します。

7-1. 太陽光発電の想定される収入

個人で野立て太陽光発電を導入する場合、キュービクル(変圧装置)が必要とならない50キロワット以下の太陽光発電システムを採用することが多いですが、ここでは50キロワットの設備による年間の発電量を60,000キロワットとし、1キロワットあたりの売電価格を21円として見積もりをすると、21円×60,000キロワット=126万円程度の収入が見込めます。

7-2. 太陽光発電の買取価格が以前よりも下がった理由

先にも述べたように、太陽光発電によって得られた電力の買取価格は年々低下する傾向にあります。この理由は、太陽光発電に関連した設備に関する技術の向上によって、太陽光パネル自体の価格が下がっているということにあります。

国が買取価格を考える際には、設備にかかる費用が考慮されるており、太陽光発電がまだまだ未発達で、国が積極的に導入を進めていた頃は高額の買取価格が設定されていました。普及が進んできた現在は太陽光パネルの価格が下がっているのでそれに伴って買取価格も下がってきています。

また、補助金などの補助を多く用意して推進を進めてきた結果、予想を上回るスピードで普及したということも理由として考えられます。電力の買取り制限が起きているのが、その証拠といえます。

8. 野立て太陽光発電に投資した場合の利回り

最後に、これから野立て太陽光発電を導入することに興味を持たれた方が、投資に対してどれほどの利益を得ることができるのかという利回りについて考えたいと思います。これまで述べてきたように、近年太陽光発電に対する設備コストは低下している一方で、それに伴って電力の買取価格も低下しています。

利回りという視点で比較してみると、1kWhあたり40円で買い取ってもらえた2012年と1kWhあたり21円となった2017年でも大きく不利にはなっていません。利回りには、表面利回りと実質利回りの2つの種類があります。

利回りは投資の効果を測るためには必要となるものですが、実際にいくら手元に残るのかの方が知りたい方が多いのではないかと思います。そこで、ここでは実際の利益額がどのくらいになるのかについて考えてみたいと思います。

初期の設備投資費用を25万円×50キロワット=1250万円として、それに年間の維持管理費と20年間に予想される部品代などを合計すると、およそ1900万円程度と予想されます。

一方収入の方ですが、年間の売電収入が126万円とすると20年間の総額は2520万円となり約600万円くらいのお金が手元に残る計算となります。今回は発電量をかなり少なく見ているので、実際にはもっと利益が残ることが多いと思います。

太陽光発電を設置しようと考えている場所によって日射量は変わりますので、そこから調べてみると良いと思います。年間の日射量はNEDOのデータベースで簡単に調べることができます。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 日射量データベース閲覧システム:NEDO

また、電力の自由化によって20年後の売電についてもある程度の収入は見込めると考えられています。ただ、耐用年数が約20年と言われていることや発電をやめた後の設備の撤去費用なども考慮しておくようにしてください。

9. 野立て太陽光発電に投資する前に知っておきたい8つのことまとめ

ここまで、野立て太陽光発電について説明してきたことをもう一度確認しておきます。野立て太陽光発電は、空き地に直接、設備を設置するという仕組みになっています。そして、空き地が必要となるという点では地価の安い田舎の土地を利用することが得策であるということがわかります。

実際に利回りを検討する場合は、設備の設置費用を自己資金で行うのか借入れによって行うのかによっても違ってきます。太陽光発電用の融資を用意している金融機関もあるようですのでそういったものを利用することを検討されると良いかもしれません。

その場合、「太陽光発電に必要なランニングコスト・維持費とは」こちらを参考にしていただき、ある程度の資金目安を立てておくことをおすすめします。