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Category  農地

2019年02月13日 更新

使わない農地・畑を有効活用する4つの方法と農地転用の注意点

農地には、農地ならではの規則が存在するため自由に活用することができません。そのため、農業をやめたい、続けられないなど何らかの理由によって使わなくなってしまった農地が問題となっています。また、親族から農地を相続した場合、農地としてではない方法で活用したいのに手をつけることができていないという方もおられます。

使わない農地の活用方法や農地の種別、農業委員会等に関する法律も交えながら説明していきますので、農地の活用方法のヒントにして頂けたら幸いです。

1. 農地の有効活用に知っておくべき3つのこと

1-1. 農地は農業にしか使えない

農地は原則的に農業にしか使うことができません。そして農地は誰もが手に入れることのできる土地ではなく、農家もしくは、これから農業を始める人に限定されます。農地を手に入れたい場合は、農業委員会の審査で承認を得る必要がありますが、農業を営んでいる親族から農地を相続することになった場合、農業委員会の許可の必要なく入手することができます。

思わぬ形で農地を所有してしまった場合や、農業を辞めたい、続けられなくなってしまったという場合は、農地転用という形で農業以外の目的で農地を活用する方法もあります。

1-2. 農地は農業委員会の許可が無ければ売れない

農地は自分の意思のみで簡単に手放すことができません。農地を売りたいという場合は、農業委員会の許可が必ず必要です。もしも農業委員会の許可を受けずに農地の売却を行った場合、法律違反となり売却で交わされた契約は強制的に無効となります。農地の売却はもちろん、賃貸の契約も同様の扱いとなります。

1-3 農地区分による違いで売れるかどうかが決まる

農業に携わったことのない人にとっては、農地に種類があり区分されていることもご存知ないと思います。そこで、農地の違いや区分についてわかりやすくお伝えします。

・農用地区域内農地

農業振興地域の整備に関する法律(農振法)に基いて指定されている農地のことを言います。使用用途は、農地・採草放牧地、農業用施設用地など農振整備計画で定められています。農用地区域内農地として保護される条件は以下の通りです。

  • 農業の近代化に必要とされる条件を兼ね備えていること。
  • 20ha以上の集団的農地であること(10ha以上という例外もあり)。

今後長期にわたり農業の利用で使用するべき土地として保護していくべき対象として都道府県知事が指定していることが条件となります。保護すべき農地という観点から原則として農地の転用はできません。

・甲種農地

甲種農地(こうしゅのうち)は、市街化調整区域内に20ha以上の広さを持つ農業公共投資後8年以内の優良農地のことを言います。なおかつ高性能な農業機械を使用することのできる環境であることを条件としています。土地基盤整備事業が計画されている農用地として守られることと定めています。

甲種農地は、生産性が高いと見込まれ、ある特定の農産物に適している農地として守られるため宅地転用は原則禁止とされています。

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・乙種農地

乙種農地(おつしゅのうち)は、市街化調整区域内にある農地で第1種農地、第2種農地、第3種農地の3種類に区分されています。

・第1種農地

第1種農地は、土地改良事業等の対象となった10ha以上ある一団の農地で、なおかつ多くの補助金を利用して整備された土地のこと言います。生産力が高く営農条件として良い条件を兼ね備えた農地のことを言います。生産性を高めるために整備された農地のため、基本的には農地転用は認められませんが、公共性が高いと認められた事業で活用する場合、許可される可能性は高いです。

・第2種農地

第2種農地は、市街地として将来的に発展する可能性の高い地域にある農地のことを言います。農地から約500m以内に鉄道の駅があること、生産性が低く農地としての規模が小さいことなどが判断基準となります。農地転用は、周辺にある土地が転用することができないと判断された場合に許可されることが多いです。

・第3種農地

第3種農地は、300m以内に鉄道の駅がある地域にある農地のことを言います。鉄道の駅から近いことから市街地として開発する可能性の高い区域として、農地転用は基本的にはすぐに許可される傾向の強い農地です。

2. 農地の有効活用方法

農地は、自分の都合で簡単に宅地にするなど自由に活用することができない制限のある土地です。農地として活用することが可能なら、農地転用という選択肢ではなく農地として活用する方法を見出してみるのもいいかもしれません。そこで使わない農地を農地として活用する方法をいくつか紹介していきたいと思います。

2-1. 他の農家に売る

所有している使わない農地を他の農家に売る場合、農業委員会もしくはその土地のある都道府県の知事から「売買の許可」を得ることが法律で決められています。

売買の許可を得るためには、その農地を購入する人について審査が行われます。審査は、農業を保護していくことを目的としているためそれほど厳しいものではなく、シンプルに農業を行うことができるかどうかが問われます。

農業に従事している人もしくは、これから農業を行う人に限定されるため、宅地と同様の土地売買の感覚で農地を売ることはできあないので注意が必要です。

2-2. 他の農家に貸す

使わない農地の活用方法として他の農家に貸すという方法がありますが、貸すという場合も売る場合と同じように、農業委員会もしくは、都道府県の知事からの許可が必要となります。ただし、どのような形で貸すのかによっては、許可が不要となる場合があります。

一般的に今農業を営んでいるという人が農地を借りたいという場合は、それほど難しいものではありません。農業員会に許可の申請を受け、その後賃貸借契約もしくは使用賃貸契約を借りたいという農家と直接結ぶことで契約は成立します。

2-3. 農地中間管理機構を利用する

農地中間管理機構は農地の中間的受け皿として2014年にスタートしました。農地バングとか農地集積バンクとも呼ばれています。使われることのなくなった農地を借り受けた後に整備・再生を行い、農家へ貸し出す公的機関で、各都道府県にひとつずつ設置されています。

農地中間管理機構を利用して農地を貸した場合、その賃借料は、機構を通じて貸し手側へと支払われるため賃借料の回収などの煩わしさがありません。使わない農地の使い道に困っているという場合は、農地中間管理機構の利用は簡単なので選択肢のひとつとして考えてみてはどうでしょう。

農地中間管理機構では、まず個人所有の農地および耕作放棄地を借り受けします。借り受けた農地は、農業法人、企業、大規模農家などへ貸し出しを行います。貸し出しに付随して賃料の受け取りや所有者への支払いの仲介業などの業務も請け負います。借り手が見つかるまでの期間、農地の維持管理、基盤整備も必要に応じて行われます。

農地の借り主を募る方法は、公募を義務とし、インターネット上では「全国農地ナビ」と言われる農地の所在などをデジタル地図で誰もが把握できるシステムを導入しています。

2-4. 市民農園にする

市民農園として使わない農地を貸し出すという方法も農地の活用方法としてあります。

使わない農地を市民へ貸す方法と、農業作業体験として利用してもらうかのふたつの方法があります。農業作業体験として利用してもらう場合には、付帯施設があるかどうかによって法律的に3つの方法に分けられます。

・特定農地貸付法による方法

市民に農地を貸し、その賃料を受け取る方法です。農地は10ha未満と小さく区画し、営利を目的とせず家庭菜園という意味合いで5年以内の貸付期間を条件とします。開設できる農地は、周辺農家の農作物に支障がないことを前提とし、農業委員会の承認が必要となります。特例として利用者に対する使用収益権を特例で可能としています。

・農園利用方式による方法

入園料を受け取り、利用する市民に農作業の体験をしてもらう市民農園です。この方式で市民農園を行う場合は、農地の所有者が農業経営を行わなくてはなりません。農地法の規制を受けることはありませんが、営利を目的としないこと、継続して農作業を行うことなどが絶対条件となっています。

この方式の市民農園の場合、収穫のみを行うというのではなく、段階的な農作業を体験することができるような形態にする必要があります。開設できる場所の制限は特別ないのでどの農地でも行うことができます。また、手続きも不要なので農作業を行うことを前提とするならば、簡単に行うことができます。

・市民農園整備促進法による方法

農園として農地を貸し出すこともでき、農業体験型として農業経営を行いながら一般市民の方への開放を行うこともできます。ただし農地と農業を行うための場所の提供をする上で、誰もが気軽に農業に携わることができるような環境を整えることを必須としています。

例えば、トイレや駐車場、休憩所の配備、農機具倉庫の設置などの付帯設備を整えることです。このような施設を設置した市民農園を行う場合は、賃料や入園料を高く設定することも可能です。

開設できる場所は、市街化区域の場合は特に指定はありませんが、市街化調整区域の場合は、「市民農園区域」と指定されている区域に限定されます。この方法で市民農園を運営する場合は、市町村から認定を受ける手続きを行わなくてはいけません。

手続きには、市民農園として行う利用条件や資金計画、どんな付帯施設を設置するかなどの整備運営計画書が必要となります。市町村から開設の認定を受けることができた場合は、農業委員会の承認を得たものとして取り扱われます。

また、付帯施設を設置する際に行わなければならない農地転用の手続きが不要となります。

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3. 農地以外の有効な活用法

農地としてではなく農地以外の方法で活用していきたいという場合は、農地転用という手続きを行い活用するという方法もあります。そこで、農地転用について説明していきます。

3-1. 農地転用には目的が必要

農地を農地としてではなく活用させる方法に「農地転用」と言われるものがあります。農地転用は農業委員会もしくは都道府県知事によって審査が行われます。農地転用を行うためには、現状の農地を農地ではなくする明確な理由と具体的な目的が必要となります。

そしてその設定した目的を必ず達成しなくてはならないというルールも存在します。そのため農地転用を行う場合は、ただ漠然と農地でさえなくなれば良いという気持ちでは農地転用の申請を行うことができません。使わない農地をどのように活用するのかをしっかり具体化した上で、農地転用の申請を行うことが必須です。

3-2. 実現性のある事業計画を用意する

農地転用には目的が必要不可欠ですが、ただ目的を記載すれば農地転用を認めてもらうことができるのかというと残念ながらそうではないのです。農地転用には、実現性のある事業計画を用意する必要があります。

事業計画には、農地を転用した後に行う事業について、そしてどのような計画の元でその事業が行われていくのかを明確にしなくてはいけません。さらに、事業を行うための資金の調達やどのような資金繰りで事業を行っていくかなどの具体的な実現性が求められます。

ただし、この実現性のある事業計画によって事業が成功する可能性や実際の事業の成果は、農地転用では求められることはありません。農地を転用する目的とその目的に対する実現性のある計画を持って農地転用が認められるのです。

3-3. 一度農地転用すれば制限はなくなる

農地転用の手続きには、労力と時間が必要となります。しかし、一度農地転用の許可を得てしまえば、制限の多い農地は農地ではなくなります。農地ではなくなった土地は、利用の制限がなくなり自由な土地として生まれ変わりますので、自由に土地の売買や賃貸を行うことが可能となります。

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4. 使わない農地を活用する方法まとめ

農地は、農業での利用しか認められていない土地です。そのため農業に携わる人しか使うことのできない土地となり、そのままの状態では自由に活用することができません。

しかし、自分が農業に携わらなくても農地として活用する方法や、農地転用という手続きをとることで自由な土地活用を行うことも可能です。

使わない農地の有効活用を検討される場合に参考にしてみてください。