土地活用におけるブラウンフィールドの問題点

ブラウンフィールド(英語では、Brown Field)という言葉は、日常生活の中では聞き慣れない言葉だと思います。この言葉を、直訳したら茶色い大地となり、茶色く直物も育たない土地という光景が想像できます。

アメリカではこのブラウンフィールドという土地を含む土壌汚染問題に関する取り組みが、20年以上前から行われています。このアメリカの環境問題の取り組みに対して、日本がこの問題の取り組みを開始したのはかなり遅くなってからでした。

また、どうしてこんな状況の土地ができてしまうのかという疑問も同時に湧いてきます。そして、土地活用をする上で、このブラウンフィールドという言葉もキーワードになります。これらについていろいろと調べてみると、ブラウンフィールドの問題点がいろいろと浮かび上がってきます。

そこで、今回は土地活用にかかわるブラウンフィールドとはどういうことか、また、これが生まれる経緯や影響から対策まで詳しく考えていきます。

 

 

1. ブラウンフィールドとは

ブラウンフィールドとは、産業活動等が原因で土地が汚染されている、または、汚染の可能性により遊休化した土地のことを指します。

このブラウンフィールドという言葉は、1970年代にアメリカ合衆国で作られた造語です。

日本におけるブラウンフィールドの定義としては、2007年に環境省から公表された報告書に「土壌汚染の存在、あるいはその懸念から、本来、その土地が有する潜在的な価値よりも著しく低い用途あるいは未利用となった土地」と記載されています。

もう少し分かりやすく言い換えると、汚染された土壌の存在やその可能性により遊休化した土地で、売却や再利用がされず放置されている土地のことを指します。

例えば、駅の裏にあった工場が廃業し閉鎖された後、次に再利用されずそのまま放置されている土地がるとしたら、それはブラウンフィールドになります。再利用されずに放置されているということは、何らかの理由で汚染されている土地という場合が多いです。

このブラウンフィールドに対する定義は、各国によって違います。

ブラウンフィールドの日本における対策の歴史は浅く、土壌汚染問題に携わる人たち以外にはなかなか認知されていないです。しかし、日本以外の諸外国では、日本よりかなり早い時期からこの問題に取り組み始めています。

また、環境省の「土壌汚染をめぐるブランフィールド対策手法検討調査検討会」の報告書から、国内には、土壌汚染対策費が多額となるため土地売却が困難と考えられる土地(=ブラウンフィールド)は、2.8万haで金額にすると10.8兆円分になるとあります。

そして、その対策費用は4.2兆円を上回ると試算されています。

平成28年度の国の一般会計予算が約97兆円ですので、約10分の1の額のブラウンフィールドが国内には存在していることが分かります。

詳しくは、環境省のホームページに資料が掲載されています。

http://www.env.go.jp/houdou/gazou/8300/9506/2641.pdf

 

2. ブラウンフィールドが生まれる経緯

こんな再利用されずに遊休している土地であるブラウンフィールドが、なぜ生まれてしまうのかを調べてみます。大きく分けて次の3つの理由があげられます。

1つ目の理由は、土地の価値より土壌汚染対策費用の方が土壌汚染していない土地より高額になる場合があるためです。この原因が、最も多いと考えられています。

2つ目の理由は、土壌汚染地の所有者が汚染対策費用を捻出できない場合があるためです。

有害物質の指定内容が以前と変わり、取り扱いに対して対策をしても地中にその残骸が残ってしまうことがあります。特にこの所有者が中小企業である場合は、対策費用が事業規模に対して莫大なものになると結果的に放置せざるを得ないことになります。

このパターンは、大都市よりも土地の価値が低い地方都市の方がより深刻化すると予想されています。

3つ目の理由は、汚染が原因で買い手がつかないため遊休化しており、その上、土壌汚染対策法で土壌浄化を義務付けられているわけではないので、売り手は買い手が見つかるまでその土地を放置しているためです。

上の3つの理由から分かることは、汚染された土地の資産価値に対して土壌汚染除去の対策費用が莫大にかかってしまう場合、それが特に地価の低い地方都市部の場合にはブラウンフィールドがより発生しやすくなると考えられます。

なぜ、この対策費用が莫大になりやすいのかと言うと、土壌汚染地の汚染部分を除去する方法に「封じ込め」(=汚染の管理)より「掘削除去」(=汚染除去)が選択される傾向にあるからです。

「封じ込め」対策は、一般に「掘削除去」対策と比べより安価で、対策を適切に実施することで、土壌汚染による人の健康への影響を防ぐことができます。また、土地利用への影響も極めて少なくすることが可能です。

しかし、この「封じ込め」対策が土地売買等に採用されることは少ないのです。

なぜなら、この対策を実施した土地に土地購入者が次の5つの不安を感じるためと考えられます。

①評価額(売却額)が下がる

・通常、土地購入者は、その土地に汚染がないことを条件とするため、「封じ込め」対策を容認する買い手を確保するのが難しくなることがあります。
・売却するとしても、汚染されていない土地の価格の半額以下になる場合もあります。この半額以下と言うのは、完全浄化する費用を控除するものとして考えます。
・不動産物件としては、訳あり物件と見なされる場合があります。

②土地利用上の制約が生じる

・封じ込め部分を保全する必要があるため、跡地利用の制約が生じることがあります。
・土地利用上から、封じ込め部分の掘削、場外処分が必要となった場合、汚染土壌処理等の追加費用が発生する場合があります。

③汚染土壌があるという不安感がある

・分譲マンションや宅地住宅用地の場合、汚染土壌の残存を購入検討者から用地取得、分譲を嫌悪される可能性が高いと予想されます。よって、汚染土壌が残存する土地を購入することを敬遠される場合があります。
・将来的不安要素(汚染土壌の残存により、汚染部分がその土地や隣接地に流れ出て、対策法の有害物質の基準も強化された場合、基準不適合となるなど)を残したまま一般消費者へ引き渡すことになる開発業者が封じ込め等の管理対策を採用しない一因であると考えられます。

④周辺住民が完全浄化を要求する場合がある

・汚染土壌が管理されていたとしても、隣接地に土壌汚染が残存することに不安を抱くため、完全除去が求められることがあります。

⑤指定区域の指定が解除されない

・封じ込め等の適切な土壌汚染の管理対策を行った土地でも、土壌汚染対策法に基づき指定区域の指定は解除されません。
指定区域に指定された土地は、土地の利用形態にもよるが一般的には土地購入者に嫌悪感を与え、敬遠される傾向が強くなる場合があります。

⑥維持管理費が必要になる

・土壌汚染の適切な管理のために、モニタリングや補修などの維持費が永続的に必要になります。

『平成19年3月 土壌汚染をめぐるブラウンフィールド問題の実態等について 中間まとめ:土壌汚染をめぐるブラウンフィールド対策手法検討調査検討会』を参照
https://www.env.go.jp/houdou/gazou/8300/9506/2641.pdf

これらの不安要素があるために、「封じ込め」対策を行うことが少なくなるのです。やはり、売却したいと思う土地の価格に管理費用が永続的に必要になると、金額によってはマイナスになる場合もあるので、「封じ込め」対策が採用されないのもうなずけます。

 

3. ブラウンフィールドの影響

日本では、まだまだ諸外国と比べ環境問題や社会問題として扱う歴史が浅く、ブラウンフィールドが発生することによる影響に対する認識が薄い状況です。しかし、このブラウンフィールドは、環境だけでなくさまざまな面で影響を与えていきます。

現在の日本は、人口統計からも人口は減少し続けており、それに伴い、少子高齢化も進んでいます。

また、産業構造の変化などにより土地の受給率が緩和していることから、未利用地が増加する傾向にあります。そんな中で、土壌汚染が未利用地をさらに拡大させる原因となっています。

このブラウンフィールドの影響に、

・環境への影響
・地域コミュニティー等への影響
・街づくりへの影響

の3つの問題があげられます。

そこで、上記の3つの影響について、少し詳しく考えてみます。

 

3-1. 環境への影響

管理が不十分な土地では、人が立ち入りすることで土壌汚染された土壌からの直接摂取リスクや、その汚染が起因する地下水の摂取により、健康被害が懸念される可能性が生じます。

また、土壌汚染調査が実施されていない場合は、その土地が汚染されているかも分からない状態になります。

これらによって、土壌汚染されているまたは、汚染しているかもしれない土地から知らず知らずのうちに、その土地に立ち入る人々や周辺地域の住民たちに健康被害を広げる場合があります。

 

3-2. 地域コミュニティーへの影響

土壌汚染調査の結果、その土地に有害物質が基準値より高い物質が含まれていると判明した場合、その不動産の価値が下がります。

そのことにより周辺地域への影響が出て、未利用地が生じることで地域の活力の低下、ひいてはその地域の魅力も減退、喪失する場合もあります。

 

3-3. 街づくりへの影響

再開発に支障が生じ、都市計画で立案した土地利用が難しくなり、都市周辺部の農地や緑地へ開発力が向かい、都市中心部に弊害などを起こす場合もあります。ブラウンフィールドが発生することと同時に、交通渋滞の発生や緑地の喪失へもつながります。

街づくりの観点からは、市街地のさらなる拡大による社会的影響は深刻化します。

しかし、この時、都市部の土壌汚染地に対策を実施するための費用が多額であっても、計画通りに開発が行われた場合、経済的利益が費用を上回れば問題はありません。

 

4. ブラウンフィールドに対する対策

我が国では、まだブラウンフィールドが引き起こす問題が社会的に影響を及ぼすかもしれないということが大きく問題視されていません。将来的には、土壌汚染対策法の施行も始まっている中、土壌汚染に対する認識は更に高まるものと予想されます。

しかし、既に日本でもこのブラウンフィールド問題が一部で発生しているのです。この問題が顕著化していない状況下で、対策法と問題の実態とのズレも生じてきています。

そこで、今後、このような問題が深刻化しないように、予防に重点をおくことが大切になってきます。あらゆる場合において、汚染の除去(掘削除去または、原位置浄化)を求める風潮はブラウンフィールドの問題のみならず、環境対策の経済の合理性からも望ましくありません。

そして、環境汚染の実態や影響を正しく理解し、土壌汚染と上手に向き合いながら、限りある日本の土地資源を管理し、有効に活用する対策が必要になってきます。

また、今後、この問題を環境問題としてだけでなく、経済的な問題としても関係する分野でも幅広く対応していく必要があります。

 

5. ブラウンフィールドの問題点まとめ

最後に、環境汚染問題の対策として土壌汚染対策法が施行されているにも関わらず、現実的には対策法と実態にズレが生じていることは大きな問題です。現在、社会問題として大きく取り上げられていなくても、この問題のズレを修正しないと将来的には大きな問題となる可能性があります。

また、これら汚染地の土地は何となく遊休地になっているのではなく、汚染地への対策費用が莫大にかかるため、手がつけられなくて放置されている場合もあるということです。経済的な観点からも、対策費用が多額だから放置するのではなく、対策方法の見直しも検討する必要があります。

そして、ブラウンフィールドはこれからの人口減少に伴い経済成長が伸び悩む将来になれば、少しずつ増えていく恐れもあります。特に、土地の価値が都市部よりも安価な地方都市で大きな問題となる可能性が高くなっています。

また、日本でブラウンフィールドを含む環境問題への取り組みがまだまだ諸外国に比べ進んでいないことも、問題点の1つです。

日本の国土は限られています。この限られた土地をブラウンフィールド化にさせるのではなく、このブラウンフィールドへの対策にかなり前から取り組んでいるアメリカ合衆国やその他の国々のデーターも参考にしながら、予防に重点をおいて対策していくことが大事になってきます。

この問題は、環境問題の一部としてだけではなく、それと切って離せない経済的な問題などと並行して、対策していくことが必要です。