土地活用のノウハウ①不動産会社の収支計画書のチェックポイント

土地活用において、不動産会社は私たち個人とは比べ物にならないほど多くの実績やノウハウを持っています。しかし、だからといって全面的に不動産会社を信頼するのは危険です。

なぜなら、不動産会社は土地活用のすべてを完璧に把握しているわけではないからです。そのため、ときには土地活用の将来の見込みを誤る可能性もあります。

長期的で安定した土地活用を行うためには、始めに不動産会社が計画する土地活用が実際に収益を得られるかどうかをしっかり確かめなければなりません。

そこでこちらでは、不動産会社が計画した土地活用の内容が正確かどうかを確認するノウハウを詳しく説明致します。

土地活用は一旦始めると、途中で中止することはなかなかできません。そのため、ぜひこのページの内容を知っていただき、より確実で安全な土地活用を始めましょう。

1. 不動産会社が見落としやすい3つのポイント

不動産会社は、土地活用を始める前に収支計画書を作成してくれます。

収支計画書とは、土地活用で具体的にどれだけの収支が得られるのかを1年単位で見込んだ資料のことです。収支計画書では収入と支出のそれぞれ内訳とその金額が計算されています。

この収支計画書が黒字となる土地活用を行うわけですが、豊富な経験とノウハウを持っている不動産会社であっても、収支計画書の内容が現実的ではないことがあります。特に不動産会社が見落とすポイントとして、次の3つがあります。

  • 家賃や使用料などの収入
  • 土地活用で発生する税金
  • 初期投資のためのローンの返済期間や利子

これら3つのポイントは、土地活用が収益を生むかどうかを判断するために重要です。以下でこれら3つのポイントについて、くわしく説明します。

1-1. ポイント1:収入が現実的に見込まれていない可能性がある

不動産会社が見落としやすい1つ目のポイントは、収入です。土地活用を行うことにより得られる毎月の家賃や使用料のような収入が、収支計画書と実際とでかけ離れていることがあります。

土地活用による収入は、すでに土地活用を行っているほかの土地の実績に基づいて、建物や設備の老朽化を予測して見込みます。ここで問題となるのが、多くの不動産会社は自社が管理運営を行っている土地の実績だけを参考にすることです。

また、その地域での道路新設や拡張のような公共事業が考慮されていないこともあります。つまり、不動産会社によっては機械的に収入が見込まれている恐れがあります。

土地活用は30~50年のような長期間行い続けるものです。ですから、長い将来にわたって地域で需要がある土地活用方法であるかを考慮する必要があります。

1-2. ポイント2:税金の試算が間違っている可能性がある

不動産会社が見落としやすい2つ目のポイントは、税金の試算です。

土地活用では、特にマンションやアパートのような建物を建設すると、不動産を取得するための税金をはじめ多くの税金が発生します。また、土地活用で得た収益に対して、継続して所得税や住民税のような税金を負担しなければなりません。

このような税金の試算が、間違っていたり漏れがあったりする場合があります。土地活用は、ほとんどの場合収益を得るために行います。

そのため、土地活用そのものでは黒字になったものの、税金を納付すると赤字になってしまうようでは、有意義な土地活用とは呼べません。

不動産会社が税金の試算を誤る理由は、税金の制度は非常に複雑である上に、土地所有者1人1人によって金額が変わるからです。

たとえば、土地活用の収益に応じて毎年発生する所得税と住民税は、会社員として給料を得ている方や事業を営んでいる方、すでに引退されて無収入の方と、現在どのような状況の方が土地活用によって収益を得るかによっても納付すべき税金の金額が変わります。

また、土地所有者によっては収益を得ることにより、国民健康保険や介護保険の負担が増えることも多くあります。不動産会社は土地活用については詳しいものの、土地所有者の方の詳しい現状については深くは把握できません。

このように、不動産会社は土地所有者の実情を深く把握していないため、税金の試算が現状にそぐわないことがよくあります。

土地活用における税制入門マニュアル

2017.12.02

1-3. ポイント3:ローンの返済期間や利子が計画どおりにならない可能性がある

不動産会社が見落としやすい3つ目のポイントは、ローンの返済期間や利子です。多くの土地活用では、金融機関から借り入れを行って建物や設備を整備し、その後毎月得られる家賃や使用料で得た収入で借り入れ元本返済と利子の支払いを行います。

不動産会社が作成する収支計画書ではローンの返済計画も考慮されていますが、この計画が現実と異なる場合があります。理由は簡単で、土地活用に対してローンの金額や返済期間、利子を決めるのは金融機関だからです。

不動産会社もこれまでの実績や経験から、土地活用でどれだけの借り入れが受けられるのはある程度把握しています。しかし、金融機関に決定権がある以上、不動産会社の計画は計画でしかありません。

土地活用でマンションやアパート経営などを行う場合、数千万円から数億円の借り入れとなります。このような多額な借り入れだと、ローンの返済期間や利子が少し変わるだけでも収益に大きな影響を与えます。

以上のとおり、土地活用の不動産会社による計画では、収入と税金、ローンの返済期間や利子の3つは、見落とされやすいポイントとなっています。

2. 不動産会社の収支計画を確かめる4つのノウハウ

ここまで、不動産会社が見落としやすい3つのポイントを説明しました。これらの不動産会社が見落としやすいポイントに気づき、より現実的に土地活用による収益を見込むためには、土地所有者自身が収支計画書の内容が正しいかどうかを確認する必要があります。

具体的には、次の4つを行うことが、土地活用の重要なノウハウです。

    <style=”list-style-type: none;”>

    • すでに土地活用している物件の収入を調べる
    • 税金は税務署や都道府県民税事務所、市町村役場に試算してもらう
    • 金融機関に直接融資の相談をする
    • ほかの不動産会社にも提案を求める

ここからは、これら4つの土地活用のノウハウについて詳しく説明致します。

2-1. 土地活用のノウハウ1:すでに土地活用している物件の収入を調べる

土地活用の1つ目のノウハウは、すでに土地活用を行っている物件の、実際の収入を調べることです。上記でも説明したとおり、不動産会社が作成した収支計画書は、その会社が管理運営している物件のみに基づいて作成しています。

また、ごくわずかですが、中には収入を偽って所有者に土地活用をさせることにより、建設費用や管理費を得たいと考えている不動産会社もあります。

不動産会社は土地活用による収益を補償してくれるわけではないからです。極端に言うと、不動産会社は土地活用の黒字・赤字に関わりなく利益を得ることができるからです。

そこで、不動産会社が見込んだ土地活用による現在の収入が正しいかどうか、同じ地域ですでに土地活用を行っているマンションやアパート、駐車場、倉庫など、これから始めようとしている事業と同じ物件の毎月の収入を、自身で確かめることが大切です。

だからと言って、土地活用を行っている所有者に「毎月いくらの収入がありますか?」と聞くのは抵抗がありますし、もし聞いたとしても教えてくれる可能性は低いでしょう。そこで、その物件を借りたいふりをして問い合わる方法をお勧めします。

電話や直接訪問などで問い合わせをすれば、その物件の家賃や使用料を教えてもらうことができます。また、マンションやアパートであれば、間取りを知ることができます。そして、こちらは借りたいふりをしているので、どれだけの空きがあるのかも教えてもらうことができます。

その物件の1部屋の家賃や1区画の使用料と空き部屋、空き区画の数が分かれば、毎月いくらの収入があるのかが分かります。複数の物件に対してこのような問い合わせを行えば、もし自分が土地活用を行った場合、毎月どれだけの収入が得られるのか、おおよその検討をつけることができます。

また、実際に物件に問い合わせをしたり見たりすることにより、不動産会社が言っていた話と現状が合致しているかどうかも判断することができます。

このように、土地活用を考えている同じ地域・同じ業種の複数の物件に問い合わせを行ってどれだけの収入を得ているのか判断し、不動産会社が見込んだ収入と大きな差がないかを調べます。

2-2. 土地活用のノウハウ2:税務署などの機関に税金を試算してもらう

土地活用の2つ目のノウハウは、税務署なとの機関に税金を試算してもらうことです。先ほども説明したとおり、不動産会社は税金についても豊富な経験やノウハウを持っていますが、税金の専門家ではありません。

また、税金は建物を建設したり実際に収益を得た後になってから発生するため、土地活用を始める前に正確に把握しておく必要があります。

税金の専門家というと税理士を思い浮かべるかもしれません。しかし、固定資産税などは、それぞれの市区町村が独自に課税を行うため、税理士であっても具体的な税額を見積もることはできません。

ですから、実際に土地活用を始めてから税金が予想よりも高かったという失敗を避けるためにも、実際に課税を行う機関に税金を試算してもらうようにしましょう。

具体的には、不動産会社が作成した収支計画書と建設する建物の図面などを持ち、税務署と都道府県税事務所、市区町村役場で土地活用に関連してどのような税金がいくら発生するのか、試算してもらいましょう。

特に注意が必要なのは、市区町村の国民健康保険税です。土地活用を行うと、固定資産税と住民税という2つの市区町村税が発生します。しかし、住民税に連動して国民健康保険税の税額も上がるしくみになっています。

市区町村によっては国民健康保険税だけは担当部署が分かれているため、試算を依頼しても漏れる可能性があります。ですから、もし国民健康保険税に加入しているなら、国民健康保険税が試算されているかも注意しましょう。

もし現在、お子様や配偶者の方が加入している社会保険の扶養となっている場合も、土地活用による利益の金額によっては自身で国民健康保険税に加入し、保険税を支払う必要があります。

なお、現在会社員などでご自身が社会保険に加入している場合、土地活用による利益で収入が増えたとしても社会保険料が上がることはありません。もちろん国民健康保険税が発生することもありません。

このように、土地活用に伴う税金は、不動産会社や税理士でも試算誤りや漏れが見られることがほとんどです。ですから、課税する機関に直接試算してもらうようにしましょう。

2-3. 土地活用のノウハウ3:金融機関に融資の相談をする

土地活用の3つ目のノウハウは、金融機関に直接融資の相談をすることです。とは言え、実際にその場で融資を受けるわけではありません。

予定している土地活用の事業内容で、具体的にいくらの融資をどれだけの返済期間で受けることができるのか、そして利子の支払いはどのようになるのかを確認しましょう。

多くの場合、土地活用の融資は建物の耐用年数で返済できる範囲で受けることができます。耐用年数とは、その建物が資産価値がある年数のことです。建物は老朽化とともに資産としての価値が下がっていき、最終的には資産価値はなくなります。

この資産価値は個別の建物によって異なりますが、国税庁が税金の計算のために建物の構造と用途によって耐用年数を決めています。そのため、金融機関の融資でも国税庁が決めた耐用年数が参考にされます。代表的な土地活用であるマンションやアパート、倉庫の耐用年数は、以下の表のとおりです。

住宅 車庫 工場・倉庫 太陽光
発電
建物 木造・
合成樹脂造
22 17 15
木骨
モルタル造
20 15 14
鉄骨鉄筋
コンクリート造・
鉄筋
コンクリート造
47 38 38
れんが造・
石造・
ブロック造
38 34 34
金属造(※) 19
~34
19
~31
17
~31
電気設備 蓄電池
電源設備
6
その他 15

※鉄骨造は、骨格材の肉厚により耐用年数が異なります。

土地活用の初期費用の融資は、上記の耐用年数を基に返済期間が决められます。ただし、金融機関が収益性が低く、土地活用の収益だけで返済が難しくなる恐れがあると判断した場合には、別途担保を求められたり、融資を断られたりします。

融資を受けられる金額や返済期間によって、土地活用で得られる収益は大きく変わります。返済期間によって支払わなければならない利子の金額が変わるからです。

ですから、より現実に即した土地活用の収支を知るために、不動産会社が作成した収支計画書と建物の図面などを持って、金融機関に融資について確認するようにしましょう。

2-4. 土地活用のノウハウ4:ほかの不動産会社にも提案を求める

土地活用の4つ目のノウハウは、ほかの不動産会社にも土地活用の提案を求めることです。

同じ土地の活用であっても、不動産会社ごとに適切だと判断する土地活用方法は少しずつ異なります。また、同じ土地活用方法だったとしても、収支や税金、ローンの返済計画などの見込みはちがいます。

そこで、複数の不動産会社に土地活用の提案を求めることにより、いろいろな土地活用方法を知ることができます。また、複数の不動産会社が同じ提案をすれば、その数字は正しい可能性が高いと判断することができます。

ただし、複数の不動産会社に提案を求めた場合であっても、所有者自身が収支計画書の内容が正しいかどうか判断するにこしたことはありません。とは言え、複数の不動産会社に提案を求めれば、より正確な収支計画を見込むことができます。

以上のとおり、不動産会社の収支計画を確かめる4つの方法を紹介しました。どれも手間がかかり面倒に感じるかもしれませんが、土地活用では数千万円から数億円の借り入れを行った上で、数十年という長期間事業を続けなければなりません。

事業を始めて数年で赤字経営になったからといって、事業を取りやめることはできません。もし事業をやめるとなれば、多額のローン残額を一括で返済しなければならないからです。

赤字経営の物件を売却するのは難しいですし、売ろうとしても相場よりもはるかに低い価格となってしまう可能性が高くなります。

ですから、自分で土地活用の収益性や有効性について調査し、確信を持った上で土地活用をはじめるようにしましょう。

不動産会社を選ぶ時の考慮すべきポイントとは?

2017.06.04

3. 土地活用のノウハウまとめ

こちらでは、不動産会社が計画した土地活用の内容が正確かどうかを確認するノウハウを詳しく説明致しました。

土地活用を成功させるノウハウは、不動産会社の収支計画書を鵜呑みにせず、その正確性を土地所有者自身が確かめることです。

不動産会社が作成する収支計画書の内容には、現実的でない箇所が珍しくありません。それは、不動産会社は税金や借り入れなど、すべてにおけるプロではないからです。

また、ごく一部ではありますが、建設費や管理費の収益を得ることだけを目的に土地活用を提案する不動産会社もあります。

不動産会社の豊富な実績とノウハウを借りながら、より確実に長期的に収益を得られる土地活用を行うためには、すでに土地活用をしている物件の収入をご自身で調べたり、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場に税金の試算を求めたりすることが大切です。

また、金融機関からどのような融資が受けられる計画なのか問い合わせたり、ほかの不動産会社にも提案を求めて計画内容を比較することも必要です。