個人売買で不動産を売却する方法と注意点

不動産を売却する際に、気になることと言えば仲介手数料ではないでしょうか。物件の価格に比例して、業者へ支払う額も大きくなります。大切な財産を手放すからこそ、その価値に見合った納得できるお金をきちんと受け取りたいというのは、誰もが抱く一般的な心情だと思います。

そこで不動産業者を介さずに思い切って個人で不動産の売却をしようとお考えの方も少なくありません。法律的には、「宅地建物取引士」などの資格を持っていなくても個人間で不動産を売買することは可能です。

しかし、すべてを個人で行う必要があるため、適切な方法を十分に理解しておくことが重要です。不動産の個人売買におけるメリット・デメリット、留意しておくべき点を総合的にまとめましたので、ご参考にしてください。

 

1. 個人売買のメリット

不動産売買は売主が不動産業者に物件の取り扱いを依頼して行うのが一般的です。しかし、最近では個人で売買を行うケースも珍しくなくなってきました。その主なメリットをご紹介します。

 

1-1. 仲介手数料が発生しない

不動産業者に依頼して売買すると仲介手数料が必要となります。速算式を用いた上限額の算出方法は次の2通りです。売買金額が200万円超400万円以下の場合は、売買価格×4%+2万円+消費税。売買金額が400万円以上の場合は、売買価格×3%+6万円+消費税です。

つまり、例えば2,000万円の不動産取引の場合、最大で71万2千8百円(消費税込)の仲介手数料を売主・買主の両方がそれぞれ業者に支払わなければなりません。しかし、個人売買の場合は、この費用が全く掛かりません。

 

1-2. 消費税の負担がない

不動産を個人で売買する際は、消費税が掛かりません。不動産業者を介して売買すると、例えば1,000万円の物件なら80万円の消費税が掛かります。高額な不動産の場合、8%の消費税は無視できない費用です。買主は消費税が必要ない分、相場よりも安く購入できるので、売主にとっては売りやすくなるというわけです。

 

1-3. 親子・親しい知人間の取引に向いている

当人同士で気兼ねなく、じっくりと話し合える個人売買は、親しい間柄の人との取引に向いています。交渉がしやすいため、両者がともに納得できる最適な金額で売買することができます。

 

1-4. 掘り出し物の物件が見つかる可能性がある

不動産業者が自社の物件を売り出す場合、買取り価格の元値に上乗せするなどして儲けを出すことを優先するのが一般的です。そのため、不動産業者が売り出す物件に掘り出し物が含まれるケースは、ほぼないと言えます。

一方、個人売買では、「とにかく早く財産を整理したい」「すぐにお金が必要」などといった様々な事情や考えを持った売主がいるので、相場よりも安く売りに出ていることもゼロではありません。さらに、売主と直接話し合えるため、思い切った値引き交渉も可能です。

 

2. 個人売買のデメリット

個人売買の場合、すべての過程を個人で行い全責任を負わなければなりません。特に売却の際は、不備や問題があると買主との間にトラブルを生じてしまう可能性もあります。どんなデメリットがあるのか具体的に見ていきましょう。

 

2-1. 買主を自分で探さなければならない

不動産業者に売却を依頼すると、あらゆる手段を使って販売してくれますが、個人で売却する場合は自ら買主を探さなければなりません。また一方で、買主が個人売買の物件を探す場合も同様です。

個人で不動産を売却する場合、資金力のある仲介業者のような大規模な宣伝活動を行うのは非常に難しいので、地道に買主を探すことが重要となります。

 

2-1-1. 自己負担で広告を出す

売却するために広く購入者を募るためには、チラシや不動産情報サイトといった広告・宣伝活動が欠かせません。そうした広告物の制作やサイト登録料といった費用も自己負担で支払う必要があります。

参考までにお伝えしますと、一般的に大手不動産情報サイトを利用する場合の登録料は、月額5万~15万円が必要となります。

 

2-1-2. オークションサイトの利用

日本最大手のヤフーオークションやマイホームオークションなど、国内にはいくつかのオーションサイトがあります。売却したい不動産の情報に日々多くの人がアクセスしてくるので、短期間で購入希望者と出会える可能性があります。

多くの人が競り合えば、高値がつく場合もありますが、想定よりも低い価格で落札される場合もあるので、オークションの仕組みを事前によく理解して出品することが重要です。

 

2-1-3. 掲載無料の不動産サイトへ登録

「物件s」や「不動産直売所」、「おうちダイレクト」など、国内には無料で不動産情報を掲載できるサイトがいくつかあります。いずれも売値は、自分で決められ、長期掲載も可能ですので交渉に時間をかけ、納得できる取引を行うことができます。

サイトによってサービスは様々ですが、無料で掲載用写真の撮影や紹介記事の作成など、売却のサポートをしてくれるサイトもあるので、利用する場合は事前に確認しておくことが大切です。

 

2-2. トラブルに自分で対応しなければならない

不動産の個人売買における大きな難点といえるのがトラブルへの対応です。発生しやすいトラブルについて見ていきましょう。

 

2-2-1. 売却後の物件に瑕疵など不具合が生じたら

不動産を売却する際に売主が負わなければならないのが「瑕疵担保責任」です。これは売却後に、隠れた瑕疵(欠陥)が見つかったとき、買主に対して売主が負う責任のことを言います。

買主は瑕疵に気づいた後、1年以内であれば売主に対して損害賠償の請求ができます。売買契約時点からではなく、気が付いた時から1年以内というところがポイントです。さらに、例えばシロアリで住宅の骨組みが損傷しているなど、その状況を知っていたら契約をしなかったというくらいひどい場合には契約解除も可能です。

売主としては、長期にわたって責任を負うことはリスクになります。そこで売買契約書の中で瑕疵担保責任の期間について明記し、売主と買主がともに納得して契約することが重要です。新築物件の場合は10年間の瑕疵担保責任が義務付けられていますが、中古物件の場合は2~3ヵ月程度が一般的です。

 

2-2-2. 契約書などの書類に不備があったら

売買契約は契約書に署名、捺印することで成立します。トラブルを避けるためには、契約書に不備があってはならないというのが原則です。万一、不備があった場合は修正しなければなりませんが、契約書の修正にもルールがあります。

例えば、契約前に契約書に誤字・脱字が見つかった場合、修正液などの使用は不適切です。不備のある契約書を破棄して、修正した契約書を新たに作成します。契約手続き中に、契約書に誤字などがあった場合は、その場で修正して訂正印を押します。

ただし、土地の面積や売却価格といった重大な間違いの場合は契約書を新しく作り直します。契約後に、契約書の不備が見つかった場合は、訂正した証拠として訂正印による修正が基本です。

 

2-2-3. 重要事項説明書の確認不足

不動産業者に仲介を依頼する場合は、宅地建物取引士による重要事項説明が宅地建物取引業法で定められています。一方で個人間の取引の場合、売主が業者ではないので義務はありません。

しかし、トラブル回避のために売主ができるだけ情報を集めて重要事項説明書を作成して買主に丁寧に説明する方が適切です。もし書類に不備があると問題を生じる場合もあるので作成する際は、間違いがないかしっかりと確認する必要があります。

 

2-3. 書類を自分で作らなければならない

個人間の取引では、売買契約書や重要事項説明書といった書類を、売主が作成しなければなりません。法律で定められている形式は特にありませんが、契約後のトラブルを防止するために、事前に記載しておくべき一般的な項目を把握し、お互いが納得できる書類を用意するのが基本です。

 

2-4. レインズへの登録ができない

レインズとは全国の不動産会社がネット上で物件情報を共有できる会員制のシステムです。レインズに登録済の物件情報は会員の不動産会社に公開され、自由に閲覧できるので、売主と買主のマッチングが容易です。非常に便利なシステムですが、個人では会員登録できません。

 

3. 個人売買による不動産売却の流れ

まず、不動産を売却する際、売主には様々な準備が必要です。事前に行っておくべき基本的な事柄を確認し、契約後までの流れを見ていきましょう。

 

3-1. 売却物件の相場を確認する

個人で取引する場合は自ら相場を調べなければなりません。国土交通省の「地価公示・地価調査・取引価格情報/土地総合情報システム」を活用すれば、実際に行われた不動産取引価格の情報を確認できます。

しかし、番地までの詳細な住所や実際の土地の詳しい情報は掲載されていないので、あくまで参考の材料としての利用に限られます。また、相場を確認する手段として、不動産の一括査定サイトを使って複数の不動産業者に査定を依頼する方法もあります。

 

3-2. 必要な書類・資料を用意する

不動産の個人売買には、実に多くの書類・資料が必要になります。以下、売主が用意するべき書類・資料の例です。ぜひ参考にしてください。

①売買契約書、②重要事項説明書、③身分証明書、④住民票、⑤収入印紙、⑥領収書+印紙、⑦印鑑証明書、⑧土地及び建物の全部事項証明書、⑨登記済権利書または登記識別情報、⑩地積測量図(地積測量図がない場合は土地家屋調査士に依頼して借図を作成)、⑪境界確認書、⑫公図、⑬建物平面図(無い場合は間取りソフトで作成)、⑭固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書、⑮用途地域の情報、⑯各種制限の情報(斜線制限 外壁後退距離 最低敷地面積)、⑰地区計画、⑱都市計画(道路、公園、計画決定年月日、計画内容、事業決定の時期)、⑲下水道配管の情報(全面道路内口径、引込管口径、私設管 越境の有無)、⑳前面道路の情報(道路番号、認定年月日、幅員)、㉑上水道の情報(全面道路内口径、引込管、メーター口径、私設管、越境の有無)、㉒建築確認済証および検査済証、建築設計図書・工事記録書等、㉓マンションの管理規約または使用細則等、㉔マンションの維持費等の書類(管理費、修繕積立金、管理組合費、町内会費等)、㉕耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等、㉖地盤調査報告書・住宅性能評価書・既存住宅性能評価書等、㉗物件の構造の書類

 

3-3. 現地の確認

全ての敷地の角に境界杭が揃っていない場合、土地家屋調査士に依頼して設置します。現地を確認し、境界杭と測量図、登記簿の3つが一致していることが重要です。特に現地に境界杭がないとトラブルの原因になる場合があるので、注意してください。

 

3-4. 売却金額を決める

事前に調べた相場を元に売却金額を決めます。相場より安く設定すると損する可能性がありますが、高額過ぎると買主が現れないことも少なくありません。そこで売りたい「理想価格」と無理のない「最低価格」の2つを決定しておきます。売り出しは、理想価格を提示し、なかなか買主が見つからない時は最低価格に変更してみるのも早期売却のコツです。

 

3-5. 売却情報の告知を行う

売り出しの準備が整ったら、物件情報の告知やPR活動を始めます。個人売買の場合は、比較的費用が抑えられる不動産サイトでの情報提供を行うのが一般的です。具体的にどんな方法があるのか見ていきましょう。

 

3-5-1. 有料広告を出稿する

代表的な不動産サイトと各社の広告出稿費用は以下の通りです。

  • Yahoo!不動産:月額1万円/6カ月契約/メールや電話の問い合わせ数によって課金
  • HOME’S:問合せ課金/月額1万円/メールや電話の問い合わせ数によって課金
  • スーモ:個別見積り(参考価格35枠で月額20万円)
  • アットホーム:月額1万円(10枠まで)

 

3-5-2. 無料で登録できる不動産サイトを使う

ホームライブラリなど、無料で登録できるサイトもあります。ただし、売却契約が成立後に課金が発生するので注意が必要です。

 

3-6. 現地確認依頼や問い合わせの対応

広告出稿後は、購入を検討している人からの問い合わせに対応します。現地を確認したいという要望も出てくるので、適切に応じましょう。不動産に詳しい人は、難しい質問をしてくることも考えられるので、曖昧にせず、誠実に回答することが成約につながります。

 

3-7. 価格交渉の対応

購入検討者は、値下げ交渉してくることも珍しくありません。お互いによく話し合って決定するのが基本ですが、妥協し過ぎると損をしてしまうこともあるので、前述の最低価格は熟考しておきましょう。

また、売り出し後、問い合わせが少なく、想定よりも大幅に時期が経過している場合は、値下げを考えるのも一つの方法です。

 

3-8. 契約関係の書類を用意する

買主が見つかったら、いよいよ契約に必要な書類を用意します。各書類の作成ポイントを紹介しますので、参考にしてください。

 

3-8-1. 売買契約書

売買契約書を買主と売主に1通ずつ作成する場合は、それぞれに印紙を貼って消印します。収入印紙の金額は契約書記載する金額によって変わります。例えば、500万円超1,000万円以下は5,000円、1,000万円超5,000万円以下は1万円です。

売却価格や中間金、手付金は価格と受領日を明記します。引渡し日についても事前に決定し、しっかりと記載しましょう。トラブルにつながる恐れがある事柄は特約事項として書いておくことも重要です。

 

3-8-2. 重要事項説明書

不動産の取引は案件ごとに内容が様々で、重要事項説明書に記載する項目も異なります。

以下に欠かせない重要事項をまとめました。参考にしてください。

①不動産の表示:
土地の地番や面積、公簿・実測面積、建物の家屋番号、構造、床面積、建築確認番号などを記載します。

②敷地と道路の関係:
物件が接している道路の種類や幅など、私道である場合はどんな負担があるかを記載します。

③飲用水・電気・ガス・排水施設の整備状況:
物件が利用する水道・ガス・下水のインフラ設備のほか、前面道路の本管敷設状況なども記載します。

④法令上の制限に係る内容:
主に都市計画法・建築基準法に関する制限について記載。物件の所在エリアが、都市計画区域の内外、市街化区域か調整区域であるかなどを書きます。

さらに、土地の建ぺい率・容積率のほか、都市部で該当することの多い、特定都市河川被害対策法、都市緑地法、土壌汚染対策法、宅地造成等規制法、土砂災害防止法などの法令の物件への制限について記載します。

⑤契約内容に係る内容:
手付金、ローン、違約に関する解除、売買代金、その他の金銭、瑕疵担保保険についての事項を売買契約書の文言を要約して記載します。

 

3-9. 契約締結

売買契約書を用いて契約を締結し、決済日を設定します。不動産を現金で購入する場合は、契約日に全額を支払って一回ですべてを済ませることも可能です。一般的には住宅ローンを利用することが多く、その場合は契約日と決済日は別になります。住宅ローンの本審査は契約締結後になるので、融資が実行される日が決済日となります。

契約を締結したら手付金を受け取ります。固定資産税の精算日は売買契約書で定めた日に行いますが、決済日に行うのが通例です。個人売買は、不動産の専門知識がない者同士で行うケースもあるので、契約前に不動産取引を管轄する公的機関に相談し、書類や行動に不備がないか確認してもらっても良いでしょう。

 

3-10. 決済・引渡し

契約書で定めた引渡し日になったら、受け取った手付金を差し引いた売却代金の清算を行います。決済の場所は、口座から口座への入金となるので買主が指定する銀行で行うことが多いです。

入金が確認できたら、売主は買主に領収書を渡します。それから所有権移転登記と抵当権等の確認を行いますが、司法書士に依頼するのが一般的です。この時、売主は、身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票、登記済権利書または登記識別情報などを用意します。所有権移転登記が済んだら、引渡し完了です。

 

3-11. 確定申告・納税

不動産を買ったときよりも高く売却できて利益が出た場合、確定申告をして所得税と住民税を納める必要があります。買ったときより売値が安くなってしまった場合は、税金がかからないので確定申告の義務はありません。

しかし、売却した不動産がマイホームの場合では、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用され、所得税の還付を受けられる可能性があるので確定申告した方が得策と言えます。

特例を受ける際は、以下の書類の提出が必要です。

①特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
②特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
③登記事項証明書や売買契約書の写しなどで所有期間が5年を超えることを証明するもの
④売買契約日の前日におけるそのマイホームの住宅ローンの残高証明書

 

4. まとめ

不動産の個人売買は、不動産業者の仲介手数料や消費税がかからないメリットがある一方で、トラブルが発生しやすいことや、様々なデメリットもあります。しかし、最近ではインターネットで物件情報を公開し、個人でも買主を探すシステムが急速に普及しているのも確かです。

ここでご紹介した記事を参考に、ご自身の不動産に対する知識や専門性、売買の手間を考慮して、最適な取引方法を選択していただければと思います。