土地活用に潜む危険性。賃貸住宅で相続税対策する時の落とし穴。

都市部や都市周辺部においてもっともメジャーな土地活用のひとつに賃貸住宅経営があります。頻繫に引っ越しをする人は少ないので、一度契約が決まれば比較的長期にわたって収入が発生する見込みが高いことや、基本的に住む場所なしで暮らすことはできないため、必要不可欠なものであるという点が人気の理由ではないかと思います。

他にも、住居系の土地活用をすると固定資産税の軽減措置が受けられたり、建築費などの借入れ残額分が相続の際にマイナス評価されるため、相続税対策となることも理由と考えられます。このような話は、ハウスメーカーなどの建築系の会社や不動産業者、金融機関などが常に言っていることですので、良くご存知だと思います。

確かにその通りなのですが、それ以外のリスクの部分については、あまり語られていないように思います。やる気になっている土地のオーナー様に水を差すようなことを言い辛いという時もあるかもしれませんが、故意にその話題を避けている業者もいるように思います。

土地活用の際はリスクについて良く考えてから始めましょう。という言葉はよく耳にしますし、目にする時もあります。しかし、リスクの中身について、ちゃんとした説明がされているものは、まだまだ少ないように思います。

そこで、今回は土地活用の中でも特に相続対策として賃貸住宅経営を行う時のリスクについてお話をしたいと思います。

 

 

1. 貸家建付地の危険性

土地活用で賃貸住宅を経営する税制上の目的のひとつが固定資産税と都市計画税(対象地域のみ)の軽減です。もうひとつの目的に相続税の軽減があります。固定資産税と都市計画税については、良く知られていると思いますが、住宅用地として活用している場合には、固定資産税が1/6か1/3に(条件により変わります。)軽減される制度です。

あまりなじみのない言葉かもしれませんが、借地権割合というものがあります。これは、アパートやマンションなどの賃貸住宅を建てた場合には貸家建付地として土地の価格が評価されるというものです。

貸家建付地というのは簡単に言うと、建物を借りている人は建物だけでなく土地も借りている、ということです。通常、アパートやマンションなどの賃貸住宅を借りる契約をする際は、部屋の賃貸借契約だけだと思われていますが、実際には土地の賃貸借契約も含まれているということです。

分譲マンションを例にするとわかりやすいと思います。分譲マンションを購入した際は底地の持分割合が設定されることになりますが、それと同じようなものと考えるとわかりやすいと思います。

建物の一部を貸すことによって、土地についても部分的に貸しているのだから、その分は使用できないので、その割合に応じて相続税を低く評価しますというものが、貸家建付地の考え方です。

実際の土地の評価額を計算しようとすると接道の具合や角地の場合など、色々な要素が絡んでくるため、基本の概念だけお知らせします。

貸家建付地の評価額は自用地価格×(1-借地権割合×借家権割合)となっています。自用地価格とは、簡単にいうと路線価に補正を加えた土地の価格のことです。土地の価値と考えると良いと思います。それに賃貸住宅が建っていることで、自由に土地が使えない不便な分の価値を引いたものが貸家建付地の評価額ということです。

逆にいうと、賃貸住宅に住んでいる人は借家権という権利を持っているため、土地の使用権を持っているということになります。(ややこしくなるので、建物自体の借家権についてはここではお話はしないで土地だけで考えます。但し、土地に関する借家権は含めます。)

借家権割合は、大阪などの一部に40%のところがありますが、多くの地域で30%と決められています。これに借地権割合をかけて算出します。借地権割合は路線価図で確認することができます。

 

先に借地権割合の確認方法について説明します。

借地権割合は税務署が周辺の土地の取引事情を見て決めています。このため、各市町村の中でも地域によって異なります。また、路線価の評価替えの際に変わることもあります。現在の自分の土地の借地権割合については、国税庁のホームページで確認することができます。

国税庁のホームページから路線価のページに行って該当地域のページを開きます。すると、数字とAからGまでのアルファベットがふられたものが書かれています。この数字が路線価格でアルファベットが借地権割合を表しています。

例えば、100Aとなっている場合は、1平米あたりの価格が10万円で借地権割合が90%ということになります。数字は千円単位となっており、各アルファベットの意味は次の通りです。

A = 90 %
B = 80 %
C = 70 %
D = 60 %
E = 50 %
F = 40 %
G = 30 %

東京の借家権割合は30%ですので、東京で100Aという土地の場合は、90%×30%で27%の評価減となります。Gの地域の場合ですと、30%×30%で9%の評価減しかありません。

具体的な数字はこちらのリンクからご確認ください。

国税庁ホームページ 財産評価基準書路線価図・評価倍率表:http://www.rosenka.nta.go.jp/main_h29/index.htm

 

このように貸家建付地で評価が下がる範囲には範囲がありますが、最大でも27%しかありません。最低だと9%と1割にも満たないです。仮に空室が多くて経営が赤字になれば、評価が下がる以上にマイナスとなってしまう可能性があります。

不動産会社のメリットがありますよ。というような曖昧な情報で満足しないで、実際に評価が何パーセント下がってその金額がいくらになるのかきちんと確認をすることが大事です。

 

2. 担保権が付いていることの危険性

冒頭でお話をしたようにアパートやマンションなどの賃貸住宅を建てる際には、金融機関から借入れを行うことが一般的です。高額の資金が必要だということもありますが、負債分を財産からマイナスできるためです。金融機関が借入れを起こさせるために使う常套句でもあります。

このこと自体は間違いではありませんが、土地に担保権が付いてしまうデメリットについてはあまり語られていないように思います。

担保権が付いているデメリットとして良く知られているのは、担保権の設定登記などに事務手数料などの費用がかかるとか返済が滞ると担保として取り上げられて競売で安く売られてしまうことだと思います。

相続という面で考えるとこれ以外にもデメリットが存在しています。それは相続性の代わりとして物納することができないということです。物納にはいくつか条件がありますが、利用価値が低くて収益性の低い土地を物納することで、安くしか売れないような土地を効率的に処分する方法があります。いくつか土地があるのなら、こうして収益性の高い土地を残していくのが良いことは間違いないでしょう。

しかし、担保権が付いていると物納したくても受けてもらうことができません。担保を外せば問題ないのですが、別の土地などに担保を変えようとしても金融機関によっては中々了解してくれないケースがあります。本来、残額分の価値のある土地であれば、担保物権として問題ないはずですが、金融機関にも独自の指針があるので簡単に切り替えることができないことが多いのです。

 

3. 賃貸住宅で相続税対策をする時危険性のまとめ

今回は住宅メーカーや建築会社などの不動産関連業者や銀行などの金融機関が普段口にしないことについてお話をしてきました。敢えて説明していないのか、そんなに重要なことだと思わなかったから説明を省いたのかわかりませんが、これらのことを知らないで賃貸住宅経営を始める方がとても多くおられます。

これらは、多くの問題と同様に最初から考慮に入れていれば問題なく対処できたことでも、問題になってから直面すると対応できないことになってしまう可能性が高いです。せっかく、残された家族の為に相続税の負担を減らそうと考えて準備したことが、マイナスになってしまうのはとても悲しいことです。

不動産会社が教えてくれないなら自分で調べるしか方法はありません。土地活用も投資のひとつですので、最後には自己責任と言われてしまいます。実際に損害を受けていても、それをきちんと金額に換算しなければ損害賠償請求はできませんし、そもそも、説明不足を理由に損害賠償請求が認められる可能性は低いでしょう。

土地活用を検討する際は、色々な面から問題となる点がないかどうかを確認する必要があります。ひとつの会社に一任してしまうと手落ちがあっても気が付くことができないため、複数の業者に話を聞くか、業者同士を競わせるようなことはしたくないという場合には、税理士などの専門家の意見を聞いてみると良いでしょう。