事例紹介

Category  サービス付き高齢者住宅

2018年10月02日 更新

土地活用でサービス付き高齢者住宅にする基礎知識と制度の概要

高齢化が進み、有料老人ホームや特別養護老人ホームなどに入れず入居待ちになっている高齢者が大勢います。高齢者の単身での暮らしや、高齢の夫婦のみの世帯が増えている現状では、安心して高齢者が生活していくために必要な支援やサービスを提供することが重要です。

サービス付き高齢者向け住宅は、国土交通省と厚生労働省の高齢者住まい法によって創設された事業で、高齢者の居住の安定、安心できる暮らしを支援することを主な目的としています。有料老人ホームとの違いや、サ高住に入るための条件、どのようなサービスを受けることができるのかなどを解説しています。

また、サービス付き高齢者向け住宅を開設して事業を立ち上げる際に必要な基準や登録事項、補助金制度、初期投資と利回りについてもまとめています。

1. サービス付き高齢者向け住宅とは

サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)とは、バリアフリー構造になっている住宅のことで、高齢者住まい法の基準によって登録されています。高齢者住まい法の改正後、2011年に作られた施設で、有料老人ホームや特別養護老人ホームの代わりになるべく作られました。介護や医療と連携を取り、高齢者の安心できるくらしを支えることが目的です。

1-1. 国の後押しで順調な成長

現在の日本は4人1人が65歳以上であると言われています。高齢者社会になっている日本において、高齢者の住まいの確保は重要な課題でもあります。一般的に、公的な高齢者介護施設と言えば特別養護老人ホームですが、入所待ちの高齢者は全国で50万人以上います。高齢者の住まいの受け皿として、サ高住はとても重要な役割を果たしています。

サ高住は2011年に高齢者住まい法が改正されて以降、従来の高齢者向け賃貸住宅や有料老人ホームの一部を再利用するという構想で作られました。2025年には対象となる高齢者が146万人になると言われており、国土交通省では施行から10年の2021年までに60万戸を整備することを目標としています。

1-2. サ高住に入居できる対象者

サ高住は誰でも入居できるわけではありません。入居するには高齢者住まい法で設定されている条件を満たしている必要があります。主な条件は以下の通りです。

・60歳以上の高齢者であること
・60歳未満であっても、40歳を越えている人で要介護認もしくは要支援認定を受けている場合

また、サ高住に同居できる人は、配偶者・60歳以上の親族、要支援や要介護認定を受けている親族、それ以外にも特別な理由によって同居させる必要があると各都道府県知事が認めた場合に同居が可能です。

1-3. サ高住はバリアフリー構造の賃貸住宅

サ高住の特徴としては、施設がバリアフリー構造の賃貸住宅であることと、介護や医療などの高齢者支援サービスが受けられることが挙げられます。高齢者の単身での生活は危険が多く伴います。高齢者が自宅で生活している中で、家の中の段差につまずいて怪我をするなどの事故も多くなっているため、バリアフリー構造の住宅で暮らすことで安全な生活をサポートすることができます。

1-4.  サ高住は介護・医療などの高齢者支援サービスが受けられる

サ高住には日中、医療や介護のサポートができるように資格を持ったスタッフが常駐しています。安否確認サービスと生活相談サービスを、すべての入居者に対して提供しています。日中以外でスタッフが不在の場合は、緊急通報システムなどで対応しています。

また、サ高住には一般型と介護型の2種類があり、厚生労働省からの特定施設の指定を受けていないものを「一般型」、特定施設の指定を受けているものを「介護型」と分類します。一般型の場合、個別の契約が必要にはなりますが、その他の生活支援や介護・医療のサービスを外部サービスとして受けられます。介護型の場合は、施設に常駐しているスタッフから受けることができます。

1-5. サ高住の契約形態について

サ高住の契約形態については賃貸借方式、利用権方式、終身賃貸借方式、所有権分譲方式などの契約形態がありますが、主なものとしては賃貸借方式と利用権方式の2種類が多いです。利用権方式は、介護や生活支援等のサービスと居住部分の契約が一体になった契約方式で、主に有料老人ホームに多く見られる契約形態です。

一般的にサ高住では、介護や生活支援等のサービスと居住部分の契約が別々になっている賃貸借方式の契約形態をとることが多いです。ほとんどのサ高住が賃貸借方式の契約形態ですが、すべてではないため契約時にはどちらの契約形態になるのかをしっかりと確認する必要があります。

2. サービス付き高齢者向け住宅と老人ホームの違い

高齢者が入居する施設と言えば、有料老人ホームや特別養護老人ホーム、グループホームなどがあります。これらの施設とサ高住の違いはどのようなところになるのでしょうか。有料老人ホームはそれぞれの特徴によって「介護付きホーム」「住宅型ホーム」「健康型ホーム」があります。グループホームは、認知症の高齢者が介護のケアをうけつつ、入居者と共同生活をおくる施設です。サ高住は、これらのホームより自由度が高く、介護などのサービスも外部のものになります。

2-1. サ高住は施設ではなく賃貸住宅

サ高住はあくまでも賃貸住宅というスタイルで、介護や生活支援など入居者に必要なサービスがあればそれを選択して生活をします。その施設ごとの入居条件にもよりますが、日常的な介護を必要としない、自立した生活ができる高齢者が入居していることが多いです。段差の多い自宅での生活に不安のある人や、独居で何かあった時に心配だという人が利用しています。

2-2. サ高住は自由で安心

サ高住は、自立した生活を送れる高齢者が対象のため、要介護度が低く元気な高齢者が入居することを前提としています。そのため、施設への出入りが自由であったり、各個人の居室にはお風呂が設置されていていつでも自分で入浴できるようになっていることもあります。

介護が必要な高齢者が入る老人ホームやグループホームなどでは、自立した生活が難しく日常生活において介護が必要なことが多く、痴呆症の高齢者がいるため外出などにも制限されていることが多いです。

2-3. サ高住は居室面積が大きい

サ高住に登録されている住宅は、個人の部屋と共有のスペース、共同の設備などが用意されています。居室は、1戸あたり床面面積が25㎡以上と定められているため、ゆったりと過ごすことができます。

平成23年度の有料老人ホームに関する実態調査によると、有料老人ホームの居室面積基準は18㎡、特別養護老人ホームの居室面積は、ユニット型で10.65㎡、2人居室でも21.3㎡となっています。こうして比べてみると、サ高住は床面積基準が広くとられていることが分かります。

2-4. サ高住ではサービスの利用契約が別途必要

有料老人ホームでは、要介護度の高い人の受け入れを前提としています。そのため、入浴や排せつなど日常生活の介助に加え、栄養バランスのとれた食事や食べやすいように刻んだ食事にするなどのサービスが受けられます。

サ高住は有料老人ホームとは異なり、住宅に義務付けられているサービスは、基本的には安否確認と生活相談のみです。どうしても介助が必要な場合は、入居者が個人で外部サービスと契約を結ぶ必要があります。基本サービスではなくオプションで個々に別途契約するイメージです。

3. 土地活用におけるサービス付き高齢者向け住宅の投資額と収益率

土地活用を考えている人の中で、サ高住などの高齢者向け施設を設立するという選択肢を持っている方もいるのではないでしょうか。サ高住を自身で設立するにあたり、重要になってくるのはその初期費用です。設立後の収益についても見ていきましょう。

3-1. サ高住の初期投資の費用

サ高住を建設する際には、サ高住の基準を満たした建物でないといけません。居室の床面積が25㎡以上、居室内にトイレと洗面設備の設置が基準になっています。あくまでも目安にはなりますが、地方都市で有料老人ホームやサ高住を建築する場合、50人程度の入居ができる建物であれば物件取得・施工費だけでも約2億円かかると言われています。

ここに、什器や備品、広告宣伝費などを上乗せすると約3億円程度かかる見込みです。すでにアパートなどの物件を所有している場合でも、サ高住の基準を満たしていない場合は大掛かりなリフォームも必要になります。

3-2. 補助金や助成金の利用

サ高住の建設にあたっては、国から補助金を交付してもらえる制度があります。補助金や助成金を受け取ることができれば初期投資の費用を軽減することができるので、ぜひ利用しましょう。申請が通った場合、工事費の10分の1(1戸につき100万円が上限)が助成されます。

補助金の交付を申請するには床面積やバリアフリー構造などの基準を満たしていることやサービス提供をすること、契約内容などの条件を満たしておりサ高住として登録されることが必要です。また、サ高住として10年間以上登録することや家賃額が近隣の住宅と均衡がとれていること、家賃の支払い方法が前払いに限定されていないこと、事業資金の調達ができることなどが条件として定められています。

3-3. サ高住の収益と利回り

サ高住は高齢者向けの賃貸住宅ですが、居住部分の他にサービス施設も併せ持っています。そのため、敷地面積のほとんどが居室になって家賃収入を得られるマンションやアパートなどと比較すると、敷地面積で換算した場合にどうしても収益の効率は下がってしまいます。

一般的にサ高住を経営した場合の月額収入は、家賃・食費・共益費などで10万から15万程度と考えられます。ただし、食費や共益費に関しては大きな収入源にはならないので、基本的に家賃収入がメインとなってきます。

例えば30戸のサ高住を経営していると考えて家賃を5万円とした場合、入居率を8割とすると月120万で年間1440万円になります。初期投資を1億5千万円であった場合の利回りは9.6%となります。補助金が出るのでもう少し上乗せすることも可能ですが、諸経費や人件費などを考慮するとやはり収益面ではマンションに比べて見劣りしてしまいます。

4. サービス付き高齢者向け住宅の登録について

サ高住に登録するには、各都道府県や政令指定都市などの専門窓口にて申請手続きが必要です。登録を行う事で国からの補助金や助成金を受けられるようになります。また、住宅金融支援機構での融資対象にもなるので、サ高住を開設する際には必ず登録を行うようにしましょう。

4-1. サービス付き高齢者向け住宅の登録事項

サ高住に登録するためには、定められている基準を満たしている必要があります。登録基準は各地方によって異なることがありますが、主な基準は以下の通りです。

●住宅

  • バリアフリー構造であること
    バリアフリー:床に段差がない・浴室や階段に手すりを設置する・車いすも通れるように十分な通行幅を確保する・廊下の幅は78cm以上(柱がある場合は75cm以上)、
    出入り口の幅は75cm以上(浴室の出入り口は60cm以上)
  • 原則として各居室の床面積は25㎡以上であること
    (食堂やリビングなどの共同利用ができるスペースが十分に確保されている場合は18㎡以上)
  • 各居室に水洗トイレ・洗面設備・キッチン・収納設備・浴室を備え付けていること
    (キッチン・収納設備・浴室については、同等以上のものが共同利用できる場合備え付けは不要)

●サービス

  • 入居者の安否確認および生活相談サービスを行うこと
    夜間にスタッフが常駐しない場合も、緊急時に速やかに対処できること

●契約

  • 書面にて契約を結び、入居者の専有部分を明記すること
  • 入居者の居住の安定をはかった契約内容であること
  • 敷金や家賃、サービスの対価以外に金銭を徴収しないこと
  • 前金として家賃やサービス料を受け取る場合は、工事完了前に受け取らないこと
  • 前払い金の算定方法や返還債務金額の算定方法を明記すること
  • 入居後3カ月以内に契約解除された場合は、契約解除までの家賃を日割り計算し、前払金を返還すること
  • 返還債務を負う場合に備え、規定の保全措置を講じておくこと

4-2. サ高住は5年ごとの登録更新が必要

サ高住に登録している住宅は、登録から5年ごとに更新をする必要があります。この登録更新を行わなかった場合、サ高住としての権限が失効されるためサ高住という名称を使用できなくなります。

また、建設の際に受けた補助金や助成金の返還をしなければならない可能性もあります。登録の有効期間が満了になる90日前から30日前までに登録更新を行うようにしましょう。

5. サ高住登録の流れ

サ高住に登録するには、それぞれの地域の専門窓口にて申請が必要です。自治体によっては事前相談を受け付けている地域もあるので、調べてみてもいいでしょう。都道府県、政令指定都市、中核市の窓口については、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムというホームページにて一覧表を確認することができます。
サ高住の登録に必要な内容や登録の流れなどは以下のようになります。

5-1. サ高住の登録事業者について

サ高住の申請の際には、登録をする物件ごとにアカウントの登録が必要です。申請書の作成から情報の公開までの流れは以下のようになります。

  1. アカウントを登録し、ログインする
  2. 申請書式に必要な情報を入力する
  3. 申請情報を確定させ、印刷する
  4. 必要添付書類とあわせて窓口に提出する

事業者の登録の際には、法人個人のどちらか、法人の種別や業種、商号の名称もしくは氏名、住所(法人の場合は事務所の所在地)の入力が必要です。また、法人の場合は役員名簿の作成が必要です。住宅の事業主が未成年の個人である場合は、法定代理人の氏名と住所の記載が必要です。法定代理人が法人の場合は、その法人の役員名簿が必要です。

5-2. サ高住に登録できる住宅

サ高住に登録する住宅についても、その物件の詳細な内容が必要です。主に必要になる項目は以下となります。それぞれ登録時に必要なフォームが異なるため、フォームごとに分けて説明します。

5-2-1. 名称および所在地の登録

登録項目の1項目目、「サービス付き高齢者向け住宅の名称及び所在地」のフォームには以下の内容を記載します。

  • 建設予定のサ高住の名称
  • サ高住の所在地(住所表示がまだ決まっていない場合は地名地番を記載)
  • 住宅や施設、敷地に関する権原(所有権、賃借権、使用賃借による権利)と期間
  • 利用交通手段
  • 基本方針に照らし合わせて適切かどうか

5-2-2. 戸数、規模ならびに構造および設備の登録

登録項目の4項目目、「サービス付き高齢者向け住宅の戸数、規模並びに構造及び設備」のフォームにて以下の内容を記載します。

  • 登録申請対象の戸数
  • 居住部分の規模(最小面積と最大面積を記載)
  • 浴室、キッチン、食堂、リビング、収納設備などの共同利用設備の有無
  • 建物の構造と階数(鉄筋コンクリート造地上3階建て、など)
  • バリアフリー構造について(登録基準に達しているか、エレベーターを備えているか、緊急装置を備えているか)

5-2-3. 管理の方法等の登録

登録項目の7項目目、「サービス付き高齢や向け住宅の管理の方法」「修繕計画」のフォームには以下の内容が必要です。

  • 住宅の管理方式(自ら管理するのか管理業務を委託するのか。委託する場合は委託する業務の内容と委託先の会社情報)
  • 修繕計画作成の有無や修繕を実施する予定、計画的な修繕予定の有無

5-3. サ高住のサービス内容について

サ高住では基本的に入居者の安否確認と生活相談サービスを行うことが義務付けられています。その他の食事提供や入浴介助などのサービスについては、併設施設で行う場合や外部の在宅サービス会社に委託することとなります。それらについても登録の際には入力が必要です。

  • 安否確認、生活相談、食事の提供、入浴等の介護、調理等の家事、健康の維持促進についての提供形態(自身で提供するのか委託するのか。もしくは自身と委託の併用か)
  • 委託する場合は委託する業者の名称、住所の記載
  • サービスを提供する法人の種別(医療法人、社会福祉法人、指定居宅サービス事業者など)
  • サービスを提供する人数と、所有資格(看護師2名、介護福祉士3名、社会福祉士1名、など)
  • 常駐する場所と対応日数、常駐時間、サービスの提供方法
  • 緊急通報サービスについて(具体的な通報方法と通報先の情報)
  • 健康維持増進サービスや医療・介護等のサービスを委託する場合、施設の名称とサービス内容、提供方法の記載

5-4. サ高住で受領する金銭について

サ高住にて受領する金銭は、敷金や家賃の他にもサービスの対価として受け取る金銭があります。ひと月あたりの受領概算額を計算し記載する必要があります。回数や時間単位で料金を設置されている場合は一ヶ月間利用した場合の平均的な金額を算出して記載します。

  • 敷金、家賃、共益費の最低額と最高額(敷金は家賃の何ヶ月分かも記載)
  • 敷金、家賃、共益費などの前払金の有無
  • 前払金がある場合の概算金額(最低金額と最高金額)
  • 返還額の算定方法
  • 保全措置の内容(銀行による債務の補償、信託会社等による元本補てんまたは信託、保険事業者による保証保険など)

5-5. その他の登録内容

入居契約や入居者資格などについてもそれぞれに以下のような登録事項があります。

  • 契約形態(賃貸借契約か、その他の契約方式か)
  • 終身賃貸事業者の認可を受けているか
  • 工事の着工前であったり、建築中である場合は入居開始時期の記載
  • 特定施設入居者生活介護事業所の指定を受けているか(受けている場合は、介護保険事業所番号の記入

6. まとめ

サ高住は国からの補助金や助成金の制度が確立されているため、国からの後押しをもらっている事業であると言えます。今後、民間の企業が参入するなどしていけば、市場的にも活性化するのではないでしょうか。高齢化が進む現代の日本社会では、これからも高齢者や要介護者の人口は増えていくでしょう。

自立した生活をサポートしてくれた上で、生活の不安を取り除き安心して暮らしていけるサ高住はさらに需要が高まると予想されます。高齢者が健全に自分らしく生活ができる社会に、サ高住は必要な施設であると言えます。