事例紹介
家族構成やライフスタイルの変化により、同じ間取りや空間のままで生活していくことが難しくなる場合があります。その暮らしにくさを改善する方法として「リノベーション」と「建て替え」という2つの選択肢があります。
どちらも暮らしにくさを改善するという意味では同じですが、そのやり方や特徴、コストや工期など様々な違いがあります。ここでは、リノベーションと建て替えを比較しながら、その違いを確認していきます。
この記事でわかること
1. リノベーションと建て替えのコスト比較
一般的な工事費用は、リノベーションであれば数百万から、建て替えであれば一千万円からと言われています。しかし、実際に工事を行うとなると、工事費用以外にも費用がかかります。
まずは、リノベーションと建て替えとで必要になってくる、工事費用以外のコストを比較してみましょう。
1-1. リノベーションと建て替えの仮住まい費用の比較
リノベーションでも建て替えでも、工事をしている間は基本的にその家に住むことができなくなるので、仮住まいを用意しなければなりません。同じ条件の仮住まいを利用したとしても、そこに住む期間、つまりリノベーションや建て替えに必要な工事期間によって、コストに違いが出ます。
基本的にはリノベーションの方が建て替えよりも工期が短くて済みます。一般的な工期は、リノベーションが1~2ヶ月、建て替えが3ヵ月~半年程度必要だと言われています。工事の規模にもよりますが、リノベーションの場合、数週間で工事が終わることもあり、仮住まいへの住み替えが不要な場合もあります。
家賃や敷金・礼金等入居の初期費用が同じくらいであれば、工期が短いリノベーションの方が仮住まい費用を抑えることができます。
1-2. リノベーションと建て替えの引っ越し費用
リノベーションや建て替えを行う場合、仮住まいへの引っ越しと工事が完了してからの引っ越しが必要なので、引っ越し費用も2回分考えなければなりません。
引っ越し費用は基本的に、移動距離と荷物の量(トラックの大きさ)によって料金が決まるので、少ない荷物で引っ越しが可能なリノベーションの方が費用を抑えることができるでしょう。住宅の一部をリノベーションする場合であれば、工事に関係ない部分の家財道具等は持ち出す必要がないので、運ぶ荷物と費用を減らすことができます。
全ての家財道具や荷物を持ち出す必要がある場合は、引っ越し費用自体はリノベーションも建て替えも大きな差は出ないでしょう。しかし、仮住まいを利用する間、大きな家具や普段使用しないものを一時的に預けるサービス等の利用が必要であれば、預ける期間が長くなるほど料金も高くなるので、建て替えの方が高くなります。
引っ越しの際には、必要最低限のものだけを持ち出し、リノベーションや建て替え専用のプランを利用することで、引っ越し費用を抑えることができます。
1-3. 建て替えの際の諸経費
建て替え工事を行う際には、既存の家を解体し、不要な木材等を処分しなければなりません。これらにかかる解体費や廃棄費は一般的に、解体する規模によって変化し、規模が大きければ費用も高くなってしまいます。他にも、解体費は、解体工事に関わる人数によって変化し、廃棄費は、地域によって差が出てきます。
リノベーションでは、解体が必要になることもありますが、建て替えに比べ解体規模が小さかったり、使える材料は再利用されたりするので、建て替えほど解体費や廃棄費がかかりません。
1-4. リノベーションと建て替えのコスト比較は何年住むかも考慮して判断
ここまでの比較を見てみると、リノベーションの方が安くできることが分かります。しかし、リノベーションと建て替えのコスト比較をする場合は、一時的に必要になる費用だけで判断してはいけません。工事完了後、何年住むかを考慮し、その間のメンテナンス等に必要なコストも比較しなければなりません。
部分的に新しくするリノベーションは、手を加えていない部分は古いままなので、住み続けていていたら、工事が必要になる部分が出てくる可能性もあります。一方、全体を新しくする建て替えであれば、基本的にしばらくの間は部分的な工事は必要ありません。
一時的な費用はリノベーションの方が安くても、長期的に見ると建て替えの方が安くなることもあります。新しくした住まいに何年住むかを考慮し、それまでのメンテンナンス等のコストも計算した上で比較をしましょう。
2. リノベーションと建て替えの間取りの自由度
そもそも、リノベーションや建て替えを検討するのには、ライフスタイルの変化が大きく影響しています。新築で建てた家でも、子どもが自立したり、親の介護が必要になったりすると、今までの間取りや設備では暮らしにくくなってしまいます。
間取りを大きく変えたいという場合には、建て替えの方が自由度は高いです。建て替えは、建物の基礎部分から作り直すことが可能なので、自分たちの好きなように間取りを変更することができます。夫婦2人だけで住むので、住居の面積を減らしたいという場合にも効果的です。
部分的なリノベーションであれば、間取りを大きく変えることは難しくなります。フルリノベーションといって、全てをリノベーション工事で新しくする場合でも、空間をどのように利用するかは自由に選べますが、基礎や骨組みの工事はできないので、建て替えのように全てを自由に変更することはできません。
3. リノベーションで情緒を残すか建て替えで快適さを取るか
リノベーションの魅力のひとつは、元の家の良さをそのまま活かせるところです。長年住んでいる家であれば愛着もわいて、取り壊すことにためらう人も少なくありません。最近では、古い家に魅力を感じ、リノベーションするために中古住宅を購入する人もいます。
リノベーションでは、使える設備はそのまま使ったり、木材等をきれいにして再利用したりと、元の家の面影を残しつつ、より機能的で住みやすい空間にすることができます。建築当時にはなかった機能や流行を取り入れることで、古くなった家に新たな付加価値を付けることが可能です。
一方、建て替えの魅力は、全てが新しくなることです。壁や床等表面上だけではなく、水道・電気・ガス等の設備も全て新しくすることができます。
内壁材ひとつにしても、湿度を調整できるもの、汚れがつきにくいもの、消臭機能があるもの等、様々な機能のものが次々に出てきています。建て替えを行うことで、住まいのあらゆる部分に、こうした最先端の設備や素材を導入することができるようになります。
元の家の風情や情緒を残しつつ新たな付加価値を加えるリノベーションをとるか、最先端の設備や素材を導入し快適な暮らしができる建て替えをとるのか、どちらが良いかは、好みや希望によって異なります。何を大切にし、どんな暮らしをしていきたいかを考えながら検討しましょう。
4. リノベーションと建て替えの工期
工期は一般的に、リノベーションは1~2ヶ月、建て替えは3ヵ月~半年程度必要だと言われています。フルリノベーションであっても2ヶ月程度の工期なので、建て替えより早く工事を完了させることができます。
この場合の工期は、実際に工事を行う期間です。これ以外に、契約や工事内容の詳細を話し合う過程を考慮すると、事前に2~3ヵ月程度時間が必要になります。工事の規模や間取り・内装等をこだわるのであれば、更に時間がかかってしまいます。規模が大きくなると、検討する項目も増えるので、建て替えの方が事前の準備期間も時間がかかるでしょう。
5. リノベーションと建て替えの資金の準備
建て替えには住宅建設にかかる費用に加え、解体工事の費用も必要です。リノベーションは、工事の規模や内容によって費用も様々ですが、安い金額ではありません。
どちらの場合でも、まとまったお金が必要になることは変わりないので、多くの方が金融機関のローンを利用し資金の準備をすることになるでしょう。
リノベーションの場合、リフォームローンを利用することができます。リフォームローンは、無担保で借りられるものも多く、審査や書類の提出等に時間がかからないことが特徴です。住宅ローンが残っている場合もリフォームローンを借りることはできますが、利用には金融機関との相談や審査が必要になります。
一方、建て替えの場合は、建て替えローンか住宅ローンを利用することになります。住宅ローンが完済されている場合は、新たに住宅ローンを借りて建て替えを行うことができます。住宅ローンが返済中であれば、その住宅ローンに組み合わせる形で建て替えローンを利用することになります。こちらも金融機関への相談が必要になり、借入額も大きくなるのでいくつかの利用条件が設けられています。住宅ローンを組み合わせている分、返済期間も長くなるので、返済計画をしっかり考えた上で利用を検討する必要があります。
借入期間は、リフォームローンが最長で10~15年のものが多く、建て替えローンは住宅ローンと同じように最長35年のものが多くなっています。借入可能金額は、リフォームローンの上限が500万~1000万円程度、建て替えローンの上限が5000万~1億円程度となっています。
5-1. リノベーションと建て替えの金利の違い
基本的にリフォームローンの金利は、建て替えローンや住宅ローンの金利より高めに設定されています。金利が変動しても、その設定は変更しない金融機関が多いです。借入金額が高額であればあるほど、数%の金利の違いが月々の支払いや全体の返済額に大きな影響を与えることになります。
リノベーションと建て替えで利用できるローンを比較する際には、金利の違いを考慮に入れるようにしましょう。
6. リノベーションと建て替えの耐用年数の違い
リノベーションの場合、見た目は新しくなっても、骨組み等は元の住宅のままなので、中古住宅であることに変わりはありません。手を加えていない部分は改めて工事が必要になる可能性もあります。
一方、建て替えの場合は、基礎や骨組みから全て作り直しているので、新築住宅としての扱いになります。一般的な住宅は建築後30年もつと言われているので、建て替え後およそ30年間は、特に大きな不備も少なく住むことができるでしょう。
また、中古住宅の中には、現在の耐震基準を満たしていない住宅もあります。災害から住宅を守ることは、安心して長く使うためには大切なことです。建て替えを行えば、現在の耐震基準を満たした住宅にすることができます。
7. リノベーションと建て替えの税金の違い
建て替えの場合、不動産取得税、登録免許税、固定資産税、都市計画税等を納税しなければなりません。リノベーションの場合は、規定内で工事をすればこれらの税負担を軽減することが可能になります。
不動産取得税とは、不動産を取得した時に課せられる税金で、売買・新築・増改築・贈与・交換等で不動産を取得した人が対象となります。毎年納税するものではなく、取得後に1度納める税金です。建て替えは新築扱いになるので、納税しなければなりません。
登録免許税とは、不動産登記をする際に課される税金です。建て替えの場合、元の住宅の滅失登記、新築住宅の表示登記、所有権保存登記等が必要になるので、その際に登録免許税を納税することになります。
また、ローンを利用する際の抵当権の設定登記でも、登録免許税の納税が必要です。リノベーションの場合は、基本的に住宅の面積が変わっていなければ登記をすることはないので、納税の対象ではありません。
固定資産税は不動産を所有している人が支払わなければならない税金です。都市計画税は都市計画区域内に不動産を所有する人が支払わなければならない税金です。どちらも、年に1回、固定資産税評価額に応じて課税額が計算されます。
建て替えの場合は、新築と同じ扱いになるので、固定資産税評価額も見直されます。同じ規模で同じ構造の家だとしても、建物自体が新しくなっているので評価額が高くなり、課税額も高くなります。リノベーションの場合、定められた基準内であれば、評価額が変わることはなく課税額が増えることもありません。
このように、納める税金の額は、リノベーションの方が少なくて済む可能性が高いです。それぞれに減税措置も設けられているので、リノベーションであっても建て替えであっても、減税対象となるよう確認して工事を進め、きちんと申請を行えば、納める税金を減らすことは可能です。
8. リノベーションと建て替えの違いその他
リノベーションか建て替えかを検討する前に、そもそも今の住宅が、再建築可能かどうかを確認しておく必要があります。
8-1. 再建築不可の場合
再建築不可の物件は、今は建物が建っていても、一度解体して更地にしてしまうと新しく建物を建てることができません。つまり、今の住宅が再建築不可の場合は、その住宅に住み続けることはできますが、建て替えはできないということです。
再建築不可になっていると、売却したくてもなかなか売れず、ローンも借りにくいという欠点があります。災害等の被害で住宅が倒壊してしまっても、新しい住宅を建てることもできません。
しかし、制限はありますが、リノベーションをすることは可能です。再建築不可の物件は、建築確認を受けることができないので、建築確認がいらない範囲でのリノベーションであれば可能です。
9. リノベーションと建て替えの違いのまとめ
リノベーションも建て替えも、それぞれにメリットとデメリットがあります。住まいを新しくしたい理由や予算、住宅の状態は各家庭で様々なので、総合的にどちらが優れているかを判断することはできません。
自分たちが優先したいことは何なのか、目先の出費や手間だけで判断せず、長い目で見た利益やメリットを考慮して選択しましょう。