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Category  太陽光発電

2018年10月02日 更新

太陽光発電量の計算|日照量データベースを使って3ステップで算出!

太陽光発電を導入する際、誰しもが気になるのは一体どれだけの発電量が望めるかということではないでしょうか。発電量は売電収入に直結するので、一番気にするべき重要なポイントです。しかし、太陽光発電パネルの発電効率が一番良い傾斜角や方位角は、太陽光発電を設置する環境・方法によって異なります。ゆえに「どこに」、「どのように」太陽光発電を設置するかが、非常に重要になってくるのです。

今回は、太陽光発電の発電量に影響する要因について一つずつ解説していきます。また、発電量に一番影響を与える日射量を調べられるデータベースの使い方・見方についても詳しく解説しますので、発電量を計算する際にぜひ活用してください。

1. 太陽光の発電量に影響する要因

太陽光発電の発電量は、様々な条件によって変動します。日射量・緯度・降水量・地形など、これらの条件が一つ変わるだけでも、発電量は増減してしまいます。太陽光発電を運用していく上で、得られる発電量を把握しておくことはとても大切なことなので、発電量に影響する要因を一つずつみていきましょう。

2. 太陽光発電には日射量が欠かせない

太陽光発電の発電量に最も影響するのが日射量です。

日射量が多ければ、発電量も多くなるので、日射量が多く得られる環境に太陽光発電を設置するのがベストといえるでしょう。しかし、若干の地域差はあるものの、基本的に日本のどこでも十分な発電量を期待できるといわれているのでご安心ください。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO」が提供する年間の日射量データによると、日照り時間が多い春や夏に日射量が増加することがわかります。また、夏に一番発電量が多いと思うかもしれませんが、気温が上昇すると太陽光発電パネルが熱くなるため、出力が減少してしまいます。このように、気温上昇は発電量の損失ロスに繋がってしまうため、一概に夏に一番発電量が多くなるとはいえないのです。

2-1. 緯度によって太陽の角度が変わる

太陽光発電を設置する緯度についても、太陽光発電の発電量は変わってきます。緯度が変わると太陽の角度が変わりますので、得られる発電量も異なってきます。

緯度が高く北にいくほど太陽の高度が低くなり、逆に緯度が低く南にいくほど太陽高度が高くなります。太陽高度が高い方が、日射量が多くなるので緯度が低い地域に太陽光発電を設置する方が多くの発電量を期待できます。

2-2. 降水量で発電量が変わる

降水量の違いも発電量に大きく影響します。降水量が少ない地域だと、日照り時間が長いのでより多くの発電量が期待できますが、逆に降水量が多い地域だと前者よりも発電量を期待できません。

日本で降水量が少ない地域は、瀬戸内エリアとなっています。瀬戸内エリアは晴れの日が多いとされているので、太陽光発電を設置するに適している地域といえるでしょう。他にも沖縄や関西は、降水量が少ないとされているので太陽光発電に向いている地域です。

2-3. 地形によって発電量が変わる

太陽光発電を設置する地形についても、発電量に影響する場合があることをおぼえておきましょう。

日陰が太陽光発電パネルに掛かるだけで発電量が一気に低下してしまうことから、太陽光発電を設置する場所は日陰を避けるのが望ましいとされています。しかし、高低差が激しい地形や、大きな木などの障害物がある場合は日陰が多くなりがちです。このように、地形によっては、日陰を避けるために太陽光発電パネルを設置する場所やパネルの傾斜角を変えなくてはなりません。

事前に太陽光発電を設置する地形をよく観察し、効率的に発電できる最適な設置方法を確認しておくと良いでしょう。

3. 太陽光発電の設備の選定

太陽光発電システムのパネルや周辺機器によっては、発電量を多く期待できるものがあります。メーカーによって強みは違いますが、できる限りパワフルな発電が可能なパネルを選ぶと良いでしょう。

国内メーカーでいうと、東芝の太陽光発電パネルは多くの発電量を期待できます。公称最大出力は345W、モジュール変換効率は21.2%とかなり優秀な太陽光発電パネルです。高性能ゆえに、効率よくたくさん発電することができるでしょう。

他のメーカーでも、たくさん発電できるパネルがあるので調べてみてください。しかし、多くの発電が可能ということは、それだけ高性能なので当然価格帯も高くなってしまいます。ご自身の予算と設置環境を考慮して最適な設備を選ぶようにしましょう。

3-1. 太陽光発電を設置する方角は?

太陽光発電パネルを向ける方角は、太陽の光が一番よく降り注ぐ「真南」が最適でしょう。

太陽の日射量が一番多くなるのは12時頃です。この時、太陽の位置が真南にあるので、この方角に太陽光発電パネルを向けるのがベストとされています。真南に向けなければ発電効率が急激に下がるというわけではありませんが、可能であればなるべく南向きに向けると良いでしょう。しかし、東南向き・南西向きであっても真南向きに比べて若干発電量が劣るくらいで、十分な発電量を期待できます。

逆に、北向きについては、発電効率が一番良くない方角です。設置する場所によって、北向きを避けられない場合もあると思いますが、パネルの向きを変えられる場合は北向きにしないよう気をつけましょう。

3-2. 太陽光発電の設置場所の温度について

太陽光発電パネルは、パネル自体の温度が上昇すると出力が下がり、低下すると出力が上がるという特性があります。つまり、夏場は気温上昇により、太陽光パネルの温度が70度以上にも上がることがあり、そうなると、メーカーが提示しているパネル出力より10%以上も低下してしまいます。太陽光発電の発電効率は、温度が1℃上昇するごとに0.5%減少するといわれているので、温度が上がれば上がるほど発電量は下がってしまいます。

熱による発電効率の低下を防ぐには、高温に強い太陽光発電パネルを選ぶのが良いでしょう。パナソニックやソーラーフロンティアは、熱に強い太陽光発電パネル開発に成功しているので、これらのメーカーのパネルを設置すれば夏場でも比較的安定した発電量を望めると思います。

3-3. 太陽光パネルの傾斜角

太陽は、夏に高度が高くなり、冬は低くなります。このように、太陽の高度が変化することから、太陽光発電パネルの最適な傾斜角も季節ごとに変化します。効率的に発電量を増やすなら角度は30度にすると良いとされていますが、これはあくまで平均値なので注意しましょう。太陽光発電を設置する地域・方位・季節によって、最適な傾斜角も変化することを覚えておきましょう。

太陽光発電のパフォーマンスを最大にするためには、設置する太陽光発電の方位をあらかじめ確認し、年間最適傾斜角を把握しておくことが大切です。

4. 自分の土地の日射量を調べる方法

太陽光発電を設置する予定の土地で、一体どれほどの日射量を望めるのか気になるところですよね。そこで国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO」が提供している「日射量データベース」を利用するのをおすすめします。

2012年からNEDOは、国内の年間別日射量データベースを公開しています。他にも様々なデータを公開していて、太陽電池開発やアジア地域の太陽光発電普及に貢献しています。

NEDOの日射量データベースを使えば、日本各地で得られる太陽光発電の日射量を知ることができるので、推定発電量を計算する際に役立つでしょう。一見、専門的なので敬遠してしまうかもしれませんが、それほど難しいものでもありません。データベースの使い方と見方を丁寧に解説していきますので、ぜひ使ってみてください。

5. 太陽光の量をNEDOのデータベースで調べる

NEDOの日射量データベースは、WEB上で閲覧可能ですが、ダウンロードして閲覧することもできます。まずは、WEB版かダウンロード版を選び、データベースをPC上に表示してみましょう。

WEB版:http://app0.infoc.nedo.go.jp/

※今回はWEB版でデータベースの使い方・見方を解説します。

ダウンロード版:http://www.nedo.go.jp/library/nissharyou.html

以下URL飛び先のダウンロード版「日射量データベース閲覧システム」をインストールしてください。

■年間時別日射量データベース(METPV-11)
国内873地点の日射量を20年間(1990~2009年)記録したデータベースから、各時間の方位角・傾斜角などから日射量を調べることができます。降水量や気温などもみることができるので、推定発電量を計算する際に役立ちます。

■年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)
国内873地点の日射量を29年間(1981~2009年)記録したデータベースから、月間の方位角・傾斜角別に日射量を知ることができます。こちらのデータベースも、推定発電量を計算する際に役立つでしょう。

■全国日射量マップ
年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)をマップ化したものです。月間・年間の平均日射量をマップ上で把握することが可能です。

年間の日射量を知りたい場合は、年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)を使うのが良いので、こちらの使い方を説明します。

5-1. 太陽光発電を設置する地域を選択する

年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)を参照するために、まず対象の地域を選択しなくてはなりません。複数の地域選択方法があるので、それについて説明していきます。

まずは、太陽光発電を設置するエリアを選択しましょう。エリア選択については、以下の3通りあります。

A.地図上で設置地域を直接クリックしてエリアを指定する方法
B.右のリストからエリアを選択する方法
C.住所・施設・地名から地域を指定する方法

A、Bについては、地図かリストからエリアと地点の選択が完了すると、「エリア別地図へ」と「この地点のグラフを表示」ボタンがクリックできるようになります。ざっくりとした範囲でよければ、この時点で「この地点のグラフを表示」をクリックしましょう。もっと細かく地域を選択したければ、「エリア別地図へ」を選択します。

「エリア別地図へ」を選択するとこのページに遷移します。「1kmメッシュ地図へ」を選択し、地図上でさらに選択さらに選択範囲を狭めましょう。

設置エリア1km範囲の地図が表示されますので、ピンポイントに設置エリアを選択しましょう。画像の青点線内にある赤いブロックが選択されている状態です。選択が完了したら、「この地点のグラフを表示する」をクリックします。

また、住所・施設・地域検索で地域を選択すると、一気にこのページに遷移するようになっています。赤いブロックの位置を確認した上で、「この地点のグラフを表示する」を選択しましょう。

5-2. 日射量のデータ一覧表を表示する

「この地点のグラフを表示する」を選択すると、以下のような日射量データが表示されます。

<年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)>

5-3. 日射量のデータ一覧表の見方

参照したデータのままでは、年間日射量を求めることはできません。太陽光発電パネルの角度を指定する必要があるので、以下手順に沿って設定してください。

①まずは表示データ選択にて、「角度指定」を選択しましょう。

②次に、角度指定データの表示種類にて、「任意の指定」を選択し、パネルの傾斜角と方位角を指定します。下方の操作パネルでも指定することも可能です。

角度指定が完了すると、画像のようなグラフになります。緑枠で囲っている値が、年間の1日あたりの日射量平均値となりますので、この平均値を365倍すれば「年間日射量」の値を算出することができます。

計算した年間日射量の数値は、太陽光発電の収支計算をする際に使うことができるので、この算出方法はぜひ覚えておいてください。

<年間日射量を求める計算式>

年間日射量=日射量平均値(※)×365日

※NEDOの日射量データベースで平均値を調べる

6. 太陽光発電量の計算方法まとめ

太陽光発電の発電量は、様々な要因の影響を受けることがお分かりになったかと思います。売電収入を可能な限り増やすには、できるだけ多くの日射量を太陽光発電パネルにあてる必要があります。太陽光発電パネルに太陽をより多く・長くあてるために、最適なパネルの方位角や傾斜角をあらかじめ調べた上で、設備を設置するようにしましょう。

また、実際に設置する予定の地域で得られる推定日射量を、あらかじめNEDOの日射量データベースで調べておくことをオススメします。採算がとれるかどうかを確認するための収支計算をする際にも非常に役に立つので、データベースの使い方および見方を覚えておくと便利です。

発電量を多く得るために考慮すべき点が多くあるので、色々と面倒に思うかもしれませんが、この一手間が10年後・20年後の売電収入額を変えることになるので、根気よく勉強していきましょう。