農地のまま太陽光発電ができるソーラーシェアリングの7つのメリット

農地を活用する方法には、農地のまま活用する方法と転用して活用する方法の2種類があります。しかし、農地の種類によっては、転用に制限があり、活用の選択肢が限られていることもあります。
このような転用に制限がある農地でもできる活用方法に、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)があります。近年では、農業の収入を支える副収入源としても注目されている方法です。
今回はこの営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について、概要や導入のメリット、導入の要件、申請方法をまとめました。

 

1. 営農型太陽光発電とは

営農型太陽光発電とは、農地を活用して行う太陽光発電の方法のひとつです。
農地全体を太陽光発電に利用する転用型太陽光発電に対し、営農型では、専用のソーラーパネルを導入することで、太陽光発電システムを導入しながら農業も続けていくことができます。土地と太陽光を、農業と発電とで分け合う(シェア)することから、別名ソーラーシェアリングとも呼ばれています。
営農型太陽光発電では、発電の要となるソーラーパネルを、支柱を立てて地面から高い位置に設置します。このソーラーパネルの下で作物を育てていくことになるので、パネルの配置や高さ、角度などを調整し、作物や農作業に影響が出ないような工夫が必要となります。

1-1. 作物によって必要な光の量が違う

営農型太陽光発電を導入するにあたって気になる点は、作物への影響です。
作物の生育には欠かせない太陽光ですが、たくさん当てれば当てるほど良く成長するとは限りません。作物が十分に生育するためには、必要な光の量というものが決まっており、この量以上の光を当てたとしても、光合成は行われず生育には繋がりません。
このように、作物の生育に必要な光が最大限に当てられている状態を光の飽和と呼び、このときの光の量を光飽和点といいます。光飽和点は作物によって異なり、光飽和点がない作物も存在します。
営農型太陽光発電では、この光飽和点を利用することで農業と太陽光発電の両立を可能にしています。下で育てる作物の光飽和点を確認し、それに値する量の光が当たるようパネルの設置方法を調整します。これにより、上空にパネルを設置することで光が遮られたとしても、生育には影響が出ないよう工夫されているのです。
光飽和点のない作物や光飽和点の高い作物は、生育にたくさんの光を必要とします。一方、光飽和点の低い作物は、比較的少ない量の光でも十分に生育することができるので、営農型太陽光発電とは相性が良いとされています。

1-2. 太陽光発電による遮光率

営農型太陽光発電を導入するにあたり、遮光率についても理解しておくと良いでしょう。
遮光率とは光を遮る度合いを示したもので、営農型太陽光発電においては、ソーラーパネルが地面の作物に対し、どれだけ太陽光を遮っているのかを表します。計算式は「ソーラーパネルの面積÷農地の面積×100」となっており、一般的に遮光率が高いほど太陽光発電の効率は良くなりますが、作物の生育には影響が出てしまいます。
一般的な営農型太陽光発電では、遮光率は30%前後とすることが多いです。季節や地域によっても変化するので、育てる作物の光飽和点や収穫時期も確認しながら、発電と生育の両方に最適な遮光率を検討しなければなりません。常に最適な遮光率になるよう、季節に応じてソーラーパネルの角度を調整できるシステムもあります。

2. 営農型太陽光発電のメリット

ここからは、営農型太陽光発電のメリットをみていきます。農地の活用において、太陽光発電はメリットが多いといわれています。そこで、太陽光発電そのもののメリットと、営農型で行う場合のメリットの2つに分けて確認していきましょう。

2-1. 一般的な太陽光発電のメリット

まずは、一般的な太陽光発電のメリットです。太陽光発電は、農地に限らず普通の土地の活用方法としても注目を集めています。今回は代表的な4つのメリットに着目してみました。

2-1-1. 自然エネルギーの為クリーン

太陽光発電は、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーとしても有名です。化石燃料の枯渇や原子力発電の見直しが進む中、持続可能な開発を支える発電として、太陽光発電のような自然エネルギーは今後さらに普及していくと考えられています。
将来のことを考えても、環境への負荷は少ない方が良いに越したことはありません。土地活用の方法として太陽光発電が広まった背景には、環境にやさしいというメリットがあるでしょう。

2-1-2. 固定価格買取制度で安定した収入になる

太陽光発電で発電した電力は、電気事業者に買い取ってもらうことができます。これは、政府が定めた再生可能エネルギーの固定価格買取制度によるもので、太陽光をはじめ、水力、風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーで発電した電力は、一定の価格で電気事業者が買い取ってくれる仕組みになっています。2012年7月1日からスタートした制度で、再生可能エネルギーによる発電を普及させるために導入されました。
この制度による買取価格(売電価格)は、年度ごとに定められ、地域差が出ないよう全国一律となっています。住宅用も含め太陽光発電の広がりにより、価格は年々低下傾向にありますが、年間を通して価格が固定されているので、市場の影響を受けにくく、安定した収入を得ることができます。

2-1-3. メンテナンスの手間が少ない

太陽光発電はメンテナンスフリーとまでいわれるほど、メンテナンスの手間が少ないことが特徴です。野外に設置することが前提のシステムなので、ある程度の汚れや傷みは事前に想定されており、日ごろからのメンテナンスが必須という訳ではありません。それに加え技術も発達し、汚れの付きにくいソーラーパネルなども導入され始めていることから、清掃などのメンテナンスの負担はかなり少なくなってきています。
必要になるメンテナンスといえば、定期点検と劣化・故障などによる設備の交換くらいです。いずれもある程度時間が経ってから行うものであり、専門業者に依頼するケースが多いですから、自分たちの手間は少ないでしょう。

2-1-4. 土地の価値とは無関係

土地活用における太陽光発電の最大の魅力は、土地の価値に左右されないという点です。太陽光発電の収入に、大きく影響を与えるのは発電量です。発電量が同じであれば土地の価値は関係なく、むしろ安い方が運用の効率は良くなります。
賃貸などは、一定の需要が見込める場所でないと成り立ちません。その点、太陽光発電は、日当たりさえあれば良いので、使い道のない土地でも活用していくことができます。特に農地は、すでに日当たりが確保されているところが多く、太陽光発電には最適な環境といえます。

2-2. 営農型の太陽光発電のメリット

次に、営農型の太陽光発電のメリットを確認していきます。農地で行う太陽光発電には、営農型と転用型の2つの選択肢がありますが、大きな違いは農業を行うかどうかです。農業を維持しながら太陽光発電を導入したいという人のために、営農型ならではのメリットをみていきましょう。

2-2-1. 農作物と売電の両方の収入になる

農業と発電の2つから収入が得られるというのは、営農型太陽光発電の最大のメリットともいえるでしょう。
営農型太陽光発電の導入を検討する人には、不安定な農業からの収入を少しでも安定させたい、高齢になり規模を縮小したため以前ほどの収入を確保できない、収入を増やして兼業農家から専業農家になりたいなど、様々な背景があります。農業だけの収入を大きく上回る成果をあげた事例もたくさんあり、収入面のメリットを感じる人は多いです。

2-2-2. 不作の場合のリスク低減

農業による収入は、豪雨や台風、雨不足など、その年の天候に大きく左右されてしまいます。他にも病気や獣の被害など、不作のリスクは付き物です。営農型の太陽光発電を導入することで、このような不作のリスクを軽減することができます。
太陽光発電による収入は、日照量などの影響は受けますが、比較的安定しています。固定価格での買取なので収入の見込みも立てやすく、農業のように予想外の出来事で収入が減る可能性も極めて低いです。太陽光発電の収入が、不作の損失を完全に補うとまでは言い切れませんが、リスクは確実に減らすことができます。

2-2-3. およその見込み収益額

太陽光発電による収益は、電気事業者による買取価格(電売価格)と発電量(kWh)によって決まります。
買取価格(電売価格)は発電規模によって異なり、平成29年度では、住宅用(10kW未満)が28~30円/kWh、非住宅用(10kW以上)が21円/kWhとなっています。発電量(kWh)は、太陽光発電の容量1kWあたり年間約1000kWhが目安です。メガソーラーの基準となる1000kWの容量の太陽光発電の場合、年間の発電量が約100万kWhとなり、売電額は約2100万円(平成29年度の場合)となります。
1kWの太陽光発電を設置するためには10~20㎡ほどの面積が必要なので、1000kW分の設置には1~2haの広さが必要になります。営農型太陽光発電であれば、作物に光を当てるためパネルの間隔をあけたり、農作業をする際のスペースを確保したりする必要があるので、もう少し広い場所が必要になることもあります。
これまでの数値を整理すると、メガソーラーの場合、1haあたり年間約1000万円程度の収益を得ることができます。これに農業による収益を加えたのものが、農地全体からの収益となります。農地での発電は、大規模なシステムの設置が可能なので、住宅用より高額な収益を得ることも可能です。

3. 営農型太陽光発電の要件

次に、営農型太陽光発電を行う場合の要件を確認していきます。この後に説明している通り、営農型太陽光発電を行うためには農業委員会の許可が欠かせません。農業委員会の許可を得るためには、これから確認していく要件を満たす必要があります。

3-1. 農業委員会の許可があること

農地は本来農業をするための土地として、他の目的で使用することは法律により制限されています。そのため、営農型太陽光発電システムを導入するには、農業委員会の許可を得る必要があります。
営農型太陽光発電では農業は継続していくことになるので、許可を得る必要はないように感じますが、農地を別の目的で使用することには変わりないので、必ず許可を得なければなりません。

3-1-1. 農地の一時転用許可が必要

営農型太陽光発電のための農地転用は、「一時転用」という形での許可になります。一時転用ということで転用できる期間が決められており、その期間は3年以内とされています。
太陽光発電は、初期費用の回収などを考慮すると、10年以上の継続が必要になることがほとんどです。転用の許可を得ているのは3年間なので、3年後も営農型太陽光発電を継続していくためには、再度許可申請を行う必要があります。
この他にも、農業の維持や報告義務など、一時転用の許可を得るためにはいくつか条件があります。以下の項目で取り上げている要件も条件になっているので参考にしてください。
このように、営農型太陽光発電が一時転用での許可という形になったのは、農地の種類によって転用に制限が設けられていることが背景にあります。農地は、広さや立地、営農条件などに応じて、農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地に分けられます。この中でも農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地は、生産性や農地自体の質の高さから、維持していくべき農地として転用の許可を得ることがほとんどできませんでした。
しかし、農地での太陽光発電のニーズも高まり、農業を辞める訳ではないのだから一時転用を許可すべきという声も増えてきました。そこで、営農型の太陽光発電であれば、転用後も農業を継続していくことが可能であり、日常的なメンテナンスの負担も少ないことから農作業にも大きな影響が出ないと判断され、平成25年3月31日以降、条件付きで一時転用が認められるようになりました。
これにより、本来転用が難しい農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地でも、営農型太陽光発電の利用が可能になり、農業以外での収入を得ることができるようになりました。

3-2. 農業を適切に継続していること

一時転用の許可を得るためには、農業を継続していくことが条件となります。また、一度許可を得たとしても、農業が適切に継続されていないと判断されれば、太陽光発電を継続できなくなる可能性もあります。
適切に農業が行われているかどうかは、主に、単収、品質、機械を使用できる環境の3つから判断されます。太陽光発電の導入により作物の生産に若干の影響がでることは考慮されているものの、年間の単収は平均値より2割以上減少してはいけません。また、作物の品質が著しく劣化しないよう、質を維持していくことも条件になります。このように生産と質を守っていくためにも、機械の使用を妨げない範囲でソーラーパネルを設置することも条件になっています。

3-3. 作物に影響のない設置方法

農業を維持していくことが必須の営農型太陽光発電では、ソーラーパネルなど発電システムの設置において、作物の生育に影響が出ないよう最大限配慮しなければなりません。
機械の使用という観点以外でも、作物の生育環境を守るために、ソーラーパネルは地上から約3mの高さを目安に設置する必要があります。設置するパネルや支柱はできるだけ細いものを採用し、いつでも撤去できるよう必要最低限のものでなければなりません。支柱の基礎は撤去することを考慮し、独立基礎や地中に直接打ち込むタイプのものなどに限られ、ベタ基礎や杭基礎などは認められていません。

3-4. 周辺の農業に影響を及ぼさないこと

太陽光発電では、ソーラーパネルの反射により周囲に光害を与えることがあります。農地での利用の場合、光の量の変化から周辺の農業に悪影響が出る可能性もあるので、許可を得るためには周囲に影響が出ないことを確認しておかなければなりません。
周辺の農業への影響については、ソーラーパネルの位置や角度、日照時間、反射量など、専門的な知識も必要になります。もちろん、発電効率や自身の農地での生産なども意識しなければならないので、設置を依頼する業者や農業委員会とも調整をしながら、最適な設置方法を検討する必要があります。

3-5. 農作物の生産状況を毎年報告すること

営農型太陽光発電の維持・継続に欠かせない要件となるのが、年1回の報告義務です。太陽光発電システムを導入した農地において、適切に農業が維持されていることを証明するために、毎年農業委員会へ農業の成果を報告しなければなりません。この年1回の報告を行うことが、一時転用の許可を得るための条件にもなっています。
3年間の転用期間を経て、再び転用の許可を得る際には、3年間の営農実績が必要になります。きちんと報告を行っておくことで、3年後、一時転用の許可をスムーズに得ることができるようになります。

4. 営農型太陽光発電の申請方法

最後に、営農型太陽光発電の申請方法として、申請窓口と申請に必要な手続き・書類を確認していきます。地域や農地の規模によっても申請方法や手続きに違いが出てくるので、正確な情報は改めて確認するようにしてください。

4-1. 申請窓口

一時転用の許可申請は、各自治体の農業委員会が窓口となっています。転用許可の申請先は、都道府県知事と農林水産大臣の2種類がありますが、いずれの場合も自治体の農業委員会から手続きが可能です。
実際に申請を行う場合は、書類などを準備し始める前に、まず農業委員会へ確認に行くようにしてください。農業委員会では、手続きの流れや必要な書類、申請の締め切り日などについて説明してもらうことができます。これらは自治体によって若干異なることがあり、農地によっては特別な準備が必要な場合もあるので、できるだけ早い段階で農業委員会へ確認に行きましょう。

4-2. 申請に必要な手続き・書類

農業委員会で確認が取れたら、一時転用許可の申請準備を始めます。
まず必要になるのは、一時転用許可の申請書です。農業委員会へ確認に行った際にもらうこともできますし、多くの自治体ではホームページからダウンロードすることも可能です。自治体によって様式が決まっているので、定められたものを使うようにしましょう。
営農型太陽光発電の場合は、追加で以下の書類が必要になります。

・再生可能エネルギー発電設備認定が確認できる書類
・営農型発電設備の改築に係る報告
・営農型発電設備の設計図
・営農型発電設備の下部の農地における営農計画書及び営農への影響見込書

自治体や農林水産省のホームページから、様式や記入例を確認することができます。一部の書類の作成には、発電設備の設置を依頼する業者などの協力も欠かせません。作成に時間がかかれば、それだけ申請が遅れてしまうので、できるだけ早めに用意できるよう準備を進めましょう。
この他にも、通常の農地転用手続きでも必要になる土地の登記事項証明書、位置図、公図の写し、事業計画書、資力や信用を証明する書類などが必要になります。すぐに用意できるものもありますが、一度にまとめて用意するとなると大変手間もかかるので、申請日を確認した上で計画的に進めていきましょう。
必要な書類の準備が整ったら、農業委員会の窓口で申請手続きを行います。その後、農業委員による書類審査や現地調査が行われます。場合によっては追加の資料の提出を求められることもあります。無事転用が認められれば、転用許可証が渡され、その後設置工事などを進めていくことになります。

 

5. まとめ

メリットの項目でも確認した通り、太陽光発電は農地との相性が非常に良いです。営農型太陽光発電であれば、収入の安定にも繋がりますし、転用が難しく農業でしか使えなかった農地でも副収入を得ることができるようになります。
ただし農業を続けていくことは条件になるので、導入の際には、農業との両立や将来的な継続についても十分検討しておいてください。許可申請や太陽光発電システムの導入には時間もかかるので、興味がある人は少しずつでも情報を集めておくと良いでしょう。

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