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Category  戸建賃貸経営

2018年01月31日 更新

田舎の家など売りにくい不動産を売る時のポイント

田舎に住んでいた両親や親戚から、その土地や家を相続することがあります。自分自身はその場所に住んでいないため、相続したその家は空き家のまま放置されているケースが多く、日本各地で空き家が増加しています。

人が住まない家は劣化が激しく、そのままにしておくと金銭的な面でもデメリットが多いため、売却を考えている人もおられると思います。田舎の家は、都会とは違って買い手がなかなか見つからず売りにくい傾向にあります。

田舎の家を売る際に注意したいポイントについて見ていきます。

1. 田舎の物件を売るのは条件が厳しい

田舎の家は都会と比べると売れにくくなっています。広い土地でのんびりと過ごしたいという方が買い手になることが多いですが、利便性の問題や立地条件などで買い手がなかなか見つかりません。

コンビニが近くにない、国道から大きく離れている、など利便性に欠けることが多く売却価格も市街地に比べると安く設定されてしまいます。

 

2. 田舎の家の特徴

都会と違って土地が広いことが多い田舎の家は、都会の家とは違う特徴があります。田舎の家独特のメリットとデメリットがあります。どんなメリットやデメリットがあるのかお知らせします。

 

2-1. 家が広い

田舎の家は、土地が安いこともあって敷地面積が広いです。祖父母やその前の世代から代々伝わっている家であれば、親子何世代にもわたって一緒に住んでいることもあります。

家が広い、というと聞こえがいいですが、現代社会の核家族が多い現状では、家が広すぎて逆に使い勝手が悪いと捉えられることがあります。

家が広すぎて買い手が見つからないといった場合には、家の一部を解体して庭を広くしたり、分筆をして別の物件とする方法もあります。

 

2-2. 下水道が普及していない

都会で住んでいるとあまり馴染みがないですが、田舎の古い家には下水道が通っていない場合があります。下水処理をしっかりとしていない場合、いくら綺麗に管理されている家であってもその家に住みたいと思う人を逃してしまうことも考えられます。田舎の家を売却する際に一番と言っていいほど気を付けたい部分です。

 

2-2-1. 下水道の普及率は?

平成28年3月現在、日本全国の下水道普及率は77.8%となっています。東京や横浜、大阪などの政令指定都市であれば下水道の普及率はほぼ99%を超えている都市が多いですが、田舎になればなるほど、下水道の普及率は低くなっています。

田舎の地域ではまだ下水道が完備されておらず、浄化槽や汲み取り式のトイレを使用している家も多くあります。

 

2-2-2. 浄化槽について

現在であれば、生活排水をすべて処理する合併浄化槽の設置が義務付けられていますが、昔の家には合併浄化槽が設置されていないことがあります。古い家の浄化槽は汚水のみを処理する単独浄化槽であることが多いです。その場合、買い手は浄化槽の入れ替えをしなくてはなりません。

購入した家に、プラスのお金を出して工事をしなければならないとなると、購入意欲をそがれてしまう恐れがあります。あるいは、下水処理に必要な費用の分、値下げを求められることもあります。

下水道が完備されていない家の場合、その土地まで下水道を引く工事ができるのであれば、売却前に工事をしておくほうが売りやすくなります。工事には数十万程度の費用が掛かりますが、下水の工事をしておくことで売却時に「下水道完備」と記載することができます。

田舎での生活を考えている人がチェックする重要な項目ですので工事をしておくメリットは大きいです。

 

3. 田舎の家の需要

都会に住んでいる状態で田舎の家を相続した場合、田舎の家の使いみちがなかなかわからないことがあります。田舎の家の需要を知ることで、自分自身で買い手を探しやすくなります。

田舎の家は大きく分けて3つの需要があります。

 

3-1. 住宅用途

まず一つ目は、家なので当たり前と思うかもしれませんが住宅としての用途です。通常の家として使用してもらうので、ごく一般的と言えます。

 

3-1-1. 自治体の移住サポート

最近では、田舎に移住してゆっくりと暮らしたいという人が増えています。定年をすぎた高齢者だけでなく、自然の中で子供を育てたいという考えや、療養目的のために空気が綺麗な自然の中で暮らしたいなど、田舎への移住の関心は高まってきています。都会と同じ値段かそれよりも安いお金で、広い家に住めるという点も魅力的です。

各自治体によっては、移住のサポートとして補助金を出している地域もあります。買い手を探す場合、その土地への移住希望者は大きなターゲットとなります。

 

3-1-2. セカンドハウス

田舎に移住してそこに定住するわけではなく、セカンドハウス、いわゆる別荘としての需要もあります。都会に住んでいる人が田舎の土地に別荘をもつというケースは多くみられます。この場合、喧騒を離れて静かに過ごしたいと考えている場合が多いので、郊外から離れていて周りに何もない場所が好まれやすいです。

 

3-2. 事業用途

住宅としての用途以外では、田舎の家を事業として活用する需要もあります。最近では、古さが味わい深いとして古民家をそのまま活用する事業も増えてきています。古い家だから売れないと諦めるのはもったいないです。

 

3-2-1. 古民家の活用

最近流行っている古民家カフェなどは、昔ながらの古民家をそのまま利用してカフェや食事処にしているお店が多いです。個人としての経営だけでなく、企業が行っていることもあるので、買い手の選択肢が広がります。

その他にも、体験の宿泊施設や介護施設、近隣の人や子どもたちのコミュニティを行う場所としての用途もあります。各自治体に問い合わせをしてみると、そういった事業として使用するための空き家を探している企業や人物を紹介してくれる可能性もあります。

 

3-2-2. 賃貸

家の立地環境がいい場合、賃貸物件として貸し出したいと思う企業もいるかもしれません。立地条件はいいにも関わらず家が老朽化しているといった場合、一度家を取り壊してからマンションやアパートなどに建て替えて利用することもできます。

企業によっては社員寮などとして使用したい会社もあるかもしれないので、田舎の土地や家でも状況によっては、賃貸物件としての需要がある可能性があります。

 

3-3. 近隣住民のニーズ

田舎の家や土地の買い手として可能性が高いのは、近隣住民です。田舎に住んでいる人は多くの場合土地を持っています。隣に住んでいる人であれば、自分の持っている土地につながった土地を手に入れることができるチャンスでもあります。

田舎にはお盆やお正月などイベントごとに親戚が集合することも珍しくないので、隣にもう1つ家を持っている場合はその家をゲストハウスとして使用することもできます。同居や二世帯住宅を考えている場合、その家を使用することもできます。

 

4. 田舎の家を売るポイント

田舎の家を売却する際には押さえておきたいポイントがいくつかあります。ちょっとしたことですが、気を付けているのといないのとでは、売却価格や売れ行きに影響が出る部分です。

少しでも買い手を見つけやすくするために、売り手側で出来ることはしておきましょう。

 

4-1. 適正な相場を把握する

一般的に、田舎の家でよく売れている価格帯は100坪の土地で約500万円と言われています。リフォームなどの工事をせずにすぐ売り出して住める状態の家であれば、1000万円程度の物件に人気があるようです。

高く売りたいからといって相場よりも高めに設定をしてしまい売れ残ってしまっては意味がありません。不動産会社とよく相談をして、適正価格を設定することが売れやすくする近道です。

 

4-2. 管理をしっかりしておく

家の売却を不動産会社に依頼した後、売れるまでそのままにしておくのではなく、定期的にしっかりと管理をしておくようにすることが大切です。管理の行き届いている家であれば、それだけで買い手が好みますし、売り手側への印象も良くなります。

 

4-2-1. 雑草などの手入れ

田舎の家の場合、庭がついていることが多いです。定期的に庭の手入れをするようにしましょう。木が生えている場合などはそのままにしておくと好き放題に伸びてしまってあばら家のように見える場合もあります。

また、果物がなる木である場合は風や鳥につつかれたりして地面に落ちていることも考えられます。果物が腐って異臭を放っているなど、現地確認にきた購入希望者に悪い印象を与えることのないように、手入れはしっかりとしておきましょう。

 

4-2-2. 外見、内部の見栄え、傷み

同じ立地条件、同じ販売価格の家があったとして、外観が綺麗な家と老朽化が目立つ家では、綺麗な家の方が売れるのは当たり前です。

汚れている壁、蜘蛛の巣がある軒下などでは購入意欲がそがれてしまいます。家の内部に傷みのひどい部分があるのであれば、売却前に売り手側で修繕しておくことも必要です。

遠方地にある家のため管理が難しい場合、地元の管理会社に依頼することもできるので、そういったサービスを利用することをおすすめします。

 

4-2-3. 看板を立てるだけでも効果がある

そもそも田舎の家は買い手が少ないです。売買を成立させるためには、少しでも多くの購入希望者の目にとまることが大切です。

10人の人に見てもらうより、100人の人に見てもらう方が売却できる可能性が高くなります。家を売り出す場合はその土地近辺に看板を立て、売り物件であることが分かるようにしましょう。

 

4-3. 安くても売ってしまう方が良いケースがある

家を売却するとなると、売り手側の心理としてはやはり少しでも高く売りたいと思うものです。しかし、家を持ち続けていると様々なデメリットが生じて自身の負担が大きくなることもあります。結果的に安くても売ってしまった方が将来的に得をすることもあります。

 

4-3-1. 金銭的な負担が積み重なる

不動産を所有していると、毎年固定資産税がかかってきます。家に住まずに空き家のままにしているとしても、管理維持費用も発生します。

庭の草刈りや風通しなどを地元の管理代行業者などに依頼する場合はその分の費用も必要です。雪が降る地域にあるのであれば毎年冬には雪かきをするなどして建物が傷まないようにしなければなりません。遠方の場合は見に行くための交通費もばかになりません。

家を売却するまではこのような金銭的負担がずっと続くことになります。希望の売却価格より安くても、売れるときに売ってしまう方がいいこともあります。

 

4-3-2. 時間が経つほど利益が減少する

建物の価値は新築から年数を経るごとに少しずつ下がっていきます。建築から20年ほどの家であれば、少しではありますが家にも値段がつくことがあります。土地によっては年々地価が下がっていくケースも少なくありません。

地価が下落すると今までの管理維持費と差し引いたときに損をすることもあります。将来的な損失を防ぐためにも、早めに見切りをつけることも必要です。

 

4-3-3. マイホーム特例、相続時の特例を使う

家を売却する場合には様々な特例が受けられます。その家に住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売却した場合、マイホーム特例が受けられます。また、相続で家を手にした場合、相続から3年10カ月以内に売却すれば相続税の取得費加算の特例を受けることができます。

マイホーム特例は3000万円の特別控除を受けることができますし、相続税の取得費加算の特例は譲渡所得税や住民税が軽減されます。どちらも大きなメリットになるので、特例を受けられる期間までに売却してしまう方がいいでしょう。期間が過ぎてしまうと特例の対象外になるので注意が必要です。

 

4-4. 安い土地は不動産業者のメリットが少ない

土地や建物を売却するとき、個人で買い手を見つけてくるというのは非常に難しく、基本的には不動産会社に仲介を依頼することになります。

相場で1000万円程度の家であっても不動産会社は売却価格として700万~800万円を提示してくることが多いです。田舎の家は買い手が少ないため、売れなければ手数料が入らないので、相場価格より多少安くなったとしても早く物件をさばきたいということです。

不動産会社によりますが、物件の価格が400万円を超えている場合は、会社側の収入は物件の売却価格×3%+6万円が仲介手数料の上限となります。これに別途、消費税がかかります。

例えば700万で家を売った場合、27万円の報酬が仲介業者に入ることになります。なかなか売れず、一般的な相場価格よりも安く売らざるを得ない田舎の土地や家は、不動産業者にとってメリットの少ない物件になります。

 

4-4-1. 不動産会社にも得意不得意がある

不動産会社にも得意なジャンルと不得意なジャンルがあります。

例えば都心で営業している不動産会社は、一人暮らしに最適のワンルームマンションなどが得意ですが、山林付近の物件は苦手、ということがあります。山林や田舎の土地・家屋を扱っている不動産会社であれば、持っている情報も違うので買い手が見つかりやすい可能性が高くなります。

また、大手のチェーン方式の不動産会社では営業所ごとに基本の対応エリアがきめられているので、エリア外には対応してくれなかったり、情報を持っていない会社もあります。郊外にある小さな不動産会社でも積極的に販売活動を行ってくれる会社もあります。

不動産会社を選ぶ際には、1つの会社だけでなく、複数の不動産会社に相談することをおすすめします。

 

4-4-2. 自分でも買主を探す

少しでも売れる可能性を広げるためには、やはり自分でも買い手を探すことが大切です。自分自身に伝手がない場合は地元の人の協力をあおぐようにしましょう。近隣住民の人に土地や空き家を希望している知り合いがいないか聞いてもらったり、地域の地区長などにお願いする方法あります。

また、ふるさと回帰支援センターというNPO法人もあります。このセンターでは、地元に帰ってきて住みたい人や新たに移住したいといった地方暮らしを希望する人の相談に乗っています。

その地域に家を探している人の情報なども知っている可能性が高いので、売却を考えている土地のセンターに一度相談してみるのもいいでしょう。

 

4-5. 空き家バンクを活用する

家の売却には不動産会社に仲介をしてもらうことが一般的でしたが、最近では空き家バンクというシステムが注目を集めています。

空き家バンクとは、各地の自治体が地元で空き家になっている建物を紹介するというシステムです。賃貸物件や売却物件としてインターネットなどで紹介し、田舎の家を買いたい人や田舎に住みたい人へ情報を提供しています。

空き家バンクではその物件の外観写真や間取り、築年数や建屋面積などの詳細な情報を知ることができるため、買い手が見つかる可能性が高いです。日本全国で約400ケ所の市町村が行っているサービスですので、地元の自治体が空き地バンクを実施しているのであれば登録しておくことをおすすめします。

 

5. どうしても手放したいなら寄付という手段もある

家を売却しようと思ってもなかなか思うように買い手が見つからず、そのまま所有しておくのも税金がかかるので避けたい場合は、寄付をするという手段もあります。寄付を考えた場合、最初に候補として思い当たるのはその家がある自治体への寄付だと思います。

しかし、実際に寄付を行うのは非常に難しい現状があります。土地や家は所有していると固定資産税を納める必要がありますが、固定資産税は自治体の重要な財源です。そのため、固定資産税が取れなくなる寄付は断られることが多いのです。

 

5-1. 自治体への寄付

各自治体によって寄付の申し込みの流れは異なりますが、基本的な流れとしては以下のようになります。

1.各自治体の担当窓口に寄付をしたい旨を伝え相談する。
2.寄付をしたい土地や家の調査が行われる。
3.寄付が可能であると判断された場合、必要書類を提出する。

必要な書類は、現地の写真や登記簿謄本、所有権転移登記承諾書など様々です。これらも自治体によって異なるので、自治体への確認が必要です。

 

5-2. 個人への寄付

個人に寄付をする場合、贈与扱いになります。寄付をする相手(受け取り側)は寄付された家が資産として増えるので、贈与税がかかります。110万円までは贈与税の基礎控除がありますので、110万以下の資産であれば課税対象にはなりません。

また所有権転移の登記費用についてはどちらが負担するのかの確認もしておくと良いでしょう。少しでも持ち出しが出るなら要らないと言われる可能性がありますので、贈与税の件とあわせて、受け取り側と齟齬のないように事前に相談しておきましょう。

トラブル回避のために、贈与契約書を作成することもおすすめします。

 

6. まとめ

田舎の家を売却する際の注意点について説明してきました。

まずは購入希望者に少しでも興味を持ってもらえるように、価値がある家だと思ってもらうことが大切です。多少の事前出費は覚悟した上で、管理を怠らずに綺麗な状態を保ちましょう。

田舎の家は買い手がなかなか見つからず、自分の思っている以上に売却が難しい物件です。将来的にかかってくる管理維持費などと照らし合わせて、所有しているだけで損になるといった状態は避けるようにしましょう。

売却価格にこだわらず、特例を受けることができる期間に売り抜けてしまうことも検討された方か良いかもしれません。