事例紹介

Category  太陽光発電

2018年10月01日 更新

太陽光発電の今後の見通しと買取価格の推移(2018年版)

政府の再生可能エネルギー普及拡大により、太陽光発電設備を保有する人が年々増加傾向にあります。太陽光発電を導入する人が増えている理由は、国の制度を利用することで、太陽光発電で発電した電気を売ることで収入を得ることが可能となっているからです。

しかし、その電気の買い取り価格は一定ではなく、太陽光発電の普及率を加味して年々更新されています。2017年以降の太陽光発電の電気の買い取り価格がどうなっていくのか、気になる今後の見通しについてみていきましょう。

この記事でわかること

1. 太陽光発電の現在【2017年の買い取り価格】

初めに、2017年度の住宅用太陽光発電(出力制御の有無、ダブル発電)と産業用太陽光発電の買い取り価格をそれぞれみていきましょう。

1-1. 住宅用太陽光発電(10kW未満)の電力価格

太陽光発電システムの総出力が10kW未満のものは、一般家庭に取り付けられることが多く「住宅用太陽光発電」と呼ばれます。また、この住宅用には「出力制御機器」という電力会社への送電を抑制する機器の有無によって買い取り価格が変わる場合があります。それを踏まえた上で、2017年度の買い取り価格をみていきましょう。

1-1-1. 出力抑制のない地域(東京電力、中部電力、関西電力)

東京・中部・関西地域は、出力制御機器の取り付け義務はありません。出力制御機器が取り付けられていない太陽光発電の2017年度の買い取り価格は、28円/kWとなっています。

1-1-2. 出力制御のある地域(北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)

人口が比較的少ない地域に設置する太陽光発電については、需要を上回る電気の供給過多を危惧し、全ての太陽光発電に出力制御機器の取り付け義務があります。出力制御機器が取り付けてある太陽光発電の買い取り価格は、30円/kWです。売電できない期間があることを考慮し、出力制御機器なしの場合よりも買い取り価格が高くなっています。

1-2. 住宅用太陽光発電(10kW未満)ダブル発電の価格

太陽光発電にプラスして、エネファ-ムなどの創エネ機器でさらに発電量を増やすことをダブル発電と呼びます。固定価格買い取り制度の性質上、創エネ機器発電の電気が含まれているダブル発電の電力は通常よりも低く取引されてしまいます。

1-2-1. 出力抑制のない地域(東京電力、中部電力、関西電力)

出力制御機器取り付け義務がない東京・中部・関西地域でのダブル発電の買い取り価格は25円/kWとなっています。

1-2-2. 出力制御のある地域(北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)

また、出力制御機器の取り付け義務が発生する地域に関しては、27円/kWで取引されます。

1-3. 産業用太陽光発電(10kW以上)の電力買い取り価格

マンションや工場といった大規模な設備に取り付ける総出力10kW以上の産業用太陽光発電の買い取りりについては、21円/kWで取引されます。一つ注意しておきたいのは、産業用は名の通り法人を想定して価格が設定されているので買い取り価格に税金が掛かることを覚えておきましょう。

2. 太陽光発電の2016年までの電力買い取り価格の推移

売電制度ができた当初は、現在と比べてかなり高価格で取引されていました。投資として有益だということで、年を追うごとに太陽光発電の普及率が上がりましたが、反比例して買い取り価格はどんどん低下していきました。

3. 電力の買い取り価格と設備設置費用は連動してきた

太陽光発電の電力買い取り価格は、太陽光発電を設置する際にかかった費用を10年以内に回収できる価格に基づいて設定されています。太陽光発電の普及がまだあまり無かった時代は、需要がなく太陽光発電システムの値段がかなり高額だったため、買い取り価格も高く設定されていました。

しかし、近年は太陽光発電の普及率が上がり、システムが安く求められるようになったことで、それに伴い買い取り価格がどんどん低下しています。このように、太陽光発電の初期費用と買い取り価格は常に連動してきたことから、今後太陽光発電の普及率がさらに上がることで、買い取り価格もさらに下がっていくことが予想できます。

4. 太陽光発電の今後の見通し【買取価格】

それでは2018年以降の買い取り価格はどうなっていくのでしょうか。現在、2019年度まで買い取り価格が発表されているので、住宅用太陽光発電(出力制御の有無・ダブル発電)と産業用太陽光発電の買い取り価格をそれぞれみていきましょう。

4-1.  住宅用太陽光発電(10kW未満)の電力価格

経済産業省よると、住宅用太陽光発電の買い取り価格はなるべく早く引き下げる方針だと発表しています。ドイツの爆発的な太陽光発電普及によって固定価格買い取り制度が立ち行かなくなってしまった事例の二の舞を危惧し、政府はなるべく買い取り価格を下げたいと考えているようです。

このことから、今後の太陽光発電の電力買い取り価格は低下していく一方であることには間違いありません。

4-1-1. 出力抑制のない地域(東京電力、中部電力、関西電力)

出力制御のない地域の住宅用太陽光発電について、2018年度は26円/kW、2019年度は24円/kWとなります。

4-1-2. 出力制御のある地域(北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)

出力制御の取り付け義務がある地域の住宅用太陽光発電について、2018年度は28円/kW、2019年度は26円/kWとなります。

4-2. 住宅用太陽光発電(10kW未満)ダブル発電の価格

では、同様にダブル発電の2018年度以降の買い取り価格もみていきましょう。

4-2-1. 出力抑制のない地域(東京電力、中部電力、関西電力)

出力制御のない地域のダブル発電について、2018年度は25円/kW、2019年度は24円/kWとなります。

4-2-2. 出力制御のある地域(北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)

出力制御の取り付け義務がある地域のダブル発電について、2018年度は27円/kW、2019年度は26円/kWとなります。

4-3. 産業用太陽光発電(10kW以上)の買い取り価格

産業用太陽光発電については、2018年度以降の買い取り価格は未定となっていますが、2メガワット(MW)上の産業用太陽光発電については、今後「入札制度」を実施して買い取り価格を決定することになっています。

2017年度と2018年度で合計3回入札を実施し、効果を見ながら2019年度以降の入札制度に反映させていくそうです。

5. 太陽光発電の今後の見通し②

太陽光発電の売電制度は2009年から始まったので、買い取り期間の10年後である2019年を境に続々と買い取り期間終了の設備が出てきます。政府は、その2019年度を目安に家庭で使用する電気料金をまかなえる水準まで買い取り価格を引き下げる方針であると発表しています。

5-1. 今後の買い取り価格は年度毎の決定から数年先までまとめて決定に

2017年4月1日より、固定価格買い取り制度の改正がなされたことで、産業用太陽光発電以外の買い取り価格が3年度分まとめて設定されることが決まりました。3年先まで買い取り価格を発表することで、業界全体で買い取り価格を押し下げていくという意思表示を感じることができます。

6. 太陽光発電の今後の見通し【自家消費の方がおすすめ】

売電価格がどんどん下がる中、2018年度以降は太陽光発電で発電した電気を売電するよりも、自家消費したほうがお得になるといわれています。太陽光発電の普及拡大により、確実に賦課金が高額になると予想されており、ほとんどの地域で売電単価が電気料金単価を下回ってしまう可能性があります。

ゆえに、発電した電気は売電に回すのではなく、自家消費していくほうが得策といえるでしょう。

6-1. ダブル発電の買値が同じになり蓄電池の設置が進む

2017年度までは、通常の売電価格と比べてダブル発電は3円ほど低価格に設定されていましたが、2018年度からはほとんどこの差がなくなることが決定されています。2018年度からは蓄電池などを置いて、ダブル発電をすることで発電量を底上げすることで売電収入を上げることが可能と言われています。

6-2. 再生可能エネルギー発電促進賦課金の負担増大

太陽光発電を設置した人が得られる売電収入は、国民が負担する賦課金によってまかなわれています。つまり、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギー発電の普及率が年々増えているということは、同時に国民の賦課金の負担も増えることを意味しています。2018年度以降も賦課金の額はしばらく上がり続けるでしょう。

6-2-1. 太陽光発電の賦課金の2016年度までの推移

2016年度までの賦課金の推移は以下の通りになります。太陽光発電の普及が進めば進むほど、売電制度を支える賦課金の増加は必須となるので国民の負担は大きくなっていきます。

【対象年度:1kWあたりの再エネ賦課金(一般家庭の1ヶ月の賦課金)】

  • 2012年:0.22円/kW(66円/月)
  • 2013年:0.40円/kW(120円/月)
  • 2014年:0.75円/kW(225円/月)
  • 2015年:1.58円/kW(474円/月)
  • 2016年:2.25円/kW(675円/月)

6-2-2. 太陽光発電の2017年度以降の見通し

2017年以降も賦課金は増加し続けます。太陽光発電の普及率は増加していく一方なので、従って太陽光発電の発電量も必然的に増えていきます。発電量が増えれば、買い取りり電気量も増えますので、その資金をまかなう賦課金も増えていくでしょう。

6-2-3. 固定価格買い取り制度の終了後は賦課金の徴収はできなくなる

固定価格買い取り制度の買い取り期間が終了した太陽光発電について、発電した電気に賦課金が発生しなくなります。例えば2009年に導入した太陽光発電の場合、買い取り期間終了になる2019年度以降は賦課金が徴収できなくなるということです。

つまり、固定価格買い取り制度自体が終了すれば、賦課金が徐々に下がり、最終的には負担ゼロになります。

7. 固定価格買い取り制度終了後の電力の買い取り価格は?

太陽光発電を導入する方が一番気になるポイントである買い取り期間終了後の買い取り価格について、今後どうなっていくのかみていきましょう。

7-1. 国の制度上の認識は?

国は再生可能エネルギーの普及を第一目標とし、その施策として固定価格買い取り制度を施行しました。太陽光発電の導入促進のため、初期費用を回収できる仕組みにして導入した人のメリットになるようにしていますが、固定価格買い取り期間が終了した後の買い取り方法については制度の管轄外というのが国の認識です。

固定価格買い取り期間終了後は、事業者と設備保有者との間で相談した上で買い取り価格を決定するよう政府が言っていることからも、固定価格買い取り期間が終了すれば国の保証は受けられなくなります。

7-2. 10年・20年後に現在の買い取り価格が維持される見込みは?

買い取り自体は継続されるといわれています。少なくとも再生エネルギー比率を22〜24%まであげる目標を達成するまでは電力の買い取りはあると考えられますが、利益がでるような高単価な取引がいつまでも続くのは難しいという見解が多いです。

7-3. 終了後の買い取り価格の答えがでるのは2022年

2012年から固定価格買い取り制度が施行されたため、その買い取り期間が終了する2022年に買い取り価格が実際どうなるのか答えがでます。しかし、政府が出している資料などから買い取り期間終了後の買い取り価格を予測することは出来るのでみていきましょう。

7-3-1. 予測では11円/kWとも

買い取り期間終了後の買い取り価格については、様々な憶測がなされていますが、住宅用は11円/kWまで下がると言われています。固定価格買い取り制度を導入したドイツの例で、買い取り価格が約10円まで下がったのを考えると可能性は十分高いといえます。

7-3-2. 買い取り価格11円でのシュミレ-ション

では、買い取り価格が11円/kWまで下がった場合の、売電収入シミュレ-ションをしていきます。「晴れの国」と呼ばれるほど降水確率が低い岡山県に太陽光発電を設置したと想定し、設置から11年後の総出力毎の月収・年収、そしてさらに10年後の総売電収入合計を算出しました。

7-4. 電力の小売自由化で買い取り価格も競争となる可能性も

大手電力会社の独占状態であった電力業界ですが、電力の自由化によって、売電・買電先を自由に選ぶことが出来るようになり、様々な企業が電力の小売に参入するようになりました。この状況から、電力の調達量確保のために太陽光発電の買い取り価格を他の企業よりも高く買い取ろうとする企業が出てきています。

このことから、買い取り価格は下がる傾向にあっても、発電して全く売れないという心配はないと考えられているので安心してください。

8. まとめ

太陽光発電の導入を考える上で、買い取り価格の動向は必ず押さえておかなくてはならないポイントです。太陽光発電の普及拡大による影響で、売電価格が下がっていくのは決定事項ですが、まだまだ投資や自家消費としての有益性があるので、今後は蓄電池などダブル発電をして発電量を増やすなどの工夫を用いて運用していく必要があるようです。