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Category  太陽光発電

2018年10月02日 更新

太陽光発電の設置方法|農地転用の7つのメリットと2つのデメリット

太陽光発電は、農地の活用方法として、とても有効な選択肢です。農地ならではの良さを活かしながら運用できるところが魅力です。しかし、太陽光発電を設置する場所として農地を利用するためには、農地を管理する農業委員会から農地転用の許可を得る必要があります。
今回は、農地転用して行う太陽光発電をテーマに、あらかじめ知っておくべき農地転用の許可基準と、農地を転用して行う太陽光発電のメリット・デメリット、収支についてまとめました。

1. 農地転用とは

農地転用とは、本来農業のために使われる農地を、住宅地や駐車場など他の目的で使用することをいいます。農地は、農業をするための土地として、他の目的で利用することが法律で制限されており、基本的に農家以外の人が、農地を所有することもできなくなっています。これは、国内の農業と食糧生産を維持・確保していくためであり、農地に関しては固定資産税などの優遇措置も設けられています。

このように、行政によって守られている農地ですが、転用の基準を満たし、きちんと手続きを行えば、他の目的で使用することが可能です。

 

2. 農地転用の許可基準

農地を転用するためには、農業委員会から許可を得る必要があります。これは、農業を維持していくためにむやみやたらに農地が転用されることを防ぐことに加え、限られた土地を有効的に利用していくために必要とされている手続きです。

許可の基準は、大きく分けて2つの観点から設けられています。

2-1. 地域別の農地転用の可否

1つめの基準となるのが、農地がどこに立地しているかという点です。具体的には、周辺の土地の様子や市街地化の状況、農地の広さや農業のしやすさ(営農条件)などが条件として挙げられます。これらの立地条件に応じて、農地は5つに分類され、それぞれで転用許可のとりやすさに違いが出てきます。

 

2-1-1. 農用地区域内農地

農用地区域内農地とは、自治体の定める農業振興地域整備計画において、中長期的に農地として確保すべき土地として定められている農地です。周辺の農地も含め、農業の振興を図るための中心を担う地域ですから、農地自体の利用価値が高く、農地確保の優先度も高いので、原則転用は認められていません。

もちろんあくまで原則なので、転用が認められるケースもありますが、ほとんどが農業用施設などに限られています。転用の許可を得るためには、許可申請手続きの前に、農用地区域からの除外申請などが必要になります。

 

2-1-2. 甲種農地

市街化調整区域内にあり、8年以内に土地改良事業などの農業公共投資の対象となった、特に良好な営農条件を備えている農地を甲種農地といいます。

市街化調整区域とは、都市計画法に基づき定められた、市街化を抑制すべき地域を指します。この地域内では、建物の建設のような開発行為に制限が設けられており、農地などの維持・確保が優先されています。

甲種農地はこの市街化調整区域に該当し、その中でも特に、8年以内に農業公共投資の対象となり、良好な営農条件を備えている農地と定められています。公共投資の対象となるような農地なので、農地としての生産性や質も高く、原則転用は認められていません。

ただし、「土地活用が難しい市街化調整区域を有効活用する7つの方法」こちらでご紹介している通り、太陽光発電に農地転用することは可能な場合があります。

 

2-1-3. 第1種農地

10ha以上の規模の集団農地で、農業公共投資の対象となるような良好な営農条件を備えている農地を第1種農地といいます。甲種農地と似ている点も多いですが、第1種農地には市街化調整区域内という条件がありません。そのため農地として確保すべき優先度は甲種農地よりも低くなっています。

農地自体の生産性や質は高いと評価されているので、転用は原則許可されません。公共性の高い事業などであれば、例外として認められることはあります。

 

2-1-4. 第2種農地

第2種農地には、鉄道の駅が500m以内にあるなど、今後市街地化が見込まれる地域にある農地や、生産性の低い小集団農地が該当します。営農条件や生産性が低いと評価されているので、農地として確保される優先度も低くなっており、条件付きで転用が許可されています。

具体的な条件としては、転用後の事業が周辺の土地や第3種農地で行えないことなどが挙げられます。農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地と比べると、農地確保の優先度が低いので、転用は比較的しやすくなっています。

 

2-1-5. 第3種農地

鉄道の駅が300m以内にあるなど、すでに市街地となっている地域、市街地化の傾向が著しい地域にある農地を第3種農地と言います。農業効率や計画的な市街化という観点から、農地として利用していくよりも、市街地の一部として、ビルなどの建設地や住宅地として利用していく方が好ましいと考えられている土地です。

農地の中でも確保の優先度が最も低く、転用も原則許可されます。第3種農地の中でも、優先的に市街化を進めている市街化区域内にある農地は、転用の手続きが、農業委員会への許可申請ではなく届け出という形になるので、比較的簡単に転用できるようになっています。

 

2-2. 農地転用の一般基準

もう1つの基準となるのが、一般基準と呼ばれる立地条件以外の基準です。

大前提として、農地の転用は目的なしに行うことはできません。しっかりとした目的があり、それに伴う事業が明確でなければ、許可をとることは難しくなります。

一般基準では基本的に、農地転用後の事業内容を審査されます。数値的な基準をクリアすれば良いという訳ではなく、事業内容を1つ1つ確認され転用が可能かどうか判断されることになります。

 

2-2-1. 事業の確実性のチェック

事業の確実性とは、転用後の事業がきちんと行われるかどうかということです。食糧を生産していくために使われるべき農地を転用する訳ですから、きちんと事業を行い、農業よりも効率的に土地を利用できることを示さなければ、許可を得ることはできません。

確実性の判断材料となるものは、事業目的や事業計画、資金の裏付けなどです。手続きでは、これらを証明するために事業の計画書や融資証明書などを提出することになります。

 

2-2-2. 周辺地域への影響の有無

転用後の事業が、周辺地域にどのような影響を与えるかも確認されます。特に、隣地や周辺に農地がある場合には、周りの農地の営農条件に悪影響を与えないよう、排水施設への影響や日当たり、風通しなどもひとつの基準になります。
この他にも、土砂などの流出や用水への影響がないか、道路や周辺施設の邪魔にならないかなども確認されます。

 

3. 元農地で行う太陽光発電のメリット

ここからは、本題である農地を転用して行う太陽光発電についてみていきます。

まずは、元農地で行う太陽光発電のメリットです。転用後の農地の活用方法として、太陽光発電はよく取り上げられていますが、そこにはどのようなメリットがあるのか、ここで確認していきましょう。

 

3-1. 一般的な太陽光発電のメリット

太陽光発電は、農地に限らず、土地活用の方法として広く知られています。まずは、土地活用の方法としての太陽光発電のメリットから確認していきましょう。

一般的な太陽光発電のメリットは、主に4つあります。

 

3-1-1. 自然エネルギーの為クリーン

太陽光発電は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を用いない自然エネルギーによる発電です。環境にやさしいという点は大きなメリットでしょう。

化石燃料の枯渇や二酸化炭素の増加、それに伴う地球温暖化などの問題に加え、原子力発電の利用についても見直されている中で、太陽光発電のような自然エネルギーを利用した発電は、今後ますます広がると予想されています。

 

3-1-2. 固定価格買取制度で安定した収入になる

太陽光発電を普及させるため、国は電力会社による固定価格買取制度を設けています。これにより、発電した電力は自分たちで利用するだけでなく、余った分を電力会社に売ることもでき、安定した収入を得ることができるようになっています。

買取価格は、年度ごとに一定の価格で決められているので変動することがなく、年間を通して市場の動向などに左右されることはありません。

 

3-1-3. メンテナンスの手間が少ない

賃貸住宅のように誰かが利用するところであれば、定期的なメンテナンスが欠かせません。それに比べ太陽光発電は、メンテナンスの手間が少ないところがメリットです。

太陽光発電に必要なソーラーパネルは、屋外に設置することが大前提なので、ある程度の汚れは想定されています。機械なので定期的に点検を行う必要はありますが、基本的には放置しておくだけで良く、日常的なメンテナンスは必要ありません。

 

3-1-4. 土地の価値とは無関係

太陽光発電は土地の価値を選ばず、たとえ使い道のない土地であっても、日当たりさえあれば利用できるという点が大きなメリットです。また、同じ発電量であれば、地価の高い土地よりも低い土地の方が、効率が良いという点も魅力です。

賃貸住宅や貸し駐車場などは、確実に需要のある地域でなければ、上手く活用していくことができません。他の活用方法も、立地条件や土地の広さに影響されるものが多く、活用方法はたくさんあっても、現実的な選択肢は限られていることが多いです。

その点、太陽光発電は、基本的に日が当たる場所であれば問題ありません。利用方法が見つからなかった田舎の土地も、太陽光発電による活用であれば、十分可能性があります。

 

3-2. 元農地の太陽光発電のメリット

次に、農地を太陽光発電で活用していくことのメリットをみていきます。

一般的な太陽光発電による活用のメリットに加え、元農地での太陽光発電には、3つのメリットが挙げられます。農地ならではの長所と短所を上手く利用できるのが、太陽光発電の魅力です。

 

3-2-1. 日照が良い

太陽光発電で最も重要なポイントが日照です。たくさんソーラーパネルを設置しても、日光があたらなければ発電量も減り、電力収入も少なくなります。

農地は、この日照という最も重要な条件を、すでに満たしているところがほとんどです。農地の周りには大きな建物が少なく、太陽光発電には好条件の土地であると判断できます。農地として利用されていた土地であれば、日照についてはある程度保証されていると考えて良いでしょう。

 

3-2-2. 耕作放棄地の有効活用

農地を転用し太陽光発電として利用できれば、使わなくなった耕作放棄地を有効活用することができます。

農業の引退や相続による農地取得のようなケースでは、農地が利用されず耕作放棄地となってしまうことがよくあります。これまでは、耕作放棄地となっても所有者には何の影響もありませんでしたが、耕作放棄地の増加が問題視されるようになり、平成29年度からは耕作放棄地の固定資産税が増税されるようになりました。

太陽光発電として活用できれば、増税のリスクをなくすことに加え、収入を得ることができるという有効活用が可能です。

 

3-2-3. 農地転用の許可が得やすいことがある

太陽光発電のための農地転用は、クリーンで環境にやさしいことなどから、条件を満たしてさえいれば転用の許可が得やすくなっていることがあります。また、最近では、太陽光発電のための転用の実績も増えてきているので、以前よりも事業の確実性が認められるようになってきており、転用の許可が得やすくなっているともいわれています。

 

4. 元農地で行う太陽光発電のデメリット

このようにメリットが多い太陽光発電ですが、もちろんデメリットもあります。

元農地で行う太陽光発電には、主に2つのデメリットがあります。農地の活用には太陽光発電が良いと話題になり、メリットばかりが注目されてしまうからこそ、デメリットもきちんと把握して検討しなければなりません。

 

4-1.造成工事に費用がかかる場合がある

農地として利用されていた土地は地盤が柔らかく、ソーラーパネルを設置するために造成工事を行わなければならない場合があります。

太陽光発電では、より効率的に発電させるために、ソーラーパネルを傾けて設置することが多いです。傾けて設置すると、一定方向からの風の影響を受けやすくなるので、ソーラーパネルを支える架台やその地盤をしっかり整えておく必要があります。

特に、元が水田であった場合は粘土質の柔らかい土なので、造成工事が欠かせません。ある程度初期費用も必要な太陽光発電で、造成工事にも費用がかかってしまうのは、元農地ならではのデメリットです。

 

4-2. 周辺農地への影響のチェック

太陽光発電には、周辺に光害が及ぶ危険性があります。光害とは、字の通り光によるもので、太陽光発電においては、設備として欠かせないソーラーパネルの反射が原因になります。

周辺が農地であれば、反射による光の増加や気温の上昇などが作物の生育に影響を与えないか、きちんと確認しなければなりません。住宅などが近くにある場合も、反射光がまぶしいとトラブルになることもあるので注意が必要です。また、大幅な造成工事が必要になる場合は、それに伴う環境や生態系への影響についても確認し、影響を最小限にとどめるよう努めなければなりません。

この他にも、設置工事において周辺の農地及び農作業に影響を与えないよう配慮しましょう。設置後のことはもちろん、撤去することになった場合のことも考えておくと尚良いでしょう。

 

5. 太陽光発電の設置コストと収入の見込み

最後に、太陽光の設置コストと収入の見込みを確認していきましょう。

まずは、設置コストです。一般的に太陽光発電の設置には、ソーラーパネルなどの購入にかかる設備費用と発電設備の取り付けにかかる工事費用が必要になります。

設備費用としては、ソーラーパネル、パワーコンディショナー、架台の購入費用が挙げられます。どれもメーカーによって価格が異なりますが、最も高額になるのがソーラーパネルであり、設置コスト全体の約4割を占めるといわれています。工事費用については、農地転用の場合、設置工事だけではなく造成工事の費用も考慮しておきましょう。

設備費用と工事費用を合わせた全体の設置コストを、太陽光発電の容量1kWあたりに換算した費用を、システム単価と呼びます。戸建て住宅などに設置する場合のシステム単価は、およそ35~38万円/kWであり、設置コストは、発電規模が大きくなるほど安くなる傾向があるので、農地を活用して行うような大規模な発電であれば、だいたい28~30万円/kWがシステム単価の相場になるでしょう。

収入は、発電量と買取価格によって決まります。

発電量は、地域や年間を通しての天候状態ソーラーパネルの設置角度、劣化の状態などに影響されます。あくまで目安ですが、1kWの容量で年間約1000kWhの発電量があるといわれています。この割合で計算すると、メガソーラーの基準である1000kWの容量の場合、年間を通して約100万kWhの発電量となります。

買取価格ですが、年度ごとに決定される仕組みになっており、近年は太陽光発電の普及により減少傾向にあります。平成29年度の価格では、住宅用(10kW未満)で28~30円/kWh、非住宅用(10kW以上)で21円/kWhとなっています。

この2つをもとに計算すると、1000kWの容量の太陽光発電による収入は、平成29年度の価格であれば、年間約21000万円となります。1000kWの容量の太陽光発電を設置するためには、2ヘクタール前後の土地が必要だと言われているので、面積当たりの収入を計算すると1ヘクタール(10000㎡)当たり約1050万円となります。

設置コストと収入に加え、気になるポイントとしては、ランニングコストが挙げられます。ソーラーパネルは、20~40年程度で劣化すると言われています。劣化や故障によるソーラーパネルの交換に加え、定期的な点検、清掃などの費用を含めると、ランニングコストは費用全体の約1~2%になります。

 

6. まとめ

農地は他の土地に比べ、利用方法に制限があったり、転用が難しかったりと、土地活用という観点では不便な点も多いです。しかし、何もせずに放置しておくのは、固定資産税の増税というリスクもあり、非常にもったいないことです。
太陽光発電は、転用が可能な農地の活用方法としては非常に有効です。使っていない農地を持っていて、太陽光発電による活用に興味がある方、利用方法がないとあきらめている方は、今回取り上げたメリットとデメリット、費用などをもとに、太陽光発電のための転用を検討してみてください。