事例紹介

Category  不動産

2018年07月03日 更新

一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約のメリット・デメリット

 

不動産の媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれの違いを調べてみると、専任媒介契約や、専属専任媒介契約が良いとされていますが、果たして本当にそうでしょうか。

納得のいく取引をするために、取引のキーマンとなる不動産業者との契約は非常に重要になります。それぞれの契約のメリットはもちろん、デメリットも見ながら、どの契約がどんなときにふさわしいのか考えていきましょう。

 

この記事でわかること

1. 媒介契約の基本的な違い

3つの契約の基本的な違いは、複数の業者への依頼が可能かどうかという点と、自分で買い手を見つけること(自己発見取引)が可能かどうかという点に現れます。また、契約により発生する義務や、業者の動き方にも違いが出てきます。

一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の種類一覧表

 

2. 一般媒介契約

依頼主が、複数の業者に媒介を依頼でき、かつ、自分でも顧客を探すことができる契約を、一般媒介契約といいます。依頼した業者に対して、他に依頼した業者を明示する義務のある明示型と、明示する義務のない非明示型とがあります。

 

2-1. 一般媒介契約のメリット

一般媒介契約の最大の特徴は、複数の業者に依頼できるという点です。1社のみへの依頼とは違い、複数だからこそのメリットがあります。

 

2-1-1. 契約した業者同士に競争意識ができる

複数の業者に頼んでいても、実際に媒介ができるのは1社のみなので、業者同士に競争意識が生まれます。特に、人気の地域や有名な物件であれば、より競争が激しくなる傾向があります。競争意識が生まれることで、より短期間で、より良い条件で成約できる可能性が高まります。

 

2-1-2. いつでも電話で解約できる

解約したいと思った場合、いつでも解約ができます。書類や手続きも必要なく、電話一本で可能です。お金もかからないことがほとんどですが、稀に広告費や宣伝費が必要になる場合があるので、契約時に確認しておくとよいでしょう。

 

2-2. 一般媒介契約のデメリット

一般媒介契約の物件は、専属で契約している物件に比べ、費やされる金額や時間が、どうしても少なくなってしまいます。

 

2-2-1. 広告など営業経費を積極的にかけづらい

一般媒介契約は、業者にとっては不安定な契約です。自社で成約できなかった業者は、利益が得られないため、広告や宣伝、営業にかけた費用が無駄になり、費用の回収もできず、損をしてしまいます。そのため、他の契約の物件に比べると、積極的な広告や営業が行われない可能性があります。

 

2-2-2. レインズへの登録義務がない

レインズとは、不動産流通機構が運営しているネットワークシステムです。ここでは、不動産を扱う業者同士で、物件情報が共有されています。レインズに登録された物件は、レインズを利用する業者全てに共有されており、より早く顧客を見つけることが可能になります。

一般媒介契約では、登録義務がないので、物件の情報があまり広がらず、特に人気の物件ではない限り、顧客を見つけるのに時間がかかってしまい、販売が長期化することも考えられます。しかし、あくまで登録の義務がないだけで、依頼者からレインズへの登録を要請し、登録してもらうことは可能です。

 

2-2-3. 売主への定期的な報告義務は特にない

他の2つの契約では、定期的に物件の状況を報告する義務がありますが、一般媒介契約にその義務はありません。依頼主への報告がある物件の広告・営業が優先され、一般媒介契約の物件は、後回しされてしまう可能性があります。

 

2-2-4. 広告を作成する義務がない

一般媒介契約では、業者側に広告を作成する義務はありません。成約に至らなければ広告費などは無駄になるため、業者から広告を出すための費用の負担を求められるケースもあるので、契約時に確認しておく方がよいでしょう。

広告が少ないということは、お客様となる方に見つけてもらえるチャンスが少なくなるということです。なかなか買い手が見つからず、成約に時間がかかってしまう可能性があることを理解しておかなければいけません。

 

2-2-5. 自社で成約する可能性が低い物件は担当者のやる気が出づらい

得意としていないタイプの物件や、あまり人気がない地域の物件、売れにくい物件等、成約が難しそうな物件は、担当者の営業も消極的になりがちです。また、他に有力な業者があり、自社での成約の可能性が低いと考えると、担当者のやる気も下がってしまいます。

成約して初めて利益が生まれるので、成約する可能性が低い物件に、時間やお金をかけることは、業者にとって良いことではありません。このように、競争心理をうまく利用できなければ、販売が長期化してしまうこともあります。

 

2-2-6. いくつもの業者と連絡をとるのが面倒

契約の手続きや、販売状況を確認、内見の日程調整や、条件の変更の連絡等、担当の業者と連絡を取り合うことは、たくさんあります。その数が増えると、その分手間も増えてしまうのは当たり前です。多くの業者と一般媒介契約を結べば結ぶほど、連絡は面倒になり、管理する情報も増えていきます。

 

2-2-7. 他の物件を売る時の当て馬に使われる可能性がある

売る気がない業者は、その物件を当て馬として使用する可能性があります。自身の物件が、他の物件を売るために、悪い条件の物件として紹介されてしまうのは、あまり気持ちが良いことではありません。そういう業者から成約に至ることは、ほとんどないため、依頼者にとってはマイナスとなってしまいます。

 

2-2-8. ハウスクリーニングなどの無料サービスが通常ない

自社で成約できるとは限らない状況で、メンテナンス等の費用を負担するメリットは業者側にはあまりありません。物件の手入れ費用負担や、無料のサービス等は、ないところがほとんどです。

 

2-2-9. 何社くらいと契約するのが良いか

2~4社との契約が無難であると言われていますが、あくまで参考程度と考えておく方が良いでしょう。依頼する業者を増やすと、より多くの人に見てもらえる一方、各業者のやる気が下がること、自身の情報管理が大変になることは考慮しておかなければいけません。

一方、少ない業者に依頼すると、適度な競争意識の中で進められるものの、物件情報を見てもらえる機会が少なくなることも理解しておく必要があります。業者によって、得意・不得意、客層、営業の規模は異なります。

業者のタイプや、物件の特徴を考慮し、とりあえず早く手放したい、急がなくてもいつか売れればよい等の売却の目的に沿って、業者や依頼する数を決めていくことが大切です。

 

3. 専任媒介契約

依頼主が、1つの業者のみに媒介を依頼し、かつ、自分でも顧客を探すことができる契約を、専任媒介契約といいます。

 

3-1. 専任媒介契約のメリット

専門的な知識を持つ業者の力を借りながら、自分で買い手を探すことができるという選択肢の幅が大きなメリットです。

 

3-1-1. 他の不動産業者への売却依頼が出来ないので営業に力が入る

一般媒介契約とは違い、依頼された業者のみ、売却することができます。他の業者に成約される恐れは少なく、広告や営業のための費用が無駄になることもありません。そのため、一般媒介契約に比べ、営業や広告に力が入れやすくなります。

また、依頼者が納得してくれないと、自分で買い手を見つけてしまったり、他の業者へ切り替えてしまったりすることもあるため、積極的な営業が行われやすくなります。

 

3-1-2. 媒介締結後7営業日以内にレインズへ登録が義務とされている

一般媒介契約とは違い、レインズへの登録が義務となっているため、比較的早く顧客を見つけることができるようになります。きちんとレインズに登録されれば、登録証明書がもらえるので、依頼者は登録されたか確認することもできます。

 

3-1-3. 2週間に1回以上の報告義務があるので定期的に販売状況を把握できる

業者から、2週間に1度以上のペースで販売状況の報告があります。定期的に報告があることで依頼者も安心でき、意思の疎通もしやすいため、業者との信頼関係も生まれやすくなります。

 

3-1-4. 買い手を自分で見つけたときは、直接の売買契約が出来る

自分で買い手を探し、取引することを、自己発見取引と言います。購入してくれる人を自分で見つけた場合、専任媒介契約では、自己発見取引が許されているため、不動産会社を通さないで直接取引を行うことができます。

 

3-1-5. 自己発見取引の場合報酬を不動産会社に支払う必要がない

自己発見取引を行った場合、業者に対して報酬を払う必要はありません。取引をした場合には、依頼者は業者に対して、取引したことを伝えなければいけません。ただ、契約内容によっては、自己発見取引をした場合、手数料を支払わなければいけないケースもあるので、取引をする前に、契約内容の確認が必要です。

 

3-2. 専任媒介契約のデメリット

レインズへの登録や売買状況の報告、その他のサービスという点では、専属専任媒介契約に比べ劣る部分があります。また、一般媒介契約のように、すぐに解約できない不自由さもあります。

 

3-2-1. 依頼した業者が気に入らない場合でもすぐには解約できない

専任媒介契約の契約期間は3ヵ月が一般的ですが、業者側に法的な問題があった場合には、すぐに解約することが可能です。しかし、売却の方法等が納得できずに解約をしたい場合は、業者との合意が必要です。

電話1本で簡単に解約できるところもありますが、トラブルを避けるためには、きちんと手続きをした方が良いでしょう。

一方的に解約してしまうと、業者間で良くない情報が共有される恐れもあります。解約したい理由を伝え、双方の合意の後、書類等での手続きをされた方がよいでしょう。トラブルを避けるためには、簡単にに解約はできないと思っておく方がよいでしょう。

 

3-2-2. 中途解約する場合、経費の請求を受けることが有る

依頼者側の都合等で中途解約する場合には、広告や営業にかかった費用を請求されることがあります。特に、業者との関係が悪化してしまっている場合、高額請求されるといったケースもあります。

 

3-2-3. ハウスクリーニングなどの無料サービスが通常ない

一般媒介契約よりも自社での成約の可能性は高いものの、依頼者が直接買い手を見つけてくる可能性もあるため、無料のサービスがつけられることはあまりありません。条件付きであったり、有料になったりするケースはあります。

 

4. 専属専任媒介契約

依頼主が、1つの業者のみに媒介を依頼し、自分で顧客を探すことができない契約を、専属専任媒介契約といいます。

 

4-1. 専属専任媒介契約のメリット

専任媒介契約と同様に依頼した業者に全て任せる形になるので、業者が積極的に動いてくれる点が最大のメリットです。その他のメリットも確認していきましょう。

 

4-1-1. 他の不動産業者への売却依頼が出来ないので営業に力が入る

一番のメリットは営業経費を積極的にかけてもらえる点でしょう。どんな形であれ、物件の売却さえできれば、確実に収入となるので一番やる気がでる契約の方式です。依頼された物件の取引は、全て担当の業者が行うため、他の2つの契約のように、自社が行った広告や営業の成果が他に流れることはありません。

業者にとっても、確実に手数料がもらえる安定した物件なので、きちんと営業してくれない危険性は他の2つの契約より少なくなります。

 

4-1-2. 媒介契約締結後5営業日以内にレインズへ登録が義務

専任媒介契約と同様レインズへの登録が義務化されているので、物件の情報をより早く広めることができます。専任媒介契約との違いは、登録しなければいけない期間の日数で、専属専任媒介契約の方が2日短い5営業日以内となっています。

 

4-1-3. 1週間に1回以上の報告義務がある

1週間に1回以上と、より頻繁に販売状況を確認することができます。専属専任媒介契約の方が、業者との意思の疎通が図れ、信頼関係をより築きやすくなります。業者も、週に1回以上報告をしなければならない為、成果がでるよう積極的に営業してくれる可能性が高くなります。

 

4-1-4. 1つの業者とだけ連絡を取れば良いので楽

1つの業者に絞っているため連絡をとるのが楽になります。条件の変更や、内見等の日程調整、情報の整理も簡潔になり、手間が減らせ、売却までの流れがとても楽になります。

 

4-2. 専属専任媒介契約のデメリット

他と比較したり、自分で買い手を見つけたりできない等、依頼した側もある程度拘束されてしまいます。また、1社のみの契約を逆手にとり、業者が自分たちの都合の良いように動いてしまう危険性もあります。

 

4-2-1. 依頼した業者が気に入らなくてもすぐには解約できない

専属専任媒介契約も、契約期間は3ヵ月が一般的です。専任媒介契約と同様に、電話での解約は避けた方がよいでしょう。できるだけトラブルなく解約できるよう、書類でのやりとりをされるのが望ましいです。

また、契約時に解約の手続きや条件を確認しておくことも大切です。実際にトラブルになりそうだと感じたら、早めに相談窓口に相談することをお勧めします。

 

4-2-2. 契約した業者を介さない売買契約は出来ない

自分で買い手を見つけても直接売買契約を結ぶことは、専属専任媒介契約では契約違反になります。もし、違反をした場合には、違約金を支払わなければならず、場合によっては契約違反で訴えられる可能性もあります。

 

4-2-3. 中途解約する場合、経費の請求を受けることがある

中途解約する場合には、専任媒介契約と同様に、それまでにかかった広告や営業の費用を請求されることがあります。不当に高額な請求をされた場合には、明細書等を見せてもらい、適切な金額か確認する必要があります。

 

4-2-4. 買い手からの問い合わせが他社から入っても勝手に断る場合がある

他社からの問い合わせを断り、自社で買い手を見つけるまで売らないという悪質な業者もいます。買い手と売り手、両方から手数料をもらう、いわゆる両手取引になれば、自社の利益が増えるからです。

1つの業者に任せているために、依頼主には分かりづらく、買い手がなかなか見つからなくなる場合もあります。

 

5. 契約方法を手持ちの物件と状況から考える

業者にとっては、より確実に手数料がもらえる専属専任媒介契約、または専任媒介契約の方が有利なので、どちらかで契約を結びたいと考えます。そのため、専属専任媒介契約か専任媒介契約を勧めてくる業者がほとんどです。

しかし、物件の立地や状態、売り方の希望などによって、必ずしも専属専任媒介契約や専任媒介契約が良いとは限りません。

 

5-1. 売りにくい物件

売りにくい物件の場合は、専属専任媒介契約・専任媒介契約を結ぶ方が良いでしょう。一般媒介契約であれば、広告や営業に力を入れにくいので、さらに売れにくくなってしまう場合があります。1つの業者に任せて、戦略を練り、買い手を見つけるのがよいでしょう。

 

5-2. 安くても良いので早く売りたい場合

価格を気にせず、とにかく早く売りたい場合には、一般媒介契約で早かった業者と成約する方法があります。また、専任媒介契約・専属専任媒介契約では、売れなかった場合に、査定価格の一定の割合で業者が買い取ってくれる、買取保証をしてくれる業者もあり、それを利用するという方法もあります。

 

5-3. 人気の物件を売りたい場合

人気の物件の場合は、一般媒介契約を結ぶ方がよいでしょう。競争意識を利用し、より良い条件で売却できる可能性も高まります。また、業者にとっても人気の物件を扱うことは、問い合わせ、来店が増えるきっかけにもなるので積極的にPRしてくれる可能性があります。

 

5-4. 他人に知られたくない場合

物件を売りに出すことで、様々な情報が公開されてしまいます。特にレインズでは、売買が成立したら、いくらで売れたかも公開されてしまいます。プライバシーが気になる、できるだけ人に知られたくないという場合には、レインズ登録や広告の義務がない一般媒介契約が良いでしょう。

また、業者に直接買い取ってもらう不動産買取という選択肢もあります。媒介の依頼ではないため手数料がかかりませんが、買取価格が安くなってしまうデメリットがあります。

 

6. まとめ

このように、それぞれの媒介契約方法には、メリットもデメリットもあります。どの方法が良いか選択するために、まずはそれぞれのメリットとデメリットを把握しておく必要があります。また、上記のメリット・デメリットがすべての方に当てはまるものとは限りません。

契約をする前にきちんと契約内容を確認し、ご自身にとってのメリットとデメリットをしっかりと考えましょう。不動産売買は、とても大きな財産を扱うことになります。業者から勧められたものを鵜呑みにせず、物件の特徴や、売却の目的によって、どの契約がふさわしいのか慎重に検討していきましょう。