事例紹介
Category 不動産
2018年08月21日
不動産相続時にローンが残っている場合の相続税はどうなるの?
相続税とは、相続にかかる税金のことです。親の財産を子供が受け継ぐケースが多いのですが、その際引き継ぐ遺産の金額が大きい場合には、相続税がかかり、金額に応じて相続税率が適用されます。
今回は、相続税の中でも不動産の相続における相続税について解説していきます。住宅は、相続されることが多いケースの一つです。いざという時に困らないためにも、事前にしっかり学習しておきましょう。
この記事でわかること
1. 相続税はどうなる?不動産ローンが残っている場合の注意点
不動産を相続するケースでよくあるのが、相続した時点でローンが残っている不動産を相続することです。不動産は非常に高いものですので、ほとんどの方がローンを組んで購入しています。そして、ローンの期間は30年など非常に長くなっているため、相続時にまだローンが残っているというケースが多くみられるのです。
ローンが残っている状態で不動産を相続する場合、通常と異なる点が何点かあります。ここからは、不動産ローンが残っている状態で、不動産を相続する際に気をつけておきたいこと、知っておきたいことについて解説していきます。
1-1. 債務控除
債務控除とは、財産から負債額を差し引くことです。相続税は、財産に一定の税率をかけて納税額を決めています。財産といえば、プラスのものだという認識がある方もいるかと思いますが、マイナスのものを財産として扱われます。
例えば、プラスの財産には、土地、建物、現金、有価証券などがあり、マイナスの財産には、借入金や未払金などの負債があります。債務控除は、このようなプラスの財産からマイナスの財産を差し引いたことを指し、債務控除によって差し引かれる金額が大きくなればなるほど、相続税の節約につながります。
債務控除で注意しておきたいのが、負債であれば全てが債務控除として差し引かれるというわけではないことです。債務控除には、対象となるものと、対象とならないものがあります。
1-2. 債務控除の対象
先ほども書いたように、債務控除には対象となるものと対象にならないものがあります。ここでは、債務控除の対象になるものとそうでないものをそれぞれ分けて解説していきます。
【債務控除の対象となる債務】
債務控除の対象となる債務には、以下のようなものがあります。
・銀行など、金融機関から受けた借入金
・その他個人などからの借入金
・亡くなった後に支払わなければいけない公租公課(住民税、固定資産税など)
・病院に対する未払い医療費
・亡くなった人が使用していた期間における、水光熱費、電話代などの公共料金等の未払金
・賃貸不動産のテナントから預かっている敷金
・買掛金などの事業場の未払金
・葬式費用(対象にならないものもある)
債務控除の対象となるものをまとめるならば、金融機関からの借入や医療費、公共料金のような確実な債務か、公租公課、そして葬式費用です。葬式費用に関しては、複雑な仕組みになっているため、後ほどわかりやすく解説します。続いて、債務控除の対象とならない債務にはどのようなものがあるのかみていきましょう。
【債務控除の対象とならない債務】
債務控除の対象とならない債務には、以下のようなものがあります。
・団体信用生命保険で補填される住宅ローン
・非課税財産(墓地や仏壇など)における未払金
その他、亡くなった後に発生する以下の費用に関しても、債務控除の対象にはなりません。
・相続財産の名義変更費用(登録免許税、司法書士報酬など)
・相続申告にかかる税理士報酬
・遺産分割交渉等にかかる弁護士報酬
・戸籍謄本など身分関係書類を取得するためにかかる費用
何が債務控除の対象となるのか、対象とならないのか知っておくことは非常に重要であるといえます。故人から相続者へプラスの財産として受け継がれるものは、故人からの最後の贈り物です。
そのため、できるだけ多く受け継がれるべきであるといえます。もちろん、税金を納めることは義務ですから不正はしてはいけませんが、できるだけ多く受け取るためにも、債務控除については深く知っておきましょう。
1-3. 葬式費用について
債務控除の対象となる債務として、葬式費用をあげました。葬式費用は、本来であれば遺族が負担する費用であり、亡くなった人の債務ではありません。そのため、債務控除の対象とならないようにも思えますが、人が亡くなったことで必ず発生する費用で、基本的には相続財産から支払われるものなので、債務控除の対象となります。
葬式といっても、形式は宗教や宗派によって異なります。そのため、法律では葬式費用についてしっかりとした定義はありません。しかし、ある程度ではありますが、国税庁が一定のルールを決めており、このルールに従って葬式費用の課税対象が決められています。
ここからは、何が葬式費用として認められるのか、詳しく解説していきます。
【葬式費用に含まれるもの】
葬式費用に含まれるものとは、葬式を行うにあたって必ず必要なものにかかる費用です。具体的には、以下のようなものが葬儀費用として認められます。
・通夜、告別式の費用(葬式会社に支払ったもの)
・通夜、告別式で使った飲食費用
・葬儀でお手伝いしてもらった人への心付け(相場は2000円から5000円であり、高くても10000円までが妥当だといえます。世間一般的に妥当な金額でなければ、葬儀費用として認められないこともあります。)
・お寺、神社、教会などに支払うお布施、戒名料、読経料など
・埋葬、火葬、納骨にかかった費用
・遺体の捜索、死体や遺骨の運搬費用
・通夜、告別式当日に参列者に渡す会葬御礼費用
上記のような、一般的な葬式を行うにあたり必要な費用は葬式費用として認められます。
これらの費用を証明するものとして、領収書は必要ではなく、いつ・どこで・誰に支払ったのかというメモが残されていれば十分です。支払った事実を証明できるように、その都度メモにとっておくようにしましょう。
2. 不動産ローンが残っている場合の相続税の計算方法
不動産を相続するときに、ローンが残っているか、残っていないかで計算方法が変わってきます。ここからは、不動産ローンが残っている場合の相続税の計算方法について解説していきます。
不動産ローンがない場合、「財産評価基本通達」によって財産の評価が行われ、その評価額に応じて相続税が決められます。「財産評価基本通達」とは、国税庁が規定している財産の価額の計算方法を示したものです。「財産評価基本通達」には、対象財産の価格評価方法や、非上場株式の評価方法などが記載されており、細かく計算方法がわかるようになっています。
不動産ローンが残っている場合、相続税の計算方法は大きく異なります。不動産ローンが残っている場合、「財産評価基本通達」ではなく、その時の通常の取引価格によって評価額が計算されます。
相続税の計算方法は、遺産総額から基礎控除額を引いたものに事前に決められた税率をかけるというものです。基礎控除額は、3000万円+相続人数×600万円となっています。例えば、遺産総額が7000万円で、相続人数が3人の場合、基礎控除額は4800万円となり、相続税がかかってくる金額は2200万円となります。そして、その2200万円に一定の税率をかけたものが、相続税として納めなくてはいけません。
3. 住宅ローンの団体信用生命保険と相続税について
ここでは、住宅ローンの団体信用生命保険と相続税の関係性について解説していきます。
まずは、団体信用生命保険がどのようなものなのか説明していきます。
3-1. 団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険とは、住宅ローン契約者が死亡・高度障害状態になった場合、残っている住宅ローンを肩がわりしてくれる住宅ローン専用の生命保険です。
住宅ローンの返済は、一般的に30年など長期で行うものです。そのため、その間ローン契約者の身に何が起きるかわかりません。ローン契約者に何かあった場合、残された家族がローンを負担しなくてもいいのが団体信用生命保険です。住宅ローン契約者のおよそ95%がこの団体信用生命保険に加入しており、現在では一般的になっています。
3-2. 団体信用生命保険と相続税にはどんな関係があるの?
団体信用生命保険は、契約者が死亡した場合、金融機関がローンの返済を肩代わりしてくれます。そのため、相続者には何の負担も残りませんし、一般的な生命保険のように相続者に金銭が渡るわけではありません。よって、団体信用生命保険の保険金には、相続税は一切かかりません。
また、団体信用生命保険の保険金は、債務控除の対象外となっているため、相続財産から差し引くことはできません。
3-3. 団体信用生命保険でありがちな問題
団体信用生命保険でありがちな問題について紹介します。
団体信用生命保険に加入しているにもかかわらず、残された家族が残ったローンの支払いをしてしまっているというものです。団体信用生命保険に加入していると、残された家族がローンを負担する必要はありません。しかし、それに気づかずにローンを払ってしまっていることがよくあります。
そういった場合は、返還の手続きをすることで、本来支払う必要のなかった住宅ローンの返済額が戻ってきます。
もし、契約者がなくなってしまった後に住宅ローンを払い続けているという方は、金融機関に確認してみるといいでしょう。
4. まとめ
今回は、不動産相続時に住宅ローンが残っている場合の相続税がどうなるのかというテーマで書いてきました。
住宅ローンが残っている不動産を相続する場合、相続税の計算方法が通常時と異なるため、注意が必要です。また、相続税をなるべく抑えるために、債務控除についてはしっかり確認しておくといいでしょう。