事例紹介
Category 不動産
2018年09月12日
道府県民税の配当割ってなに?納付期限や計算方法も詳しくチェック!
「道府県民税」というものをご存じでしょうか。
これは道府県民税という名称通り、事務所または事業所の所在する法人及び個人に対して道府県(都)が課す税金のことです。一般的に個人に課すものを個人道府県民税、法人に課すものを法人道府県民税と呼びますが、このふたつは同一の税目の中で区分されています。
ところで、対象に東京都を含んでいるにも関わらず、道府県民税という名称になっているのは一体どうしてなのでしょうか。これには地方税法上の規定が関連しているのです。地方税法が道府県民税についての規定は東京都に準じて適用し、一方で市町村上の規定については特別区(23区)に準じて規定しているためこのような名称になっています。(地方税法第1条第2項参照)
この記事でわかること
1.道府県民税の配当割とは
「配当割」とは上場株式等の配当等及び割引債の償還差益に対して他の所得と分離し、国税として所得税や復興特別所得税と共に課税される税金のことです。
これは住み良い地域社会を創造するために、各都道府県に居住している住民がそれぞれ条件に応じて負担する会費のような税金だと捉えることができます。この「配当割」の他にも、利子などの支払いを受ける者に課税される「利子割」や上場株式などの譲渡益の支払いを受ける者に課税される「株式等譲渡所得割」などもその対象として挙げられます。
1-1. 納税義務者
特定配当等の支払いを受ける個人が対象であり、特定配当等の支払いを受ける日に各都道府県に住所を有する者とされています。
個人が課税対象とされているので、仮に法人が上場株式等の配当等を受けた場合には配当割が課税されることはありません。この場合の配当等の支払い時には所得税・復興特別所得税のみが源泉徴収され、源泉徴収された所得税に関してはその事業年度における法人税の申告上、法人税額より控除されることで調整されるようになるのです。
1-2. 課税対象
上場様式な配当業とは以下の6項目をいいます
①上場されている株式等 | ④投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募によって行われたもの |
②特定投資法人の投資口のもの | ⑤公募に限定された特定目的信託の社債的受益権 |
③公募に限定された特定受益証券発行信託 | ⑥特定公社債(国債、地方債、上場公社債、公募公社債等) |
特定口座外の割引債の償還差益(但し、発行時に課税されたものは対象外)
1-3. 納付期限
各都道府県に住所を有する者に対し源泉徴収選択口座内配当等の支払いを取り扱う銀行や証券会社等の金融機関が、その配当等を交付する際に道府県民税を特別徴収し、1年間分を翌年の1月10日までにまとめて納めるようになっています。
この方法を特別徴収といい、徴収する者のことを特別徴収義務者と呼びます。
Q.配当割にも影響のある”NISA”の非課税措置ってなに?
NISAについてご存じでしょうか?最近テレビや雑誌でも取り上げられているので名前は聞いたことはあるけど…という方も多いのではないでしょうか。
NISAは非課税口座内の少額上場株式などに係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置のことを指します。簡単にいうと国民の銀行預金や貯金を投資に使用しやすくすることを目的に作られた制度で、年間120万円以下の投資で得た収益に関しては非課税対象として税法上優遇される制度のことです。
仮にNISAではない口座で投資利益を受けとると20.315%の税金がかかってしまうのでNISAを活用することのメリットは明白ですよね。
また、平成28年4月1日から未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(通称ジュニアNISA)が、平成30年1月1日からは非課税期間20年且つ上限金額40万円の非課税累積投資契約に係る非課税措置(通称積み立てNISA)の適用が開始されました。
詳細や各種活用事例をチェックしたい方は金融庁の公式HPを調べてみてください。
2.道府県民税配当割の納税額を計算する方法
納税額の計算方法は『上場株式等の配当等及び割引債の償還差益の額×5%』
となっています。ただし、この配当割に加えて別途所得税及び復興特別所得税(20.315%)が課されます。
3.道府県民税配当割の納入申告方法
特別徴収した配当割については、特定配当等の支払いを受けた個人の住所地ごとに取りまとめ、各都道府県に納入申告することが必要になっています。
(地方税法第71条の31第2項・地方税法施行規則第3条の10参照)
提出時期は配当割を徴収した日の属する翌月10日と規定されており、この場合手数料は発生いたしません。また申請方法ですが、電子申請システムによる申請と書面による申請手続きが選択できますが、各種審査基準や詳細に関しては各都道府県に直接確認する必要があります。
書面による申請の場合は直接窓口へ持参して提出する方法と郵送で提出する二種類の方法があります。また、提出先は配当割を納入する道府県の道府県知事となります。
納入申告の方法は、納入申告書を各納入先の都道府県の歳入取り扱い金融機関に提出して納入するようになります。この納入申告書は4枚複写式となっているので、この4枚を切り離すことなく、すべて歳入取り扱い金融機関の窓口に提出するようにしましょう。この様式が納入された日・時間をもって納入申告書の提出があったものと見なされるのです。
3-1. 配当割納入申告書の入手方法
納入申告書は各都道府県によって差異はなく、全国統一の様式となっています。これは配当割の特別徴収義務者が配当などの支払いを受けた個人投資家の住所が所在する都道府県にそれぞれ納入するというこの申告の性質上納入先の都道府県からそれぞれ納入申告書を取り寄せるという手間を省き、非効率な時間がかからないようにするという目的からです。
したがって、最寄りの都道府県で一括して配布しており、自由に入手することができます。各都道府県によってHP等にダウンロードページを設けている他、配布場所が定められています。
3-2. 納入申告書の書き方
納入申告書に記載されているものは以下のようになっています。
○○知事殿(納税先の道府県を記入する) | 支払い年及び月 平成○年 ○月分 |
法人番号(行政手続き上の特定個人を識別のための番号の利用に規定される法人番号) | 旧法人番号(前回納入申告時の法人番号と今回の法人番号が異なる場合に記入する。尚同一の場合は空欄) |
特別徴収義務者(本店所在地及び名称と配当割の特別徴収を担当している部署名並びに連絡先となる電話番号を記入する) | 処理事項
(注意:何も記入しない) |
支払い金額(特別徴収税額計算書の課税欄にある支払い金額を記入する) | 税額(特別徴収税額計算書の課税欄にある税額の金額を記入する) |
延滞金(注意:何も記入しない)
ただし、納期期限後の納入など延滞金が課せられる場合には、納入後別途延滞金の納付書が各道府県から郵送されるので注意が必要である。 |
納入金額合計(税額を記入する) |
課税事務所(各都道府県の定める部署) | 取りまとめ店(各都道府県の定める金融機関及びその本支店名) |
口座番号(各都道府県の定める納入先金融機関の指定された口座番号) | 加入者名(各都道府県の定める金融機関の名称)
例:○○県指定金融機関○○銀行本店 |
取りまとめ局(各都道府県の指定取りまとめ局) | 印判(社判等、法人名称が分かるものを押印する) |
【ミスしやすい?納入申告書記入時の必須確認事項】
- 非課税無効に係る申告について→適用欄に具体的理由(マル優無効・NISA無効等) を記入すること
- 支払い金額の訂正→支払い金額等に係る金額訂正は無効となります。謝った金額を記入してしまった場合には再度作成の必要があります。
- 納入申告書の部数→各配当の種類ごとに一部ずつに作成が必要となります。
- 電話番後はなくても大丈夫?→部署名のみでなく必ず電話番号は記入してください。
- 金額の一致→課税支払い額と合計支払い金額は一致します。
また、課税税額と特別徴収税額についても金額は一致します。
- 新たに配当割の特別徴収義務者になった場合→特別な新規申請届け出などは必要ありません。納入申告書に必要事項を記入し、申告納入をするだけで大丈夫です。
平成28年1月1日以降に支払われる特定配当等に係る県民税配当割の納入申告書の様式が改正・変更された点に留意しながら記入していましょう。
3-3. 納入申告先
申告納入先に関してはあくまで受益を受ける個人投資家の住所地のある都道府県が納入申告先とされます。ただし、投資家が常任代理人と契約設定をしている場合には、この場合とは異なり実際に配当や利益を受けた投資家の住所地のある都道府県に納入申告をする必要があるので注意が必要です。また、この個人投資家が海外居住など日本に居住地を定めていない場合は課税の対象外となります。
【こんなときはどうなる?様々な場合の納入申告先】
Q.投資家が東京都に住んでおり、その親族が後見人となり他県で生活している場合
A.この場合は後見人である親族の住所地ではなく投資家である本人の住所地である東京都に納入申告を提出する必要があります。
Q.4名が共有で株式を同一の割合で所有しており、その配当利益が出た場合
A.この場合は少し複雑になってきます。共有名義の株式配当利益においては、共有者の持分についてわかっている場合はその株式持分の割合に応じて配当割を特別徴収し、それぞれの受益者の住所地に各金額納税申告するような形になります。
つまりこの場合のように4人が同一の割合で株式を所有している場合には4人の納税金額も同じであり、各納税義務者の住所地に納入申告をすればよいのです。
しかし、この4人の持分が定かではない場合は代表者の住所地である都道府県に納入申告する必要があるので、注意が必要となります。
Q.従業員持株会で購入し、所有している株式の配当割納入申告
A.一定規模の会社であれば社内制度として従業員持株制度があります。これは毎月の給与から一定金額を拠出して勤務先企業の株を購入するという制度です。この場合も最終的に受益を受ける個々の従業員の住所地に納入申告するようになります。
つまり大阪市に本社を置く会社に勤務しているふたりの男性がいたとします。大阪在住本社勤務の○さんと神戸在住支店勤務の△さんの配当割納入申告書を提出する場合、同じ会社に勤めていても○さんの納入申告は大阪府に、△さんの納入申告は兵庫県に提出するというようになるのです。
Q.投資クラブで購入し、所有している株式の配当割納入申告書
A.個人投資家が何名か集まり、定期的に会合を実施したり投資家同士で話し合うなどして決定した投資方針に沿って、メンバーで拠出した資金をまとめて株式に投資する団体のことを投資クラブといいます。小口資金による株式投資が可能になったり、投資効率の向上も期待されて近年注目を集める投資クラブですが、この場合の株式利益における配当割はどのようになるのでしょうか。
この場合も前述した従業員持株会同様、最終的に受益を受ける個々の住所地に納入申告をするようになります。つまり、数名で購入した株式であってもメンバーそれぞれの住所地へ各枚数納入申告書を提出する必要があるということです。
4.まとめ
道府県民税の配当割の概要について、納税義務者や納付期限、また納入申告書の注意事項や書き方など詳しくチェックした当記事はいかがだったでしょうか。
平成28年1月1日以降に特定公社債などが上場株式等に含まれるようになった改正や、NISA・ジュニアNISA、そして新たに平成30年より開始された積み立てNISAの導入も関連して、以前より複雑になって難しいと感じている方もいらっしゃると思います。
しかしポイントを押さえていけば、配当割の計算方法をはじめ、納入申告書の書き方や提出方法もスムーズに理解することができます。
各都道府県の指定金融機関や取り扱い内容、又納入申告書の記入方法などが分からない場合やなにか疑問に感じることなどがあれば、各都道府県のHPや金融庁のHPに記載されている問い合わせ窓口に確認してみましょう。