事例紹介
Category 不動産
2018年10月19日
空き家の売却をする時にかかる税金は??~課税の種類と計算方法について~
相続などで出てきた空き家。
しかし、固定資産税やその他維持費を考えるとあまりメリットが無いと、その多くが売却されます。
そこで今回は、空き家を売却する時にかかる税金に焦点を置いてご紹介致します!後半には、気になる「特別控除」についてもお話しますね。
この記事でわかること
1. 空き家を売却した際の税金の計算方法
両親から相続をしたのは良いけど、1番大きな「家」の扱いは少々困り所…自分は既にマイホームを構えたし、せっかくもらった家だけど誰も住む予定が無い。
こういった相続後の空き家発生はよく見られるケースです。実際、現在日本国内には1,000万戸を超える空き家があるとされ、割合としてほぼ20%。
これからも増え続けるとの予測があり、つまり5軒に1軒が空き家という状態が当たり前になるわけですね…
そして、固定資産税などの税金や維持費のリスクを考え、今最も多い空き家の活用方法と言われているのが「売却」です。
今お持ちの空き家を売却していったいいくらの利益が出るのか気になるところですね。
まずは、空き家を売却する時にかかってくる税金をザッとまとめておきましょう。
1-1. 譲渡収入金額
譲渡収入金額とは、ざっくり言うとその不動産を売却した代金の事です。他の誰かに土地・建物を譲渡して、その対価としてもらった金額ですね。
ここから諸々費用が引かれ、税率をかけて税金が計算されることとなります。
しかし、では単純に売却金額がそのまま譲渡収入金額となるかと言えば、実はそうではありません。
譲渡収入金額の計算には、以下の費用も加味する必要があるのです。
①固定資産税の清算額
②実測売買の清算額
③みなし譲渡金
が主な付随する額です。
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
①固定資産税の清算額…固定資産税の課税は1月1日時点で課税者が決定されるという原則をまず確認しましょう。
つまり、年度の途中で空き家を売却する事はイレギュラー扱いになるのです。
売主からすれば、既に物件を手放しているのに、固定資産税だけ払い続けなければならないのはおかしいですよね?
なので実際には、買主が売主に対しその年の残り期間(売主に家が渡ってからの年内残り日数)分の固定資産税額を支払うことになります。これが「固定資産税の清算」です。
そしてここで得た清算額は、そのまま譲渡収入金額の一部として計上されるのです。
②実測売買の清算額…実測売買とは、不動産の公簿上の登記のまま取引するのではなく、実測での数値を元に取引を行うことを言います。
例えば取引を行う空き家の面積が130平米と公簿に記されていて、実際に測ってみると132平米だった場合は、こちらの実測調査に基づいて2平米分の金額を追加して買主が売主に支払うこととなります。
簡単に申し上げますと、これが「実測売買の清算」です。
③みなし譲渡金
もし個人から法人へ空き家を売却する際は、こちらの「みなし譲渡」にも注意しましょう。
個人から法人に不動産が渡るとき、時価の2分の1より低い値で取引された時は、時価で取引されたものとして譲渡所得税を支払わなければなりません。
例えば個人が相場5,000万円の空き家を法人に1500万円で売却したとしても、譲渡所得税は5,000万円で売却した時と同じ額納めなければならないという事です。
個人と違い、法人には継続企業の概念があり、前提として永遠に存続するものとして認識されます。
もしここで課税が繰延べされてしまえば、税務署としてはいつまでたっても課税を行う事ができず、理論上永久に税金の納付がされないことになってしまいます。
こういった納税の踏み倒しがされないように、個人から法人へ不動産が渡った時点で個人に対し時価取引されたとした分の課税がなされるというわけですね。
1-2. 取得費
空き家売却に伴う税金計算で、1番ややこしいのがこの「取得費」です。
簡単に説明すると、その家を手に入れるのにかかったお金、という事になるのですが…お家の購入額そのままが取得費となるのではなく、それに付随する要素も組み込まなければなりません。
主なポイントとしては、以下の通りです。
- 土地など、時間とともに価値が下がるわけではないものは購入代金と購入手数料がそのまま計上される
- 経年劣化などにより価値が下がるもの(家そのものなど)は、その減価分は取得費に含めてはいけない。
取得費=購入代金その他手数料+改良費(増改築等)-減価の額
- 家の購入代金は不動産会社の仲介手数料なども含める
- 相続や贈与により手に入れた物件は、被相続人や贈与元の取得費をそのまま引き継ぐ
- 家の取得の際相続税がかかった場合、土地にあたる部分の税額を取得費として計算する
- 相続登記など不動産の名義変更にかかった手数料は取得費として計上してよい
- 土地を売るために行った土地造成費用は取得費として計上される
国税庁のホームページも参照していただきたいのですが、いずれにせよ非常に複雑な計算方法です。
よほどの自信がない限りは、税理士・不動産会社・税務署などに相談した方が良いでしょう。
手間やコストは少し増えますが、税理士相談が最も確実です。
1-3. 譲渡費用
譲渡費用は、物件を売り渡す際にかかる様々な費用のこと。
売却の際に支払う不動産会社への仲介手数料や契約書に貼る印紙代などが主な例です。
空き家売却の際に押さえておくポイントは以下の通り。
- 借地権を売るため地主の承諾を得る際にかかった名義書き換え料は譲渡費用に計上される。
- 修繕費や固定資産税は譲渡費用として計上されないが、買主から増築やリフォームの要請があった場合は譲渡費用として加算される場合がある。
- 売却金の取り立てにかかった費用や住宅ローン抵当権抹消手続き、引越し代は売主の個人的なものと見なされ譲渡費用と認められない。
- 測量費は譲渡費用として計上される。但し売却のための測量に限り、昔にそれ以外の目的で行なった測量費などは認められない。
- 「取得費」の項にて前述の通り、土地を売るために行った造成費用は譲渡費用ではなく、取得費。
詳細は国税庁HP(https://www.nta.go.jp/index.htm)に記載がありますが、ざっと説明すると以上のような内容で譲渡費用が計算されます。
2. 空き家を売却したときにかかる税金一覧
前半では空き家の売却に関する費用の計算方法をご紹介しましたが、後半はいよいよ課税される税金の種類を見ていきます。
2-1. 譲渡所得税
譲渡所得税は、その名の通り譲渡所得に掛けられる税金です。
譲渡所得の計算方法をもう一度確認致しますと、
収入金額-(取得費+譲渡費用)
このようになります。前半でご紹介した内容を元に、まず譲渡所得を算出します。
続いて譲渡所得税の利率ですが、こちらは不動産の所有期間によって変動があります。
短期譲渡所得…所有期間が譲渡する年の1月1日時点で5年以下の場合。
税率:30%
長期譲渡所得…所有期間が譲渡する年の1月1日時点で5年を超える場合。
税率:15%
売り渡す物件の所有期間が違うだけでこんなにも税率に差が出るんですね…
但し、もし売却する不動産が相続・贈与による物件の場合は、被相続人や贈与者の取得した年を元に税率が計算されます。
空き家は相続や贈与による取得が多いので、税率の低い長期譲渡所得に該当する方が多いのではないでしょうか。少し安心ですね。。
2-2. 復興特別所得税
東日本大震災の復興施策の財源を確保するため、平成23年12日2日公布の特別措置法に基づき創設された制度です。
復興特別所得税の計算は、
その年の基準所得税額×2.1%
で行います。
空き家の売却で得た利益も立派な所得なので、必然的に課税対象となります。
2-3. 住民税
空き家の売却においては住民税の課税もあります。
課税の方式は譲渡所得税と同じく、不動産の所有年数が5年以下か5年を超えるかで変動します。
長期譲渡所得…住民税は5%
短期譲渡所得…住民税は9%
それではここで例と致しまして、ここまでの3種の課税がなされると税額がどうなるのか、一例を挙げてみましょう。
例)20年前に購入された土地・家屋を相続し、空き家として8,000万円で譲渡した場合。取得費は5,000万円、譲渡費用は500万円。建物の減価償却相当額は既に控除したものとする。
20年前に購入された物件なので、2種の課税のうち、長期譲渡所得に該当する。譲渡所得税15%、住民税5%。
譲渡価額8,000万円-(取得費5,000万円+譲渡費用500万円)=譲渡所得2500万円
(1)譲渡所得税…375万円=譲渡所得2,500万円×税率15%
(2)復興特別所得税…7万8,750円=譲渡所得税375万円×税率2.1%
(3)住民税…125万円=譲渡所得2,500万円×5%
3. 譲渡所得の特別控除とは
以上のように大きな税金の発生する空き家の売却ですが、条件が合えば特別控除が適用される場合があります。
「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度なのですが、条件は以下の通り。ポイントと共に記述しておきますね。
少し狭き門ではありますが、適用されれば最大3,000万円が譲渡所得から控除されますので、大変大きな節税に繋げることができますね。
一度ご自身の不動産が条件に合っているかどうかチェックしておきましょう。
<適用条件>
(1) 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること…例えば父親からの空き家相続の場合、相続前に父親自身が居住目的でその家に住んでいた、というのが条件です。
(2) 相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること…(1)の例を引き継ぐと、父親自身が1人で住んでいた場合という事になります。
(3) 昭和56年5月31日よりも以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること…旧耐震基準で建築されたものであるか
(4) 相続の時から譲渡の時まで事業用途、貸付け用途又は居住用途に供されていたことがないこと…相続してからこれまで賃貸していないこと
(5) 相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ、特例の適用期間にあたる平成28年4月1日から平成31年12月31日までに譲渡を行うこと…相続してから3年目の年末までに売却すること
(6) 譲渡価額が1億円以下
(7) 家屋を譲渡する場合、譲渡する時点において、該当の家屋が現行の耐震基準に適合するものであること、もしくは解体されていること…最新の耐震基準に基づいて耐震工事がなされているか、解体されていること。
4. まとめ
いかがでしたでしょうか?
空き家を売却すると利益だけではなく、損失も決して少なくないということですね。必ずこれらの税額を加味した上で、空き家売却を検討してください。
特に物件が長期譲渡となるのか短期譲渡となるのか、また特別控除が効くのかどうかはかなり大きな分かれ目。タイミングを誤ることなく、正しい計算を行っておきましょう。
最後に重ねますが、コストを厭わず税理士さんの力を借りる事も念頭に置いておきましょうね。