事例紹介
Category 不動産
2018年10月22日
借地料の相場は路線価から算出できる?詳しい計算方法を解説
「土地を貸して安定的な収入を得たいので、借地料の相場を知りたい」
「借地料の計算は専門家でなければ難しいらしいけど、あくまで目安が知りたい」
そんな方のために、この記事では「路線価」から借地料を算出する方法を解説します。
この記事でわかること
1.借地料は路線価から算出できる?
借地料は、「利用目的」「立地」「その土地から借主が得られる利益」など、いろいろな要素から算出されます。
例えば「利用目的」ですが、以下のどの目的かで借地料は変わります。
- 借主が建物を建てることを前提に貸す
- 建物を建てないことを前提に貸す
- 土地をそのまま貸す
そういった要素を考えずに、あくまで簡易的に借地料の相場を算出したい場合、路線価から借地料を算出する方法があります。
路線価とは、ある道路に面している土地1平方メートルあたりの価格のことです。
例えば相続税は、亡くなった人の財産が亡くなった時にいくらか(時価)を算出することで課税されます。
この時、土地の評価額をできるだけ簡単に算出できるように作られたものが路線価です。
2.借地料の相場を路線価から算出する方法
2-1.「路線価図・評価倍率表」の見方
路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べることができます。年度ごとに値は異なるので、インターネットで最新版を検索して確認してください。「路線価図・評価倍率表」にアクセスすると、全国地図が表示されます。
お住まいの都道府県をクリックすると、都道府県ごとの「財産評価基準書目次」が表示されるので、その中から「路線価図」をクリックしましょう。
そして、市区町村>地名(番地)の順にクリックすると、道路ごとに路線価が記載された地図が表示されます。
2-2.路線価の見方
路線価は、例えば「300C」のように、数字とアルファベットで表されています。路線価は1,000円単位のため、「300」は300×1,000円=30万円となります。「300C」と記された道路に面している土地は、1平方メートルあたり30万円であることを示しています。
A~Gのアルファベットは、借地権割合を表します。
各記号の借地権割合(パーセント)は、地図の上部に表記があります。
2-3.借地料を路線価から算出する計算方法
借地料を路線価から算出する計算方法は、その土地が面している道路が1本か2本かで異なります。
A.1本の道路に面している土地における借地権の価額
1)1平方メートルあたりの価額を算出
路線価×奥行価格補正率=1平方メートルあたりの価額
2)自用地の価額を算出
1平方メートルあたりの価額×地積=自用地の価額
3)借地権の価額を算出
自用地の価額×借地権割合=借地権の価額
つまり、「借地権の価額=路線価×奥行価格補正率×地積×借地権割合」となります。
1)の「奥行価格補正率」とは、間口に対して奥行きが長いなど、利用しにくい形の土地評価額を減額する補正率のことです。
奥行価格補正率の値は、国税庁の「奥行価格補正率表」で調べることができます。
年度ごとに値は異なるので、インターネットで最新版を検索して確認してください。
2)の「地積」とは、土地の面積のことです。
地積が不明な場合は、毎年4月末~5月初めに郵送される、固定資産税の納税通知書に書いてありますので確認しましょう。
それでは、実際に例をあげて計算してみましょう。
路線価:300C(300,000円・借地権割合Cが70%の場合)
奥行:35メートル
土地区分:普通商業・併用住宅地区
奥行価格補正率:0.97
地積:700平方メートル
1)1平方メートルあたりの価額を算出
300,000円(路線価)×0.97(奥行価格補正率)=291,000円(1平方メートルあたりの価額)
2)自用地の価額を算出
291,000円(1平方メートルあたりの価額)×700平方メートル(地積)=203,700,000円(自用地の価額)
3)借地権の価額を算出
203,700,000円(自用地の価額)×0.7(借地権割合)=142,590,000円(借地権の価額)
B.2本の道路に面している土地の借地料
1)1平方メートルあたりの価額を算出
(正面路線価×正面路線の奥行価格補正率)+(側方路線価×側方路線の奥行価格補正率×側方路線影響加算率)=1平方メートルあたりの価額
2)自用地の価額を算出
1平方メートルあたりの価額×地積=自用地の価額
3)借地権の価額を算出
自用地の価額×借地権割合=借地権の価額
つまり、「借地権の価額={(正面路線価×正面路線の奥行価格補正率)+(側方路線価×側方路線の奥行価格補正率×側方路線影響加算率)}×地積×借地権割合」となります。
土地が2本の道路に面している場合は、1本の場合よりも計算が複雑です。
「正面路線」とは、土地が2本の道路に面している場合に基準とする道路で、「側方路線」はもう1本の道路です。
2本の道路が面する土地は1本しか道路が面しない土地より利便性が高いことを考慮し、土地の評価額を上方修正するために1)の側方路線影響加算率を用いて計算します。
側方路線影響加算率の値は、国税庁の「側方路線影響加算率表」で調べることができます。年度ごとに値は異なるので、インターネットで最新版を検索して確認してください。
それでは、実際に例をあげて計算してみましょう。
正面路線価:300C(300,000円・借地権割合Cが70%の場合)
正面路線の奥行:35メートル
正面路線の土地区分:普通商業・併用住宅地区
正面路線の奥行価格補正率:0.97
側方路線価:200C(200,000円・借地権割合Cが70%の場合)
側方路線の奥行:20メートル
側方路線の土地区分:普通商業・併用住宅地区
側方路線の奥行価格補正率:1.00
側方路線影響加算率:0.08
地積:700平方メートル
1)1平方メートルあたりの価額を算出
{300,000円(正面路線価)×0.97(奥行価格補正率)}+{200,000円(側方路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.08(側方路線影響加算率)}=307,000円(1平方メートルあたりの価額)
2)自用地の価額を算出
307,000円(1平方メートルあたりの価額)×700平方メートル(地積)=214,900,000円(自用地の価額)
3)借地権の価額を算出
214,900,000円(自用地の価額)×0.7(借地権割合)=150,430,000円(借地権の価額)
土地に面する道路が2本の場合、計算式が複雑だと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ実は上記の例では正面路線をどちらにするかが決まっているので、計算が簡単な方なのです。
土地が2本の道路に接道している場合、どちらの道路の路線価を基準と決めるかで、土地の価格が変わってくる場合があります。
加えて、実際の土地はシンプルに計算できない形状をとっていることの方が一般的です。
例えば、「地区区分が正面路線と側方路線とで異なる」「側方の途中で、路線価が変わっている」「側方が一部だけ道路に接している」などです。
3.借地料の適正価格を調べるなら不動産鑑定が必要
この記事で解説した、借地料を路線価から算出する方法は、あくまで簡易的なものです。
実際には、借地料を算定するための不動産鑑定評価基準には、「積算法」「賃貸事例比較法」「収益分析法」など様々な算定方法があり、借地料の適正価格を調べるには、不動産鑑定士などの専門家による不動産鑑定が必要です。
4.まとめ
これまで解説したことをまとめます。
- 借地料は路線価から算出できるが、あくまで簡易的なもの
- 路線価とは、ある道路に面している土地1平方メートルあたりの価格のこと
- 路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べられる
- 1本の道路に面する土地の借地権価額=路線価×奥行価格補正率×地積×借地権割合
- 2本の道路に面する土地の借地権価額={(正面路線価×正面路線の奥行価格補正率)+(側方路線価×側方路線の奥行価格補正率×側方路線影響加算率)}×地積×借地権割合
- 実際に借地料の適正価格を調べるには、専門家による不動産鑑定が必要
比較的シンプルで簡単な借地料を路線価から算出する方法においても、分かりにくいと思った方もいらっしゃると思います。
借地料の適正価格を調べるには、まずは不動産鑑定士などの専門家に相談してみるのがよいでしょう。