事例紹介
Category 不動産
2018年11月26日
トラブルの元?事業用定期借地権契約の中途解約は出来る?
事業用借地権とは、住宅等の居住用以外の用途で、事業用としてだけ利用することが出来る定期借地権のことです。この事業用借地権は、ガソリンスタンドやコンビニなどが多く利用しています。
事業用借地権を利用すると、貸主側も借主側もリスクが少なく賃貸契約が出来るのですが、この契約を途中で解約したくなった場合はどのような手続きが必要になるのか、詳しく説明していきます。
この記事でわかること
1.事業用定期借地権契約の中途解約
借地権には普通借地権・定期借地権などいくつかの種類があります。その中のどの借地権であっても、法律で借地権の契約期間が定まっています。借地権は相続することも可能ですので、借地権者が死亡した場合はその相続人に契約期間が引き継がれることになります。
事業用定期借地権を含む定期借地権は、1991年に導入されて以来、多くの企業に適用されてきました。しかし近年は、存続期間の満了を待たずに社会情勢の変化で、事業用定期借地権の契約を解約したいという申し出が増えています。
借主側としてみれば、事業を開始する前は、事業を縮小したりたたんだりする可能性があることなどは想定していなかったと思います。しかし、事業用定期借地権契約をした時の経済情勢がずっと続くわけではなく、大幅に変化してしまうことから、借主側の方から契約を途中で解約したいという申し出をするケースが多くなりました。場合によっては、10年未満で中途解約したいということもあるのです。
しかし、事業用定期借地権契約は、基本的には法令上中途解約できないようになっています。そのため、中途解約の要請が来た際には、双方が対応に苦慮することが多いのです。借地借家法では、事業用定期借地権について、借地権者からの中途解約を規定していません。ですので、貸主と借主双方が合意しなければ、借主からの中途解約は認められないことになります。
事業用定期借地権については、借地借家法の第23条に明記されています。
<第23条>
1.専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2.専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。
3.前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
上記のように、事業用定期借地に関しては、貸主側に対して「一度土地を貸したら、戻ってこないのではないか」という不安を取り除くために設定されています。
借主が「もう土地を使わなくなったから解約したい」と申し出をした場合、貸主側はその理由に応じる義務はありません。
事業用定期借地契約で定められている契約期間は、土地所有者である貸主側としても、長期間土地を貸与することで土地代をいただき、収益をあげることを目的にしています。ですから、いきなり中途解約の申し出をされると、貸主側もとても大変不利な状況になり困ってしまうのです。
2.契約時の特約があれば中途解約できる
事業用定期借地契約時に、中途解約についての特約があれば、借主側は契約を途中で解約することが可能です。
事業用定期借家契約を締結するときに、「中途解約はできない」ということで借主側と貸主側が合意しているのならば、中途解約することはできません。
しかし、貸主も借主も双方が解約したいという意思があり、合意できればもちろん解約できます。
3.特約のない事業用定期借地権契約を中途解約する方法
事業用定期借地権の契約時に、中途解約に関する特約がない場合は、事業用の定期借地権について貸主側と借主側どちらからも解約申し入れができないことになっています。借主側からの解約を認める特約がない事業用定期借地権契約を中途解約する方法としては、借主がペナルティとして一定の解約承諾料を支払うことで、合意解約をすることになります。
また、事情変更の原則に基づく一方的解除をする場合もあります。しかし、事情変更から一方的に解除を求めても、貸主側に生じる損害については、賠償しなければならないという義務があります。損害賠償に当たる金額は、残り土地の賃貸料の全額を支払うことまではいかないにしても、その何割程度かになると予想されます。金額は、ケースにより違うでしょうし、双方の話し合いをもとに進められていくでしょう。
まだ契約期間が半分以上残っている場合は、中途解約も難しい場合が多く、ペナルティとしての違約金も高額になってしまうことが考えられます。そうなると、借主にとってはかなりの出費になってしまいますので、貸主側になんとか合意出来るような条件がないかを交渉してみると良いでしょう。
4.事業用定期借地権の契約時には中途解約についての確認が必要!
定期借地契約の中途解約の場合、定期借地制度の性質上、違約金を支払うなどで、合意解約を基本としています。そのため、事業用定期借地権の締結時の契約書には、中途解約条項が定められていない場合が多いです。ただし中途解約条項については、借主側、貸主側双方の合意や任意で入れることもできるので、もう一度よく契約書を見直して中途解約についての確認をしてみましょう。
一般的には、中途解約できるのでは定期借地の意味がなくなることから、貸主側が中途解約を嫌がることが多いですので、中途解約についての記載は無いことが多いです。事業用定期借地権の中途解約をしたい場合は、契約前に双方で期間内解約ができるように交渉しておくことが大切です。
「○ヶ月までに予告することで、事業用定期借地権契約の期間内であっても中途解約をすることができる」などの文言が契約書の内容に明記されていない場合でも、特約として同意してもらうことが出来ていれば、中途解約をすることは可能です。
しかし、事業用では賃貸料も高額なため、数ヶ月前に予告したとしても、交渉はかなり難しいことが多く、貸主に受け入れてもらえないことも多いです。その場合は、契約期間の半分以上を経過していることや、せめて半年前に中途解約を予告させてもらうなどの条件を出すことで、貸主も中途解約の要請を受け入れやすくなる可能性があります。
また、双方がすんなり合意のもとで事業用定期借地権契約の中途解約を認めて契約を解除することを「合意解除」と言います。借主側と貸主側にある程度のおつきあいがあったり、信頼関係が厚かったりすると、中途解約に関しての事情も理解してもらえることが多く、合意解除になることもあります。
5.まとめ
事業用定期借地権契約の中途解約は可能なのか、またどのような方法で中途解約の申し込みをするのかなどについてご説明しました。
経済環境は目まぐるしく変化しており、やむをえない事情で中途解約になってしまうというケースもあります。しかし、原則として事業用定期借地権契約の中途解約はできないことと、どうしても契約を中途解約する場合は、ペナルティのお金が発生することも注意しておきましょう。
上記を知らずに事業用定期借地権契約を締結してしまうと、不測の事態が訪れたときに慌てふためいてしまうことになってしまいます。トラブルを避けるためにも、事業用定期借地権契約の締結前は、事前にしっかり確認して契約内容をしっかり把握しておきましょう。