事例紹介
Category 不動産
2018年11月26日
農地転用の方法【農地法第5条申請】
実家の農地に家を建てたい、資材置き場にして貸したい。そんな時には、「農地法第5条申請」が必要になります。農地を農耕以外の目的に使う農地転用をするときには、農地法第5条に従って届出や許可申請するよう定められています。
「許可申請」と「届出申請」の違いや、実際に必要になる書類や書き方など、農地法第5条が必要な事例や、申請の仕方について解説します。
この記事でわかること
1.農地転用するための農地法第5条申請とは?
農地を他の地目に変えるには、農地転用の許可や届出が必要です。これは、農地法で農耕地が守られているからです。持っている農地を農地転用して売りたい、貸したいというとき農地法第5条申請が必要になります。
1-1.農地法第5条許可申請
市街化区域と市街化調整区域とで取り扱いが異なり、市街化調整区域にある農地では「許可申請」になります。農地法第5条では、農地転用で所有権が動く場合や貸すときのルールを定めています。原則として、農地転用のため所有者が変わるときや、賃借権設定が行われるときには、都道府県知事・市町村長の許可が必要です。
- 持っている市街化調整区域にある農地を資材置き場用地として売る
- 市街化調整区域にある農地を相続のタイミングで増築に使う
- 市街化調整区域にある農地を駐車場にして賃借権設定する
市街化調整区域で「農地転用と所有者変更」、「農地転用と賃借権設定」が起こるケースでは、許可申請となります。また農地区分第1種農地は農地転用が原則不可ですが、公共性の高い転用では認められるケースがあります。こうした審査が必要な事例では、「許可申請」です。
1-2.農地法第5条届出申請
市街化区域にある農地を農地転用する場合「届出申請」になります。
農地転用、所有権の移動、賃借権設定は、農地法によって原則許可制としていますが、市街化区域にある農地転用は、ほとんどがそのまま認められるものとして届出申請で良いことになっています。
- 市街化区域にあり宅地として売ってほしいと言われた
- 市街化区域にあり賃貸アパートを建てたい
こんな場合は農地法第5条「届出申請」をします。
1-3.農地法第4条との違い
- 農地法第4条:農地転用するときは届出または許可を受ける
- 農地法第5条:農地転用とともに所有権移動、賃借権設定がある
農地法第4条・第5条は、どちらも農地転用についてのルールを定めた法律です。2つの大きな違いは、所有権の移動や、賃借権の設定があるかという点です。
第4条は、持ち主が変わらないままの農地転用(自己転用ともいいます)ルールです。個人が農地転用を検討するときのポイントとしては、農地区分、市街化区域か市街化調整区域なのかという点です。届出申請か許可申請かの判断は同様になります。
2.農地転用(農地法第5条)の申請手続きの方法
所有者移動や賃借権設定がある場合、農地転用での申請手続きとなります。対象の農地が市街化調整区域にある場合や、届出申請になるのか判断がつかない場合は、あらかじめ地域の農業委員会に相談して進めましょう。
2-1.申請書の記入例
農業委員会で用意されている申請書用紙に必要事項を記入していきます。
一般的な申請書の項目について解説していきます。
- 譲受人(土地を買う人)
- 譲渡人(土地を売る人)
- 当事者の住所等(譲受人・譲渡人それぞれの住所)
- 許可を受けようとする土地の所在等
*登記事項証明書の所在地
*使用用途・地目・面積
*市街化調整区域などの区分
- 転用計画
*転用の目的
*事業の操業期間又は施設の利用
*転用の時期及び転用の目的に係る事業又は施設の概要
- 権利を設定し又は移転しようとする契約の内容
*権利の種類(使用貸借権など)
*権利の設定・移転の時期、権利の存続期間
- 資金調達についての計画
*自己資金、融資の見通しなど別紙にまとめる
- 転用することによって生ずる付近の土地・作物・家畜等の被害防除施設の概要
*「土砂流出防止のため擁壁を建て、万が一の場合責任を持って対処します」など
- その他参考となるべき事項
*都市計画法第29条許可同時申請(準市街化地区などで同時申請しているなど)
(埼玉県熊谷市の許可申請書を参考にしています。)
https://www.city.kumagaya.lg.jp/shinsei/sumai/nouchi/tyousei2301.files/5rei.pdf
2-2.必要書類
- 土地の登記事項証明書
- 地番図
- 現況地目図
- 計画配置図(建物の面積・配置、道路、用排水施設等が書き込まれた図面)
- 残高証明書、融資証明書等
- 所有権者、地上権者等の同意書
- 他法令の許認可等の書面
- 土地改良区の意見書 (土地改良区がある場合)
- 水利権者、漁業権者等の同意書
- それぞれの詳細を説明するのに必要な図面など
- 住民票や印鑑証明など
- 法人であれば法人の登記事項証明書、定款など
2-3.手続きに要する期間
- 都道府県知事許可でおおむね6週間
- 農林水産大臣許可では事前相談6週間、許可申請提出から6週間
- 複雑な事例(農振除外など)では1年かかるケースもある
農業委員会⇒知事⇒県農業会議⇒知事⇒農業委員会というルートをたどって許可がおります。農地転用の許可申請では、農地を管轄する農業委員会に前もって相談が必要です。それぞれの機関で締め日が決まっているので、それを見越して農業委員会に相談するところから、農地転用の手続きがスタートします。
3.農地転用(農地法第5条)の申請にかかる費用
たくさんの書類が必要になる農地転用許可申請では、どれくらいの申請費用がかかるのでしょうか。
本人申請した場合と、代行申請した場合をみていきましょう。
3-1.本人申請
- 土地の登記事項証明書:1通600円(オンライン郵送500円、窓口受け取り480円)
- 残高証明書:700円~900円・融資証明書:数千円~1万円
- 地図(公図)請求手数料:450円
- 申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面
(専門家に作成依頼すると数千円) - 土地改良区の意見書:数千円~1万円
土地改良の意見書は街頭しない場合もありますが、こうした書類を準備するのにかかる費用は7,000円前後~25,000円くらいです。ただし請求手続きや、実際に受け取りに出向いたり、書類の作成をしたりなど、細かな作業が発生します。
また専門家に依頼しなければならない書類がでてきた場合、その都度数千円以上の費用が発生するので、そうした状況が重なればさらに高額になる場合もあります。
3-2.代行申請
行政書士、設計事務所などによる手続きの代行申請では、必要となる書類の取得や、作成をまとめて依頼できます。手数料報酬は案件の複雑さによって変わってきます。第5条許可申請の場合は、10万円前後ということが多いようです。報酬7万円+書類取得の実費という料金設定になることもあります。専門家が請け負っているので、案件に対して必要な手続きをスムーズに進められる安心感があります。
また、所有権の移転や賃借権設定などでは契約書作成なども前後して必要になります。まとめて相談できて便利だと感じるケースもあるでしょう。
4.まとめ
- 対象農地を管轄する農業委員会に相談する
- 市街化調整区域では許可申請になる
- 許可がおりるまで6週間以上かかる
申請書類は農業委員会によって違いがあるので、農地転用を考えたらまずは農業委員会に許可申請の進め方を相談しましょう。必要書類が多いため、自分で手続きを行うときには、抜け・漏れがないよう農業委員会に確認しながら進めなければなりません。複雑な事案の場合には、代行申請を使っても良いでしょう。
市街化区域であれば届出で済みますが、市街化調整区域や農地区分が第1種、第2種では許可申請になり、許可がおりるまで日程に余裕をみて進めなければなりません。