事例紹介
余っていたり使っていなかったりした土地を誰かに貸付して土地を有効利用したいと考える方も多いようです。一方で土地を貸付して収入を得る場合には税金が発生するのかどうかも気になるところです。貸付については土地の状態や利用目的で課税対象かの判定が変わります。そして非課税の対象の土地についてはかなり厳密な規定を設けています。
今回は土地の貸付における課税の有無について細かくご紹介します。
この記事でわかること
1.土地の貸付は非課税取引
土地の貸付において関係する可能性のある税金は消費税です。消費税は物品の購入や、サービスを利用した場合の支払いにかかってくる税金です。
例えば食品や飲料品などを購入すれば消費税を支払います。またバスや鉄道などの公共の交通機関を利用する場合でも、人や物品の運送といったサービスを利用してその結果運賃という名目で対価をもらっているので消費税を支払います。つまりほとんどの物品の購入やサービスの利用については課税対象となります。
しかしあくまで「ほとんど」ですので、すべての商品の購入やサービスの利用のような取引に消費税がかかるものではありません。わずかですが課税の対象にならない取引も存在します。非課税とされる取引には、課税することになじまないものや、社会政策的な配慮に基づくものなどがあります。
例えば社会保健医療は社会政策的な配慮のため非課税となります。また商品券についても、商品券を利用して物品を購入したりすれば税金を支払いますが、商品券の購入のみの場合には非課税となります。
そして土地についても消費税法の条文には以下の文言が明記されています。
消費税法第6条
「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表に掲げるものには、消費税を課さない。」
そのため土地に関しては非課税です。
土地はだれかによって消費されるものではなく、永久に存在するものです。そのため不動産の中でも建物については課税対象となりますが、土地については課税対象とはなりません。
そのため一戸建てについて土地と建物を一緒に買う場合でも、販売価格には建物の分の消費税のみが含まれることになります。そして土地の貸付の際の地代についても消費税は非課税です。
2.土地の貸付でも課税取引になる場合
土地の貸付については基本的には課税取引にはなりませんが、ケースによっては課税取引の対象になることもあります。
2-1.一時的な土地の貸付けは課税取引になる
国税庁の基本通達には貸付の期間についてのはっきりとした長さが設けられています。そこには土地の貸付けとして関係する期間が1月に満たない状態という表現があります。土地の貸付けに関係する期間が1カ月に満たない場合と記載されているので、土地の貸付の期間が1カ月に届かない場合には課税取引の対象として扱われます。
例えば、イベントのために10日間ほど土地を駐車場として利用した場合には1カ月に届かない使用とみなされるため消費税を支払うことになります。土地の貸付期間が1カ月超えているかどうかは原則として契約書を基に判断されます。
2-2.施設の利用を伴う土地の貸付けは課税取引になる
国税局の基本通達には土地などの貸付の目的について詳細に記載されています。土地の貸付などを行うときに野球場やテニスコートなどの施設、また建物などの目的のための利用が関係している場合については、その土地の貸付については課税取引になることが述べられています。
見た目は更地のように何もない状態の土地だとしても、駐車場やテニスコート、野球場など施設として利用するために貸付を行った場合には課税取引の対象になります。
2-3.建物の賃料と土地の賃料が区分されていても課税取引になる
事務所などの事業用に関する賃貸契約を行った場合では、建物の部分についての賃貸料と敷地部分についての賃貸料が別々に記載されている場合もあります。
しかし国税局の基本通達には建物の貸付についての賃貸料と土地の貸付についての賃貸料が分けられている場合の規定が述べられています。そこには賃貸料が区分されている場合だとしても、建物の貸付などに関係する金額と土地の貸付けに関係する金額が分けられているものについては、その合計額が建物の貸付けとして課税取引に用いられることが説明されています。
賃貸は敷地部分だけではなく、建物を含めた全ての部分が賃貸料として考えられるので、消費税の課税対象は土地部分を含めた全てになります。
3.その他の土地貸付に関する課税・非課税
土地の貸付の状態や方法によって課税の対象か非課税として判断されるかがきわどいものもあります。
3-1.更地の状態で車を駐車する場合
車を土地に止める場合には土地の状態を見て課税取引かどうかの判断がされます。国税局の基本通達には土地を駐車場として利用する場合の詳細な規定が書かれています。
そこには駐車場のために区画や建物の設置などの整備をしていないときについては、その土地の使用について、土地の貸付けとして判断されるとあります。土地の貸付の目的が車の駐車のためだったとしても、完全な更地の場合については非課税取引として扱われます。
ただし整備もされておらず柵などを使用していない完全な更地であることが条件に含まれています。そのため青空駐車場として土地を貸付する場合でも、地面にコンクリートを使用していたり、地面に駐車スペースが分かるように区画割りがされていたりした場合には駐車場施設の貸付とみなされ課税取引の対象となります。
3-2.貸付した土地を貸主がコインパーキングとして利用する場合
駐車場として土地の貸付を行う場合には、何の手も加えていない更地での状態のみ非課税取引となります。貸付された土地について貸主がコインパーキングとして利用している場合には、そのための設備をだれが設置したかによって判断が変わります。
もし借主側がアスファルトなどを含めた駐車場の整備を行った場合には、その土地については非課税取引となります。しかしもし貸主側が整備を行った場合には課税取引として扱われますので注意が必要です。
3-3.土地の仲介手数料は課税対象として扱われる
土地の貸付を行う際に仲介手数料として業者に支払った場合には、仲介手数料については課税取引となります。非課税取引は土地の貸付のみについて適用されるため、土地に関係したサービスについては消費税の課税対象となります。
3-4.土地の更新料は非課税対象として扱われる
土地の概念には、土地そのものだけでなく土地の上に存する借地権も含まれます。そのため土地の貸付に関する更新料や名義の書き換え料金などについては、新しい借地権のための支払いにあたりますので非課税取引として扱われます。
4.まとめ
土地の貸付に関しては法律上では非課税取引になるので、税金を払う義務はありません。
ただし土地の状態や目的などによっては課税取引として扱われるため注意が必要です。特に駐車場としての利用については、更地のままで利用する場合には非課税取引なり税金は発生しませんが、駐車場に柵などを使用して整備を行った場合には課税取引とみなされますので注意が必要です。
また逆に更地の状態であったとしても野球場やテニスコートなどの施設としての目的で利用する場合には課税取引とみなされます。
土地の状態によっては判断が難しい場合もありますので、そうした場合には専門の業者に確認してもらうことも大切です。