事例紹介
更地の固定資産税が高いので、せっかく土地があるのだから、やはり何とか有効活用はできないかと考えたことがある方は多いのではないでしょうか。その際、土地活用策の一環として、アパートやマンション経営などと共に、頭に浮かんでくるのが駐車場経営です。
コインパーキングや月極駐車場の経営は、固定資産税を節約するうえで役に立つのでしょうか、はたまた、固定資産税の支払い分以上に収益をあげる土地活用策として有効なのでしょうか。今回は、固定資産税の計算方法、ならびに、土地や建物とは区別される償却資産といわれる固定資産に焦点をあてて、これらの疑問に答えてゆきたいと思います。
この記事でわかること
1.更地を駐車場にすれば固定資産税の節税対策が可能?
固定資産税対策という観点からすれば、更地を駐車場にしたところで、残念ながら節税になることはありません。その理由として、国が駐車場に公共的な利益を認めていないということが挙げられます。
まずは固定資産税の計算方法について、軽く振り返っておきましょう。固定資産税は、課税標準に定額税率1.4%を乗ずることで算出されます。課税標準という言葉にあまり馴染みはないかもしれませんが、平たく言うと「税額を計算する時にだけ用いる固定資産の価値」を意味します。
固定資産税額の計算において、税率が定額の1.4%である以上、課税標準が低いほど税額も低くなるわけですが、国が優遇したい固定資産の税額を計算する際には、対象となる固定資産の評価額をうんと圧縮した課税標準にしてやり、逆に、国が優遇する必要性を認めない固定資産の税額を計算する際には、評価額を圧縮低減することなくそのまま課税標準として税額を計算する、といったことが成されるわけです。
例えば住宅用地などは、人々に住まいを提供し社会の安定に貢献していると国にみなされていますから、固定資産税を算出する際、その面積如何で、評価額を3分の1から6分の1にまで圧縮した課税標準を用いることが許されています。
では更地の扱いはどうかというと、評価額がなんの圧縮もされることなく、そのまま課税標準として固定資産税の計算が成されてしまいます。国としては更地については優遇する必要性がないという考え方で運用されているのです。
国のこの方針は、駐車場に対しても同様に適用されてしまいます。つまり、駐車場の評価額も、圧縮低減されることなく、そのまんま課税標準として固定資産税の計算が成されます。駐車場に関しては住宅用地などに比べて社会貢献度が低いと国に捉えられてしまい、更地と変わらない課税標準額となってしまっているのです。
2.更地を駐車場にした時の固定資産税はいくら?
今日から更地を駐車場にしたとしても、それまで支払ってきた更地の固定資産税額と、今後払ってゆくことになる駐車場としての固定資産税額には、なんらの差異も存在しない、ということになってしまいます。ただし、この、固定資産税額に違いがない、という結論は、何らの投資をすることなく、更地をいわゆる青空駐車場として使用したときのことを想定しての話です。
もし、更地の有効活用策として、設備投資などを伴う駐車場経営を行うというのであれば、話は変わってきます。なぜなら、設備投資によって土地に備え付けられた償却資産という固定資産にも、当然ながら固定資産税がかかってくるからです。
3.更地を駐車場にする際の3つの注意点
駐車場経営を行う際の償却資産について、詳しく解説していきます。償却資産とは事業の用に供することのできる10万円以上の固定資産を言います。具体的には、船舶や航空機に工具器具、さらには、煙突や鉄塔などの構築物、ポンプや配線設備等の機械装置などを指します。
土地や建物といった他の固定資産と同様に、償却資産の固定資産税も、課税標準×1.4%で計算されますし、更地と同じで国が優遇する姿勢もないため、その評価額が圧縮されずにそのまま課税標準となるわけですが、償却資産のみに見られる特徴として、耐用年数に応じて、毎年評価額が下がっていく、という点が挙げられます。では、償却資産に関連する注意点について、確認していくことにしましょう。
3-1.免税点
固定資産税においては、課税標準が一定金額に満たない場合、課税しないという決まりがあります。この金額を免税点と呼び、土地に関しては30万円未満、建物に関しては20万円未満と指定されています。
ところが、償却資産に関しての免税点は150万円未満と設定されています。「償却資産の数はほぼ無数にあり、その一つ一つから徴税していたのでは、あまりに事務が煩雑化してしまう」と危惧しての判断であり、土地や建物に比べるとかなりおおらかに見受けられます。
ですから、せっかく更地を駐車場に転用するという土地活用策に打って出るわけですから、設備投資の効用を充分に享受すべく、金銭的に余裕があるのなら、看板や照明設備などの導入に関して、償却資産免税点の寛容さを活かしてみるとよいでしょう。
3-2.申告納税方式
固定資産税の支払いに関し、土地や建物は賦課課税方式を採用しています。つまり、固定資産課税台帳に記載されている土地や建物の所有者に対し、市町村が、いわば勝手に、それで言葉が悪ければ、所有者の申告の有無にかかわらず、税金の支払いを要求する方式です。
対して、償却資産は申告納税方式を採用しています。これは、償却資産の所有者が自らその存在を申告し納税するという方式です。だからといって、申告しなければ支払わなくてよい、という話にはならず、知識不足による不必要な申告や二重課税であったり、誤認による申告し忘れなどが発生する危険性があります。
不必要な申告に関して言えば、土地と家屋以外の高価なものは何でも償却資産というわけではありません。たとえば、10万円以上するものであっても耐用年数が1年未満のものは償却資産とはみなされません。
また、申告し忘れに関しては、駐車場の契約者が自身の便宜の為に車止めやフェンスなどを過去に構築した後、遠方に引っ越すなどの理由で契約解除した場合、その構築物が今となっては駐車場の付属設備とみなされるならば、やはり、駐車場経営者が自分の償却資産として申告しなければなりません。
3-3.アスファルトと砂利では扱いが異なる
償却資産か否かの判断で特に間違いやすいのが、アスファルト舗装です。更地に元から転がっていただけの砂利が、設備投資の結果としての償却資産とみなされることはないため、固定資産税がかかってくることもありません。
ですが、アスファルトで舗装する場合は土質や形状次第では、立派な構築物とみなされることがあります。業者や立地、さらには、施工面積にもよりますが、相場はだいたい1㎡あたり5000円前後と言われていますので、駐車スペースをある程度確保し、出入り用の通路なども作るとなれば、150万円を超えてくる可能性は充分にあります。
4.まとめ
更地の駐車場転用に関する説明はいかがでしたでしょうか。最後に簡単なおさらいをしておきます。
- 更地を駐車場に転用しても固定資産税の節税にはならない。
- 土地活用策として更地を駐車場に転用する際は、償却資産の扱いに注意が必要である。
このページでは、あくまで固定資産税という切り口から、更地の駐車場転用について色々と考察してみたわけですが、駐車場の運営には、所得税や消費税といった他の税金に関する知識、さらには、維持費や利回りといった事業運営の視点、また、セキュリティやトラブルなど安全面への配慮など、様々な要素に気を配る必要がありますので、更地を駐車場に転用しようという方は、是非そちらに関しても深くご検討いただくことをお勧め致します。