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Category 不動産
2018年10月02日 更新
不動産をオークションで売却する6つのメリットと4つのデメリット|全手順を解説
不動産オークションとは、1999年から解禁された、誰でも参加できる不動産流通の一つの形です。不動産で競売と言えば、以前は裁判所が出す競売物件や国有地の入札の事でした。それとは別の不動産オークションと呼ばれるものでは、個人法人問わず、様々な土地や建物が盛んに取引されています。
ここでは、不動産オークションがどういうものか、通常の売買とはどう違うのか。メリットやデメリット、注意点等をまとめました。
この記事でわかること
1. 不動産のオークションのメリット
不動産のオークションには色々なメリットがあります。でも、どんなメリットがあるのかすぐに答えることは難しいかもしれません。ひとつずつ順番に見ていくことにしましょう。
1-1. 情報が公平に公開される
まず、一番に上げられる不動産オークションのメリットと言えばこれです。通常、不動産を売買するには、不動産会社と媒介契約を結び、その後の情報操作は不動産会社の担当者に一任されます。
不動産会社との間で売買の為の媒介契約を交わすと、不動産会社の担当者は、インターネット上や紙媒体での公開先を選定します。この時、担当者や不動産会社の都合によって、公開先を限定することが少なからずあります。(こうしたことが発生してしまうのは色々な理由が考えられますが、主に不動産会社の利益を向上させる為の戦略です。)
ところが不動産オークションでは、自分の物件を出品したサイト(例えばヤフオクやマイホームオークション等)に情報を載せることで、公開先は制限されず、平等に見たい人が見れるようになっています。自分の物件がどういう風に公開されているかは一目瞭然となります。
1-2. 購入希望者に出会いやすい
不動産オークションでは、短期間で多くの人の目に触れることが大きなメリットです。オークションサイトのアクセス数や、会場型オークションの来場者数が大きければ、それだけ購入希望者に出会える確率が高い、ということになります。
1-3. 価格決定の公平性
日本での不動産取引は、ほとんどが相対取引です。基本的に売り出し価格は、仲介する不動産会社の助言のみで決まる場合が多いです。しかも、不動産会社が連れてきたお客様とのみ交渉するという極めて閉鎖的な環境の中で売値が決まります。
それに対して不動産オークションは、期間や公平性、経済的な合理性のあるオープンでわかりやすい取引として拡がっています。
1-4. 高額で売却できる可能性がある
最低落札価格を売主側で決定できることや、競り合いの末に思いもよらない取引金額に上ることも少なくないため、どうしても高値で売り抜きたいと考えたときには、選択肢に入れるべき取引方法です。
1-5. 一番良い条件を提示した購入希望者と取引ができる
オークションなので当然ですが、期間内に一番高額で入札した方との取引が実現します。通常の不動産売買では早い者勝ちの取引となるので、不動産オークションに出品して買い叩かれることはほとんどないと言えるでしょう。
1-6. 不動産会社を挟まずに直接やり取りできるので時間がかからない
通常の不動産取引の場合、不動産会社(複数の場合がほとんど)に物件の売買価格の見積依頼をし、そこから媒介契約を結ぶ会社の選定。媒介契約の種類の話し合いをし、媒介契約書にサイン・・・等とやっているとあっという間に数日~数週間は経過します。
オークションの場合、オークションサイトにアカウントと物件を登録し、出品する(査定の為の訪問等はあります。詳しくは各オークションサイトにて)というシンプルな手続きで購入希望者に紹介することが可能です。不動産会社の仲介があった方が安心、という方にはそういう形式のオークションもありますので、各不動産会社やオークションサイトにお問い合わせください。
2. 不動産のオークションのデメリット
では、次に不動産オークションのデメリットについて見ていきます。
2-1. 契約上のトラブルが発生しやすい
不動産オークションに関して、消費者センターや公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会に多数の苦情が寄せられています。
代表的な事案としては、「落札者から購入をキャンセルされた」「オークション運営側や不動産会社から、不当な報酬を要求された」等です。何も知識がないまま、不動産オークションを始めると上記の様な問題に巻き込まれかねません。
不動産に関して初心者の方もそうですが、通常の不動産売買に慣れているプロでも、オークションや競売の実績が浅いとトラブルに対応できかねる場合もあります。よく考えた上で参加するかどうかを検討しましょう。
2-2. 予想よりも低い価格でも落札されたらキャンセルできない
いくら最低落札価格を決めれるとは言え、予想よりも入札が入らないことも十分ありえます。価格決定がオークションの難しい所でもあり、不動産売買においても重要なプロセスになります。一度でも入札が入れば、売らなければいけないことは確定してしまいます。
後戻りはできませんので、慎重に価格を決めてください。
2-3. 物件が少ないため入札者が少ない
そもそも、現在の日本の不動産業界ではオークション市場が未だ成熟していません。様々な国や地域では活発に不動産オークション行われている反面、日本では出品者や入札者自体が少ないのが現状です。
入札自体がないままオークション期間が終了してしまうことも珍しくありません。
2-4. 気軽に利用できるためキャンセルなどのトラブルが起きやすい
気軽に利用できる事は、メリットとデメリット、両方の側面があります。不動産は他のオークションと比べて高額な取引になる為、よく考えずに登録やキャンセルを行うユーザーがいるとトラブルの原因となります。
オークション運営側も、様々な仕組みや注意喚起で円満な取引を目指していますが、当事者としてトラブルを招かないように、わかりやすい表記を心掛けるなどの細やかな配慮が必要です。
3. 不動産のオークションサイト
主だったオークションサイトを簡単にご紹介します。ご利用になる際の参考になれば幸いです。
3-1. yahoo!オークション
日本最大手のオークションサイトです。オークションの入札者が限られる中、ここの集客力を活かせれば、買主が見つかる可能性も高まるでしょう。
※2016年から、取り扱う不動産の種類が少なくなっています。
3-2. AUC’S
オークスと読みます。不動産流通会社5社が共同運営している不動産オークションサイトです。財閥系などの大手不動産会社ばかりが運営しているので、その点は他と一線を画すサイトです。
3-3. マイホームオークション
1998年から、業界初の不動産オークションを開始しました。ノウハウで言えば最長のものを保持しているでしょう。ヤフー株式会社や大手ポータルサイトとも提携しています。
3-4. EAJ
株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託という、信託会社が運営している不動産オークションサイト。もしもの時のことを考えると、信託会社を選んでおけば多少は安心できると言えます。
3-4-1. 価格だけで落札者を決める方法と総合評価で決める2つのパターンがある
ここでは入札金額だけでなく、他の要素も絡めた落札方法も採用しています。
価格順とは、単純に一番高い金額を入札した人が落札できる方式です。
もう一つの「総合評価」とは、
- 価格
- 購入条件
- 用途
- 購入名義
この4つをもとに、落札者を決定します。
3-5. さてオク
買取査定&仲介手数料0円が魅力。サイト内の事例別活用法をまとめたマンガもみやすく、一見の価値あり。知り合いを紹介し、さてオクで売却成立すると、紹介した側にサポーターコミッションという紹介料の様な物をもらえたりもします。
4. 不動産のオークションの流れ
では、実際にオークションを利用する際の手順について見ていきましょう。
4-1. 無料査定サービスを利用
まずは売却検討中の物件を査定してもらいましょう。できるだけ複数の査定サービスや不動産会社への査定を依頼し、ご自分の物件の相場価格や最低落札価格に目処をつけておくことが大切です。
4-2. 出品と媒介契約
専属専任媒介契約(詳しくは各サイトにて。もし媒介契約を交わしている不動産会社があれば、当該契約の解除が必要です)を締結します。引渡条件等その他の取り決めを行い、いよいよ出品となるわけですが、出品にも準備が必要です。
物件の詳細な情報や、HPに掲載する為の写真等の提供を求められますので、できるだけ迅速に対応しましょう。
4-3. 内覧等の対応
個別の事情により、売却物件の内覧を断る売主もおられますが、可能な限り対応した方が成約につながりやすくなります。できるだけ清潔にして、見栄えが良いように片付けもやっておきましょう。飾り付けなどもできれば、物件全体の印象が良くなります。
4-4. 落札と売買契約
オークション期間内に一度でも入札があれば、落札が決定したということになります。最高額入札者と、速やかに売買契約のすり合わせを始めます。売買する際の詳細な条件の確認や、入金や引渡に関しての時期や方法についての話し合いが、不動産オークション運営側(担当者)を通してなされます。
4-4-1. 落札価格は予測できません
だいたい、いくらくらいなりそうかなどと、オークション関係の不動産会社にしても、はっきりした答えはありません。決定した落札価格についても、後で値上げ交渉やキャンセルもできません。納得できる価格で売りに出すことが後悔しないで済む唯一の方法かもしれません。
4-5. 引渡し
決済と同時に引渡を行います。担当者の案内に従って、売買契約の締結がなされます。契約書や重要事項説明書には、物件の詳細情報や取引に関する条件等が書かれていますが、出品段階での話し合いと相違ないかを確認する事が大切です。
5. 不動産の出品者側の注意点
出品者側として売主が注意しておかなければならないことがあります。最低限、このくらいは押さえておいてください。
5-1. 一般の売買より安くなることが多い
人気のエリアであったり、建物の価値が高い場合は、激しい競り合いの末に高値がつく可能性もあります。
しかし、短期間で売り抜く事がメリットでもある不動産オークションは、ほとんどの場合一般の売買より安い金額で決まることが多いです。相場通りぐらいの価格で出品すると、かえって入札が入らなくなります。
なるべく高値で売りたい場合は、やはり通常の不動産売買で腰を据えてじっくり売る方が良い場合もあります。通常の売買とオークション、どちらの方がいい結果が出るかはやってみなければわかりません。ただ、オークションの場合は売買価格の振れ幅が大きい、というのは注意すべき点です。
5-2. 最低落札価格は先に相場を調べておくこと
プロに任せるオークションとは言え、オークションに参入する前に、売主として自分の物件の売値の相場ぐらいは把握しておくようにしましょう。通常通りの不動産会社での売却相談や、インターネット上での一括査定サービスなんかも利用してみましょう。不動産会社によって大きく差が開くことも多いですが、大体の金額の目安にはなります。
その金額を念頭に置いて、提示された最低落札価格と照らし合わせて、最低落札価格を決定しましょう。一番難しいステップですが、オークションを成功させる為の最重要ポイントになります。
5-3. 媒介契約について
オークションという形式上、売買を任せる不動産会社とは「専属専任媒介契約」というのを交わします。出品~売買契約締結後の引渡までの期間において、オークションとは関係ない別の不動産会社や、売主が連れてきた買主が現れれば大変なことになるからです。
つまり上記媒介契約においては、オークション期間中に、入札者以外の買主とは取引ができません。現在までで他の購入検討者と話が進んでいないか、他の不動産会社と媒介契約を交わしていないか(交わしていたら、その不動産会社が当該物件の購入検討者を抱えていないか)を、しっかり確認したうえでオークションの話を進めましょう。
5-4. 売買契約の内容や手順の確認
落札後の取引の流れや、売買に関わる手数料や引渡までの手順等を事前に確認しておきましょう。まだまだ成熟していない市場でもありますし、良心的な会社ばかりが運営しているオークションばかりとは限りません。
仲介業者も同様です。怪しいと思う説明や解答を受けた場合は、一般財団法人不動産適正取引推進機構や、各都道府県の都市整備局・建築指導課等の相談窓口を活用しましょう。
6. 入札者側の注意点
入札する側にもいくつか注意して頂きたい点がありますので、順に見ていきます。
6-1. 情報量が少ない
オークションでは、ネットで閲覧できる多少の説明文や写真、建物の外観等でリスクを判断しなければいけません。基本的には初心者が入札をするべきではありませんので、よほどの事情がなければ通常の不動産会社を通じての売買をお勧めします。
不動産オークションの入札者は、ほとんどが不動産投資家や不動産会社です。特にご自身が住む予定の住宅をお探しの場合は、オークションはリスクが高すぎるのでやめておかれた方が良いかもしれません。
6-2. 内覧ができない可能性がある
出品されている物件が建物である場合、出品者の個別の事情により、物件の中を見ることができない場合があります。個別の事情とは、単純に仕事などの用事で持ち家にいる時間がオークション期間中にとれない等の、言わば不可抗力の場合もあります。
しかし逆に、何かしらの欠陥や問題を隠したりするためにあえて内覧不可としている可能性も否定できません。購入後に何か欠陥が見つかったとしても、対応してもらえず泣き寝入り、といった事例も実際にあるようです。
物件に関する情報は、どんなに細かい情報でも漏らさないように収集する心構えでいましょう。
6-3. 鍵の受け渡しがない
売買契約で得られるのは、所有権のみが基本です。通常、不動産の売買や賃貸の契約では、決済と同時履行で建物の鍵渡しが行われます。オークションでは、決済と所有権移転の登記が行われれば、取引完了、とするのが一般的です(個別の契約に従います。それぞれのオークションで独自の特約を盛り込んだ契約も用意されている場合がありますので、詳細はオークション運営側にお尋ねください。)。
例えば、オークションで手に入れた物件に知らない人が住んでいた場合には、自分で立ち退き交渉をしなければならなくなります。こういう場合は、やはりノウハウがある不動産会社等に依頼をするのが一番ですが、それには費用がかかります。
オークション運営側の担当者や不動産会社の中には、こういう物件だということが分かっていて情報を隠したまま売りつける悪質な業者も存在するようです。やはり、取引に関わる会社や人物に不安を覚えたら、第三者に相談するようにしてください。
6-4. 融資が受けづらい
住宅ローンや、事業用テナント・用地などであれば銀行の融資も積極的なこともありますが、オークションや競売の様な特殊な売買契約では、銀行も貸し渋るケースが多いようです。銀行などの金融機関から見ても、リスクの高い取引だと判断されるのです。
キャッシュを事前に用意してオークションに臨むか、懇意の銀行マンやメインバンク担当者と事前に打ち合わせをした上で入札をしましょう。
7. まとめ
不動産会社が仲介する売買や、個人間取引と比べ、ご自分の物件や条件に合わせた取引を選んで頂く際の参考になりましたでしょうか。どのような取引を選ぶとしても、共通して言えるのは、信頼のおける担当者や会社・サイトを選ぶことが最重要だということです。
この記事をご覧になった方が、納得のいく不動産取引を実現して頂けば嬉しく思います。