事例紹介
Category 不動産
2018年07月03日 更新
不動産売却時に必要な仲介手数料とは
土地や家を売ろうと思った時に依頼するのは不動産会社だとは知ってはいても、不動産会社にいくら払うことになるのかはわからないという方が多いのではないでしょうか。不動産会社に相談するとお金がかかるのかな?それとも、相談したら、その会社で契約しなくちゃいけないのかな?と不安に思っていませんか。
基本的に不動産会社に払うのは仲介手数料のみです。個別に色々と頼んだ場合は別途費用の請求がありますが、仲介手数料だけ払えば問題はありません。
しかし、仲介手数料という言葉は聞いたことがあっても、ちゃんと説明できるくらい詳しい方はほとんどおられません。仲介手数料がどんなものなのか、専門用語を使わないで簡単に説明をいたしますので、是非、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
この記事でわかること
1. 仲介手数料とは
仲介業務を生業とする不動産会社にとって、仲介手数料は基本となる収入の柱です。最近では、仲介手数料を割引したり、無料にする不動産会社もありますが、基本的に仲介手数料は必要不可欠なものです。
不動産会社に支払う必要があるのは、基本的に仲介手数料だけです。また、成功報酬制となっているため、物件が売れてもいないのに、不動産会社への費用が発生することはありません。
仲介手数料は売買契約が成立して初めて発生する費用となります。
1-1. 仲介手数料は上限が決まっている
不動産業者に支払う仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限の金額が決められています。決められているのは、上限の金額だけですので、上限以下の金額であれば、極端な話、ゼロ円でも法律違反とはなりません。しかし、一般的にほとんどの会社が上限金額で請求しますので、上限金額について説明をいたします。
1-2. 仲介手数料上限額の計算方法
仲介手数料の上限金額は、売買契約の金額によって変わります。売買契約の金額が200万円未満の場合は、手数料は契約金額の5%となります。つまり、100万円で不動産を売った場合には、不動産会社に仲介手数料として5万円を払うことになります。
200万円以上の売買契約をした場合の仲介手数料は、200万円以上400万円未満の部分が4%、そして400万円以上の部分が3%というふうに段階的に安くなるように決められています。ちょっとわかりにくいと思いますので、後ほど、計算方法の例を挙げて説明をいたします。
そして、その仲介手数料にも消費税がかかります。わかりやすく表にするとこんな感じです。
それぞれの金額に手数料をかけたものの合計が仲介手数料となります。
1-3. 仲介手数料上限額の計算例
例えば、売買契約の金額が2000万円の物件の場合は、200万円までの部分の手数料が5%なので、この部分として、200万円×5%=10万円となります。
次に、200万円を超えて400万円までの部分の手数料が4%を求めます。この部分は、200万円以上400万円以下の部分なので、対象の金額は200万円となります。
200万円×4%=8万円となります。
400万円以上の部分の手数料は3%ですので、この部分は、2000万円―400万円(上記2つの合計)=1600万円に3%をかけたものを求めます。
1600万円×3%=48万円となります。
これらの3つの金額を合計して、
10万円+8万円+48万円=66万円が税別の上限金額となります。
1-4. 仲介手数料の速算式
上記のようにいちいち分けて計算するのは、面倒ですので、通常は速算式というものを利用します。簡単に言うと速算式とは3%以下の部分の差額分を別に計算しておいて追加するというものです。式で表すと下記のようになります。
200万円以上400万円以下の仲介手数料
仲介手数料=売却価格×4%+20,000円(消費税別)
仲介手数料=売却価格×4%+21,600円(消費税8%)
仲介手数料=売却価格×4%+22,000円(消費税10%)
400万円以上の仲介手数料
仲介手数料=売却価格×3%+60,000円(消費税別)
仲介手数料=売却価格×3.24%+64,800円(消費税8%)
仲介手数料=売却価格×3.3%+66,000円(消費税10%)
1-5. 仲介手数料上限額の一覧表
2. 不動産売却時の仲介手数料の支払い条件を協議する
仲介手数料は成功報酬ですので、売買契約の成立前に支払う必要はありません。逆にいうと不動産の売買契約が成立すれば、いつ支払っても良いことになります。法律的には、いつ支払わなければならないという規定はありませんので、当事者同士(あなたと不動産会社の間)で決めれば良いことになっています。
注意して頂きたいのは、買主との売買契約時には、買主から全額を受け取ることはほとんどないということです。通常、売買契約と物件の引き渡しは別の日となりますので、売買契約時には手付金しか入ってきません。また、売買契約後にローン特約などによって、契約が解除される場合もあります。
契約が解除されてしまった時に仲介手数料を返してもらうのは、手間なので、最終決済時に全額まとめて仲介手数料を支払うという契約をすることも増えてきているようです。これまでの慣例では、売買契約時に半金を支払い、引き渡し時に残金を払うというのが一般的でした。
通常、売買契約時の手付金として、売却代金の1割程度を入金してもらうことが多いので、仲介手数料の支払いがお金がなくてできないということはないと思います。
3. 不動産売却の仲介手数料の価格交渉
これまでお話をしましたように、仲介手数料は法律で上限金額だけが決まっています。このため、仲介手数料をいくらにするかは、売主(依頼者)と不動産業者の間で自由に決めることができます。これまでは、上限金額以下で契約することはほとんどありませんでしたが、最近では仲介手数料を割り引いたり、仲介手数料ゼロという不動産会社もあります。
売主からすると、仲介手数料が安いのは歓迎すべきことですが、仲介手数料が主な収入源であれば、それを安くするのは、儲けが減るということですので、サービスの質が下がるのではないかという心配が出てきます。実際にサービスの質に不安を感じる業者もありますが、中には企業努力によって価格をさげている誠実な業者もあります。
どのようにして価格を下げているのか、手数料が安い業者で起こりがちな問題にはどんなことがあるのかについてお話します。
3-1. 無料や半額など割引になるケース
前提として仲介手数料で運営をしている業者をモデルにして話をします。つまり、仲介手数料がなければ会社が成り立たない業者です。
3-1-1. ひとつの不動産会社が売買をまとめるケース
売却を依頼した不動産会社が仲介手数料を取るように、物件探しを依頼された不動産会社も買主から手数料を頂いています。これが同じ不動産会社であれば、片方を無料にしても、もう片方からお金が入ることになります。
いわゆる両手取引と呼ばれるものです。両手取引の場合、買主側の手数料をゼロにするケースが多いようです。買主側の手数料を下げることで、物件を買いやすくさせることができます。あるいは、売主と買主の双方の手数料をそれぞれ半額にするケースもあります。
このやり方は一見合理的で理に適っているように見えますが、自社内で契約をまとめようとするあまり、囲い込みとなってしまうケースがあります。囲い込みとは、不動産業者が情報を独り占めして他に情報を出さないことです。
そうなってしまうと情報が一般に流れないため、買い手が見つかるまでに時間がかかったり、本当はもっと高く買ってくれる買い手が見つかったかもしれないのに安い買い手しか見つからなかったという弊害がでる可能性があります。
囲い込みは法律で禁止されているのですが、引き合いがあっても先約があるとか商談中であるなどと言って、売主に内緒で断ってしまう悪質な業者がおり、問題となっています。
3-1-2. 不動産会社が割引をするケース
単純に不動産会社が自社のお客様に対して、値引きをする場合です。この場合、仲介手数料をゼロにしてしまうと収入がゼロとなってしまうため、ゼロになることはありません。最大で半額くらいとしているところが多いようです。
このような業者は、薄利多売で売り上げを上げて利益を出しているので、首都圏など物件の単価が高く引き合いの多いところで見られます。
薄利多売のため、ひとつひとつの案件に対してかけられる時間が制約されるため、サービスの質が下がる可能性がありますが、逆にたくさん売らなければならないため、熱心に売ってくれる可能性もあります。良いか悪いかは、担当者によるところが大きいようです。
地方など物件の単価が低い地域では、仲介手数料の額自体が低いため、割引を積極的にする業者は少ないです。
3-1-3. 買主が業者のケース
買主が業者などの場合は、そちらから確実に仲介手数料が入りますので、無料とか割引になる場合があります。業者の場合だと、ローン特約などで契約が解除となるリスクが少ないため値引きがしやすい面があると思います。
3-1-4. 売主が業者のケース
売却の場合ではありませんが、新築の物件などを購入する場合で、売主が業者の場合には、そちらから仲介手数料が入るため、買主の仲介手数料をゼロにしたり、割り引く場合があります。
4. 不動産売却の仲介手数料に含まれない費用
ここで仲介手数料に含まれない費用について確認をしてみましょう。仲介手数料に含まれないものがあるということは、逆に含まれるものが何かということを考えるとわかりやすくなると思います。仲介手数料に含まれるものとは、その仲介業務を行うにあたって必要となる費用と考えられます。
例えば、レインズと呼ばれる不動産業者のネットワークへの登録や通常範囲の広告がそれに当たります。広告を出さないで売れることは考えにくいので、広告費は業務に必要な経費とみなされます。
また、重要事項説明書という書類を作成しなければならないのですが、この作成のために調査をする費用も、最初から業務に必要なことだとわかっているため、仲介手数料に含まれるとされます。いうまでもないと思いますが、電話代なども手数料に含まれます。
つまり、販売の為に必ず必要となる業務については仲介手数料の範囲だと考えれば良いということです。
しかし、このようにはっきりと判断できるものもありますが、中にはちょっとグレーで曖昧なものもあります。悪徳な不動産業者だと、本来請求するべきではない費用の請求書を持ち出してくることがあります。それを知らないで、うっかり払うと言ってしまうと、依頼したことにされてしまい支払いの義務が発生してしまうことがあります。悪質が業者に騙されないように注意してください。
仲介手数料に含まれない費用となるものは下記のようなものです。
- 依頼者の依頼に基づいて発生したものである場合
- 通常の仲介業務では発生しない費用であること
- 実費であること
この3つすべてにあてはまることが必要です。どれかひとつに当てはまるだけでは請求はできません。
4-1. 個別広告費の実費
仲介手数料に含まれない費用のひとつに個別広告費があります。個別広告費とは、売主の依頼で特別に出す広告のことです。主に早く売りたい売主がお金がかかっても良いから広告を出すように依頼をした場合などに発生するものです。
不動産業者は売主からの依頼に基づいて、どんなところにどんな広告を出して、いくらかかるのかを明らかにします。そして売主の同意があった後、初めて広告を出すことができます。また、売主に請求できる金額は実費のみと決めれていますので、不動産業者が自分の手間賃などを上乗せすることは法律違反となります。
しかし、当たり前のように広告費を請求してくる不動産業者がいます。依頼したものでなければ、本来、払う必要はないのですが、何も知らないで払うと言ってしまって、個別広告を依頼したということにされてしまった例があります。費用の請求があった時は、その場で返事をしないで、確認をしてから返事をするようにしてください。
4-2. 特別な依頼で出張した旅費
依頼者の希望で遠隔地の購入希望者との交渉のために出かけた出張旅費は仲介手数料とは別に請求できることになっています。
但し、購入希望者を現地に案内する費用などは、仲介手数料に含まれるため、請求はできないことになっています。
4-3. 特殊な物件調査費用
通常、物件の調査費用を請求されることはありません。物件の売却時に重要事項説明書という書類を作らなければなりませんが、これを作って買主に説明をする義務を負っているのは宅地建物取引業者です。
この重要事項説明書を作る際に物件の調査というのを行います。主に市町村の役場や法務局などに調査に行きます。これについては、本来の業務のため、仲介手数料とは別に請求することはできません。
しかし、建物の屋根裏や床下、地盤の調査や埋蔵物の調査などは、重要事項説明書の範囲外となるため、これらのための調査費用は仲介手数料には含まれません。
4-4. ローン事務代行手数料など
ローンの斡旋は仲介業務ではないため、仲介手数料には含まれません。売却の場合ですと、主にローン残高の決済に関するものとなると思います。不動産業者に依頼しないで、自分でやることもできますが、万が一、段取りなどに不備があると引き渡しができなくなってしまう可能性があります。
その場合、関係する方々から違約金などの請求を受けることになる可能性が高いです。違約金の額は、関係者の損失の額によると思いますが、思わぬ出費となることは間違いありません。
しかし、不動産業者に依頼しておけば、何が不都合が起きたとしても(起きないことが一番ですが)、あなたは違約金を受け取る側になります。おそらく事務手数料を請求されるとしても、そんなに高額ではないと思いますので、簡易的な保険と考えて依頼をしても良いかもしれません。
ご存じない費用もあったのではないでしょうか。かかるものはかかるので、払うしかありませんが、そうは言ってもいきなり請求書がくると嫌な気持ちになると思います。そんなことにならないように、事前に仲介手数料に含まれない費用について確認をしておきましょう。
5. 媒介契約解除時の手数料
結論からいうと通常契約を途中で解除したとしても、違約金等の費用は発生しません。但し、厳密なことを言うと広告宣伝費などの経費については、実費請求をされる可能性があります。成功報酬を前提に広告宣伝費をかけさせているものなので、途中で解除されてしまうと、将来の報酬を受け取れる可能性がなくなってしまうからです。
しかし、理屈ではそうでも、実際に請求をされたという話は聞いたことがありません。
やむを得ない事情があって契約を解除するなら仕方ありませんが、自分の勝手な都合で契約を解除するようなことはできる限り避けるようにしてください。真摯な営業に応えるのも売主の大事な役割です。
6. 媒介契約の期限内に売れなかった時は?
媒介契約の期間ですが、専属専任媒介契約と専任媒介契約の場合は、3ヶ月以内となっています。仮に3ヶ月を超える契約をした場合でも、3ヶ月で終了となります。
一般媒介契約については、法令上の期限の定めはありませんが、行政の指導では3ヶ月以内とするようになっています。一部のウエブサイトなどで一般媒介契約は無期限と書かれていることがありますが、あれは正しい言い回しではありません。
契約書には、契約の有効期限を書かなければならないからです。ですので、不動産業者と交わした契約に期限がないということはあり得ません。ただし、一般媒介契約であれば、3ヶ月を超える期間の契約をしても、それは有効となります。
期限がくれば、契約の拘束力は切れますが、それに対して特にペナルティなどはありません。単に売れなかったという事象が残るだけとなります。
契約を更新したい場合は、依頼者から申し出をすることになっています。専属専任媒介契約と専任媒介契約については、依頼者からの申し出がないと、契約を更新できないことになっています。一般媒介契約については、契約時に特約として自動更新を付けた場合のみ、自動更新が可能となっています。
7. 不動産売却の仲介手数料の消費税
仲介手数料の上限のところでもお話をしましたが、仲介手数料には消費税が課税されます。不動産の取引には消費税が課税されるものと課税されないものがありますが、仲介手数料には消費税が課税されます。
消費税法に課税対象として、「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付、役務の提供」と書かれています。仲介業務はこの役務の提供にあたるため、消費税が課税されることになります。
8. 不動産売却時に必要な諸費用-まとめ
不動産の売却時に必要となる仲介手数料についてお知らせしました。仲介手数料がどんなもので、いくらかかるのかをおわかりいただけましたでしょうか。今回は仲介手数料についてお知らせしたので書かなかったのですが、手数料の安いところを選んで失敗した例がいくつもあります。
どんなことでも同じだと思いますが、高ければ良くて安いものは良くないということではありません。大事なことは、どんな問題がどうやって起きるのか知ることです。問題の発生の仕組みが分かれば対策を建てることができるようになります。
別の章で手数料の価格だけで業者を選んで失敗した例を記事にしていますので、是非、そちらもご覧いただけますと役に立つと思います。