事例紹介
Category 不動産
2018年07月03日 更新
不動産の売出し金額に80万円の末尾をつけて買主の背中を押す
家でもマンションでも売り出し価格の末尾は80万円となっていることが多いのはご存知だと思います。ですが、なぜ80万円なのか理由を知っている方は少ないのではないでしょうか。
八は末広がりだから縁起良いというのも理由かもしれませんが、実はもっと重要な役割があるのです。
仲介をする不動産業界だけの慣習だと思いますので、ご存知ない方が多いのですが、知っておかれると上手く立ち回れるかもしれません。ちょっと、裏話的な内容になりますが、お話しいたします。
1. 販売側の営業から見た物件価格
あなたが物件を売る際に相手となるのは、言うまでもなく買主さんです。しかし、もう一人重要な人がいます。それが、買主さんが連れてきた営業マンです。あなたの物件を見つけたのは買主さんかもしれませんし、不動産会社の営業マンかもしれません。
買主さんは自分で見つけた物件でも、直接交渉にくることはありません。どこかの不動産会社を通して接触してきます。その時にあなたの相手をするのが、相手側の営業マンとなります。
ちょっと、言葉で書くと分かりにくいかもしれませんね。要はかかわる人は次のようになります。
売主と売主が依頼した不動産会社の営業 VS 買主と買主が依頼した不動産会社の営業の4者がかかわることになります。
この中でキーマンとなる可能性があるのが、買主が依頼した不動産会社の営業マンです。ほとんどの人が不動産の売買の経験を持っていません。また、高い買い物ですので、誰しもが絶対に失敗したくないと考えています。
そこで買主が依頼した不動産会社の営業マンがスーパーアドバイザーとして登場するというわけです。多くの買主さんは右も左もわからない状態なので、担当の営業マンに言われたことをすんなりと聞き入れることが多いです。
プロだと思っている人の意見ですから、わざわざ疑う必要もないということだと思います。実際には知識不足の営業も多いので、ご自身でちゃんと調べるのが一番良いのですが。こうやって、ちゃんと調べているあなたには、不要な心配ですね。すみません。ちょっと脱線しました。話を元に戻します。
何が言いたいのかというと、売り出し価格を見た買主が依頼した不動産会社の営業マンがどう思うのかを考える必要があるということです。あなたの物件を見つけた買主側の営業マンは、いつ売り出されたのかと合わせて価格の推移を調べます。
売り出し価格がいくらで、その後、価格の変更があったのかを確認します。例えば、最近売り出したものであれば、まだ、様子見の段階かもしれないと考えます。そして、物件の内容をみてその価格で売れそうか考えます。
高いと思った場合は、売主がダメ元で売れたらラッキーくらいで考えているのかな?とか、安い場合には、早くしないとすぐに売れてしまいそうだから他の人に取られる前に急がなきゃと考えつつ、安くしている裏について考えます。
裏について考えるというのは、なぜ安くしているのかの理由を探るということです。早く売りたい事情があるのか、それとも何か物件に問題があるのかを調べます。これらの内容がわかれば、価格の交渉ができる可能性があるからです。言い方は良くないですが、足元を見ることができるかもしれないと考えます。
売主の側からすると迷惑なことですが、買主側の営業マンからすると、買主が少しでも安く物件を手に入れられるようにするのが仕事なので仕方がありません。ちなみに、売り出し価格を下げる時の推移はこんな風になっていることが多いです。
例えば3480万円で売り出した物件があったとします。この物件が売れない場合は、最初は100万円くらいを一気に下げて3380万円にします。それでも売れない場合は、50万円下げて3330万円にして、それでも売れなければ更に30万円下げて3300万円とするように下げ幅が逓減していくことが多いです。
特に決まりはありませんが、だいたい2~3ヶ月の周期で値下げをするケースが多いと思います。売れないまでも、内覧や問い合わせが入っていれば、その間は値下げは止まります。
販売側の営業マンは、この価格の流れを確認して、売主がどのくらい焦っているか、いくらまでなら下げる気があるかを考えます。
2. 80万円は販売側の営業のため
売る時の価格はちょうどの数字の方がスッキリしていて良いのでは?と考えられる方が多いです。端数が無い方が消費税や仲介手数料を計算する際もラクになりますし、わざわざ、80万円という端数を付けるのは作為的で嫌だというお客様が多いように思います。
もちろん、売り出し価格を決めるのは売主様なので、売主様側の営業が決めることではありません。営業マンがすることは、あくまでもアドバイスのみです。それにもかかわらず、端数の80万円が付いている物件が多いのには意味があります。
主な理由は価格交渉に使うためなのですが、売主が交渉に使うためではありません。厳密には売主が使うのですが、実は買主の営業マンへのメッセージでもあります。どういうことかと言いますと、80万円は価格の調整に応じる用意があるという意思表示となっているということです。※これが通じない人もいるので、絶対にそうだというわけではありません。扱いには注意をしてください。
例えば、3380万円の物件であれば、3300万円を落しどころとして考えます。もちろん、売主側に確認してからしかハッキリしたことは言いませんが、腹積もりとして持っておくということです。
どのように使うかというと、内覧をした後に買主さんの背中を押す時に使います。買主さんが、内覧で物件をみて気に入っているとします。そのような時に、「この物件は100万円くらいやすくなるかもしれませんよ。」とささやくのです。
内覧で値引きの話などはしないのが一般的ですので、買主さんは値引きの期待を持っていても値引きは無理かもしれないと思っていることが多いです。ましてや、何組も内覧にくる予定があるとか、実際に内覧に来ていると聞いていれば、早い者勝ちなので値引きは無理と考えます。
そこで100万円の値引きができるかも、と聞かされると一気に気持ちが動く可能性が高いです。物件にもよりますが、例えば中古住宅を買おうとしている方なら、おそらく若い方で収入もそんなに高くないでしょう。100万円といえば、3ヶ月分くらいの給料と同じです。
不動産を見始めると金銭感覚がマヒしてきて、100万円がたいした数字ではないように感じてきてしまうので、優秀な営業マンは給料とかを引き合いに出して100万円の価値を再認識させます。そうすることで、買主さんの気持ちを盛り上げます。
100万円が80万円になったとしても、それだって大金ですし、逡巡している内に他の人に買われてしまうかもしれないという焦りも生まれます。「他の人に買われてしまうかもしれません。」は不動産会社の常套句と思われているので、聞き流す方も多いのですが、実際にそのようなことは良くあります。縁が無かったということなんだと思います。
長々と書いてきましたが、80万円は買い手側の営業マンが買主さんの背中を押す為に使って良いよというサインということです。
3. まとめ
不動産の売り出し価格に80万円という端数が付いている理由についてお話ししてきました。
しかし、80万円が端数というのは、普通の金銭感覚では考えられないですよね。特にスーパーを回って同じものを少しでも安く買おうと努力されている主婦の方からしたら、日頃の努力は何なの?と言いたくなるかもしれません。
私の過去の経験からすると、売り出したらなるべく早く決めて売ってしまうのが良いと思っています。すぐに売らないと、なぜか売れ残りになってしまって、どんどん売りにくくなることが多いからです。
少しでも高く売ることも大事ですが、売れない期間に掛かる費用(固定資産税やローンの金利など)を考慮してバランスよく検討することが大事だと思います。