空き家を相続放棄しても管理責任が残るってホント?

ニュースでも話題になっている空き家問題。

いろいろな事情から、相続放棄されて空き家になっている建物は、年々増えています。

中には、台風に耐えられないのではないかと心配になる建物もあり、管理責任が気になります。

でも、職場からも遠い住めない家を相続する立場になったら、簡単に相続放棄を選んでしまうのではないでしょうか。

突然賠償問題が持ち上がる可能性があること、その根拠についてみていきましょう。

1.空き家の相続放棄をした後の管理責任は誰にある?

空き家はもとの所有者が亡くなると、相続制度に従って相続人が決まります。相続を放棄して、空き家と縁が切れたと思っていたのに、管理責任を問われるケースがあるので注意が必要です。

空き家の相続手続きや、相続放棄について解説していきましょう。

1-1.相続権の移行

遺産相続では相続順位は次のようになっています。

  • 配偶者は常に相続人
  • 相続順位第一順位は子
  • 相続順位第二順位は両親
  • 相続順位第三順位は本人の兄弟

順位の高い人が相続放棄すると、次の順位の人に相続権が移っていきます。夫婦のうち夫が亡くなった場合、妻と子供が法定相続人です。相続権を放棄した場合は、健在であれば両親や祖父母、亡くなっていれば本人の兄弟姉妹へと相続権が移ります。

相続の手続きは、亡くなった人(被相続人)の戸籍抄本から、生まれてから亡くなるまでの血縁関係を洗い出すところからスタートします。法定相続人の順位、遺産分割協議に承認が必要な人物を、戸籍から確かめます。養子縁組をしている子や異母兄弟姉妹がいることが、ここでわかるケースもあります。

また、独身で子供がいない人が亡くなり被相続人となったときには、その親や祖父母、兄弟姉妹やその子供に相続人の範囲が広がります。ある日突然、おじ・おばの死と相続について知らされ、自分が法定相続人第一順位だとわかるケースもあるのです。

1-2.相続人不存在

相続放棄すると、相続順位にしたがって相続人が移っていきます。

相続する人が誰もいない「相続人不存在」になるのは、法定相続人が全て相続放棄したときか、まったく身寄りのない場合です。兄弟姉妹がいない、子供がいないケースでは、相続人となる対象者そのものが少ないので「相続人不存在」になることが多くなります。

相続人が一人しかいなければ、その人が相続放棄したことで、すぐに「相続人不存在」になってしまうでしょう。相続する人が誰もいない「相続人不存在」になった場合には、家庭裁判所に申し立てをして財産の帰属先を決めていきます。正式に相続人不存在として帰属先を決めていくには、利害関係のある人か検察官が申し立てを行う必要があります。相続放棄すると宣言しただけでは相続手続きがストップしているだけです。

ただ、相続人不存在となり、家庭裁判所が相続財産管理人の選定をした場合、帰属先が確定するまで最短13ヶ月の期間を必要とします。官報に公告を出し、相続人が本当にいないのか、特別縁故者として申し立てをするものはいないのか確認しながら進めて行くので長期化するのです。相続財産管理人に負債を含めた財産の精算、分与の申し立ての確認をしてもらわなければ、遺産の帰属先が決まりません。

帰属先が決まるまで、登記の変更も、売却することもできないので、1年余りの間空き家のまま放置されることになるでしょう。

2.空き家の相続放棄をすれば管理責任を問われない?

高い相続順位の人が相続を放棄すると、次の相続順位の人に相続の権利が移ります。

もし、誰も相続する人がいなければ、相続人不存在として手続きを進めますが、家庭裁判所への申し立てが必要になります。家庭裁判所が選定した財産管理人の選定をしてから、財産の帰属先を決めて行くからです。相続人不存在になると、1年以上も帰属先が決まらないでしょう。

空き家の所有権登記が故人のまま動かせない間、管理責任はどうなるのかみていきましょう。

2-1.管理責任は残る

法定相続人が相続放棄すると、次の順位の相続人に相続権利が移ります。この時、管理責任は残ったままです。法定相続人として順位が一番高い人は、相続が完結するまでの間、管理責任を負うことになります。

  • 子供のいない伯父さんが残した空き家の相続放棄をしたところ、相続人不存在になり、管理責任を負うことになった。
  • 実家の相続を放棄し、叔母が相続を検討中に壁が落ちて通行人が怪我をした。慰謝料を請求された。
  • 相続放棄をした実家の瓦がとなりの家に落ちてガラスが割れ、弁償するよう迫られた。

…といった事例があることを知った上で、相続放棄を検討したほうが良いでしょう。

独身の「おじ・おば」が亡くなった場合、法定相続人第一順位になる可能性があります。ほとんど交流がなかった場合でも、遺言がなければ法定相続人の順位が当てはめられます。

2-2.民法940条

「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」

民法940条には、相続放棄をしても、次の相続人が管理をはじめられるまでは、管理責任があると定められています。

「放棄」という言葉から、一切の縁が切れたというイメージを持つかもしれませんが、相続を放棄するだけでは縁が切れず、責任を持たなければならないのです。

3.空き家の相続放棄のメリット・デメリット

「メリット」

  • すべての相続を放棄することで負債に対しての責任がなくなる
  • 分割協議で悩まずに済む
  • 相続した場合に必要な登記などの手続きを自分がしなくて良い
  • 相続税の支払いに頭を悩ませなくて済む

「デメリット」

  • 空き家だけの相続放棄ができないので、プラス部分の相続権利も失う
  • 相続人、帰属先が決まるまで管理責任を追わなければならない
  • 家庭裁判所に申し立てを行わなければ正式な手続きが進まない
  • 相続放棄すると空き家の帰属先が決まるまで所有権を動かせない

「資産を相続=お金をもらえてラッキー」というイメージがありますが、得することばかりではありません。

空き家の相続放棄を検討するときに知っておきたいポイントをみてみましょう。

3-1. 相続すべきか相続放棄か

相続を受ける立場になったとき、遺産を相続して財産が増えるとは限りません。資産として評価されるものには、土地家屋・芸術品や骨董品・自動車・株や証券・預貯金などがあります。

評価額をもとに相続税が算出されますが、税金の支払いには現金が必要です。資産の評価額のほとんどが土地家屋だった場合、売却しなければ相続税が払えないことがあります。

家屋や骨董品、自動車、株や証券など(有価証券)を売却したり、手持ちの現金をかき集めたりしても、納税に必要な現金が足りなければ相続が難しいかもしれません。遺産分割協議などの手続きが込み入ってしまうときや、借金を肩代わりしなければならなくなる場合には、相続放棄にメリットを感じるでしょう。

3-2. 管理責任をどう果たすか

しかし、相続放棄で空き家になった建物の管理責任は、相続順位の高い人にあります。相続放棄しても、相続順位が高ければ建物の管理責任が残るので、対策が必要です。

家庭裁判所に申し立てをして、空き家の帰属先が決まるまでの1年あまりの期間、管理責任を追わなければなりません。風であおられて壁が落ちる、地震で塀が倒れるなどで、隣家への被害、第三者に怪我をさせた場合、賠償責任が心配です。自分で見回りにいき、必要に応じて草刈りや害虫駆除、修繕をするか、管理業者に依頼して対応する必要があります。

3-3. 相続して空き家放置のリスクを回避

帰属先が決まるまでは登記の変更ができませんから、取り壊しや売却も難しい状態になります。

法定相続人としての自分の順位が低ければ、第一順位相続人が管理責任者となりますが、自分が第一順位法定相続人は、管理責任を追わなければなりません。

  • 築年数が古く1年以上置くと、台風が心配
  • 空き家に通って管理するのは遠くて無理
  • 管理会社に費用を払い続けたくない
  • 売却に応じてくれる業者がいるうちに勝負をつけたい

空き家を放置することで引き起こされるリスクが高くなってしまうなら、相続して登記変更し、取り壊しや売却をしたほうが良いかもしれません。

4.空き家の管理責任に注意して相続放棄を検討しましょう

  • 空き家の管理責任は相続放棄では免れない
  • 空き家を相続したほうが管理責任の決着が早まるケースがある
  • 相続放棄した資産の帰属先を決めるには家庭裁判所への申し立てが必要

空き家との縁を切りたくて相続放棄するケースがあるかと思いますが、相続第一順位の場合には、帰属先が決まるまで管理責任を持たなければなりません。相続人不存在になれば帰属先が、1年余り確定しませんから、相続放棄をしたのに管理責任者として、空き家の管理をしなければなりません。

空き家問題を早く決着したいなら、相続を受けて登記変更できる立場になり、売却、寄贈など空き家の帰属先を早く決められるように動いたほうが良いケースもあります。

相続放棄のメリットとデメリット、管理責任の重さを確かめて、相続を受けるかどうかを考える必要があるのです。

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