事例紹介
普段使っていない空き家に税金がかかってしまうのはもったいないと感じる人も多いです。
では実際に空き家を所有していることによって発生する税金は、どのような種類のものがあるのでしょうか。
この記事でわかること
1.空き家を所有していると課せられる税金とは?
自分たちが住んで言えるマイホームと同様に、空き家にも税金がかかってきます。空き家には、マイホームと同じように固定資産税が課税されます。
さらに、都市計画法で指定される市街化区域内にある不動産であれば都市計画税も発生します。固定資産税も都市計画税も、毎年1月1日現在の所有者が税金を納める必要があります。
1-1.固定資産税
固定資産税は、土地や一戸建ての家、マンション等の不動産や事業で使用する設備などの資産に対して課税されることになる税金です。マンションやアパート、一戸建てを自己所有ではなく賃貸で住んでいる人は、固定資産税の支払い義務は発生しません。所有している不動産に対してのみかかる税金が固定資産税なのです。
自分が登記をしているわけでもなく、住んでもいない空き家を所有している場合でも、その年の1月1日時点で空き家に対しての所有者であれば、固定資産税を支払う義務が発生します。そして毎年4月頃に自宅へ納税通知書が送付されます。
固定資産税の課税が決定するのは1月1日なので、1月1日に不動産を所有していれば、固定資産税を支払わねばなりません。ですから、1月2日に不動産を購入した場合も、その年の固定資産税は発生しません。しかし、1月2日に不動産を売却した場合は、1月1日には所有していたことになりますので、納税の義務が発生します。
◆固定資産税の金額は隣人と違うことも多い
固定資産税は、地域の利便性や地価、建築物の違いによっても変化します。また敷地面積・坪数などによっても変化します。同じ地区、同じマンションに住んでいるからと言って、自宅の固定資産税が隣人の固定資産税の税額と同じであるとは限らないのです。
1-2.固定資産税の計算
固定資産税は、固定資産税評価額と標準税率(1.4%)をかけた額になります。不動産の所在地によっては、都市計画税[0.3%以下]が加算される場合もあります。
◆固定資産税の計算方法
税金 計算方法
固定資産税 土地・家屋の固定資産税評価額×1.4%
都市計画税 土地・家屋の固定資産税評価額×0.3%
この固定資産税評価額は国土交通省が「固定資産評価基準」に基づいて評価した額を自治体が決定した金額で、「固定資産課税台帳」に登録されています。
固定資産税評価額は3年に1回の評価替えのため、その期間の途中で新築があったり、増築があったりした場合、または土地が分筆されたり、合筆されたしした場合には実情にそぐわないこともあります。その際は、改めて評価をしてから新しく固定資産税評価額を決定することになります。課税標準額の計算の仕方は、市区町村によって若干異なってきますので、税率も変わってきます。
また、固定資産の課税標準額が一定金額に満たない場合は、課税対象にはなりません。この一定金額は、土地の場合30万円、建物の場合20万円と定められています。
固定資産税評価額は地価によって変動するため、評価額は3年に1度「基準年度」があり見直しされます。3年に1度の再評価が行われたあと、新しい評価額が決定しそれ以降3年間その評価額が使われることになります。
ですから地価が下がれば固定資産税も下がり、地価が高騰した場合には固定資産税も高くなります。家が建って何年か経った後でも、地価が急激に高騰した場合、固定資産税も上がってしまうことはあるのです。地価によってこの固定資産税は決まりますので、同じハウスメーカーの規格で、同じ年に建てられたという家でも、地域によっては固定資産税の額は変わってきます。
固定資産税額は、土地、建物の場所や、新築・中古の違い、購入してからどれくらい年月が経っているかなどの期間などによっても大きく変わってきます。また、固定資産税の減額対象となる住宅として省エネ住宅などがあります。固定資産税の減額対象物件であれば、大幅に固定資産税を下げることも出来ます。
簡単に固定資産税評価額がいくらになるのか知りたい時は、家の購入金額のだいたい7割程度が固定資産税評価額と覚えておくと良いでしょう。固定資産税評価額に税率をかけると、おおよその固定資産税を確かめることが出来ます。
1-3.空き家の固定資産税の例
空き家にかかる固定資産税はどのようになるのでしょうか。具体例で見て行きましょう。
例:坪20万円の100坪の更地の場合(都市計画区域エリア)
20万×100坪=2,000万(固定資産税評価額)×1.7%(合計税率)=およそ34万(年間税額)
34万円が固定資産税になります。
土地に建物が建っていると、以下の軽減措置を受けることができます。
税金 不動産にかかる税金
固定資産税(土地) 戸数×200平方メートル以下の部分は6分の1に、それ以上の部分は3分の1に減額
都市計画税(土地) 戸数×200平方メートル以下の部分は3分の1に、それ以上の部分は3分の2に減額
しかし、空き家の状態が長く続いてしまうと、家はどんどん劣化してしまいます。空き家が増え続ける日本では、空き家を減らしていこうという動きがあります。そのため、あまりにも長く放置されっぱなしで、行政から「人が住むための住宅ではない」と判断された場合、「特定空き家」として認定されます。
更地の状態ではなく、家が建っているのに手入れが行き届いておらず「特定空き家」に認定されてしまうと、固定資産税の減免優遇措置を受けられなくなってしまいます。
2.空き家の放置は税金が6倍になると言われる理由とは?
増え続ける空き家は、全国で深刻な問題となっています。そこで施行された「空き家等対策の推進に関する特別措置法」ですが、それ以来「放置された空き家は、税金が6倍になるかもしれない」と聞いたことがありませんか?
空き家を放置したら、税金は跳ね上がってしまうのでしょうか?
2-1.空き家対策特別措置法
「空き家等対策の推進に関する特別措置法」とは、通称「空き家対策特別措置法」と呼ばれており、放置された空き家によるゴミ問題や、空き家の老朽化による倒壊などの可能性を阻止するためにも、放置空き家の取り壊しを促すために出来た法律です。
実際、空き家によるデメリットは、空き家の所有者よりも、空き家周辺に住む住民へダイレクトに現れてしまいます。
- 手入れされていない空き家の庭から虫が大量発生した
- 空き家にゴミの不法投棄が続き、悪臭が漂っている
- 庭の雑草が伸び放題で、周辺地域の景観を乱してしまう
- 空き家に変な人が出入りするなど不法侵入がある
上記のような状態になってしまうと、空き家の存在は本当に迷惑になってしまいますので、放置空き家の所有者は、空き家対策をしっかり考えていかねばならないのです。
2-2.空き家の税金が高くなる理由
固定資産税は土地のみより、空き家でも建物が建っている状態で所有している方が、住宅用地の特例措置が受けられるため、税金が優遇されています。
1戸につき200平方メートルまでの部分は負担額が6分の1に軽減されます。優遇措置は建物が建っていることが要件のため、人が住んでいない空き家にも適用されています。
しかし、空き家を長期間放置してしまうと、前述のように手入れが行き届かず周辺地域への迷惑になってしまうことから、「特定空き家」と認定されてしまい、軽減措置は受けられなくなってしまいます。
2-3.特定空き家とは?
2015年より「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されて以来、適切な管理がされていない空き家に対し、調査や指導が入るようになりました。「特定空き家等」と指定された空き家は、税金の特例措置は受けられなくなります。
「特定空き家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン) より抜粋します。
http://www.mlit.go.jp/common/001090531.pdf
◎法に定義される「空き家等」及び「特定空き家等」
「空き家等」の定義の解釈は、「基本指針」に示すとおりである。「特定空き家等」は、この「空き家等」のうち、法第2条第2項において示すとおり、以下の状態にあると認められる「空き家等」と定義されている。
1
(イ) そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(ロ) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(ハ) 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(ニ) その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
3.空き家を解体して更地にしても税金が高くなる?!
空き家を解体して更地にすると「税金が高くなるのでは」と不安になりますよね。実際には、空き家を解体して更地にすると、税金は高くなってしまうのでしょうか。
3-1.税金が高くなる場合
倒壊する可能性があるなど、行政から危険だと認識されてしまった「特定空き家」は「固定資産税の減額特例が適用除外となる」とされています。
しかし、一部マスコミの報道によって『住宅用地の減額特例の適用除外により、固定資産税の税負担が6倍になる』と言われてしまいましたが、「税金が6倍になる」ということはありません。
6分の1の減額適用除外となるのはそうなのですが、現在の負担調整措置制度のもとでは、通常では『=税負担が6倍』にはなりません。
3-2.税金が安くなる場合
2016年に施行された「空き家対策特別措置法」は「危険が伴う可能性がある空き家に解体を促したり、不適切な空き家への固定資産税の優遇措置を取りやめたりする」という目的があります。空き家対策特別措置法は、「例え誰も住んでいない空き家でも、手入れがされてない空き家であれば更地と同額の固定資産税の納付義務がある」という法律になります。
しかし、空き家を自ら撤去した所有者は、住宅用地と同様に扱う固定資産税の軽減措置を受けられるようになっています。
今までであれば更地にすると6倍に跳ね上がるかもしれなかった固定資産税が、空き家対策特別措置法施行後は、自主的に更地にすることで、空き家にしておいたときと同じ額で済む可能性があります。
4.空き家は売却するのが一番の税金対策?
空き家をそのままにしておくことは税金が跳ね上がる、でも解体するには即金が用意できない、そんな時は空き家を売却することも1つの選択肢です。
そこで空き家は売却すると、税金対策になるのかどうかをご説明します。
4-1.空き家を売却した場合の税金の種類
空き家を売却した場合にかかる税金は以下の通りです。
- 譲渡所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
空き家を売却する事で、これらの税金が発生してきます。
4-2.税金がかかる場合
不動産を売却し、その売却価格が取得した時に要した費用や売却時に支払った経費の合計を上回る譲渡所得として計算します。取得費には、空き家となった家の購入金額、家の入手時に支払った仲介手数料など、不動産を購入するためにかかった合計金額です。
ただし家の購入金額の内、建物の減価償却分は差し引かれます。
◎売却価格-(売却不動産を購入した時の取得費+売却するのに要した譲渡費用)×税率=空き家を売却した時にかかる税金
売却価格は、不動産を売却した時の契約書に記載した金額と思えばよいでしょう。この譲渡所得に対してかかってくるのが、譲渡所得税、復興特別所得税です。さらに、住民税がかかります。
しかし、親から相続した家の場合など、親が家を購入した時の契約書類等を紛失していることや、見つけられないことも多くあるため、実際はかなり多くの税金を支払う人もいます。ですので、相続前に家に関しての書類やその他重要書類はどこに置いてあるのかを親に確認しておきましょう。
4-3.税金がかからない場合
空き家や、空き家を含めた不動産を売却する時に、売却価格が家の取得費と譲渡所得を下回れば利益が出ないため、税金はかかりません。なお、空き家を売却した際、一定の要件を満たすと「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という譲渡所得から最大3,000万円までを控除できる制度があります。
ただし、この特例では「一定の要件」を満たすのに比較的高いハードルがあり、そう簡単に適用を受けられるわけではありません。
◎「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」適用条件
- 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること
- 相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること
- 1981年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること
- 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
- 相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ特例の適用期間である2016年4月1日から2019年12月31日までに譲渡処理が終わっていること
- 譲渡価額が1億円以下
- 家屋を譲渡する場合、当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合するものであること、または解体されていること
(国土交通省ホームページより抜粋:http://www.mlit.go.jp/common/001127709.pdf)
「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」を適用出来る場合は節税になるので、必ず確認しておきましょう。
5.結局、空き家は税金の無駄?!損をしない活用方法はどれ?
空き家を所有していることでかかる固定資産税などの税金についてご紹介しました。空き家は、住むわけでなく持っているだけでも税金がかかってしまうので、無駄な出費が発生し続けることになります。
損をしないようにするためには、リフォームして自分たちが住むこと、人に貸すこと、更地にして売却することや、フリースペースとして貸し出しすること、駐車場として活用することなどいくつかの活用法があります。
一般住宅であれば、リフォームして貸し出しすることも空き家のままにしておかずに済む方法です。税金問題だけでなく、将来空き家を子どもに引き継ぐ事になる可能性もありますので、出来るだけ早いうちに、空き家についてしっかり考えておきましょう。