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Category  不動産

2018年10月15日 更新

アパートを経営したい!購入してからの税金はいくら?

アパート経営は、波に乗ればその後は比較的楽に収益を上げられるものとして人気があります。最近ではゼロ金利の影響もあり貸付も受け安く、思っていたより手軽にアパート経営ができるようになっています。

しかし、そんなアパート経営で一番気になるのが税金。マイホームと違って、いったいどんな税金がいくらかかるのでしょうか。

1.アパートの購入時にかかる税金とは

アパートを購入して賃貸経営を始めたいとき、物件じたいのお値段もそうですが、何だかんだ一番気になるのは税金ではないでしょうか?

ある程度の予算はあるのでやってみようかなと思ったけれど、あんまり余計な費用がかかるのならやめておこうかなと考えておられる方も多いはず。

しかし、アパートを経営すると言っても、実は心配しているほどたくさんの課税が為されるわけではありません。確かに個人用の不動産を買うよりかは規模のぶんだけ税額は少し上がりますが、変わるのはそれくらいであとは軽減税率の適用範囲が違うくらいです。

それではまず、アパートを「購入」する際に支払うこととなる税金を見ていきましょう。

不動産取得税

土地や建物など不動産を取得した際に1度だけかかる税金です。

売買・贈与・交換や新築・増築など、相続による取得を除いて課税対象となり、物件の取得後半年~1年ほどで都道府県から届く納税通知により納付を行います。

こちらは、購入する不動産が土地でも建物でも、住宅用であれ事業用であれ、税率は4%です。

ただし法改正により平成33年3月31日まで軽減税率が実施されていますので、この期間までに住宅用アパートを取得し申請した場合は税率が3%となります。

こうして計算された税率を、アパートの課税標準に掛けることによって不動産取得税が算出されます。

課税標準は、アパートの不動産評価額(固定資産税評価額)となり、構造などにより異なりますが、アパート建築費の約6割の値がおおよその評価額です。

課税標準(固定資産税評価額)×税率3(4)%=不動産取得税

基本的にはこの式で算出されます。

加えて、以下のような一定の条件を満たす事により更に不動産取得税が軽減されることとなり大変おトクです。

○宅地(家屋を建てるための土地)は固定資産税に2分の1を掛けて計算を行います。(平成33年3月31日までの特例)

宅地の不動産取得税=固定資産税評価額など×1/2×税率

○取得した不動産が新築住宅の場合の特例

取得する不動産が新築であるときは、1戸あたり1,200万円の控除が適用されます。

この特例はマイホームから住宅用賃貸マンションまで共通です。

適用の条件は以下の通り。

①床面積が40平方メートル(戸建ての場合50平方メートル)以上から240平方メートル以下

②土地から先に取得した場合、3年以内に建物を新築する。(平成32年3月31日まで)

③建物から先に新築した場合は、1年以内に土地も取得する

例)建築に8,000万円かかった、居住スペースが12戸のアパート

建築費の6割を不動産評価額とする

(建築費8,000万円×60%−特例控除1,200万円×戸数12)×税率0.3%=不動産取得税0円

○認定長期優良住宅の場合

平成32年3月31日までの特例として、取得した不動産が認定長期優良住宅の場合は、上記の新築特例で1戸につき1,200万円だった控除額が1,300万円に増額されます。

認定長期優良住宅とは、長きに渡って良い状態で使用・管理できる物件であると都道府県や市町村から認められた住宅です。大地震に耐えられること、維持・管理のため清掃や補修が簡単にできること、また定期的な補修・清掃が計画されていること、バリアフリー工事に対応していることなど、基準は多々ありますが、認定されれば大変な税金緩和が計られます。

登録免許税

アパートのみに関わらず、不動産を取得した場合、自身の所有権を第3者に公的に主張できるよう登記というものを行います。

この登記の際にかかってくるのが登録免許税です。所有権を主張できることは利益と見なされるため、このようや流通税がかかることとなるのです。

また、不動産購入に際しローンなどを組んだ場合(債権者、つまりお金を貸す側がノンバンクや共済でも構いません)は抵当権設定登記も併せて行うこととなりますので、こちらにも登録免許税がかかります。

債務者つまりお金を借りる側がその借金を返せなくなった時、債務者の財産のうち当該不動産を競売にかけそこで得た利益から優先的に徴収するため、抵当権の付与が必要となります。

登録免許税の計算は、購入した不動産の評価額に税率をかけることで算出されます。

不動産評価額×税率=登録免許税

続いて、不動産に係る登記の種類と、それぞれの具体的な税率をご説明致します。※カッコ内は平成32年3月31日まで施行の軽減税率です。

こちらも不動産取得税と同じく、一定の条件を満たしその旨を申請することで税率の軽減措置が適用されます。

①所有権保存登記

まだこれまでに所有者が存在していなかった新築の不動産に対し行う登記です。

お持ちアパートが新築である場合、固定資産税評価額はまだ定まっていませんので、不動産評価額は法務局が定めた額となりますので問い合わせが必要となります。

…税率0.4%(0.15%)

②所有権移転登記

中古住宅を売買や贈与・相続、収用などにより取得した場合は、以前の所有権から新しい所有者へと名義を変更するため、この所有権移転登記を行います。

こちらの方が新築の場合の所有権保存登記より少し税率が上がりますので注意してください。

税額は、最新の固定資産税評価額に税率をかけることにより行われます。

固定資産税評価額×税率=登録免許税

固定資産税評価は毎年微妙な調整があり変動しますので、最新の価額を調べる必要があります。(毎年5月ごろ送付の課税明細書や、市町村に300円ほどの手数料と必要書類を提出して交付される「固定資産税台帳」に記載されています)

また固定資産税評価額は毎年1月1日に決定されその年の4月1日に公布となります。つまり「最新の固定資産税評価額」とは、ある年の4月1日から翌年3月31日まで設定されている評価額のことです。

例えば平成30年2月3日に所有権移転登記を行う場合、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間の固定資産税評価額を基準とし登録免許税額の計算が行われます。

…土地・中古住宅売買における税率2%(0.3%)

③抵当権設定登記

前述したように、住宅ローンなどを組む際の抵当権設定登記です。

…税率0.4%(0.1%)

④抵当権抹消登記

③で1度設定した抵当権を、ローンの完済などにより抹消するための登記です。

…抵当権抹消登記については、これまでの①~③のパターンと違い税率による計算ではなく、一律税額です。

不動産一件につき1,000円で固定されています。

消費税

建物の購入の際は、他の商品同様に消費税がかかります。土地については非課税ですので覚えておきましょう。

建物の販売価格×税率8%=消費税

土地=非課税

印紙税

売買契約書やローンなどを組む際の契約書に課税されます。

こちらの課税額については、建物の条件や取得の経緯などにより一口にご説明できないため、ここでは割愛させていただきます。

詳しくは国税庁のHP「印紙税」の項を参照して下さい。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/inshi301.htm

アパートの購入時にかかる税金は以上4つが主なものとして挙げられます。

2.アパート購入後に賃貸経営を始めるための手続き

さて、念願のアパートを手に入れたら行わなければならない手続きをご紹介致しましょう。

全体的にマイホーム購入の場合とあまり変わらず、思ったより手間がかからないことでしょう。

①不動産登記を行う

前述の「不動産登記」を行います。

②自治会との調整

所轄の自治会へ、不動産事業の開始について事前に話を持ちかけ流れを定めておきます。

③開業届を提出する

所得税法に基づき、新しく事業を開始する旨を記した「個人事業の開廃業など届出書」を、納税者の住所地所轄の税務署へ提出します。

アパート購入から経営までの目立ったアクションはこのくらいのものです。

提出に際して手数料は不要で、国税庁HPにフォーマットもありますので大変ラクですね。

提出期限:公的には事業の開始の事実があった日から1月以内(期限日が土日祝の場合その翌日)とされており、不動産経営においては入居者の募集を開始する一か月以内です。

④所得税など税に関する書類の提出

アパートやマンション経営は節税できる点が非常に多いのです。以下の書類用意をこの段階で行っておくと後の手続きが非常にスムーズになります。

  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書(以上2点、開業後2ヶ月以内)
  • 減価償却資産の償却方法の届出書(開業年の翌年3月15日まで)

不動産所得の特別控除の適用、不動産経営の赤字が3年間繰り越される、居住室が10室以上の場合専従者給与を支払えるなどのメリットが生まれます。

特に最後の「専従者給与」については家族にも支払うことができ、その上必要経費として扱えるので、しっかり使えば大変な節税につなげることができます。

④入居者の募集

以上①~③の手続きを終了したら、広告を出したり、不動産会社に仲介を持ちかけたりするなどしてアパートへの入居者募集を開始します。

3.アパート購入後のアパート経営にかかる税金

ここまでアパート経営の準備・開始についてお話してきましたが、次に実際にアパートを経営していくにあたってかかってくる税金をご紹介致します。

固定資産税

不動産を所有している限り、毎年納めなければいけない課税ですね。

アパートの賃貸経営に限らず、マイホームの所有などでも課税されるこの固定資産税ですが、この辺りで基本を再確認しておきましょう。

まず課税対象者ですが、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録された方が対象です。どんな事情であれ、また年度途中に不動産を手放したとしても、この1月1日時点で課税対象者は決定されてしまい、決定されれば納税の義務があります。

次に金額ですが、これは前半にも登場した「固定資産税評価額」に一定の税率を掛けて算出されることになります。

固定資産税評価額×税率=固定資産税

税率については不動産住所地の市区町村により、またその年度の特例措置などにより変動しますが、標準税率は現在のところ1.4%となっています。

都市計画税

固定資産税と併せて徴収される税で、都市計画の財源確保を目的としています。

それぞれの市区町村が定めた市街化区域内に不動産を所有する方が対象となりますが、都市部などではほぼ全域が対象です。

都市計画税の計算は、固定資産税と同じく固定資産税評価額に税率をかけて行われることとなりますが、違う点があると言えば税率が低いことと、制限税率が存在することです。

固定資産税評価額×税率0.3%まで[制限税率]=都市計画税

固定資産税・都市計画税どちらも市区町村や年度により様々な税率の特例が存在しますので、具体的な税額については問い合わせが必要です。

例えば所有不動産が宅地である場合、

1戸あたり200平方メートル以下の土地小規模住宅用地とされ課税標準(固定資産税評価額)を6分の1にしてから税額を計算、200平方メートルを超える場合でも3分の1にしてから税額を計算するなどの措置があります。また賃貸アパートの場合は、この基準が200平方メートル×戸数で計算されるのでご安心ください。

そのほか、認定長期優良住宅や低炭素住宅、バリアフリー住宅や省エネルギー住宅などの特例もありますので、損しないよう1度住宅地の市区町村の課税率をチェックしておきましょう。

4.アパート経営による家賃収入・不動産所得の申告方法

アパートによる賃貸経営を行っていると、確定申告の必要があります。

確定申告には青色申告書と白色申告書が存在しますが、収益の多いアパート経営では前者の青色申告が、税の優遇措置などを受けられるため得になるケースが多く見受けられます。

実務上では白色申告書には記帳の義務はなく、青色申告書では記帳の義務があり数値も細かく記すため、はじめは税理士への代行依頼や専門家への相談も多くなることでしょう。ただし、1度要領を覚えてしまえば後々事業規模が大きくなってきた時に便利ですので、アパート経営をまだ始めたばかりでも青色申告から行っておいて損は無いでしょう。

アパート経営における所得申告では、以下のような経費の計上と、優遇措置の活用が明暗を分けます。

経費に計上されるもの

  • 印紙税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税・事業税など
  • 青色事業専従者給与

※白色申告では、配偶者86万円、それ以外は50万円までしか計上することができません。

  • 清掃、修繕など維持管理費
  • 住宅ローンなど借入金の利子
  • 共用部分の水道光熱費
  • 不動産会社への仲介手数料など委託管理手数料
  • アパート建替のための立退き料や取り壊しの費用など
  • 減価償却費
  • 火災や地震など損害保険の掛け金
  • 税理士報酬、通信費、消耗品費、ローン借り換えの諸費用などその他

以上が必要経費として計上できるものの代表例です。

特別控除

アパート経営が事業として認められた時点で10万円、戸数が10戸以上など規模のある経営が成り立っていれば更に50万円ほどの控除を受けることができます。

少額減価償却資産の特例

青色申告での場合、30万円までの少額減価償却資産であれば、年間300万円まで一括して必要経費に計上できるという特例があります。

損失の繰り越し

青色申告であれば、経営における損失を3年分まで繰り越すことができます。また、前年度まで損失を遡らせ還付金を受け取ることもできます。

これらを加味してアパートの所得が決まります。

まずアパートの収入から必要経費と所得控除を差し引き、出た額が課税対象所得です。ここからさらに特例控除額などを差し引いて出た額が最終的な課税対象となります。

5.アパート購入などの不動産投資する場合の注意点

不動産投資で最大限注意しなければならないのは、所得税・住民税の増大です。

一つの物件の経営が長くなればなるほど、必要経費が下がり所得が大きく計上されてしまい、税が重くなっていきます。

経営のはじめのうちは多額の費用がかかりますし、数十年のうちは減価償却やローンの利子を必要経費として計上することで節税となることでしょう。しかしこれら必要経費が計上できなくなると、その年度から急に不動産取得が上がることとなり、それに伴い住民税や所得税の課税が跳ね上がります。

こういった状況に対処するために、早めに税の倍増に備え補填金を用意しておく、減価償却の期限までに売却して建物の建て替えを行う、税理士への計画相談などの対策を行っておきましょう。

6.まとめ

いかがでしたでしょうか?

アパート購入から経営までのおおまかな流れと税金を中心にご紹介致しました。

相続された土地の運用、節税対策、銀行の積極的な不動産向け貸付などにより、近年ではサラリーマンの副業としてもアパート経営はメジャーなものとなっています…

ご紹介した通り案外手続きは楽なもので、リスク回収を計画した上で経営か乗れば、アパート経営は大変有用な資産運用となるのです。