事例紹介
不動産を登記した際にかかる登録免許税ですが、実は不動産を売却するときにも、登録免許税が必要になります。
しかし、「そもそも登録免許税ってなんだろう」「いくらぐらいかかるものなのだろう」と、実はなんなのかよく分かっていない…という人もいるかも知れません。
今回こちらの記事では、不動産を売却する際の登録免許税について紹介します。不動産を売却しようと思っている人や、登録免許税について気になる人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
この記事でわかること
1. 不動産を売却したときの登録免許税はいくらか
最初に、不動産を売却した際、登録資産税はいくらぐらいになるのでしょうか。それについて見ていきましょう。
そもそも登録免許税とは、「登記」をする際にかかる税金のことを指し、登記をする際に納める税金のことを登録免許税と呼んでいます。
また不動産用語としての「登記」は、土地や家を購入したり、建築したりしたときに行う「不動産登記」というものになります。そのため、売却のときも同様に不動産登記を行う必要があるのです。
それでは、ここでいう「不動産登記」というのは何なのでしょうか。
不動産登記は、不動産の権利を国に証明してもらうことです。「法務局」が管理している「登記簿」に、不動産の情報や所有者の情報を記載し、権利関係が誰にでもわかるようにします。
不動産登記を行うことにより、その不動産が自分の所有物ということを主張する権利である「所有権」、お金を貸す側が、その不動産を借金の担保にすることができる権利である「抵当権」、そして他人の土地を借りて、そこに建物を建てることができる権利「借地権」などの権利が公に明らかになるのです。
これによってはじめて信頼が生まれ、不動産の取引が安全に行えるようになるという仕組みになっています。
不動産の売買や贈与など、なにかしら譲渡があると所有権がうつるようなシステムになっています。
その際は、登記をするという決まりになっています。
実は登記は義務ではないのですが、マンションや戸建てなど一般的な不動産の売買・取引をすれば、ほぼ確実に所有権移転登記や抵当権の抹消登記などが行われるようになっています。
不動産登記を申請する方法としては、自分で手続きする方法と専門家へ依頼して手続きしてもらう方法の2種類があります。
不動産登記を自分で申請する場合に必要なものとしては、登録免許税や交通費、提出書類を入手するための発行手数料などになります。そして司法書士や土地家屋調査士へ委任した場合には、この登録免許税・交通費などの費用とは別に、報酬費用がかかるようになっています。
2. 登録免許税の税率
不動産登記では、不動産の時価に対して、それぞれの税率を使うことで登録免許税を計算して求めることができます。
自宅にいながらして、だいたいの登録免許税の金額がわかるようになっているのです。
ちなみに土地に対しては、売買だと2%、相続、法人の合併または共有物の分割になると0.4%、その他贈与、交換、収用、競売などになると2%の税率になります。
また建物に対しては、所有権の保存では0.4%、売買または競売による所有権の移転では2%、相続もしくは法人の合併による所有権の移転では0.4%、その他の所有権の移転であれば2%の税率になります。
また、所有権移転登記であれば1,000分の20、所有権保存登記は1,000分の4、抵当権設定登記は1,000分の4という基準もあります。この税率はあくまでも基準であり、住宅用不動産には優遇措置もあります。
そのため、不動産の売却の場合は、2%の倍率になりますね。これは土地についても建物についても同じことになります。
3. 不動産を売却したときの登録免許税の計算方法
登録免許税は、計算にて求めることが出来ます。
計算式としては以下のとおりです。
不動産の固定資産税評価額 × 登録免許税の税率 = 登録免許税
売買の際、倍率は2%です。そのため計算式としては、「1,000分の20」をかけることになります。
登録免許税を計算する際は、いくつかルールがあります。
3-1.登録免許税計算の基本的なルール
- 土地と建物がある場合には、まずそれぞれの「固定資産税評価額」を足して合計額を出す
- 登録免許税を計算する合計金額の下3桁は切り捨てる
- 税率をかけた金額の下2桁は切り捨てる
ではここで、不動産売買について、計算式の一例を紹介します。
土地(20,000,000円)・建物(5,000,000)の所有権移転登記
20,000,000+5,000,000=25,000,000円
25,000,000×20/1000=50,000円
登録免許税は、50,000円となります。
所有権の移転登記の場合
<土地>
売買によって所有権が移転した時
不動産価格×15%(平成31年3月31日まで)
相続による所有権移転登記
不動産価格×4%
<建物>
売買、競売による所有権移転
不動産価格×4%(自己居住用なら3%)
相続による所有権移転登記
不動産価格×4%
抵当権の抹消登記
不動産ひとつにつき1,000円
土地と建物についている抵当権を抹消するのであれば、
土地×1,000円
建物×1,000円
合計=2,000円
2,000円の登録免許税がかかるということになります。
建物の滅失登記
建物を解体して更地にした場合、当然ですが登記上からも建物を失くす作業が必要になりますよね。
これを”建物の滅失登記”と呼びます。
ちなみに、滅失登記をするためには登録免許税は必要ありません。
滅失登記において必要になるのは、家屋調査士だけになります。権利の登記は司法書士の分野になりますが、建物滅失は土地家屋調査士の仕事になりますので注意しましょう。
ちなみに、土地家屋調査士に支払うお金の相場は4万円~8万円程度となっています。
さらに、中古マンションや中古戸建などの一般的なマイホーム売買の現場になると、所有権の移転登記に関する費用は買主が負担するのが慣習になっています。
多くの不動産会社が使用している契約書のテンプレートにも、定型文として「所有権の移転登記費用」については、買主側の負担として書かれているのです。ではどんなときに売主が登録免許税を支払うのかというと、不動産に抵当権が設定されている場合になります。
住宅ローンや事業資金を、不動産を担保にして借り入れているケースの場合、抵当権が設定されたままになっていることがあるのです。
通常抵当権が残ったまま引き渡すことはできないため、その場合は借入金を返済し、抵当権を抹消しなくてはならないことになります。
抵当権を設定したのは売主ですから、売主の責任で抹消するということになりますね。
さらに建物を解体し、更地にして土地だけで売却する場合もあります。その場合は、建物の滅失登記も必要になります。これについては先述したとおり、家屋調査士の仕事となっているのです。
滅失登記の手続きについては、必ず決済までに終わらせましょう。土地上に建物が無くなっているということを、登記上にも反映させておかなくてはいけません。
また、抵当権の抹消については、所有権移転登記の申請と同時に行うのが一般的になっています。抵当権を抹消するためにはまず、借入した資金を全額返済する必要があります。
借入資金の返済は、不動産を売却して得たお金ですることが多いです。そのため、売却資金を得るまでは抵当権が抹消できません。決済時に抵当権を設定した相手に借入金を返済し、それを確認してそのあとに抵当権の抹消登記の申請をすることができます。さらに所有権の移転もこのときに行うため、同時申請になることがほとんどです。
4. 売却時の登録免許税の軽減措置はあるか
登録免許税の計算方法や税率については先述したとおりになりますが、軽減税率の特例を受けることで税率をもっと下げることができるのです。
軽減税率の特例は土地と建物で変わりますが、それぞれどのくらい軽減することができるのでしょうか。
4-1.土地の軽減税率の特例
本来1,000分の20である税率が1,000分の15まで下げることができます。期限は平成31年3月31日までです。
4-2.建物の軽減税率の特例
住宅用家屋を取得した場合の軽減税率の特例として、平成32年3月31日までであれば、この軽減税率により本来1,000分の20である税率が1,000分の3にまで下げることができるようになっています。
ただし、このなかでの土地の特例に関しては、条件として「自身が移住するための建物であること」「建物取得後から1年以内に登記していること」「25年以内に建築された耐火建築であること、もしくは耐火建築物でない場合は、20年以内に建築されたもの。年数制限に引っかかっている場合は、新耐震基準に満たしていることを証明すること」が条件になります。
4-3.特例認定長期優良住宅の所有権の保存登記
この場合、共同住宅(マンション)の場合には1,000分の1、戸建住宅であれば1,000分の2まで軽減されます。この特例を受けるための条件としては、平成30年3月31日までに、自身の居住用という形で長期優良住宅を取得することが条件となります。
4-4.認定低炭素住宅の所有権の保存登記など
この場合は、本来の税率ではなく1,000分の1の税率として計算するようになります。
この特例を受ける場合には、平成30年3月31日までに自身の居住用として認定低炭素住宅を取得することが条件になります。
さて、先ほど紹介した「住宅用家屋証明書」についてです。
軽減税率の特例を受ける場合には、この証明書を市区町村から入手しなければなりません。取得するためには、1件につき1,300円という費用と、以下の書類が必要になります。
4-5.取得するために提出する必要書類
中古の住宅およびマンションにおける必要書類は以下のとおりです。
- 住宅用家屋証明申請書(原本分&提出分)
- 当該家屋の登記事項証明書又は照会番号、もしくは、当該家屋の登記完了証、もしくは、当該家屋の確認済証及び検査済証
- 住民票
5. 売却時における登録免許税の注意点
登録免許税について、いくつか注意点があるので紹介します。
5-1.納付の仕方
登録免許税の納付の仕方ですが、「登記申請書」という書類で納付するようになっています。まず銀行や郵便局で納付の手続きをおこない、そこで発行された領収書を登記申請書に貼り付けて提出するような形をとります。
また、オンラインで申請することもできるので、そちらのほうが手軽ではありますね。
とは言っても実際は、複雑な資料のため不動産登記の申請は司法書士に依頼するというパターンが多いです。よって、登録免許税の納付についても司法書士が代理で行うのが一般的になりますね。その場合は当然ですが、報酬を支払うようになります。
また支払う金額についてですが、報酬と合わせて、登録免許税の費用を司法書士に支払うことになります。
登録免許税の納付についての詳細は、依頼する司法書士に相談してみると良いですね。
さらにもう1点注意点としては、抵当権設定登記の場合は、各上記の書類のほかに、その住宅を取得するための資金貸付であることが確認できる書類が必要になることです。例としては、金銭消費貸借契約書などです。
特定認定長期優良住宅や認定低炭素住宅による登録免許税の軽減措置を受ける場合は、上記の各書類のほかに、認定申請書及び認定通知書の写しが必要になります。
ただし軽減措置を受ける条件としては、建物が新築されたものであること、そして建築後使用されたことのないものに限ります。
「特定増改築家屋」による登録免許税の軽減を受ける場合は、先程の各書類のほかに、増改築等工事証明書が必要です。ただしこれも、建築後使われたことがあるものに限られます。
転入手続を済ませていないような場合には、現在住んでいる住宅の処分方法がわかる書類があわせて必要になります。売却される場合は売買契約書や、賃貸の場合は賃貸借契約書なども必要です。
さらに住宅用家屋証明の取得は、専門的な内容になり、一般には時間と手間がかかるので、自分は書類だけ揃えて、あとは司法書士が代行することが多くなっています。
6. まとめ
以上が、不動産を売却する際の登録免許税についての紹介でした。
そもそも登録免許税とはなんなのかというところから、登記について、さらに減額措置などについても紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
大まかな計算方法についても紹介したので、だいたいの目安の登録免許税も今の時点で計算ができるかと思います。
不動産を売却する前に、まず登録免許税がいくらぐらいになるのか計算してみてくださいね。