事例紹介

Category  不動産

2018年05月22日

不動産に売却損が出た時に所得税・住民税が軽減される条件まとめ

不動産を購入した時よりも、売却した時の方が値段が下がってしまっているときには、売却損が発生することになります。

居住用の不動産の売却で売却損が出た場合には、税金の負担については特例を受けることができます。

ここでは所得税・住民税に関する損益通算と繰越控除の特例について解説させていただきます。

※住民税の計算は、所得税の確定申告(こちらは自分で行わなくてはなりません)の内容から、市役所が自動的に計算してくれますので、実際の計算方法としては所得税の計算についてのみ理解しておけば問題ありません。

1. 不動産に売却損が出た時に所得税・住民税が軽減される条件

居住用の不動産を売却した時に売却損が発生した場合には、その売却損の金額をその年の別の所得の合計額から差し引きすることができます。

所得の金額が少なくなれば少なくなるほど税金の負担は小さくなりますから、それだけ得をするというわけですね。

この特例を受けるための条件としては、以下のようなものがあります。

  • 土地、建物ともに所有期間が5年を超えていること
  • 住宅ローンが残っていること
  • 合計の所得が3000万円以下であること
  • 特殊関係者への譲渡ではないこと
  • 居住用不動産であること

以下、順番に解説させていただきます。

土地、建物ともに所有期間が5年を超えていること

譲渡を行う不動産は、建物と敷地がともに5年間を超える所有期間を過ぎていることが条件になります。

このとき、所有期間の計算は譲渡を行った日を基準に行うのではなく、譲渡を行った年の1月1日時点が基準になることに注意してください。

例えば、平成30年3月1日に不動産を売却した場合、所有期間の計算は平成30年1月1日を基準に行うことになります。

この場合、不動産を取得したのが平成24年1月1日である場合には、平成29年12月31日時点で所有期間が5年経過することになります。

住宅ローンが残っていること

損益通算、損失繰越に関する特例の適用を受けるためには、譲渡を行った前日において住宅ローンの残高が残っていることが条件となります。

ここでいう住宅ローンは、譲渡を行った不動産を購入するために借りたお金で、償還期間が10年以上である必要があります(通常、マイホームを購入するときに組む住宅ローンの多くがこの条件に該当します)

なお、2.で説明させていただく「買い換えの特例」の場合には、不動産売却時に住宅ローン残高が残っている必要はありません。

合計の所得が3000万円以下であること

繰越控除の適用を受けようとする年の合計所得金額は3000万円以下でなくてはなりません。

合計所得金額とは、勤務先の会社から受け取っている給与所得や、賃貸アパートの経営による不動産所得など、得ている所得の合計のことを言います。

なお、所得の金額は収入の金額とは異なりますので注意が必要です(所得とは、収入から経費を差し引きした金額のことです)

例えば、勤務先からのお給料収入が1000万円ある人の場合、所得金額は780万円となります。

ただし、合計所得金額について上限があるのは繰越控除についてのみです(損益通算については合計所得金額の制限はありません)

特別関係者への譲渡ではないこと

不動産の売却を行う相手が一定の条件に該当する「特殊関係者」ではないことが条件になります。

特殊関係者とは、具体的には以下のような相手のことをいいます。

  • 配偶者や直系の親族(親、子、孫)でないこと
  • 直系でない親族の場合は、生計が一緒でないこと
  • 売却した人がオーナーになっている同族会社でないこと

居住用不動産であること

売却を行う不動産は、売却を行った人が実際に住むために購入した不動産でなくてはなりません。

ただし、転勤などのために単身赴任をしている場合に、配偶者などがその不動産に居住していた時にはこの特例の適用を受けることが可能です。

また、一定の時期までは実際に住んでいたけれど、それ以降は住まなくなったという場合には、居住しなくなった時から3年以内(正確には3年が経過する日が属する年の12月31日まで)に売却を行ったことが条件になります。

居住用不動産であること

この特例は「居住用の不動産(つまりマイホーム)」を売却した場合に限定されます。

また、共有となっている不動産を売却した場合には、共有持ち分の範囲内でこの特例を適用することができます。

以前は居住用であるかどうかにかからず、不動産売却で譲渡損が発生した時には損益通算や繰越控除が認められていたのですが、平成16年度の税制改正によって損益通算、繰越控除ともに居住用不動産の場合に限られることになりました。

以下では居住用不動産の売却で損失が発生した場合に利用できる損益通算と繰越控除の特例について解説させていただきます。

2. 譲渡損失が出た場合の損益通算・繰越控除の特例とは

上記の条件に該当する場合には、損益通算、繰越控除の特例を受けることができます。

以下では損益通算、繰越控除の意味から具体的に解説させていただきます。

2-1. 損益通算

損益通算とは、ごく簡単に言うと異なる種類の所得の金額を合算することをいいます。

例えば、不動産の売却で500万円の損失が出たけれど、勤務先の会社から受け取っているお給料の所得が800万円あるという人の場合に、損益通算を行うと合計所得を300万円(800万円-500万円)としてもらうことができます。

ただし、譲渡損失額が「住宅ローン残高から譲渡収入を差し引きした金額」よりも大きくなる場合には、後者の金額が特例の多少となる損失の上限額となります(これは繰越控除についても同様です)

例えば、譲渡損失が500万円、住宅ローン残高が1000万円、譲渡収入が800万円であれば、譲渡代価を超える住宅ローン残高は1000万円-800万円=200万円となり、特例の対象は200万円となります。

2-2. 繰越控除

繰越控除とは、損益通算によって合算した損失分を、その年の合計所得金額がから控除しきれない場合に、翌年以降3年間にわたってその損失を持ち越すことをいいます。

例えば、不動産の売却損が3000万円、その他の所得の合計額が2000万円という場合、損益通算を行うと合計所得金額はマイナス1000万円ということになります(2000万円-3000万円)

その翌年の所得が1800万円あったという場合、前年にマイナスになっていた1000万円を差し引きして合計所得金額を800万円(1800万円-1000万円)としてもらうことが可能です。

2-3. 確定申告が必要

この特例を利用するためには、所得税の確定申告を行う必要があります。

確定申告とはその年の所得の金額を計算し、その金額から納めるべき税金の金額を自分で計算して税務署に報告することをいいます。

確定申告はいつでも行ってよいというものではなく、2月16日~3月15日の間に行う必要がありますので注意してください。

3. 住宅(マイホーム)を買い換えた場合の特例

先ほどは居住用財産を売却して損失が出た場合に利用できる損益通算と繰越控除の特例について説明をさせていただきました。

これに加えて、売却と前後して新たにマイホームを購入した場合には、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および損失の繰越控除の特例」を適用してもらうことができます。

以下では買い換えの場合の特例の内容について解説させていただきます。

3-1. 特例が受けられる要件

この特例(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および損失の繰越控除の特例)を受けるための条件は、上で説明させていただいた譲渡損失が出た場合の特例の条件に加えて、以下の条件が必要になります。

まず、譲渡資産ですが、譲渡した居住用不動産の敷地面積が500㎡を超える金額は繰越控除の対象から外れます。

  • 床面積が50m²以上の居住用不動産を購入する予定であること
  • 不動産の購入時期は、不動産を譲渡した年の前年から翌年までの期間内であること
  • 買い換える不動産に、取得した年の翌年年末までの期間内に住み始めること

なお、買い換えでない場合には譲渡した不動産について住宅ローンが残っていることが条件でしたが、買い換えの場合には住宅ローンをすでに完済していても問題ありません(買い換え資産の取得にあたって住宅ローンを有することが必要です)

3-2. 必要書類

この買い換えの特例を受けるためには、確定申告を行う際に以下の書類を添付しなくてはなりません。

  1. 譲渡した不動産の売買契約書(写し)か、登記事項証明書
  2. 売却を行った人がその不動産に居住していたことを証明する書類(住民票など)
  3. 買い換えた不動産の売買契約書(写し)か、登記事項証明書
  4. 買い換えた不動産に関する住宅ローン残高証明書
    なお、買い換えた不動産にまだ居住していない場合には以下のものが必要になります(決まった書式はありません)
  5. 買い換えた不動産にまだ居住していない旨と、居住し始める予定の年月日を記した書類

3-3. 所得税や住民税の控除額の計算方法

ここまで説明させていただいた特例の計算方法に基づいて、具体的に以下のような状況を想定して計算をしてみましょう。

売却した年:平成30年
売却損失の金額:2500万円
平成30年の所得(不動産譲渡以外):1000万円
2019年の所得:1200万円
2020年の所得:900万円

平成30年の所得税・住民税

所得がないため、0円となります。

合計所得金額1000万円-2500万円=マイナス1500万円となりますので、翌年以降にこの1500万円の損失を繰り越します。

2019年の所得税・住民税

所得がないため、0円となります。

平成30年から繰り越された1500万円の損失を2019年の所得(1200万円)から差し引きするとマイナス300万円となりますので、このマイナス300万円をさらに翌年(2020年)に繰り越します。

2020年の所得税・住民税

繰り越された損失額300万円を2020年の所得900万円から差し引きすると600万円となりますので、この所得金額から所得税の金額と住民税の金額を計算します。

実際に税額を計算する際には、合計所得金額である上の600万円から、所得控除の金額(社会保険料の支払額や生命保険料控除の金額、医療費控除の金額など)を差し引きします。

その上で税率をかけて税額を計算します。

所得税の税率は所得の金額によって異なります(例えば、所得金額が500万円の人であれば税率は20%となります)

住民税の税率は所得の金額に対して10%となります。

3-4. 住宅ローン控除の併用が可能

不動産譲渡で損失が出た場合に、さらに新たなマイホームに買い換えを行った場合には、税金計算に当たって住宅ローン控除を併用することができます。

つまり、譲渡損失について損益通算を行って合計所得金額を計算した後、さらに税額控除として住宅ローン控除を利用できるということですね(ただし、買い換えを行わない場合には住宅ローン控除は使えませんので注意してください)

住宅ローン控除とは、税金計算を行う年の年末時点で残っている住宅ローンの残高に1%をかけた金額を、所得税や住民税の金額からそのまま差し引きしてもらえる制度のことです。

例えば、ここまで説明させていただいた損益通算、損失繰越によって計算した税額が50万円であった場合に、住宅ローン残高が3000万円残っていたとすると、この50万円から30万円(3000万円×1%)を差し引きした金額が税額ということになります。

なお、住宅ローン控除はまず所得税の金額から控除し、それでも控除しきれなかった金額を住民税から差し引きします。

4. まとめ

以上、不動産の売却で譲渡損失が発生した場合に利用できる損益通算および栗四顧し控除制度について解説させていただきました。

不動産に関する取引は計算する金額や負担する税額が大きくなるほか、計算方法が複雑になりますから、状況に応じて専門家のアドバイスを受けるのが適切です。

税金の専門家としては税理士が該当しますが、その中でも不動産関係のいわゆる資産税に詳しい税理士に相談されるほうが的確なアドバイスを期待できます。