事例紹介
Category 不動産
2018年11月04日 更新
アパート賃貸経営で押さえておきたい税金のおはなし
税金の申告・納入は会社経由で済ませてきたという方も多いのではないでしょうか。
アパート賃貸経営を始めたら、収益は自分で申告しなければなりませんし、物件購入にかかる税金についても知っておく必要があります。
税金の納入には現金が必要ですから、お金の回し方(キャッシュフロー)を考えるときにも税金を盛り込んで考えなければなければなりません。
アパート賃貸経営にかかる税金を確かめていきましょう。
この記事でわかること
1.アパート賃貸経営にかかる税金一覧
- 家賃としての収入を確定申告して毎年納入する税金
⇒所得税と住民税 - 所有するアパートの資産価値に応じて毎年納入する税金
⇒固定資産税と都市計画税 - アパートの新築や購入のときに納入する税金
⇒印紙税、登録免許税、不動産取得税、消費税
アパート経営をする場合、資金計画を立てるときに、こうした税金がかかることを想定しておきましょう。
家賃収入にかかる所得は、不動産所得として計算し、翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告して所得税を納めます。
住民税は、翌年の6月から4回に分けて納め、建物を所有していることにかかる固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点の所有に対して決定した税額が、4月に通知され4回に分けて納めます。アパートを所有している限り、必要になる税金です。アパートを新築・購入した場合には、取得税と、所有権の登記を変更するために必要な手続きに必要な税が発生することを覚えておきましょう。
では、それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
2. 家賃収入(不動産所得)に課せられる所得税と住民税
アパートを所有して家賃収入があった場合には、不動産所得の申告をします。「家賃収入を得るために必要とした支出」を「必要経費」として家賃収入から差し引いた“儲け”が、不動産所得になります。
家賃収入 – 必要経費 = 不動産所得
必要経費に計上できるもの
- 管理会社への費用
- 入居者を募集するための費用
- 修繕費
- 損害保険料
- 共用部分などの水道光熱費
- 取り壊しや立ち退きの費用
- アパートにかかった税金(登録免許税、不動産取得税、印紙税、固定資産税)
- 借入金の利子
- 減価償却費(建物や設備の減価償却分)
- その他アパート経営に必要とした費用 など
給与所得者は、給与にかかる所得税を、勤め先を通してあらかじめ納入しています。アパートの賃貸収入を得た場合には、必要経費を差し引いて求めた「不動産所得」を「給与所得」と合計して所得を算出し、税率をかけて所得税を計算します。
不動産所得 + 給与所得 – 所得控除 = 所得
所得×税率 – 勤め先で納めた税額 = 収めるべき所得税
住民税はここで算出された所得をもとに計算され、6月に納税通知書が届きます。
3.賃貸アパート所有に課せられる固定資産税と都市計画税
3-1.固定資産税
固定資産税評価額(課税標準)×1.4%(標準税率)
土地については軽減措置として、小規模宅地部分(住宅一戸あたり200平方メートル以下)が課税標準額の1/6になります。また、建物は、平成32年3月31日までに新築された場合には標準税額から1/2になる特例があります。
3-2.都市計画税
固定資産税評価額(課税標準)× 0.3%(標準税率)
土地については軽減措置として、小規模宅地部分(住宅一戸あたり200平方メートル以下)が課税標準額の1/3になります。なお、アパートの場合には複数戸で全体の面積を割るため小規模宅地として低い税率が適用になる面積内で収まることがほとんどです。
1戸なら200平方メートルまでだったのが、2戸なら400平方メートルまで軽減税率が使え、固定資産税・都市計画税を抑えられるケースが出てくるでしょう。
1月1日時点の情報に基づいて、固定資産税と都市計画税を合わせた納税通知書が、4月に届き、4回に分けて納入します。
4.賃貸用アパートの新築・購入時にかかる税金
印紙税、登録免許税、不動産取得税、消費税が新築・購入のときにかかります。
それぞれの内容についてみていきましょう。
4-1.印紙税
アパートの新築や購入のときに印紙が必要になる書類がいくつかあります。
- 不動産の売買契約書
- 建物の建築請負契約書
- 借入のための金銭消費貸借契約書
- 領収書
扱う金額によって印紙の金額が変わってきます。
なお、不動産の売買契約書に貼り付ける印紙については、売買契約の日付が平成32年3月31日までの間であれば軽減税率の適用を受けることができます。
4-2.登録免許税
建物を新築したとき、土地や建物を購入したときに、所有権保存登記や移転登記をします。登記することで、物件の所有権を第三者に主張できるようになります。この所有権保存登記や移転登記をする際に必要になるのが登録免許税です。
固定資産税評価額(課税標準) × 税率
税率は、登記の種類によって異なります。
例えば、土地の売買に係る登録免許税の税率は、平成31年3月31日まで15/1,000、4月1日以降20/1,000です。
また、共同住宅については、平成32年3月31日まで1/1,000となっています。
4-3.不動産取得税
不動産を購入したときはもちろん、新築、贈与などで取得したときに納付する税金です。
本則での不動産取得税=固定資産税評価額 × 4%
平成33年3月31日までは、特例によって軽減税率3%が適用になります。
新築住宅とその宅地の場合、特例の条件を備えていると、土地の取得税では固定資産税評価額から1,200万円の控除、建物の取得税では固定資産評価額が1/2になる特例が合わせて使えるので、次の計算式のようになります。
土地の取得税=(固定資産税評価額 - 1,200万円) × 3%
建物の取得税=(固定資産税評価額 × 1/2 × 3%) - ①か②の多い額を控除
①45,000円
②(土地1平方メートル当たりの固定資産税評価額 × 1/2) × (課税床面積 × 2(200平方メートルを限度として) × 3%
不動産取得税は、地方税ですから実際には、購入するアパートのある都道府県に問い合わせると確実です。
4-4.消費税
- 土地は非課税
- 建物には消費税がかかる(ただし売主が個人の場合は非課税)
- 仲介手数料には消費税がかかる
- ローンの事務手数料には消費税がかかる
- 登記を司法書士に依頼すると、司法書士報酬に対して消費税がかかる
アパート賃貸経営のため、物件を不動産業者から購入するときの消費税は、建物の購入代金のほか、仲介手数料、ローンの事務手数料、諸手続きに必要な書類作成を行う司法書士への報酬です。
個人が売り主の中古住宅の場合には、消費税がかからないことがありますが、事業用や投資用と判断されれば消費税がかかるのです。
5.アパート賃貸経営にかかる税金の節税対策
- 軽減措置は固定資産税や不動産取得税に効果あり
- 確定申告では必要経費の取りこぼしがないようにする
- 減価償却費は耐用年数で変化することを押さえておく
- 給与所得があると損益通算で所得税還付になるケースがある
アパート賃貸経営にかかる税金の節約では、物件を購入するときにかかる税金と、確定申告での所得計算が大きなポイントになります。
上記の項目についてもう少し詳しくみていきましょう。
5-1.軽減措置は固定資産税や不動産取得税に効果あり
- 固定資産税では平成32年3月31日までに新築すると軽減される
- 不動産取得税では、平成33年3月31日までの購入で控除など軽減される
住宅の条件によって3年~7年の間、固定資産税が1/2になります。平成32年3月31日までに物件を購入すると、固定資産税と不動産取得税が抑えられます。
なお、平成30年10月15日に政府の発表があり、平成31年10月1日から消費税10%への増税が予定通り実施されることが発表されました。消費税値上げの前を狙うなら、更に早めてアパート購入を検討したほうが良いでしょう。
5-2. 確定申告では必要経費の取りこぼしがないようにする
- 事務処理費など細かい費用も領収書を保存して計上する
- 旅費や図書費などもチェックする
アパート賃貸経営に必要とした支出は必要経費にあたります。電話や事務処理に使ったものなど、領収書を残して準備しておきましょう。パソコンなど、家事按分といって事業用途の割合分の費用が認められることがあります。
また、物件を見に行ったとき、セミナーに参加した参加費用も、チラシや資料を取っておくと証明になるので認められやすくなるでしょう。電車賃は領収証がない場合がありますが、事業に関連した日時と目的がはっきりしているとOKなことがあります。記録をしっかり残しておき、会計士や税理士などに相談しながら進めると間違いありません。
5-3. 減価償却費は耐用年数で変化することを押さえておく
- 建物の構造、新築か中古かで償却期間が違う
- 経営スタイルにあった償却期間の長さ、減価償却費を考えて物件選びをする
アパート賃貸経営では、必要経費のなかに減価償却費を含めることができます。経年劣化で価値が下がっていくことを会計上反映させられる方法です。建物の構造によって耐用年数が定められており、その期間の中で価値が償却されていくように償却率を使って1年あたりの減価償却費を求めます。
「鉄筋コンクリート造耐用年数47年⇒償却率0.022」、「鉄骨造耐用年数34年⇒償却率0.030」、「木造耐用年数22年⇒償却率0.046」です。
2,000万円で購入した新築木造アパートの減価償却費は、2,000万円×0.022=44万円です。
また中古物件の場合は以下の計算式で耐用年数を算出します。
(耐用年数-築年数)+築年数×20%
例えば、築20年の鉄筋コンクリート造アパートの場合、耐用年数は(47年-20年)+20×20%=31年となります。31年の償却率は0.033%なので、物件の価格が1000万円だったとしたら、1000万円×0.033=33万円となります。
年数に対する償却率は、国税庁の公式サイトで公開されています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf
ローンで購入代金をまかなっている場合、物件購入費として手元から実際に支出しているのはローン返済分です。ローン返済よりも減価償却分が大きければ、申告よりも手元のお金が残っている状態になります。
反対に、ローン返済よりも減価償却が小さくなると、申告よりも手元のお金が少なくなってしまい、所得税の支払いが厳しくなってしまう「デッドクロス」が起こるので注意が必要です。
減価償却・ローン返済のバランスを、考えて経営プランを練る必要があります。
5-4. 給与所得があると損益通算で所得税還付になるケースがある
- 給与所得がある人は源泉徴収などで予定の所得税額を納めている
- 収入が複数あるときには申告して所得と所得税を確定させる
減価償却費が大きいと、会計上所得が低くなります。申告したら、必要経費がとても大きくなって所得そのものがマイナスになる場合があります。会社員などで、給与所得がある場合には、不動産所得と給与所得を合わせて計算することができます。不動産所得がマイナスなら、給与所得のプラスから差し引くことができるので所得税を安くすることができます。
あらかじめ会社を通じて納めていた源泉徴収分より所得税が安くなるので、還付を受けられます。所得が小さくなると課税対象の額が小さくなり、手元のお金を減らさずにすみますが、赤字経営になってしまいます。規模拡大で借り入れを申し込む予定があるなら、赤字経営では審査に通りにくくなってしまうでしょう。
アパート賃貸契約のフェーズによって、どんな経営プランをすすめるか、専門家に相談しながら進めると良いでしょう。
6.確定申告の方法と注意点
- 青色申告で節税効果をあげる
- 確定申告は前年から準備しておくもの
確定申告には白色申告と青色申告があります。
特に届けを出さず、準備した会計簿と必要経費の領収書などを持って行けば確定申告できるのが白色申告で、事前に届け出をして必要な帳簿をつけていくのが青色申告です。
6-1.青色申告のメリット
- 収入から10万円(要件を満たせば最大65万円)の控除ができる
- 赤字を繰り越せる
- 家族を専従者として登録して給料を必要経費にできる
青色申告のメリットを使うと、節税対策の幅が広がります。
白色申告では基礎控除のみですが、青色申告ではさらに控除額が10万円上乗せでき、5棟10室を目安とした規模と、必要な帳簿記帳で65万円の控除が受けられます。
また、家族に給料を出して必要経費として扱えるので、収入を家族で分散して、税率が高くなるのを防ぐことでの節税が可能です。仕事を手伝っている、仕事に見合った金額が支払われているということがチェックされますが、他の求人に準じているなど、適正な範囲では経費として認められます。
青色事業専従者として届け出が必要なので、こうした青色申告のメリットを活用したい場合には、あらかじめ届け出を出して帳簿類の準備をしておくことが大事です。ちなみに、白色申告も専従者は認められていますが、経費として計上できる金額に制限があり、その額は配偶者なら最大で86万円、配偶者以外で最大50万円までとなっています。
7.アパート賃貸経営するなら税金について知りましょう
会社員の場合には、税金の計算を会社がしてくれますが、アパート賃貸経営をする場合には、確定申告をしなければなりません。納税には現金が必要ですから、どれくらいの税額になるかつかんで、上手に現金を回して行くことが大事です。
どんなタイミングで物件を購入し、大きな修繕を行うのかはもちろん、物件購入で納める税金、所得に課される税金にも詳しくなりたいものです。
アパート賃貸経営成功に向けて税理士に相談しながら、研究していきましょう。