事例紹介
Category 不動産
2018年10月02日 更新
不動産賃貸の仲介手数料は消費税の課税対象!取引時の注意点とは?
マンションやアパートに入居するときには、礼金や敷金その他のさまざまな費用が発生します。
契約書をよく確認している方の中には、仲介手数料などの消費税がかかっているものと、家賃などの消費税がかかっていないものがあるのに気づかれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「家賃には消費税がかかっていないのに、仲介手数料には消費税がかかっている。これって何か変なんじゃ?」と疑問に感じてしまいますよね。
日本国内で買い物をしたり、サービスを受けたりする場合には原則として消費税が課税されますが、一部の特殊な取引については消費税を非課税とする扱いが認められることがあります。
不動産取引では消費税について特殊なルールが適用される場面が多いので、不動産取引にかかわっている方は消費税の扱いについてくわしく理解しておく必要があります。
以下、不動産取引に関する消費税の扱いについて具体的に解説させていただきます。
この記事でわかること
1. 不動産の賃貸では仲介手数料に消費税が加算される
不動産賃貸の取引には、消費税の課税される取引とそうでない取引があります。
ごく簡単に分類すると、不動産を貸している住民から受け取る家賃や礼金などについては消費税はかかりません。
一方で、不動産業者などに支払う仲介手数料や、管理業者などに支払う管理費用については消費税が課税されます。
また、店舗や事務所などビジネスの用途で賃貸アパートを借りるときには家賃にも消費税が課税されます。
不動産の賃借をする用途によって消費税の扱いが変わることにも注意しておく必要があります。
1-1. 消費税が課税される理由
このようなややこしい扱いになっているのは、消費税が「日本国内で行われるモノやサービスの消費」に対して課税されるという特殊な税金であるからです。
消費というのは「使うとなくなってしまう」という意味ですね。
逆に言うと「使ってなくなる」というような性質でないものをやり取りするときには、消費税はかからないことになります。
例えば土地はどれだけ使ってもこの世からなくなることはありませんから、土地取引には消費税が課税されません。
ただし、たいていの取引は消費される性質の取引ですから、日本国内で行われる取引のほとんどは消費税の課税取引となります。
1-2. 消費税がかかる課税取引
日本国内で行われる商品やサービスのやり取りには消費税がかかりますから、原則的に消費税はかかるものと認識しておく必要があります。
不動産取引について、消費税のかかる課税取引としては、具体的には以下のようなものがあります。
- 不動産業者に対して支払う仲介手数料
- 司法書士などの専門家に対して支払う費用
- ビジネスで使う部屋を借りるときに支払う家賃
- 建築業者などに対して支払ったリフォーム代金
- 住宅ローンを組むときに金融機関に対して支払った事務手数料など
- 建物を購入するために支払った代金
アパートなどに入居するときには、仲介手数料や賃料、礼金や敷金など、初期費用としてさまざまな費用を支払う必要があります。
その中には消費税がかかるものとかからないものとが混在していますから、間違いのないようにしておく必要があります。
あなたが不動産を貸す側の立場である場合にも、テナントや居住者から徴収するお金に消費税を含めてよいかどうかについてはよく確認しておく必要があります。
大家と借主の関係は信頼関係がとても大切です。
借り手側の気持ちとして、入居時の費用や毎月支払う家賃についてはかなりシビアにみているものだからです。
もし誤った金額を居住者に請求してしまったりすると、信頼関係を大きく損なってしまう可能性がありますから、判断に迷った場合には顧問を依頼している税理士などに相談するようにしてくださいね。
さらに、不動産業者に対して支払う仲介手数料については、徴収しても良い金額が宅建業法という法律で決められていますから、こちらについても注意が必要です。
なお、仲介手数料の具体的な上限額については後述しています。
1-3. 性質上、消費税が課税されない取引
上では「日本国内で行われるモノやサービスの消費」に対しては、原則的に消費税が課税されると説明させていただきました。
逆に言うと、「消費されない取引」については消費税は課税されないことになります。
「消費されない取引」というとなんだかイメージがしにくいかもしれませんが、例えば土地の取引がこれに該当します。
土地はいくら使ってもこの世からなくなることがありませんから、土地を他人から購入したとしてもその代金には消費税がかからないのです。
このように、取引の性質上、消費税がかからないものとしては以下のようなものがあります。
- 土地の購入代金
- 住宅ローンなどを組んだときに金融機関に支払う利息
- 火災保険料や地震保険料
- 敷金や保証金
このうち、敷金や保証金は入居者が退去するときに大家から返還されるお金で、実質的には「預けたお金を返してもらっただけ」ですから、消費される取引ではありません。
ただし、入居していたアパートなどから退去するときには、クリーニングの費用などが敷金や保証金として預けたお金から支払われるのが普通です。
このような場合に、敷金のうちからクリーニング業者などに対して支払ったお金については消費税をプラスした金額が敷金から差し引きされますから、注意しておきましょう。
1-4. 本来は消費税がかかるが、国の政策上消費税をかからないとしている取引
そのほかにも、特殊な例として「消費されるサービスであっても特別に消費税を課さない」とされている取引があります。
これは国の政策上、「こういう取引からは消費税を取らないほうが良いだろう」という判断がされているケースです。
具体的には、以下のような取引が該当します。
- 住宅として借りている賃貸アパートの家賃や礼金
- 市役所などに対して支払った費用
- 健康保険が適用される医療費の支払い
- 介護保険サービスの費用
- 葬儀費用のうち、火葬や埋葬を行うための費用
- 学校の授業料など
例えば、介護保険が適用されるサービスは、通常のビジネスで適用されるサービスと本質的には同じものです。
しかし、国の政策上介護は重要な問題で消費者もシビアに見ているため、消費税については無関係の取引としているわけです。
なお繰り返しになりますが、賃貸アパートの家賃や礼金は、事務所や店舗などとして使う場合と、住宅として使う場合とで消費税の扱いが異なりますので注意しておきましょう。
2. 賃貸の仲介手数料の仕組み
アパートを貸したり借りたりするときには、仲介をしてもらった不動産業者に対して仲介手数料を支払う必要があります。
不動産業者に対して支払う仲介手数料については、宅建業法という法律で不動産業者が受け取っても良い金額の上限額が定められています。
不動産の賃貸については、過去に不動産取引の当事者である大家と借主の間に入って交渉をまとめる業者が法外な仲介手数料を徴収し、不動産の貸し借りについての取引が円滑に行われるのをさまたげてしまうケースが頻発していました。
自分で不動産を所有している人以外は、すべての人が不動産の賃借にかかわる必要がありますから、こうした弊害が生じるときには非常にたくさんの人がデメリットを被る可能性があります。
そのため、国は宅建業法という法律を作って不動産賃貸借にかかわる仕事をしている人には通常よりもきびしい取引ルールを適用するようにしているのです。
以下では、不動産賃貸借に関する仲介手数料のルールについて理解しておきましょう。
2-1. 賃貸の仲介手数料の上限額
賃貸の場合の仲介手数料の上限額は、居住用物件の場合には貸主から賃料の半月分、借主から賃料の半月分の、合計で賃料1か月分となっています。
居住用物件以外の賃貸借については、貸主と借主と合計で1か月分の賃料が上限となっています。
例えば、貸主から0.7か月分、借主から0.3か月分といったような形でも問題ありません。
なお、この場合の金額は消費税抜きの金額で計算を行いますから、上の基準によって計算した金額に消費税を上乗せして不動産業者に支払う必要があります。
2-2. 仲介手数料を支払うタイミングについて
仲介手数料はあくまでも売主と買主、あるいは貸主と借主のあいだで契約が正式に成立した場合にのみ発生するものです。
なので、当事者間で契約が成立する以前に不動産業者が仲介手数料を請求してくるようなことはありません。
不動産業者から仲介手数料を支払うように言われるタイミングに違和感を感じたときには、宅建業法上のルールを再度確認するようにしてみてください。
なお、通常は契約が成立した後、入居直前に家賃や礼金と一緒に仲介手数料を支払います。
3. 仲介手数料が無料や半額になっている物件の3つの秘密
賃貸物件を見ていると、不動産業者に対して支払う仲介手数料が無料になっていたり、半額になっていたりするケースがあります。
仲介手数料がただなら、不動産業者の利益もゼロなの?と疑問に思われるかもしれませんが、実は「仲介手数料ゼロ」でも、不動産業者はしっかりと利益が出る仕組みになっているのです。
以下では賃貸の仲介手数料が無料や半額になっている物件のからくりについて解説させていただきます。
結論から言うと、次の3つのケースが考えられます。
- 仲介手数料以外の費用を借主に請求している
- 大家から広告料が支払われている
- 大家から仲介手数料が支払われている
以下、順番に説明させていただきます。
3-1. 仲介手数料以外の費用を借主に請求している
1つ目のケースは、仲介手数料以外の費用を借主に請求しているケースです。
不動産業者が仲介手数料として物件貸主や借主に対して費用請求を行う場合には、上で説明させていた代用に「貸主から半月分、借主から半月分」という上限額があります。
一方で、仲介手数料以外の費用については、実費に相当する金額に限って徴収することが宅建業法上認められています。
「仲介手数料以外の費用」というのは具体的には出張費などが該当します。
実際に顧客の求めに応じて費用が発生するサービスを提供した場合には、これらの費用を顧客に請求することは問題ありません。
ただし、実質上は仲介手数料に他ならないのに、宅建業法のルールを免れるために費用の名目を変更するような行為は認められません。
仲介の契約書に事務手数料や立ち合い料、企画提案料金といったような項目がある場合には要注意といえます。
3-2. 大家から広告料が支払われている
2つ目は、大家から広告料が支払われているケースです。
不動産の所有者は、少しでも早く物件の借り手を見つけるために、不動産業者に対して「借り手を見つけてくれたら1件につきこれだけの広告料を払う」という契約をしていることがあります。
これは実質的には仲介手数料と同じですが、金額が宅建業法で定められている金額を超えない場合には違法ではありません。
3-3. 大家から仲介手数料が支払われている
3つ目のケースは、大家から仲介手数料が支払われている場合です。
居住用の物件については「貸主から半月分、借主から半月分」が仲介手数料の上限額となりますが、居住用以外の物件については「貸主と借主でトータルして家賃1か月分」が仲介手数料の上限となります。
そのため、すでに貸主である大家側から家賃1か月分に該当する仲介手数料が支払われている場合には、これに加えて借主からも仲介手数料を取ると宅建業法違反になってしまいます。
これを避けるために、大家からすでに仲介手数料が払われているときには、借主に対しては仲介手数料はゼロ円、という書き方をするケースがあるのです。
4. まとめ
今回は、不動産取引に関する消費税の扱いについて解説させていただきました。
消費税は普段何気なく負担している税金ですが、賃貸契約などについては例外的な措置が認められている部分があるため疑問に感じる点も多いかもしれません。
不動産仲介業者とやりとりをするときには、こうした特殊なルールについてそのつど確認するようにしておきましょう。
消費税の扱いや不動産取引に関する税金の扱いについては、不動産取引の実務に精通している税理士に相談するようにしてください。