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Category  不動産

2019年09月05日 更新

更地にプレハブを建てても固定資産税の節税にはならない!固定資産税を6分の1にする方法とは?

土地を更地のままにしておくのではなく、建物を建てることで固定資産税を減らすことができるといった話を耳にしたことがある方は大勢いらっしゃるのではないでしょうか。ですが、どんな建物でもいいから建てればいいというわけではありません。

どのような条件のもとに建てられたものであればよいのか、また、それ以外の節税方法は存在するのかについても詳しく説明していきます。

1.更地にプレハブを建てても固定資産税の節税にはならない!

土地の固定資産税減免のために必要な条件、それは居住用の建物が存在しているということです。「単なる節税目的のためにとりあえずプレハブを建ててみた。倉庫などに使えば建物としてみなされるだろう」といった方向性のものでは住むための建物として認められないため、減免の措置は受けられません。

では、居住する目的を持ったプレハブにしてみた場合はどうなるでしょう。震災時の家屋倒壊で住む場所を失った人々が、自治体の用意したプレハブを仮設住宅として使用している光景はもはや日本では珍しくなくなりました。プレハブに家財道具などを置き、別荘のような感覚で「住宅」として使用すれば居住用として認められるのでしょうか。

答えは「NO」です。その理由は住宅を定義するための3要件にあります。国が定める不動産登記規則の第111条では建物の定義について次のように記されています。

◆不動産登記規則規則第111条(建物)

建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでならなければならない

この条文が示すところによると、建物というものは外気を遮断する壁に囲まれていて(外気分断性)、土地に定着した上で(定着性)、その用途がはっきりしていなければならない(用途生)ようです。それではこの3つの要件をプレハブに当てはめてみるとどうでしょう。

外気分断性・・・屋根と壁で囲まれている。

定着性・・・土地の上に置いているだけなので簡単に撤去できてしまう。

用途性・・・家具を置いておけば住宅としての用途になる?

プレハブが確実に要件を満たしているのは外気分断性だけのようです。そもそも定着性がない時点でプレハブは法律上建物としてすら認められないのですね。これでは土地の節税効果に貢献することはできません。

ちなみにプレハブの用途性について解説すると、今回のケースでは住宅としての用途を果たさなければならないのですが、住宅として認められるためには必要な設備をいくつか備えておかなければいけません。最低でもトイレ、台所、玄関を有していなけれならないため、水道を引いてきて蛇口から水が出るような環境がなければならないということです。

プレハブでそれだけの設備を整えるのはなかなか難しいですよね。それでなくとも定着性の問題があるので、プレハブを建てることで固定資産税を減らすことはできないのです。

2.更地が住宅用地として登記できれば固定資産税の節税ができる

所有している土地の上に「建物」が建てられていれば固定資産税を節税することができます。そして、その建物が「住宅」としての用途を持っている場合には、さらに大きな減税措置を受けられ、最大で6分の1まで削減することができるのです。

この住宅としての用途を持っているという部分は意外と大事な部分です。その建物の構造が住宅用のそれになっていれば固定資産税を減らすことができるのであって、必ずしもマイホームとしての使用が条件になっているわけではないのです。更地の固定資産税をなんとかしたいと考え、建物を建てることを検討している方にとって、賃貸に出すという選択肢が増えることは悪いことではないはずです。

固定資産税というものは、「課税標準額×税率」という計算式で算出することになっているのですが、住宅用地に関してはこの課税標準額を一定の割合に減らすことが認められています。課税標準額とはつまり税金がかかる対象となるものの値段、今回の場合で言えば土地の値段ということになりますが、この価値自体を下げてしまうということではなく、あくまでも税務上の便宜としての措置になりますのでご安心ください。

住宅用地に対する課税方法にも種類があり、それぞれ減額される固定資産税の割合が変わってきます。小規模住宅用地は、一戸あたりの面積が200平方メートルまでの住宅用地のことを指し、固定資産税の課税標準額を6分の1に減額することができます。また、200平方メートルを超え、住宅の面積の10倍までの部分については一般住宅用地としてみなされ、減税措置は課税標準額の3分の1となっています。上記の2つに該当しない、住宅の面積の10倍を超えた部分は特例に当てはまらず、減税の措置はされません。

200平方メートルといってもどれくらいの広さなのかイメージしにくいかもしれません。そこで住宅金融支援機構が毎年行っている「フラット35利用者調査」を見てみると、2017年度に建てられた一戸建ての面積の全国平均は128.2平方メートルとなっており、一般的な住宅であれば200平方メートルの範囲に十分収まるということがわかります。

しかし、せっかく更地に住宅用の建物を建てたとしても、そのままでは固定資産税は減税されません。節税のためには書類上の処理が必要になります。主に登記と言われる作業です。

建物が新築された後1ヶ月以内にその建物の所有者は「建物表題登記」を行う必要があります。この登記はその名の通り建物の表題部分に当たるもので、建物がどの場所に建てられ、どんな目的を持っているのかなど必要最低限の情報しか記されていません。その後、この登記に「所有権保存登記」という手続きで誰がその建物の所有者なのかの情報を追加していきます。この登記をすることで建物の所有者が明確になり、売買や相続、抵当権の設定など不動産としての権利を正式に得ることができるようになり、その情報をもとに固定資産税の減税措置が講じられるようになります。

建物表題登記は必須項目であり、1ヶ月以内に行われなかった場合に罰金を支払う必要が出てきますが、所有権保存登記は任意での登録となるため、建物表題登記が済んだからといって安心せず、忘れずに所有権保存登記まで行うようにしましょう。

3.更地の固定資産税を安くするための節税方法とは?

固定資産税の節税のためとはいえ、住宅を建てるには相応の資金が必要になります。先ほどの「フラット35利用者調査」では一戸建ての建設費の全国平均も公開されていますが、2017年度は3,353.5万円となっており、簡単に手を出せる金額ではないことがわかります。特に、建てた家に自身で住むことも考えておらず、賃貸に出すあてもない人にとっては余計な負債を抱えてしまうことになりかねません。

実は、建物を建てる以外にも、更地を更地のままにしておきながら固定資産税を安くする方法はあります。それは、地目を変更するというやり方です。

不動産登記法によって定められている、土地の用途による区分のことを地目といいます。土地をどのように使用しているかを法務局の登記官が判別できるように記しておくことで、国や自治体が土地の管理をしやすくしています。不動産登記法が定めている地目については全部で23種類あり、そのうち9種類の土地に対して固定資産税がかかる仕組みになっています。

この土地の地目がなんであるかによって、課される固定資産税も変わってきます。更地として所有している土地がもしも宅地として登記されていた場合、そこに居住用の建物が建っていなければ減税の措置を受けられず、固定資産税は標準通りの金額になります。

しかし、この土地を畑という地目に変更し、農地として使用してみるとどうでしょう。農地は一般的に宅地よりも固定資産税が低めに設定されています。農地というのは国民が生きるための食料を生産するとても重要な土地であり、国が守っていかなければならないためです。さらに、土地の評価というのは収益性で判断されるものなので、生きるための糧を作っていく農地は利益を生み出す能力が低いとされています。そのため、土地としての評価額が低くなる分、固定資産税も安くなるのです。

では所有している土地を農地にするためにはどうすればいいのでしょうか。実は、登記簿に登録されている地目を変更しただけでは農地として認められることはありません。農地であるための条件は「実際に農地として使われている(耕作をしている)」「持ち主が農地だと主張するだけでなく、誰から見ても農地に見える」「一時的にではなく継続的に農地として使用されている」の3点です。

固定資産税の計算をするにあたっては、登記簿に登録されている情報はあくまで参考であり、現況がどうなっているのかが最も重要視されます。例えば、土地の権利者が申請をして登記地目を宅地から畑に変更したとしましょう。その後、自治体の担当者が現地調査に訪れた際、全く畑作を行なっておらず更地のままであった場合は、宅地や雑種地として固定資産税の計算をします。これを課税地目といい、自治体は現地の状況に即した地目の変更を申請なしに行うことができるのです。

また、土地を農地にして固定資産税の減額を考えている方は、どのような場所に土地が位置しているのかということも押さえておく必要があります。その土地が市街化区域外にある場合は一般農地として扱われるため、固定資産税を大幅に減らすことができますが、市街化区域内にある場合は市街化区域農地という区分になります。この土地を農地に変え、実際に耕作を行なうことでそれが認められたとしても、その区域が市街化区域内であれば宅地並みの評価が下され、固定資産税も宅地と同程度になってしまう可能性があります。周辺を田や畑に囲まれているような土地であれば一般農地に該当することがほとんどですが、周りが住宅地であったり、市街地であったりした場合にはその地域が都市計画法におけるどの区域になるのかを自治体に確認した方がよいでしょう。

このように土地を農地にするという方法は手間がかかり、条件に合致する土地も限定されてしまいますが、その分減税効果は大きくなっています。農作業をするのは性に合わないといった方も、その農地を必要としている農業従事者がいれば貸し出すことも可能なので、一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

4.まとめ

土地の固定資産税を節税するやり方として二つの方法を紹介しました。自身にとってどのようなやり方が合っているのか、その地域ではどのような方法が可能なのかをよく考えて、所有する土地としっかり向き合っていくことが大事です。登記に関する手続きや地目の扱いなどは自治体によって異なるケースも多々あるので、役所や専門家に相談しながら対策を進めていくと効率的です。