事例紹介
不動産をお持ちの皆さんが、毎年必ず支払うのが固定資産税です。自分が住んでいる家や土地に関して税金を払うことに関しては、仕方のないことだと考える方が多いかと思います。ただ、自分が住んでもいないし、何の役にも立っていない更地に対して、税金がかかってくることについては、なかなか納得できないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、更地の固定資産税が高い理由、ならびに、解決法の有無について、そこに透けて見える国の考え方も交えて、解説してみたいと思います。
この記事でわかること
1.更地の固定資産税が高い理由
更地の固定資産税は「高い」というよりも、「安くならない」という表現がより妥当です。なぜそう言えるのか、固定資産税の計算方法を簡単に振り返ることで、説明していきたいと思います。
固定資産税の計算式はごく単純に、「課税標準×税率1.4%」です。単なるかけ算で、税率は1.4%に固定されているわけですから、課税標準が低ければ税額も低くなるというわけです。で、この耳慣れぬ言葉、課税標準ですが、これは、税額を計算するためだけに用いられる固定資産の価値、と理解していただければ良いかと思います。確かに、分かりやすさを重視するなら、税額は単純に「時価×1.4%」で良いのではないかとも考えられます。ですが、家や土地を売却する時こそ、その価格が高いほうが良いわけですが、税金もそれだけ高くなってくると、普段の生活に困窮してしまいます。ですから、固定資産税を計算する際は、別にその価値を再設定してあげましょう、というわけです。
この配慮から、課税標準=時価の約7割、と決められており、また、この式の右辺は、固定資産税評価額、もしくは単純に、評価額とも呼称されていることから、課税標準=評価額とも書き換えられます。まあ要は、時価の3割引にはなるように設定が成されているために、この点はありがたい限りです。
ただ、冒頭言及した国の考え方が本当に透けて見えるのは、ここからです。国が特別に優遇したい固定資産に対しては、課税標準=評価額×1/6、という優遇がなされている場合もあります。最初の7掛けにとどまらず、さらにそこからもう一度、評価を6分の1に圧縮してもらっているために、計算してみると課税標準は時価のおよそ11.6%となります。
税額計算の際に、実際の価値をここまで低く見積もってもらえる固定資産とは、住居の構築された土地、つまり、「家のある地面(厳密には200㎡以内の住宅用地)」です。国としては、各自治体の歳入を高めるべく固定資産税を徴収したいのはやまやまなのですが、取りすぎてしまうことは避けたいと考えています。そのため「数ある土地のなかでも、家の建っている土地からは税金をあまり取っていきません」という方針を明確に打ち出しているのです。言い換えれば、実はみなさんが毎年支払ってきた土地の固定資産税額は、正味のところ、既に相当優遇されていた、というわけです。
では、本題の更地についてはどうでしょう。国が優遇したくなる固定資産でしょうか。答えはノーです。人々が安心して生活できる住まいを提供しているわけでもなければ、経済を活性化させるビジネスやものづくりが行われているわけでもないからです。国が優遇したいと考えている固定資産ではないため、更地の課税標準は評価額そのままであり、そこに時価の3割引を超える、住宅地のような低減措置はありません。更地の固定資産税は「高い」というよりは「安くならない」と表現すべき、と冒頭で申し上げた意味も、これでお分かりいただけたかと思います。
「更地は社会や経済にさしたる貢献もしていないのだから、せめて固定資産税だけでも多めに払ってくださいね」という国の姿勢を踏まえ、次は対応策について考えてみることにしましょう。
2.「更地の固定資産税が高い…」と困った時の3つの解決策?
更地の固定資産税に関して、このような状況に対する対応策をご紹介していきたいと思います。
2-1.分割して立地条件の悪い土地を作り出す
市街地などでは特に、接する道路が幅広く使いやすいものかどうかで、土地の価格が変わってきます。いわゆる路線価ですが、この仕組みを逆手にとり、更地を分割することで、わざと道路に接しない利便性の低い土地を作り出してやるのです。単位面積あたりの価値は、道路に接したままの更地にこそ変化はありませんが、分割の結果道路に接しなくなった更地の方では下落することでしょう。ただし、これはあくまで理論上の話であり、現況確認をする市町村の担当者が、実質的には利便性の高い大きな更地だと判断してしまえば、この方策は使えません。結局は、土地分割登記に付随する税金を支払うだけということにもなりかねませんし、国とすれば本来発生しないはずの税金を納めてくれる点にメリットがあります。
2-2.更地に私道を設置する
私道は公共性が高いため、税金は低く設定されるか、あるいは、無税になったりします。そこで、更地に私道を設置したり、あるいは、更地そのものを私道として提供することで、固定資産税の軽減が図れることになります。ただし、どんな土地でも私道と認められるわけではなく、一定の幅を保有していたり、公道につながっていたり、といくつかの条件を満たさなくてはなりません。確かに節税にはなりますが、国としては、「更地という私有地が公共的に供されるのだから、まあ良しとしよう」という考えのもと、この節税方法を容認しているものと考えられます。
2-3.間違いがないか確認する
もう一つは、行政側が間違っていないか確認するというものが挙げられます。市町村には税金を賦課する際に用いる固定資産課税台帳があり、縦覧期間といって、一定期間みなさんに開放されていますから、その間に、他人の土地まで自分のもの扱いされていないか、とか、土地を実際に測量して記載の地積と合致しているか、などをチェックしてみると良いかもしれません。間違いや不服があれば、固定資産評価審査委員会に申し立てを行うと良いでしょう。
以上3点が、更地の固定資産税軽減方法になります。更地を優遇しない以上、抜け道も認めないという国の確固たる姿勢が見て取れるわけですが、仮に固定資産税を支払わない者が居た場合、国はどういった対応を取るのかを次に解説しておくことにしましょう。
3.更地の固定資産税が払えない場合の滞納処分に注意
更地に限らずですが、固定資産税を滞納すると、まず延滞利息がつきます。延滞一か月以内で年率2%超、延滞1か月超過時は年率8%超です。銀行の預金利率などと比べれば、その高さに驚いてしまいますが、懲罰的な意味合いも込められているため高く設定されています。支払い期限が過ぎると20日以内に市町村から督促状が送られてきますし、その後10日経っても支払いが確認できない場合は、滞納者の財産差し押さえが可能となります。実際には、いきなり差し押さえ、といった事態にはならずに、担当者から電話での催促が何度かあったり、災害や病気を理由に支払いが最長で2年間猶予されたりと、ある程度は柔軟に対応してくれます。
注目すべきはやはり、行政側が裁判所を通さず強制的に差し押さえをする権限を付与されていることです。固定資産税に関して、国はしっかりと徴収を行う方向で考えているのです。
4.固定資産税の高い更地をこのまま所有する?それとも有効活用できる?
社会にも経済にも貢献しない更地は優遇しない、との姿勢を国が固めている以上、税金を支払いたくない所有者の方は何らかの形で更地を手放すことが必要になります。その更地をなんらかの形で有効活用したり、あるいは、その方策を持つ誰かに売却する、といった選択肢についても、改めて考えてみたほうが良でしょう。
5.まとめ
最後に、更地の固定資産税に関して、おさらいをしておきましょう。
- 更地には住宅用地のような固定資産税軽減措置はない。
- 更地の固定資産税に関し有効な節税策はない。
- 更地に限らず固定資産税の滞納には延滞利息や差押といった罰則がある。
- 更地を有効活用するなり売却するのも一考に値する。
更地をお持ちの方も、また、今後相続などで取得する可能性のある方も、固定資産税に関するこういった事実を踏まえ、適切な選択をして頂ければ、と思います。