事例紹介
Category 不動産
2019年07月11日 更新
不動産の持分変更のメリットとデメリット
不動産の持分変更を行う時というのは、夫婦共同名義であるものを夫だけの名義に変更する等様々なシチュエーションがあります。
まれに子世代でブラックリストに載ってしまってローンを組むのができないので、その代わりに親御さんが代わりにローンを組むというケースもあります。
その時に問題になるのが「持分」です。
不動産の名義は複数人にすることも可能です。夫婦で共同名義にするなど複数人で購入したときに、だれがどれくらい出資したのかで所有の割合が決まります。
これを「持分」といいます。
親御さんの援助で家を建てる人も多く、特に不動産の所有権とローンの関連について無関心になりがちですが、ここを厳密にしておかないともしかしたら「贈与税」がかかるかもしれないのです。
贈与税は不動産購入というのを鑑みると、年間にしてわずか110万円以下の枠でしか非課税枠がありません。
そのため不動産の持ち分とローンの借主が違う事があると、それはローンの借主から不動産の所有者への贈与だとみなされて課税されてしまいます。
親御さんが代わりにローンを組むことはそう多くないケースかもしれませんが、夫婦の持分を夫だけにするなど割合を変更する話はよくあります。
不動産の持分変更の際の贈与税について取り上げていきます。
1.不動産の持分を変更した時の贈与税はいくらかかる?
不動産の持分変更は様々なケースがありますが、夫婦間であればそこまで難しくはありません。
それはローンを組んでいる人と所有している人が一致しているからです。
まず一番初めに挙げられる一番簡単な方法として、毎年非課税枠の110万円以下の名義変更をコツコツと行っていくというものがあります。
比較的多額ではないなど、支払いを急がない場合に使える方法ですが、金額によっては数十年がかりになります。
ただし申請が不必要ですので、手続き上は一番楽な制度です。
また長年連れ添っている夫婦であれば夫婦間贈与の制度を使うことも可能です。
その年月は20年とされており、昨今は30代以上で結婚されている方も多いので、50代・60代くらいになってやっとという状態ですね。
そのような場合は年間110万円の非課税枠とは別に2,000万円の非課税枠が使えるため、合計で2,110万円の非課税枠を使うことができます。贈与の非課税枠が増えているのは大変うれしいのですが、贈与される側、贈与する側ともに必要書類を提出する必要があります。
贈与される側は印鑑証明書、身分証明書、印鑑を持参します。
身分証明書は運転免許証や健康保険証などで問題ありません。
手続きをする際に贈与契約書、所有権移転登記原因証明情報、登記用委任状に押印する形になります。印鑑は認印で問題ありません。
贈与する側はもっといろいろな準備が必要で、その不動産の権利書、印鑑証明書、住民票、その不動産の評価証明書、運転免許証などの身分証明書、実印が必要になります。
権利証に関してですがこれは「登記識別情報」を持っていっても良いです。
贈与される側と違うところは印鑑証明書が必要な点です。こちらは3ヶ月以内に取得したものと限られているので、気を付けてください。
不動産を所有していない方だと聞き慣れないかもしれませんが、「評価証明書」は市役所などの固定資産税課で取得できます。
印鑑も間違えて認印をもっていかないように気を付けましょう。渡す側は必ず実印です。
こうして見てみると、贈与する側のほうが準備するものが分かります。
とはいえ、連れ添って20年経っているのであれば諸事情により別居している例もあるでしょう。
一番多い例としては単身赴任で別居をしている例です。その他にも不仲が原因での別居もあります。
この場合は公認会計士や税理士の方の見解にも違いが出てきます。
様々なQ&Aを見るところによると、持分に関しては同居であることを条件にされていますが、夫婦間の別居は特に問題視されない傾向が強いです。
単身赴任で別居の方には無関係なことですが、もし離婚を視野に別居をされているのであれば、むしろ財産分与という形で分けるほうが贈与ではないと認められます。
ただ、弁護士、司法書士の方によって見解が違うことがありますので、複数の弁護士や司法書士に相談しましょう。
2.不動産の持分変更(所有権移転登記)のメリット
不動産の持分変更のメリットとしては、複数人がそれぞれに資金を出し合うことで、負担を抑えて不動産を持つことができることです。
ローンを組む金額によっては審査に落ちる可能性もあります。ですが、二人(若しくはそれ以上)でローンを組むとそれぞれ金額が少なくなり、審査に通りやすくなることがあります。
むしろそうしないと住宅購入が難しい人にとっては大きなメリットですね。
そして、税制のメリットもあります。
二人かそれ以上の複数人で購入することによって、その分住宅ローン控除を多く受けることができます。
この住宅ローンは1世帯ではなくローンを組んだ人が受けることができる控除です。よく住宅ローンを組んだことによる減免は知られていますが、これはローン残高の1%が控除されるのです。
利便性の良いところの新築一軒家やマンションを購入すると、4,000万円くらいになるかと思われます。
もしそうであれば40万円の減税を受けることができるのです。
もちろん、こちらは「ローン残高」が基準ですので、たいていの場合は順調に返していくのでこの控除額は小さくなっていく傾向にあります。
基本的に所得税から控除されますが、もし住宅ローン控除のほうが所得税を上回るのであれば住民税も控除されます。
これを二人等の複数人で控除を受けることによって税金面でのメリットを得られるのです。
また、家はライフスタイルによって変化がありますので、家に求めることも違ってくることがあります。
住み替えをする方もいるでしょう。その時は持っていた不動産を売却する形になります。
もし3,000万円以上の値段で売ることができたら、「3,000万円特別控除」が使えます。
こちらは「居住用財産の買換えの特例」です。もし共同名義で6,000万円で住居用の家が売れたとしたら、夫の3,000万円の特例非課税枠、妻の3,000万円の特例非課税枠の計6,000万円の非課税枠が使えるのです。
ただ、住居用の住宅でここまでの利益が出る人は稀で、それを意識しての住宅購入に踏み切る人は稀です。
3.不動産の持分変更(所有権移転登記)のデメリット
不動産の持分変更は税制面などでメリットもありますが、デメリットもあります。
もしものことを視野に入れた上で持分変更を行いましょう。
最近は三組のうち一組が離婚する時代です。
もし不動産で共同の持分があると、せっかく購入した物件を売らなくてはいけなくなる可能性が大きいです。
離婚の時は財産分与があります。お金であれば分けることもできますし土地であれば何とかなりますが、既に建っている家を分けることは不可能です。現金化しなくてはいけないという理由で売却をしないといけなくなるケースが多いのです。
離婚を理由に築浅で手放されている物件は多くありますが、そうであるケースも多いと言われています。
ただ、売却を回避する手もあります。それは、相手の持分を現金で購入することです。
そのような財力がある人であればそうする事で売却することもなく住み続けることができます。
このような不動産は名義を持っている人が多くなれば多いほどに複雑です。
それが二つ目のデメリットに繋がっていくのですが、例え売却をするにも相手の承諾が必要ですのでその分煩雑になってしまうのです。
二人で持分を所有していたとして、自分が売りたくても相手が嫌がれば売却は不可能です。
基本的に配偶者の間では、一人の名義の時であっても話し合ってどうするかを決めます。
通常の夫婦であれば支障はないのですが、ひとたび離婚を視野に入れるような関係性になるとそれが大きなハードルになります。
親御さんの援助等、夫婦ではない方の援助でその方の持分も入っていると、その方が亡くなられた後の相続で厄介なことになることがあります。
相続する人が一人であれば何の問題もないのですが、ご兄弟がいるなど相続する権利がある人が複数人いることで、その人も持分としてその不動産の一部を相続できます。
初めは兄弟だけの問題であっても、その子供たちとだんだんと枝分かれをしていく事で、その分その不動産に関する承諾をとらなくてはいけない人の人数が増え、大変手間取ります。
最近は県外に出る方も多いですし、海外に行かれる方もいます。そうすると一人一人に書類をもらったり連絡したりすることが大変難航することもあります。
また意見が分かれて書類を準備してもらえなければその土地はどうすることもできません。
たいていのケースでは家は分割不可能ですので、その家を売ってお金を分けるケースが多いです。
また税金面でもデメリットがあります。
メリットでは税金の控除が受けられる等の良い部分もあったのですが、登記する際の負担額は人数によって倍増します。
また、住宅ローンを組む時は諸経費や手数料がかかります。
それも人数分払わなければなりません。
ローンの組み方や組むところもいろいろとありますので一概には言えませんが、手数料が融資額の2.16%としているところもあり、ローンの額によっては数十万円単位になることもあります。
若い夫婦であればよくあることかもしれませんが、共同にしていたけれど奥様が妊娠を期に体調不良になって会社を辞めたとか、出産を機に会社を辞めるケースは多いです。
そのようなライフプランの変化に弱いのもデメリットの一つです。
どのようなデメリットかというと、もし奥様が仕事を辞めて無収入になると、ご主人がそのローンを代わりに支払うようになります。
そうするとそれが贈与に当たる可能性が出てくるのです。
贈与は年間の限度額が110万円おそらくローンを組む方であればそのような金額はゆうに超える可能性が高いでしょう。
こうした急なライプフラン変更によって損が出る可能性があるのです。
4.まとめ
いかがでしたか?
不動産の持分変更をする場合は贈与税にも注意し、余計な税金を払わないように手続きを盤石なものにしておきましょう。様々な事情で不動産の持分を変更する方も多いと思われますが、贈与税がかかる可能性についても視野に入れておきましょう。