不動産を売却する際に知っておきたい所得税と住民税のしくみ

不動産を売却するときには幾らで売ることができるか気になるものですが、それと同じくらいにどれくらいの税金を払わなければいけないかを考慮しておくのも重要です。不動産を売却したときに関わってくる税金はおもに住民税と所得税です。

今回は不動産を売却した時の所得税と住民税や、不動産売却による譲渡所得や税金の申告方法などを詳しく紹介します。さらに不動産売却に関する控除についても具体的に解説します。

1.不動産を売却した時の所得税と住民税

所得税とは個人として得ることのできた所得に対して一定の金額を支払う税金のことです。個人の所得とは収入から必要となる経費を差し引いて残った利益のことを指しています。そのため利益の出なかった所得については税金が課せられることはありません。

不動産の売却についても同じことが言えます。不動産を売却すると収入を得ることができますが、その収入についても必要となる経費を差し引いて残った場合にのみ税金が課されます。

住民税と都道府県民税と市町村民税を合わせたものです。住民税は個人の収入に比例して納税額の大きくなる税金ですが、住民税は所得税の確定申告や給与の支払い報告書に基づいて税額が決定します。そのため確定申告で表記するのは所得税のみで、住民税については個人で計算や申告する必要はありません。所得税の申告をすれば同時に住民税についても申告したことになります。

所得税と住民税の違いは大きく分けて2つあります。

1つ目に住民税は前年所得課税という点です。住民税は前年の所得に対して計算され税金額が決定します。そのため所得税とは1年の差があります。

もう1つは住所地と納付先です。住民税については1月1日の時点で住民票が置かれている市町村に納付することになります。そのため1月1日以降に別の市町村へ移動したとしても支払先は前の市町村となります。たとえば1月1日の時点で北海道に住んでいてその後沖縄に移動したとしても、住民税については北海道の市町村に納税することになります。

不動産の売却に関しては住居の移動などが関係する場合もありますので、住民税の支払い計算は個人ではしませんが2つの違いを頭に入れておきましょう。

1-1.不動産売却による譲渡所得とは

不動産の売却についての所得税の計算をするときに大事なのが所得です。所得は大きく分けて10種類あります。

  • 利子所得とは預貯金などによる利子などから生じる所得のことをいいます。
  • 配当所得とは株式による配当や投資信託に関する収益の分配から得られる所得のことをいいます。
  • 不動産所得とは家賃収入など、不動産から得られる所得のことをいいます。
  • 事業所得とは税法に定められた事業を行い、その事業の結果得られた所得のことをいいます。
  • 給与所得とは給料やボーナスなどについての所得のことをいいます。
  • 退職所得とは会社を退職することによって得られる所得のことをいいます。
  • 山林所得とは5年以上所有していた山林を伐採するなどして売ったりした所得のことをいいます。
  • 譲渡所得とは個人の資産などを売却したときに得られる所得のことをいいます。
  • 一時所得とはクイズなど賞金や保険が満期になったことによって得られる所得のことをいいます。
  • 雑所得とは上記、他の9種類に属さない所得のことで、年金などによる収入も雑所得に含まれます。

不動産の売却によって得られる所得は譲渡所得にあたります。不動産を売却して得られる資金について、一時的に収入を得たために一時所得としてしまう人もいます。また不動産関係なので不動産所得としてしまう人もおられます。不動産所得の場合は不動産の賃貸などから得られる収入のことで売却は関係ありません。それで不動産の売却の場合は一時所得や不動産所得ではなく譲渡所得になります。

譲渡所得とは不動産などの個人で所有する資産を譲渡した際に得られる収入のことです。譲渡とは資産や権利などを別の人に譲ることを言います。この場合には有償か無償かは関係ありません。譲渡したことによって利益が出た場合には、基本的には申告が必要となり税金の支払いが発生します。ただし申告が必要になるかどうかはその資産を売却したことによる利益が関係していきます。

たとえば10万円する商品を20万円で譲渡した場合には利益がでますが、10万円で譲渡した場合には利益がでません。不動産についても同じことが言えます。不動産は個人の所有物ですので譲渡した際に必ず利益が出ているわけではありません。

不動産売却による譲渡所得は譲渡価格から取得費や売却費用を引いた金額のことを指しています。譲渡価格とは不動産を売却するときに決まった売買契約に基づく売却額のことを指しています。

もし1,000万円で売却した場合には1,000万円が譲渡価格です。

次に、取得費は売却する不動産を取得した時に支払った経費のことです。

おもな取得費として不動産を購入したときに納めた登録免許税や印紙税や不動産取得税などの税金、土地の整地するため支払った費用、土地の測量した場合に支払われた費用、土地利用が目的だった場合の物件の立て壊しや更地にした時の支払われた費用などが含まれます。

しかし不動産の購入額自体について含まれません。取得費として計算する場合には売却する不動産についての購入したときの代金に基づいて、所有していた期間を減価償却費として差し引いた金額を取得費として申告できます。そのため不動産を購入した金が売却した金額よりも大きいため所得税や住民税はかからないというわけではありませんので注意が必要です。

さらに不動産によっては先祖代々から伝わった土地や建物を売却する場合もあります。その場合には土地や建物を取得した際の購入金額も不明ですし、不動産の取得に際してどのくらいの費用を支払ったのかも不明の場合がほとんどです。そのように取得費が不明な場合には、譲渡価格の5%について取得費として申告できます。

売却費用とは不動産を売却する際に支払った壁紙の交換やフローリングの張替えや清掃などのリフォーム代や売却する際に支払った土地の測量などの費用を指しています。また売却の際に支払った仲介手数料についても売却費用に含まれます。

1-2.譲渡所得と所得税・住民税の関係

所得税には総合課税と分離課税の2種類があります。総合課税とは年間の所得について給与所得やボーナスによる所得や事業所得などすべての所得を合わせて所得を計算する方法です。この場合はどこかの項目において損失が発生した場合は、合計として申告するために申告額が少なくなります。

分離課税とは他の分野で所得があっても、それぞれ別の所得として計算する方法です。この場合はどこかの項目において損失が発生しても、所得をすべて合算して申告することはできません。譲渡所得にはいくつかの分類がありますが、その内、土地や建物に関しては分離課税となります。

そのため、事業所得などで損失が生じても不動産の売却による譲渡所得税は支払うことになりますし、逆に譲渡所得で損失が生じても事業所得の利益から損失を差し引くことはできません。

不動産の売却による所得税や住民税を支払う上でカギとなるのは売却する不動産の購入額です。購入額が大きいと譲渡所得が少なくなるからです。そのため不動産を売却後に確定申告をするときには、建物の減価償却の計算をしなければなりません。

減価償却とは一言で言えば不動産を購入したときの金額を減少させるための計算です。建物などの資産の場合、購入後には時間とともに価値が落ちると考えられています。土地などの場合には恒久的に変化することのないため価値自体は落ちることのため減価償却の必要はありませんが、建物については時間とともに古くなったり劣化したり、時代に合わなくなっていくことがあります。そのために建物の購入金額から失われた価値分を引くという計算をすることになります。

人気のある地域では購入価格より売却価格が上回ることもありますが、減価償却はあくまで人気ではなく時間の経過で計算します。

不動産の建物から引かれる減価償却費は建物の取得費×0.9×償却率×経過年数です。なお、経過年数に関して、月数が6ヶ月以上であればは切り上げられ、6ヶ月未満について切り捨てで計算されます。

償却率については建物の構造によって数値が変わっていきます。鉄筋コンクリートの建物の場合の償却率は0.015です。肉厚が4mmを超える金属造の場合の償却率は0.02になります。肉厚が3mmから4mmの金属造の場合の償却率は0.025になります。さらに肉厚が3mmを下回る金属造の場合の償却率は0.036です。木造の建物の場合の償却率は0.031で、木造とモルタルの建物の場合は0.034となります。

たとえば2,000万の肉厚が3mmから4mmの金属造の新築住宅を15年後に売る場合には、2,000万円×0.9×0.025×15年となり675万円が減価償却費となります。この場合ですと取得費は1,325万円が建物に関する取得費ということになります。

1-3.申告方法と納付時期

不動産を売却したことにより得た利益に関しては、不動産を売却した年の翌年、税務署に足を運んで確定申告し、利益額に応じた税金を納める必要があります。申告時期は毎年2月16日~3月15日です。

申告に関しては住民票が置かれている住所の管轄している税務署にて支払いが必要になります。申告する際にはあらかじめ申告用紙に記入して税務署へ提出します。税務署への申告が困難な場合には郵送でも申告することが可能ですが、その際には3月15日より余裕を持って送付するのが安全です。また国税庁のホームページでも申告は可能ですが、申告の前にあらかじめ電子証明書を最初に取得して、その後電子申告等開始届出書を税務署に提出します。そして利用者識別番号を取得したら申告が可能になります。

税務署へ直接申告する場合でも申告期間内ギリギリになりますと多くの人が申告に詰め掛けるため窓口で長時間待つ場合もありますので注意が必要です。申告書に関しては税務署で受け取ることもできますが、電話や国税庁のホームページでも受け取ることは可能です。

3月15日の確定申告の期限までに間に合えば、4月20日頃に指定した口座から所得税が引き落とされます。もし金額が大きく、納付期限日までの納税が困難な場合には、納付期限を延ばすこともできます。その際には納付期限までに税額の半分以上を支払い、残りの金額を5月31日までに納めることになります。期限の延長を希望される場合には申告の際に延納の届出を提出する必要があります。

譲渡所得による所得税を申告する際には申告書のほかにも幾つかの書類が必要です。

まず譲渡所得の内訳書が必要になります。これには売却した金額や支払った費用などが明確に記載された書類です。基本的には不動産を売却した後に税務署から受け取ることができるので、それを申告時にも使用します。

さらに譲渡したときの書類も必要になります。これには売買契約を交わした書類のコピーや、仲介手数料が記載された領収書のコピーや、固定資産税の清算書のコピーなどが含まれます。さらに売却した不動産を購入したときに使用した書類も必要となります。それには売買契約を交わした書類のコピーや、仲介手数料が記載された領収書のコピーや、固定資産税の清算書のコピーなどが含まれます。さらに増改築などをした場合の種類のコピーも含まれます。さらに売却した不動産の全部事項証明書も必要になります。この証明書は法務局にて受け取ることができます。

住民税については毎年6月に納付が始まります。

納付に関しては納付書に指定された金融機関やコンビニエンスストアや、役場の窓口などで納付することができます。納付に関しては基本的には現金のみですが、市町村によってはクレジットカードで支払うこともできます。

2.不動産売却による所得税と住民税の計算方法

不動産を売却するときにかかる所得税と住民税は譲渡所得を基に計算されます。譲渡所得から所得税を計算する際には、長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つに分類されます。長期譲渡所得とは不動産を売った年の1月1日時点で、売却不動産を所有していた期間が5年を超えていたものです。

長期譲渡所得の場合の所得税は譲渡所得の15.315%で住民税は5%になります。合計すると長期譲渡所得の場合は譲渡所得の20.315%を支払うことになります。

短期譲渡所得とは不動産を売った年の1月1日の時点で不動産を所有していた期間が5年以下だったものです。短期譲渡所得の場合の所得税は譲渡所得の30.63%で住民税は9%になります。合計すると長期譲渡所得の場合は譲渡所得の39.63%を支払うことになります。

つまり5年以上の長期で利用した後に売却した場合にはおよそ20%の減税をすることができます。

3.不動産売却に関する控除

個人で不動産を売却する場合にはさまざまな控除を受けることができます。その1つは居住用財産での3,000万円の特別控除です。マイホームなどを売却するときにもし多額の所得税が発生してしまうと、不動産を売却すること自体を躊躇してしまいます。そのため現在の法律ではマイホームなどの居住用財産を売却する際には3,000万円を譲渡所得から控除することができます。

この控除を利用するには条件があります。

それは売却する予定の所有者が自ら住居として利用していた不動産であること、売却する相手が家族や親族などではないこと、さらに不動産を売却した年と同じ年に住宅ローン控除を重複して利用していないこと、また、売却した年の前の年や2年前に3,000万円の特別控除をはじめ、いくつかの不動産に関する特例の適用を受けていないなどが条件となります。

居住用財産での3,000万円の特別控除に似たような控除として買い換え特例があります。これは譲渡所得の金額が3,000万円を超えた場合に限りますが、不動産を売却して得た利益を基に購入した新たな住宅用の不動産の金額分について、その次に居住した住宅を売るまで課税が繰り延べできるという特例です。

この特例に関しても利用する際には条件があります。所有期間が10年を超えていることや購入した建物の敷地の面積が500㎡以下であることや、購入した建物の床面積が50㎡以上であることが必要条件となります。

さらにもう1つの特例として平成21年及び22年に取得した土地を売却した場合には1,000万円の控除を受けられる特例があります。これは、リーマンショックのあった翌年に施行された特例で、土地の流通を促進させて経済を回復させることが目的でした。

こうした控除を利用するには確定申告が必要となりますので、申告を忘れないようにしましょう。

4.まとめ

購入した不動産を売却するときにはできるだけ高い値段で売却したいものですが、それと同じように売却の際にどれほどの税金がかかるかを理解しておくのは大切です。

特に売却による利益を上げたい方や売却しても納税はなるべく少なく抑えたい方は、おおよその所得税と住民税の納税額を理解したうえで売却額を検討することができます。

また売却予定の築年数や、建物の材質、さらには居住年数によっても税率や納税額は大きく変わってきますので、事前に売却したい建物のおおよその譲渡所得を知っておくと安心して売却できます。

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