事例紹介
Category 不動産
2019年01月18日
不動産贈与にかかる贈与税は?税率の求め方とは?
贈与税とは個人から経済的価値のあるものをもらった時に発生する税金のことを指します。日本では基本的にそのものをもらった人に税金が課せられる仕組みになっています。そのため財産などの何かしらの経済価値のあるものをもらうという約束がされているのであれば、贈与税に関して、もらう側が詳しく知っておく必要があります。
ですが贈与税にはかかる場合とかからない場合とがあり、自分の場合はどうなるのかは考えておかなければなりません。そこで今回は経済価値のあるものの中でも不動産も関係している贈与にかかる際の贈与税の税率に関してご紹介していきます!
この記事でわかること
1.不動産の贈与にかかる贈与税の税率一覧
不動産の贈与にかかる贈与税の税率に関して見て行く前に、まずは贈与税とはどのようなもののことを指すのかを学んでいきましょう。
◆贈与税とは?
贈与税とは、財産をあげる人である贈与者が財産をもらう人である受贈者に贈与(プレゼント)し、受け取ったものに対して課せられる国税のことを指します。いわゆる贈与税というのは個人から財産をもらった時にかかる税金のことです。財産といってもお金だけではなく、不動産も含まれています。
個人で財産をもらうとなると、亡くなった人からがベターだと思ってしまうかもしれませんが、その場合だと相続税が発生してしまいます。相続税を免れるためにも、誰かに受け継ぐべき財産がある際には、生存の贈与をするという方法が多くあります。生前の贈与に関して相続税を免れることを回避するために、贈与税という国税が発生してくるわけです。そのため贈与税とは、基礎控除の金額が相続税よりは安いものの、税率に関しては高く設定されている傾向にあります。
そして、贈与税は無料で不動産をもらった場合はもちろんですが、いくらかの購入資金を援助してもらって不動産を購入する場合にも納めなければならない税金です。贈与税の支払いには期限もありますので、何かを贈与してもらった際には、贈与された金額に応じて贈与税を支払わなければならないと考えておく必要があります。
◆贈与税の発生する範囲
贈与税が発生する定義としては、1月1日から12月31日の間に全ての人からもらった財産の合計が、基礎控除110万円を超えた分に発生します。その1年間のうちに例えば父親と母親との両親それぞれに財産をもらった場合は、それら2つの金額を合計した分が贈与税に関係する財産となります。1年間の合計で110万円を下回った場合は贈与税は関係ありませんが、超えてしまうと支払う必要があるというわけです。
中には例外のケースもあります。それは借金を免除してもらった場合の債務免除や、本来の価値よりも低い値段で土地などを譲ってもらった場合です。このことから、財産をもらった側が得をした分に贈与税というものが発生してきます。
では本題であるそんな贈与税の成立に関してこれから詳しく見ていきましょう。贈与税には2種類あり、一般税率と特例税率とに分けられます。父母や祖父母から財産を取得した20歳以上のものに対して課せられる特例税率のことを「特例贈与財産」といいます。そしてそれ以外の基本的な特例税率の適用がない贈与税のことを「一般贈与財産」といいます。贈与税を計算する場合には、これらを区別して行ってきましょう。
1-1.一般税率(一般贈与財産用)
一般税率とは昔からあった税率でもあります。そんな一般税率が関係してくる人としては、特例贈与財産の要件に当てはまらない人のことを指します。以下の条件が一般税率に当てはまる人です。
- 20歳未満の人が財産をもらった場合
- 配偶者の両親(義父、義母)から財産をもらった場合
- 配偶者、兄弟、子供、孫から財産をもらった場合
このように両親から財産をもらうというわけではなく、兄弟間での贈与や夫婦間の贈与、さらに親から未成年の子への贈与などがこのパターンに含まれるでしょう。基本的に特例税率が適用されるのは父母や祖父母が当てはまりますが、義父や義母から財産を贈与された場合は一般税率に当てはまります。これは血縁関係がないとみなされるため一般税率に含まれるわけです。仮に両親と義父母といったどちらもから財産をもらった場合は、その人との関係性によって一般税率なのか特殊税率なのかに分かれます。
一般贈与財産には、基礎控除後の課税価格が300万円以下の場合を除いて、特例税率よりも高い一般税率が適用されるわけです。
では次に一般税率に関しての早見表を見ていきます。
◆一般税率
基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 一般贈与財産の控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
200万円以上300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円以上400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円以上600万円 以下 | 30% | 65万円 |
600万円以上1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円以上1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円以上3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
各金額ごとの一般税率は以上の表のようになります。基本的には特例税率と比べてみると高い傾向にあります。
1-2.特例税率(特例贈与財産用)
特例税率は一般税率に比べてみると財産贈与に関してオーソドックスです。そんな贈与財産を受けるには、2つの条件があります。
- 贈与を受ける側が、贈与税を清算する年の1月1日の時点で20歳以上の成人であること
- 贈与をする側は贈与を受ける側の直系尊属である
※直系尊属とは、父親や母親、祖父母が当てはまります。自分にとって血縁関係があり、家系図でいうと縦の関係にある人のことを指します。
また直系尊属とは、養親も含まれます。20歳以上の養子が養親やその親から財産をもらった場合も特例税率の利用が可能です。ですが養子縁組前に財産をもらっている時には、その時点ではまだ養子関係にないため特例税率には含まれませんので注意しましょう。
以上の2点の条件に当てはまる方が特例贈与財産を受け取ることが可能です。一般贈与財産で適用される一般税率に比べると特例税率の方が安い傾向にありますので、お得です。
そんな特例税率は、まず基本控除である110万円を財産から差し引いた金額によって異なってきます。200万円以下の少ない金額であればほとんど一般税率の場合と変わりませんが、それ以上の金額になってくると税率に差が生まれてきます。そんな特例税率に関しても表にして見ていきましょう。
◆特例税率
基礎控除後の課税価格 | 特例税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
200万円以上400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以上600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円以上1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円以上1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円以上3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円以上4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円以上 | 55% | 640万円 |
特例税率は金額によってこのように表されます。一般税率と特例税率との結果を同じく表にして比べてみましょう!
◆一般税率と特例税率との比較
基礎控除後の課税価格 | 特例税率 | 一般税率 |
200万円以下 | 10% | 10% |
200万円以上300万円以下 | 15% | 15% |
300万円以上400万円以下 | 15% | 20% |
400万円以上600万円以下 | 20% | 30% |
600万円以上1,000万円以下 | 30% | 40% |
1,000万円以上1,500万円以下 | 40% | 45% |
1,500万円以上3,000万円以下 | 45% | 50% |
3,000万円以上4,500万円以下 | 50% | 55% |
4,500万円以上 | 55% | 55% |
こうして一般税率と特例税率とを比較してみると、300万円までは税率は変わりません。ところが特例税率の方がお得になってくる境目としては、300万円以上4,500万円以下の部分でしょう。税率の区分は10%〜55%となっていますが、特例税率の方が税率の上がり方が少し緩やかにはなっています。
2.簡単に贈与税を計算する方法
では税率に関してわかったところで、贈与税はどのようにして計算するのかこれから学んでいきましょう。
2015年の改正以降、贈与税は財産をもらう人とあげる人との関係性によって、税率が異なっています。そして直系尊属から20歳以上の成人への贈与に関しては、特例税率となるため少しお得になるということがこれまででもわかっています。そんな贈与税を計算するにあたっては、まず贈与税を清算する年の1月1日から12月31日までの1年間で贈与された財産の価額を加算して計算しましょう。一般税率と特例税率とで異なってきますが、財産をもらった人との関係性によって2つに分けてそれぞれの財産分を足して1年分を出します。
そして計算によって出された1年分の贈与額から110万円を引きます。そうして求められた残りの金額に、それぞれの金額に合わせた税率を乗じて税額を求めるという流れです。
2-1.贈与額の求め方
①贈与税を清算したい年の1月1日から12月31日までの1年間でもらった全ての財産を足す。
※財産をもらった人との関係性によって2つ(一般税率と特例税率)に分けて計算する
②1年分の贈与額−110万円で贈与税と関係する残りの金額を出す
③残りの金額×それぞれの税率(金額によって異なり、また一般税率あるいは特例税率によっても変動あり)
では一般贈与財産用と特例贈与財産用とで分けて具体的に計算してみましょう。
◆一般贈与財産用
20歳以上の成人で、父親や母親、祖父母以外である兄弟間で贈与財産をもらった場合で考えます。この場合の贈与税は1年間で合計して500万円もらったとします。この場合は一般贈与財産の条件に当てはまるため、一般税率が加算されます。
まずは贈与額の500万円から110万円を差し引きします。
500万円−110万円=390万円
390万円は贈与税の表を見る際に使う数値で、先ほどに出てきた表からもわかるように、20%の一般税率が発生します。
そしてその額から控除額を差し引きします。
390万円×20%−25万円=53万円
そのため兄弟などからもらったり20歳未満の人が贈与される場合の贈与額が500万円の場合には、53万円の贈与税が発生するということがわかりました。最後に控除額を差し引きすることを忘れないようにしましょう。
◆特例贈与財産用
例として、血縁関係のある父母又は祖父母から1,200万円を20歳以上の成人の方がもらったとします。この場合は特例贈与財産になりますので、特例税率を表から探し計算していきましょう。
1,200万円の場合、表から特例税率は40%ということがわかります。
まず基礎排除後の課税額を求めるために、
1,200万円−110万円=1,090万円が贈与税の対象金額です。
そして贈与税を計算するためには、
1,090万円×40%−190万円=246万円
246万円が特例贈与財産の場合の、贈与税となります。1,200万円ともなると一般税率とは税率が異なりますので、間違えないように気をつけましょう。
このようにして一般税率と特例税率とをそれぞれに使い分けて、贈与税額を求めていきます。
3.不動産贈与にかかる贈与税額シミュレーション
前章で一般税率と特例税率とをそれぞれに分けて贈与税の計算方法について例を挙げていきました。ところが実際に贈与税を計算するとなると財産をもらう相手が異なり、一般税率と特例税率とを交えて計算しなくてはならないという事態になってしまうこともあるでしょう。そのように混同して計算しなくてはならない事態に備えて、不動産贈与に必要な贈与税に関して応用編としてシミュレーションをさらに進めていきます!
今回シミュレーションする設定としては、20歳以上の成人の方で配偶者と自分の両親との両方からもらった場合を想定します。この場合の贈与税額の計算手順は以下のようになります。
①もらった全ての財産を一般税率を用いて計算した税額に占めている一般贈与財産の割合に応じた税額を計算する。
②もらった全ての財産を特例税率を用いて計算した税額に占めている特例贈与財産の割合に応じた税額を計算する。
③①と②とで求めたそれぞれの税額を合計する
こうして求められるのが、今回のシミュレーションで納付すべき贈与税額です。具体的な金額も定めて、これから贈与税額を求めていきましょう。
◆設定
20歳以上の成人が、配偶者の両親と自分の両親との2方から財産をもらった。
配偶者の両親からは、200万円…一般贈与財産
自分の両親からは400万円…特例贈与財産
以上の金額を用いて計算を進めていきます。
まずは配偶者と自分との両親2人からもらった金額のうち、贈与税に関係する金額がいくらなのかを求めていきます。
200万円+400万円=600万円…20歳以上の方がもらった財産の総額
600万円−110万円=490万円…贈与税額の対象となる金額
全ての贈与財産を一般贈与財産と考えて、一般税率を用いて計算を進めていきます。
490万円×20%−25万円=73万円
このうちの一般贈与財産に当たる金額は全体でどのぐらいの割合になるのかを求めます。この場合の600万円のうちの200万円が一般贈与財産ですので、3分の1です。
73万円×1/3=約24万円
全ての贈与財産を特例贈与財産と考えて、特例税率を用いて計算を進めていきます。
490万円×20%−30万円=68万円
特例贈与財産は、全体のうちのどのぐらいの割合になるのかを求めます。600万円のうちの400万円分ですので、3分の2にあたります。
68万円×2/3=約45万円
最後に贈与税額を求めるために一般贈与財産と特例贈与財産との求めた金額を合計します。
68万円+45万円=113万円
113万円が贈与額として求められました。途中で割り切れない数字となってしまうこともありますが、おおよその贈与額はこうして計算で求めることが可能です。
4.不動産に関する贈与税の注意点
では最後に不動産に関する贈与税を支払う前に気をつけておきたい注意点について抑えておきましょう
4-1.夫婦間の贈与税の控除
配偶者に自宅を贈与した場合、一定の範囲内であれば贈与税が非課税とされるケースがあります。
そんな配偶者控除の対象として、配偶者間で自宅を所得するために必要な財産を贈与した場合には、200万円までの贈与税が非課税になります。基本的に夫婦の財産であれば共有のものであるという考えがありますが、法律の面ではそのような考えは適用されません。夫婦間での贈与であろうと贈与税が多少発生してしまうわけです。
そこで配偶者控除の具体的な対象としては、夫婦間で所得している居住用の不動産です。そして居住用の不動産を購入するための金銭を贈与した場合も含まれます。土地や建物どちらもこの配偶者控除の対象ではありますが、土地のみを贈与する際には夫や妻または同居している親族がその土地を所有していることが条件です。
そして配偶者控除が受けられる人の条件としては、結婚20年目以上の夫婦に限られています。この場合の結婚の定義というのは、婚姻届を提出した法的な婚姻関係のことを指しています。そのため事実婚や内縁などは適用されませんので注意しなければいけません。
こうして配偶者間で譲り受けた物件には、贈与された年の翌年3月15日以降に引き継ぎ居住が必要となります。そして配偶者控除を受けて納税額が0の場合でも贈与税の申告が必要ですので、そちらも注意しておきましょう。
4-2.贈与税率の改正
平成27年に贈与税率は改正されています。改正されている箇所はたくさんありますが、まずは最も基本的な部分でもある贈与税の求め方についてです。特例税率や一般税率のパーセンテージが微妙に異なっています。
さらに贈与をする人の条件や、される人の定義なども異なっています。これまで贈与する人は、贈与した年の1月1日時点で65歳以上が条件だったところが改正後に引き下げられて、60歳以上になりました。また贈与される人も贈与を受けた時に贈与者の法定相続人のみが受けられるとなっていましたが、改正後はその孫まで贈与の範囲が及ぶようになりました。こうして改正によって、贈与を与える、受ける人の範囲が広がるようになりました。
そして改正によって新たな制度も付け加えられました。これは平成27年4月1日から平成31年の3月31日までの期間に、20歳以上50歳未満の方が結婚や子育て資金のために、父母や祖父母から贈与された際には1,000万円までは贈与税が免除されるというものです。子育て支援という意味で政府がこのように免除の制度を加えました。
また住宅所得などの資金に関しても、贈与税が非課税になるという制度が付け加えられました。本来であれば平成26年の12月31日でこの制度が終わってしまう予定でしたが、新たに期間が延長されて平成31年の6月30日までになりました。また非課税枠も広がり3,000万円までとなります。
このように贈与税に関する法律は定期的に更新されていますので、最新の情報を法務省のホームページなどから得るようにしましょう。
5.まとめ
今回は不動産譲渡の際に必要な贈与税に関してご紹介していきました。今回の内容を最後にまとめておきます。
不動産物件や財産などを贈与される際には、金額に応じて贈与税が発生するということがわかりました。1月1日から12月31日の間に全ての人からもらった財産の合計が、基礎控除110万円を超えた分に発生します。
そして贈与された人との関係性によっては、一般税率と特例税率とがそれぞれ発生してきますので計算の際は今回ご紹介した表も参考に計算を進めていきましょう。
またその年によっては贈与税に関する条例も変わっていきますので、そちらも注意しておく必要があります。