事例紹介
Category 不動産
2019年01月18日
不動産譲渡で消費税は課税されるの?消費税の計算方法とは?
不動産を譲渡する際には、消費税が課されます。ですがこの不動産譲渡の際の消費税では、何であれば課税されるのでしょうか?また一般的なお買い物などに発生する消費税と比べてみてもどのような違いがあるのでしょうか?今回は不動産譲渡の際に必要となる消費税に関してご紹介していきます!
この記事でわかること
1.不動産を譲渡した時に消費税は課税される?
不動産を譲渡した際には何かと税金など費用が発生してきますが、実は消費税も課されます。一般的に消費税といえば、お買い物をした際に発生するものというイメージが強いでしょう。私たちにとっても最も身近な税金でもあるため、消費税率の引き上げなどで常に政治的にも人々の関心がよく集まる税金でもあります。
まずはそんな消費税の定義として、「消費税」とは消費一般に広く公平に課される税金のことです。消費税は基本的に国内での商品の販売やサービスにおいて発生します。その国ごとに消費税率も異なり、海外に行くとなるとその国の法律に従う必要があるため国ごとに消費税に関する条例は異なっていくものです。中でも2018年現在の日本国内の消費税率は一律8%と定められています。
1-1.消費税の一般的な課税範囲
不動産に消費税が発生すると結論を述べましたが、一般的に定義されていると消費税の課税範囲をまずは見ていきましょう。
・事業者が事業として取引を行う場合
会社などの法人が事業を行う目的を持って行っている活動がこの場合の事業として当てはまります。事業者が対価を得て行われる資産の譲渡などを繰り返して、継続あるいは独立して行うことです。例としてリサイクルショップなどで中古のものを買い取り販売している場合はこのパターンに含まれます。ですが個人でいらなくなったものを自らリサイクルショップに出向いて売るという行為は事業としての売買には当てはまりません。
・対価を得て行う取引
売主が商品をサービスや販売を通して提供し、それに対して買主が代金を支払う取引のことを指します。私たちにとっても最も身近なお店でのお買い物の際に発生する消費税は、このパターンに当てはまります。
この場合の寄付金や補助金などはこのパターンに含まれないなめ、消費税課税の対象にはなりません。例として宝くじの賞金もこの場合には含まれません。
・資産の譲渡
消費税の制度に関する資産の譲渡というのは、事業として有償で行われている商品などの販売や、資産の貸付やサービスのことを指します。消費税法では資産の譲渡などという曖昧な表記がなされています。
このような消費税課税が関係する条件に関して見ていきましたが、不動産が課税される条件として見なされる理由は以下の4つのポイントにありました。
1.不動産会社への仲介手数料が②のようにサービス提供の対価として認められるから
2.司法書士に支払う手数料
3.融資手続きの手数料
4.不動産会社など課税事業者が行う建物の売買
このような点から課税対象となるのが、事業者であることがわかります。最もわかりやすい身近な例としては、建物を購入する際には不動産会社を仲介して物件を探し購入というパターンが多いでしょう。これは不動産会社からのサービスを受けているため、お買い物などと同じように消費税が発生してしまいます。逆に個人の売却に関しては課税対象ではありません。
ところが、不動産会社を仲介して物件を個人で売りたいという場合には司法書士への手数料や仲介手数料が発生してきますので消費税も発生するというわけです。
逆に消費税が非課税の場合にも3つの条件があります。
1.土地の売買
2.土地にある定着物(庭石や樹木など)
3.個人での住居を売る場合の建物の売買
不動産においては土地は消費されるものではないという考えがあるため、基本的に土地の取引においては消費税の課税はありません。また個人での売買に関しても消費税は発生しません。
このような点から不動産に消費税が発生する場合は、基本的には仲介会社を通した時であるということがわかりました。そのため、仲介会社などで表示されている物件の値段はすでに消費税込みの表記であることがほとんどです。
2.事業用資産を譲渡した場合の消費税
消費税の申告納税義務のある個人の事業者が、事業用資産を譲渡した場合には消費税が発生します。譲渡した際の収入分も消費税の計算に含めなくてはなりません。事業用資産を譲渡するというケースはなかなかないものですので、申告漏れが多い傾向にもあるため、しっかりと消費税がかかることを知っておく必要があるでしょう。
実際に消費税を払う具体的なケースとしては、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡のことを指します。そのため土地や借地権の譲渡に関しては消費税は非課税です。事業に関係する資産の際にのみ消費税がかかりますので、こちらも注意しておく必要があります。
ですが事業用資産は実は節制することが可能です!この場合を「事業用資産の買換え特例」と言います。売却する資産と買い換える資産とが事業用であることがまず条件となっています。
2-1.事業用資産とは
そもそも資産というのは持っていることでお金を増やしてくれるもののことを指します。こう聞くと土地や建物などがイメージできるでしょう。逆に持っていることでお金が減ってしまうことは負債と言います。
そんな資産には事業用資産や生活用資産、投資資産など様々なものがあり、それらを総じて資産と称されます。そんな中でもまず注目したいのが事業用資産です。
そんな事業用資産というのは、一般的なビジネスとしての資産のことを指します。自分でビジネスとして事業を行うことで、その事業によってお金を増やすことが可能です。そのため、事業を持っていることこそが資産であるという考えから、事業用資産というわけです。
イメージとしては、お店を持っている場合はその店舗自体も資産ですし、お客さんや商品、さらにはサービスも資産として考えられます。そのため経営者の方にとっては事業用資産は特に関係の深い資産になるわけです。
3.生活用動産を譲渡した場合の消費税
先ほどにもあったように、ビジネスに使われる事業用資産の場合には消費税が発生するということがわかりました。ですが生活用資産に関しては、消費税が発生しません!
そして生活用動産は損益通算の対象から外れています。譲渡の際に損失してしまう赤字部分は、原則としては他の各種所得の金額いわゆる黒字から控除することができます。これが損益通算に当たります。
3-1.損益通算とは?
一定期間内の利益と損失とを相殺することです。投資を行って利益が発生した場合は税金がかかります。逆に損失が出てしまった場合は利益から差し引くことができ、その分だけ税金が発生するという仕組みです。
3-2.生活用動産とは?
生活用資産とは、家具や什器、衣服などの生活に必要な動産のことを指します。そもそも動産と資産とはどのような違いがあるのだろうかと疑問に思ってしまうかもしれません。
資産がお金を増やしてくれるビジネスに関連するものであると先ほどに述べました。不動産の土地や家などは資産に含まれます。ですが動産というのは、基本的には持ち運ぶことができるもののことを指しています。持ち運べないものといえば、家や土地などの不動産関係のもの、それ以外は基本的には動産というわけです。持ち運べるものとすれば現金を想像するかもしれませんが、そのほかの貴金属や衣類、ブランド品、美術品、コレクションしているものなどが動産に含まれます。
話は戻り、生活用動産の定義として所得税法では以下のように定義されています。
第九条 …
九 自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるもの
こうしてみてみても生活用動産の範囲が曖昧に思えてしまうかもしれません。そこで所得税法施行令では、さらにこの範囲に関しても定めています。
- 貴金属、貴石、真珠及びこれらの製品、べっ甲製品、サンゴ製品、コハク製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
- 書画、こっとう及び美術工芸品
以上に記したような品物の中で、1個あるいは1組の価額が30万円を超えるものは生活用動産には含まれないので注意する必要があります。
まとめると、生活用動産とは自宅で使用するほとんどのものが含まれるというわけです。ですが例外としては、例えば自分の家族が使用していた楽器は生活用動産としては含まれません。楽器は基本的に趣味でコレクションしているという場合が多く、生活に必要なものではありません。そういった考えから楽器は生活用動産には含まれず、そのほかにもこのような生活用動産に含まれる含まれないに関しては判断が難しいものもあります。
4.免税事業者や個人で譲渡した場合の消費税
免税事業者というのは、消費税が免除される事業を行っている人のことを指します。消費税は基本的には発生してくるものですが、ごく一部の条件に当てはまる人であれば免税事業者にあたります。そんな免税事業者が個人で譲渡した場合の消費税はどのようになるのでしょうか?
免税事業者は売買をする際に、相手に消費税を求めても良いのかと思ってしまうかもしれません。ですが免税事業者であっても、消費税を請求しても大丈夫です!
そもそも消費税とは、売り上げ先に請求した消費税から仕入先へ支払った消費税を差し引いて納税されます。このように収める消費税分が免除されるわけで、これは仕入れ時に支払った消費税に上乗せして顧客に請求した分のことを指しています。
このように消費税は免税事業者によって関係するものでもなく、消費税法でも消費税の請求を拒否しているという記載はありませんので、消費税を求めても構わないわけです。
4-1.消費税の免税事業者制度とは?
先ほどで述べたように、免税事業者の条件に当てはまった人であれば消費税を納める必要がなくなります。そんな免税事業者の条件に当てはまる人はどのような人なのでしょうか?
そもそも消費税は事業を行っている個人事業主であれば前々年、法人事業主であれば前々事業年度に1,000万円を超える課税売上高があれば納税の義務が適用されます。ですが消費税の納税が免除される免税事業者の条件としては、この納税義務に当てはまらないことが第一に考えられます。つまり、納税に該当する年度の売り上げが1,000万円を超えなかった場合に免税事業者となり消費税の納税の義務が免除されるというわけです。ですが前年や前年事業年度の上半期であるため6ヶ月間のうちの課税売上高や給与の支払い額が1,000万円を超えた場合には課税が適用されるので注意しましょう。
また新設された法人に関しては、基準となる期間が十分にないため一定の要件を満たしていれば、初年度や次年度の納税が免除されます。ですがこの場合も条件があり、資本金や出資金が1,000万円を超える法人や、初年度の上半期の6ヶ月間の課税売上高あるいは支払う給与の額が1,000万円を超えている場合は納税の対象となりますので気をつけましょう。
5.不動産譲渡時の消費税の計算方法
では不動産譲渡の際に発生する消費税を計算するにはどのようにすれば良いのかご紹介していきます。
不動産譲渡時に消費税の課税対象となる価格についてみていきながら進めていきます。
①譲渡する不動産の売却価格
不動産売却価格に対して消費税が発生する範囲は、建物のみです。土地は建物と違って時間が経っても退化することがなく、消費の対象に含まれないため消費税が課せられません。この場合消費税を負担する必要があるのは、不動産を買う側が負担し、売る側は消費税を納めなくてはなりません。普通のお買い物と同じ要領だと考えてください。
先ほどからも出てきているように、個人間の不動産譲渡の場合は売主も買主もどちらも消費税を納める必要はありません。
②仲介手数料
不動産を売却する際に買い手を見つける方法として、不動産仲介会社を通すことがあるでしょう。そのため、仲介手数料が発生します。買主が見つかり売却になったという際には、売り手が不動産会社に仲介手数料を収める必要があります。仲介手数料は以下の表のように売却価格に応じて値段が変わってきます。
売却価格 | 手数料の上限 |
200万円以下 | 売却価格の5% |
200万円以上400万円以下 | 売却価格の4%+2万円 |
400万円以上 | 売却価格の3%+6万円 |
不動産会社は物件を売却する際には、買主の方に消費税分を加算して販売しています。そのため売主側としては、不動産会社に実質消費税を支払う必要があるわけです。
そのため、仲介手数料+消費税(仲介手数料×消費税率8%)が必要となります。
③司法書士への報酬
不動産を購入する際には、その金額を支払うために銀行などから融資を受けることがあるでしょう。ですが売却する際にローンが残っている場合には、ローンを組む際に不動産に設定した抵当権を解除する必要があります。その抵当権を解除するためには専門家である司法書士の力を借りなければいけません。書類の作成や専門的な手続きを進めていく必要があります。そこで司法書士の方に手続きしてもらうには、相場として8,000円〜12,000円ほどの費用が必要です。
④繰り上げ返済手数料
不動産を売却したお金でローンを完済する際には、金融機関へ手数料を収める必要があります。この場合の繰り上げ返済手数料の相場は、3,000円〜5,000円ほどです。この手数料に関しては消費税も関係してきます。
手数料分×消費税率8%が発生しますので注意しましょう。
以上の4点が基本的に不動産譲渡時に発生するものです。司法書士の費用に関しては関係ないものの、それ以外の3つの表には消費税が発生しますので覚えておく必要があるでしょう。
5-1.一般課税による消費税の計算
まず基本的に消費税を計算するには、売り上げに対する消費税分(売り上げから上乗せした分の消費税。いわゆる顧客から受け取った消費税)から、仕入れと経費に対する消費税(仕入れや経費に上乗せされた消費税。事業者が得意先などに支払った消費税で、仕入れ控除税額とも称する。)を控除することで求められます。
消費税の納付税額=売り上げに対する消費税(顧客から受け取った分)−仕入れと経費に対する消費税(支払った消費税)
基本的にはこのような計算式で、求められるものですが一般課税となると少し異なります。というのも一般課税を求めるには、上記にある計算式の売り上げ部分で顧客から受け取った消費税をさらに細かく計算する必要があるからです。そのため仕入れと経費で支払った分の消費税=仕入れ控除税額についても細かく計算します。
◆一般課税の計算方法
一般課税を求めていくための計算方法は以下のように表すことができます。
消費税の納税額=課税売上高(税抜)の4%−課税仕入れ高(税抜)
ではこの式に出てきた数値はどのようなものなのかを説明していきます。
・課税売上高…課税売上高は税抜きで表記されています。経理の際に税込処理方法を採用している場合、課税売上高分に100/108をかけて一旦税抜き価格に戻します。この税抜き価格に4%分をかけましょう。
ですが税抜き処理方式を採用している場合は、戻す必要がなく仮受消費税の50%分が課税売上高になります。50%分ということは、現在の消費税率が8%のうちの4%ですので、このような数値となるわけです。
課税事業者の方は、消費税を上乗せしていない場合でも税抜き価格になりますので計算する際には注意しましょう。
・課税仕入れ高…課税仕入れ高も先ほどと同様に4%で計算を進めていきます。ですので経理が税抜き処理方法を採用している場合には、課税仕入れ高×100-108で税抜き分を求めることができます。そしてその数値に4%を乗じます。経理が税込処理方法を採用している場合には、仮払消費税のうちの50%を乗じます。
ですが課税売り上げ割合と呼ばれている割合には、課税仕入れ高に含まれている消費税額の全額を仕入額控除することができない場合もありますので注意しましょう。
課税制度にはここまで紹介してきたような一般課税方式と、簡易課税方式との2つがあります。簡易課税方式は次の章で詳しくご説明しますが、原則としてはこの一般課税を利用することが求められています。
5-2.簡易課税制度による消費税の計算
簡易課税制度とは、消費税の仕入れ控除税額をみなし仕入れ率によって計算して、簡易的に算出するという方法です。
※仕入れ控除税額というのは、消費税を計算する際に売り上げなどで受け取った消費税から差し引いた税額のことを指します。通常の消費税計算に関しては、仕入れや経費で支払った額が仕入れ控除税額となります。ですが簡易課税制度に関しては
受け取った消費税額×みなし税率が仕入れ控除税額として計算されます。そのため支払った分の消費税を計算に入れなくても、一般課税に比べてみると簡単に計算することができるというわけです。
◆簡易課税制度の計算方法
受け取った消費税−(受け取った消費税×みなし仕入れ率)=納税する消費税
※みなし仕入れ率は以下の表のように業態によっても異なってきます。
業種 | みなし仕入れ率 |
第1種事業(卸売業) | 90% |
第2種事業(小売業) | 80% |
第3種事業(製造事業) | 70% |
第4種事業(そのほかの事業) | 60% |
第5種事業(サービス事業) | 50% |
そんな簡易課税制度が適用されるには2つの条件があります。
- 前々年の課税売上高が、5,000万円以下であること
- 簡易課税制度を受ける際には届出書を事前に提出すること
これら2つの条件に当てはまれば簡易課税制度で納税することが可能です。そもそも5,000万円以下であること、という条件からは、小規模の事業者向けであるということがわかるでしょう。そして法人の場合ですと前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下であることが条件となります。
そして個人事業者が簡易課税制度を利用する際には、事前にそのことを伝える届出書が必要となります。前の年に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することになりますので忘れないように注意しましょう。
簡易課税制度は消費税の計算がかなり簡単になる分、2年間の継続の義務や場合によっては税負担が増してしまうこともありますので利用する際には一般課税制度と比べてみてどちらが適しているのかを事前に考えておきましょう。
6.まとめ
今回は不動産譲渡において発生する消費税に関して詳しくご説明していきました。
不動産を売却する時であっても、消費税は状況によって発生してくるということがわかりました。そして中には消費税が免除されるというパターンも考えられますので、状況をしっかりと確認してから計算へと移りましょう。
今回紹介したように消費税を計算する前には様々な計算方法がありますので、まずは条件を確認して進めていきましょう。