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Category  不動産

2019年09月05日 更新

地盤改良工事の3つの工法とそれぞれの工事期間と費用|家を建てる前に知っておきたい!

家を建てる際に使われる地盤改良工事の種類は大きく分けて3つあります。地盤改良は非常に大切な工事であり、改良後の土地に建てる建造物に大きく影響します。そのため、地盤改良を行うためには、自分の土地とこれから建てる建物にあった工法を選ばなければなりません。

自分の土地がどんな地盤なのかを確認して、その地盤にあった改良工事を選ぶ方法についてお話をしていきます。選ぶ方法によっては、六価クロムなどの有害物質が発生してしまったり、更地にして売る際に高額の撤去費用がかかるなど、土地の価値を大きく下げてしまうこともあります。

これから建てる建物にあった方法を選ぶことが大切ですが、その後のことまで考えておくことで、土地の資産価値を守ることになります。その点についても説明をしていきますので、地盤改良工事を選ぶ際の参考にしていただければと思います。

1. 家を建てる際の地盤改良工法の選び方

家を建てる際の地盤改良工法には大きく分けて3つの種類があります。改良したい地盤によって、どの工法で施工すべきかが変わってきます。主に軟弱な地盤の厚みとその層が斜めになっているかなどの形状によって工法を選定することになります。

軟弱な地盤の厚みと地盤改良の方法の組み合わせは概ね下記のようになります。

・軟弱な地盤の深さが1mくらいまでなら表層改良工法。
・軟弱な地盤の深さが2m~8mくらいまでなら柱状改良工法。
・軟弱な地盤の深さが8m~15mくらいなら鋼管杭工法。

ここでは3種類の地盤改良について、それぞれの特徴とメリット・デメリット、およその金額などについて説明をします。

 

2. 表面だけが弱い地盤改良工事なら表層改良工法

表層改良工法は、セメント系の固化材を混ぜ合わせ、地盤に転圧する工法です。表面だけを改良する工法で施工しやすいため、広く行われています。改良工事の深さが1m~1.5m程度の際に良く行われます。

改良工事の深さが2mを超えるような場合は、後ほど説明をする柱状改良工事の方がコストが安くなります。その他にも、軟弱な地盤の下の固い地盤が地面と平行になっていない場合にも、柱状改良工事を選ぶことになります。

表層改良工法では改良を行う地盤の上層の土砂を取り除きます。その後固化剤を流し込み、撹拌します。固化剤が均一になったら、ローラーなどで地盤を転圧します。固化材は1度に流し込むのではなく、複数回に分けることが多いです。この工程によってより強固な地盤を作ることができ、表層を改良することができます。

表層改良工法のメリットは、工程がシンプルなため作業しやすく、工期が短いという点です。また、余分なコストがあまりかからないため、費用を抑えて地盤改良を行うことができます。相場は改良する面積1坪(3.3㎡)あたり3万円ほどです。さらに、狭い土地でも改良が可能です。

ただし表層改良工法は、下層部の地層が水平であることが前提です。そのため下層部の地盤調査結果によっては、表層改良工法での施工が難しい場合があります。

表層改良工法のデメリットとしては、上記以外にも、隣の建物が近い場合には土留めが必要となることや高価な飛散防止型セメントを使う必要があることがあげられます。

 

2-1. 最新の表層地盤改良工法、シート工法

最近注目をされている表層地盤改良工事に、シート工法というものがあります。シート工法では、セメントの代わりに専用のシートと砕石を使って地盤改良工事を行います。

こちらのメリットは六価クロムなどの有害物質の発生がないことや将来土地を売る際に撤去工事が不要という点があります。最近では六価クロムなどの有害物質が発生しない特殊なセメントを使うのが一般的になっていますが、信頼できる業者に依頼した場合以外は不安が残ります。

万が一、六価クロムなどの有害物質が発生した場合は、汚染物質を取り除く義務が土地の所有者に課せられます。当然、土地の価値も下がります。六価クロムが発生していないとしても、セメントで固まった土地では使いにくいと判断されれば土地を売ることは難しくなります。

シート工法では、地盤改良をする場所の地面を掘って砕石を敷き詰め転圧をします。その上にシートを縦横に重ねるように敷いて、その上にもう一度、砕石を敷き詰め転圧をします。

シート工法の相場は改良する面積1坪(3.3㎡)あたり3~4万円ほどです。セメントに比べて砕石を使う分、少しコストがあがります。しかし、先ほど説明したような問題を解決できるため、シート工法が注目をされています。

 

3. コンクリートの柱を作る柱状地盤改良工法

柱状地盤改良工法は、地層の中に柱を作り、地盤を強化する工法です。軟弱地盤が2~8メートルの場合に使われることが多いです。不同沈下(建物が斜めに傾くように沈下する現象)が起こると予想される地盤の改良に適しており、セメント系の固化材を使って地層内にコンクリートの柱を作ります。柱が支えとなることで、地盤の上に建てる建物が安定します。柱状改良工法は、深層混合処理工法と呼ばれることもあります。

柱状改良工法では、表層の軟弱地盤を改良する地点まで掘り下げ、土砂をよく撹拌します。このとき良好な状態の地盤まで掘り下げ、これから作る柱が安定するようにします。次にミキサープラントで水で溶かした固化材(セメントミルク)を土砂と混ぜ合わせます。攪拌機を引き上げていくときに土砂とセメントが固まり、地層内に柱が形成されます。改良したい土地にこの工程を複数箇所行い、強い地盤を形成します。

柱状改良工法は、表層改良工法が施工できない場合にも使われています。例えば地下水位が地表面に近い場合、表層改良工法では地盤を固めにくい場合があります。

また、周辺に住宅などがある場合、鋼管杭を打つような工事では振動・騒音などでクレームが発生してしまうことがあります。柱状改良工法は施工の際に振動が少なく、周辺地域に配慮が必要な場合にも適しています。

柱状改良工法の工期は、30本ほどの柱を作るなら2~3日ほどと短期間です。施工費用の相場は、1坪(3.3㎡)あたり4~5万円ほどです。柱は家の基礎の下に作る必要があるため、柱状改良工事の施工は家の建築をお願いしている業者に依頼することが一般的です。

建築業者を通して依頼をすることで、必要な場所だけに施工することができるので、費用を安く抑えることができます。

また、柱状改良工法のデメリットとして、地盤の中に作る柱はコンクリートのため、元の状態に戻すことが難しいという点が挙げられます。柱状改良工法で施工した土地を将来的に売却する場合、柱が残っていることから売却価格が下がってしまうことがあります。このような場合には、柱状改良工事で作った柱を撤去する必要があります。

 

3-1. 最新の柱状地盤改良工法、エコジオ工法

エコジオ工法は三重大学と民間企業との協力によって開発された工法です。柱状改良工事と同様に柱を作るのですが、柱の材料にセメントではなく砕石を使うのが特徴です。地面を掘ってそこに砕石を投入して転圧をするのですが、転圧の際に開店圧力方式を使うため騒音や振動が少ないというメリットがあります。

他にも、セメントが固まる時間を待つ必要がないので、施工後すぐに建物の建築ができることや、六価クロムが発生する可能性がないこと、後々土地を売ることになっても撤去工事が不要というメリットもあります。

 

4. 軟弱地盤層が深いなら鋼管杭工法

鋼管杭工法は、鋼管を地層に杭として圧入し、地盤の沈下を抑える工法です。表層改良工法や柱状改良工法では、地盤を掘り出して土砂を撹拌する作業が必要です。これに対して鋼管杭工法はこの必要がなく、鋼管杭を地層に打ち込むことで施工できます。そのため地盤の掘り出しによる土砂が生じず、地盤の土質によって品質が影響されることがありません。地盤調査で土質が深いところまで悪い場合、鋼管杭工法を用いることが多いです。

鋼管杭工法では、鋼管杭を下層部の硬い層である支持層まで達するように圧入する必要があります。これによって地盤の上に建てる建物の荷重が支持層にかかるようになり安定します。

鋼管杭工法は鋼管杭というすでに出来上がった製品を使って施工するため、土質の悪い場所でも施工でき、一定の地盤強度を得ることができるというメリットがあります。また、鋼管杭は強度が高いため、重量のある建物を建設する際にも有効です。さらに鋼管杭を取り除けば、原状回復を比較的容易に行うことができます。

鋼管杭工法のデメリットとして、費用が高めという点が挙げられます。施工の相場は1坪(3.3㎡)あたり5~7万円ほどであり、紹介した工法の中で最も高いです。また、工事の際は大型の重機を使用するため振動や騒音が大きくなりやすく、周辺地域に迷惑をかけてしまう場合があります。また、重機を搬入できる場所でないと、施工ができません。

 

4-1. 最新の鋼管杭工法、DM工法(ダブルメタル工法)

DM工法は簡単に言うと鋼管の先端に丸い円盤が付いたものを地盤の固いところまで入れて建物を支える方法です。通常の鋼管杭工法に比べて細い直径101.6mmの鋼管を使います。この鋼管の先に290mmもしくは350mmの円盤を付けます。

施工の際には打ち込むのではなく、回転させながら入れていくため騒音や振動を抑えることができます。また、10cm程度の細い鋼管を使用するため、材料費が少ないというメリットもあります。

更に使う材料が少ないことで、発生する残土を少なくすることもできます。このため、通常の鋼管杭工法に比べて残土処分に掛かる費用を抑えることができます。また、無溶接継手というものを使用することで、施工に掛かる時間を短縮することができます。

 

5. 六価クロムが発生しない地盤改良工事

セメントを使用する地盤改良工事で問題となっているのが、発がん性物質である六価クロムです。2003年の2月に土壌汚染対策法が施行されたことにより、有害物質が発生した場合は土地の所有者が適切な処理をしなければならないことになりました。

六価クロムは長期にわたって吸い込むことで、呼吸器系や消化器系に影響を与えると言われています。また、皮膚に付くことで皮膚炎や腫瘍の原因になるとも言われています。このような問題がある場所では安心して住むことができません。そこで重要となるのが、セメントの種類です。

六価クロムが発生しないようにした六価クロム対策セメントというものが市販されています。この六価クロム対策セメントを使用すれば、地盤改良工事後も安心して住むことができます。六価クロム対策セメントはコストが高いため、指定しないと使ってくれない場合がありますので注意をするようにしてください。

 

6. 地盤改良工事の選び方のまとめ

地盤改良工事は地盤の弱い部分の深さや形状によって最適な方法が変わってきます。地盤に合わない方法を選んでしまうと、無駄に高いお金を払うことになってしまったり、地盤改良工事の効果が得られない可能性もあります。

建物の倒壊まで行かないとしても、壁にひびが入るなど住むのに適さない状態になってしまうことが考えてられます。このような事態にならないようにするには、事前にしっかりと地盤調査をおこなうことが必要です。どのような地盤改良工事を行うかを考える前に土地の状態を確認するようにしてください。

また、六価クロムの問題からセメントを使わない新しい工法が発明されてきています。今回は新しい工法の中でも実績の多い安心して工事ができるものだけをお伝えしていますが、もっと良い工法が発明されるかもしれません。

新しい工法を選ぶ場合は、その工法の実績も確認するようにしてください。最後になりますが、どんなに優れた工法でも、施工方法に問題があっては良いものを作ることはできません。工法を選ぶと同時に信頼できる業者に依頼をするようにしてください。