不動産の地位譲渡でかかる消費税の疑問を解説

不動産には通常の売買契約以外にも「地位譲渡」を用いた契約方法が存在します。地位譲渡を上手に活用することで、消費税など税金面の負担を軽減することが可能になる人もいます。

そこで今回は地位譲渡の基本や発生する税金などを中心とした情報を解説します。

 1. 不動産の地位譲渡で消費税が関わる費用

まずは不動産における地位譲渡で消費税が課税される費用を取り上げてみましょう。

 

1-1. 買主地位譲渡の対価には消費税が課せられる

不動産の地位譲渡では「買主の地位譲渡の対価」に消費税が課せられます。地位譲渡とは契約上の地位を、第三者に包括的に譲ることです。具体的には売主Aと買主Bとの間で売買契約が締結された後に、買主Bが契約上の買主の地位を第三者であるCに継承することを指します。

この場合買主Bは、その不動産の買主の地位を譲るわけですから、第三者であるCから報酬を譲り受けます。これが前述の「買主の地位譲渡の対価」に当てはまります。そしてこの対価に関しては、消費税が課せられます。

地位譲渡の対価に関する消費税で注意しておきたい点は、譲渡代金すべてに対して課税される可能性があることです。一般的な売買契約の対価は売買代金が該当します。この場合の消費税は建物分のみに課税されます。

しかし、地位譲渡の対価に関しては土地や建物に関係なく譲渡対価全体に対して、消費税が課せられる可能性があります。この点は地位譲渡契約の中において疑問を抱える人も少なくないため、必要に応じて税理士などに相談することも検討しておきましょう。

 

1-2. 土地代金には消費税が課せられない

基本的に土地を譲渡する時には、消費税が課せられることはありません。これは消費税法第6条にも定められていることです。

第六条 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税は課さない。

 

別表第一 (第六条関係)

一 土地 (土地の上に存ずる権利を含む。)の譲渡及び貸付け (一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

【参考サイト】電子政府の総合窓口(e-Gov)「消費税法」

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=363AC0000000108

前述のように一般的な不動産売買では建物部分のみに消費税が課されます。これは建物は使用し続けることで消費されるものだからです。対して土地に関してはいくら使用しても消費されないので、非課税取引として定められています。

地位譲渡契約の場合は売主Aと買主Bの間で売買契約が締結されており、買主BとCでは買主の地位譲渡契約が締結されます。この場合、売主Aと買主B間は通常の売買契約となり、建物部分のみに消費税が課せられることになります。

ただし買主BとC間は通常の売買契約ではなく「買主の地位の譲渡契約」に該当します。先ほども取り上げましたが、このCからBに支払われる対価に関しては、建物や土地に関係なく消費税が課せられる可能性もあるので注意が必要となります。

 

2. 不動産の地位譲渡では消費税以外の税金は必要か

基本的に三者間で行われることになる不動産の地位譲渡ですが、消費税以外の税金の有無も気になるところですよね。そこでここでは不動産の地位譲渡で発生する税金について解説します。

 

2-1. 登録免許税

登録免許税とは簡単に説明すると、不動産の名義を変更する時に国に支払う税金です。不動産の売買では所有権移転登記、所有権保存登記など、登記の申請を行う場合は登録免許税法で定められた登録免許税を納める必要があります。そして登録免許税は特殊な契約形態でもある不動産の地位譲渡契約でも発生します。登録免許税の税率は以下のようになります。

【土地の所有権の移転登記】

内容 課税標準 税率 軽減税率
売買 不動産の価額 2.0% 1.5%

※平成31年3月31日まで

相続・法人の合併・共有物の分割 不動産の価額 0.4%
その他 (贈与・交換・収用・競売など) 不動産の価額 2.0%

 

【建物の登記】

内容 課税標準 税率
所有権の保存 不動産の価額 0.4%
売買・競売による所有権の移転 不動産の価額 2.0%
相続・法人の合併による所有権の移転 不動産の価額 0.4%
その他の所有権の移転 (贈与・交換・収用など) 不動産の価額 2.0%

 

また一定の要件を満たす住宅用家屋については、所有権の登記保存や移転登記に伴う税率が軽減されます。詳細は以下のとおりです。

① 一般住宅・・・所有権の保存0.15%・所有権移転0.3%

② 認定長期優良住宅・・・所有権の保存0.1%・所有権移転 (マンション0.1%・一戸建て住宅0.2%)

③ 認定低炭素住宅・・・所有権の保存0.1%・移転登記0.1%

※軽減税率適用期限は平成32年3月31日まで

【参考サイト】国税庁「№ 7191登録免許税の税額表」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/inshi/7191.htm

前述のように不動産の地位譲渡では売主Aと買主Bとの間で通常の売買契約が締結され、その後BとC間で買主の地位譲渡契約が締結されます。AとBの間では売買契約は締結されているものの、所有権はAからエンドユーザーであるCに直接移転することになります。

登録免許税は所有権移転登記を受けたものが負担するのが一般的です。つまり不動産の地位譲渡契約では所有権移転登記を受けるCが登録免許税を負担することになります。通常の不動産売買であれば登録免許税を負担するのは買主Bです。しかし、今回のように2つの契約(通常の不動産売買契約・地位譲渡契約)を履行することで、中間者であるBは登録免許税を負担する必要はなくなります。

 

2-2. 不動産取得税

売買によって不動産を取得、または新築や増築した時に課せられる地方税が不動産取得税となります。不動産取得税も登録免許税同様にエンドユーザーであるCが負担することになります(Bは一度も所有者になっていないため)。不動産取得税の計算方法は以下のとおりです。

○ 不動産の価格 (課税標準額)×税率 (標準3%~4%)=不動産取得税額

 

なお、平成33年3月31日までに宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合は、不動産の価格の1/2が課税標準額となります。ちなみに不動産取得税を計算する場合の課税標準額は、市町村役場の固定資産課税台帳に登録された固定資産税評価額によるものが原則になっています。つまり実際に取引きされた売買価格ではありませんので、この点は注意が必要となります。

 

2-3. 譲渡所得税

譲渡所得税とは土地や建物などの資産を譲渡したことによって生じる利益に課せられる税金です。つまり通常の不動産売買では売主が納める必要がある税金ということです。では地位譲渡契約のような特殊な契約形態の場合はどうなるのでしょうか?

この場合は中間者であるBは不動産の取得はしていませんが譲渡はしています。したがってBに譲渡益があれば、Bが譲渡所得税を納める必要があります。またAにも譲渡益が発生すれば、Aにも課税されることになります。譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。

○ 譲渡収入金額- (取得費+譲渡費用)=課税譲渡所得

地位譲渡契約の場合はCから支払われることになる「買主の地位譲渡の対価」が譲渡収入金額に該当します。またCは売主Aに対しても売買代金(残代金)を支払うことになりますが、Aはこの代金が譲渡収入金額となります。

取得費とはその不動産を取得した際にかかった費用(土地や建物の購入代金など)のことを指します。譲渡費用はその反対で、売るために直接かかった費用です。なお税額の計算方法および税率は以下のようになります。

○ 課税譲渡所得×税率 (所得税・住民税)=税額

 

所有期間 区分 税率
5年を超える土地・建物 長期譲渡所得 15% (住民税5%)
5年以下の土地・建物 短期譲渡所得 30% (住民税9%)

※平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%が加算されます

【参考サイト】国税庁「№ 1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1440.htm

 

3. そもそも不動産の地位譲渡とは

ここまで不動産の地位譲渡契約に関する税金について解説してきましたが、そもそも「不動産の地位譲渡って何?」という方はとても多いです。そこでここでは不動産の地位譲渡の基本情報を解説します。

 

3-1. 「第三者のためにする契約」との違い

不動産の地位譲渡契約とよく比較されるのが「第三者のためにする契約」です。この2つの契約形態の共通点は、いずれも中間者Bの登記は不要である点です。通常、【A→B→C】と、順次所有権を取得した場合は不動産登記簿には以下のような移転登記が記載されます。

① AからBへの所有権移転登記

② BからCへの所有権移転登記

しかし、この場合だと手間と費用が2回発生してしまい、手っ取り早くCに売りたいBからすると、余計なコストがかかってしまうことになります。

そこで考え出されたのが「買主の地位の譲渡」と「第三者のためにする契約」です。

「第三者のためにする契約(通称:三ため)」ではAとBの間で売買契約を締結し、そこからBとCの間で売買契約を交わすことになります。つまり三ためでは2回の売買契約によって、登記をAからCへ直接移転する流れとなります。

一方の地位譲渡契約ではAとB間で売買契約を締結し、BとC間では「買主の地位の譲渡契約」を締結することになります。この契約形態ではBが買主の地位をCに譲った時点で、契約関係から離脱しているため、登記はAからCへ直接移転します。

どちらの方法もBは一度も所有権を取得していないことになるので、AからCへの直接移転が可能になります。そのため、Bは登記手続きの負担をすることなく、Cへの権利移譲を果たすことが可能になるのです。

他方で、この2つの契約方法では異なる点が複数あります。まず2回の売買契約が発生している「第三者のためにする契約」では、売主Aと第三者であるCはそれぞれの売買価格がわかりません。

対して地位譲渡契約を用いた方法だと、買主の地位の譲渡を受けたCがAとB間の売買代金を把握することができます。つまりBの収益(転売益)がわかるということですね。その他では「第三者のための契約」の場合は売買契約書が2枚必要になりますが、地位譲渡契約では1枚で済むという違いがあります(印紙税の負担が軽くなる)。

 

3-2. 地位譲渡をするメリットとデメリット

地位譲渡のメリット、デメリットはそれぞれ複数あります。まず、買主の地位を譲渡する主なメリットは以下のとおりです。

 

メリット

○中間者である買主Bは登録免許税、不動産取得税を負担する必要がない

○契約のための必要書類が少なくて済む

先ほども取り上げましたが中間者である買主Bは地位譲渡契約を用いた方法だと、一度も所有権を取得することがありません。したがって所有権移転登記に伴う登録免許税や不動産取得税を支払う必要はなくなります。

また地位譲渡は「第三者のためにする契約」と違って、作成する売買契約書が1枚で済みます。不動産売買契約書には契約金額に応じた収入印紙を貼ることになっています。売買契約書の印紙税の額は以下のとおりです。

契約金額 本則税率 軽減税率
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上 10万円以下 200円 200円
10万円超え 50万円以下 400円 200円
50万円超え 100万円以下 1,000円 500円
100万円超え 500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超え 1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超え 5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超え 1億円以下 6万円 3万円
1億円超え 5億円以下 10万円 6万円
5億円超え 10億円以下 20万円 16万円
10億円超え 50億円以下 40万円 32万円
50億円超え 60万円 48万円

※平成32年3月31日までに作成される売買契約書には軽減税率が適用されます

【参考サイト】国税庁「土地売買契約書」

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/inshi/08/02.htm

 

「第三者のためにする契約」では売買契約書が2枚必要となりますから、一連の取引の中で上記の金額×2を負担しなければなりません。しかし、地位譲渡契約では売買契約は1回しか発生していないため、印紙代も節約できることになります。

また地位譲渡契約のほうが比較的簡素な契約内容となっており、用意する必要書類も少なくて済むのはメリットと言えるでしょう。一方、地位譲渡にもデメリットは存在します。不動産における地位譲渡の主なデメリットは以下のとおりです。

 

デメリット

○中間者であるBはエンドユーザーのCにAB間の売買代金を知られてしまう

○エンドユーザーであるCは消費者保護上、不安定な状態になる可能性がある

まず前述のように不動産の地位譲渡ではAB間の売買価格をエンドユーザーであるCは把握することができます。つまり、中間者であるBはAに支払うべき売買代金と、Cから譲り受ける地位譲渡代金の差益をCに知られるということです。

そのため、差益を目的とした転売には不向きな一面もあります。また地位譲渡契約ではエンドユーザーであるCにとって不利益な契約内容になる可能性もあります。と、いうのも「買主の地位譲渡契約」は不動産売買契約ではないため、宅地建物取引業法上の規律を受けないからです。

不動産会社は購入者と売買契約を締結する際に、物件や取引条件に関する重要事項を説明する義務があります。これは購入予定者にとって、購入を検討している段階で確認した情報と異なる点はないかなどを把握する上ではとても大切なことです。しかし、買主の地位譲渡契約は売買契約のように重要事項説明義務がありません。

つまり中間者であるBとエンドユーザーCの間で締結される契約は、Cにとっては不透明な契約になってしまう可能性があります。これはエンドユーザーであるCにとってはデメリットにもなり得ることなので、事前にしっかりと把握しておく必要があるでしょう。

 

3-3. 地位譲渡の注意点

地位譲渡では売主A、買主B、エンドユーザーCにそれぞれ注意しておきたいポイントがあります。

【売主Aの注意点】

○中間者Bがエンドユーザーを見つけるまでに時間がかかる場合がある

 

【買主Bの注意点】

○エンドユーザーCにAB間の売買価格がわかってしまう

 

【エンドユーザーCの注意点】

○買主Bとの契約は宅地建物取引法適用外となる

まず、売主Aは買主Bと売買契約を締結した後に、手付金を受領することになります。その後、買主BがエンドユーザーであるCを紹介できれば、残りの代金がCから支払われるのが一般的な流れです。

したがって手付金受領のタイミングでエンドユーザーが見つかっていない状態だと、残代金の決済までに時間がかかる可能性があります。その結果として印鑑証明書の有効期限切れなどを招く可能性もあるので、この点に関しては売主Aは注意しておく必要があります。

また買主Bの注意点としては再三ご紹介しているように、エンドユーザーであるCにAとの取引額が知られてしまうことです。これは一般的なお店でいったら「仕入れ価格」がわかるのと同じことですので、Cから受け取る対価とAとの取引額の差益がありすぎると、契約が困難に陥る可能性もあります。

またエンドユーザーCに関しても、先ほど取り上げたように買主Bとの契約は通常の売買契約ではないため、宅建業法の適用外となります。つまり買主Bに落ち度があっても、Cはその責任をBに追及できないため、この点は十分に注意しておく必要があります。

 

4. 不動産の地位譲渡はどんなケースで行われるか

通常の売買契約とは異なる不動産の地位譲渡契約ですが、具体的にこのような契約はどのような場面で行われるのでしょうか?不動産の地位譲渡が行われるケースは複数ありますが、主には以下のような場面が想定されます。

○売買契約を締結したのはよいが、何らかの事情により転売せざるを得なくなった時

○個人名で契約した不動産を資産管理法人で所有する時

まず上の何らかの事情により転売せざるを得なくなったケースは理解しやすいと思います。具体的には、売買契約は締結したものの中間者Bが急遽購入資金の確保が難しくなった時などが該当します。

またその他にも市区町村の許可が必要な土地(農地等)を購入しようとした場合に、当初の買主では許可が下りないケースもあります。このような場面でも買主の地位譲渡は有効な方法となるでしょう。

その他のケースとしては、一旦は個人名で不動産の売買契約を締結したものの、その買主の地位を資産管理法人に譲渡する時などにも使われます。これは不動産投資を行う方が税負担を軽減するためによく用いる方法でもあります。

逆に差益を目的とした地位譲渡は、前述のようにエンドユーザーであるCにAとB間の売買価格が知られてしまうため、あまりおすすめはできないでしょう。したがって不動産の地位譲渡契約は「AとB間の売買価格をエンドユーザーに知られてもよい」場合に用いるのが一般的と言えます。

 

5.まとめ

今回は不動産の地位譲渡における基本的な情報を解説しましたがいかがでしたでしょうか?地位譲渡は通常の不動産売買とは契約の流れも異なるため「消費税などの税金面」「契約方法」などの面でさまざまな疑問が出てきます。

したがって最初は理解するまでに時間がかかることもありますが、地位譲渡契約を上手に活用できれば中間者の立場となる方は負担する税金などを軽減することが可能です。ただし地位譲渡契約にも当然デメリットが存在しますので、メリットとあわせて事前にしっかりと理解を深めておく必要があります。将来的に地位譲渡を検討している方はぜひ参考にしてください。