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Category  不動産

2019年09月05日 更新

不動産の賃貸収入には消費税がかかる?課税・非課税の条件まとめ

サラリーマンをやりながらアパートやマンションを投資物件として人に貸し付けて収入を得ている、遺産相続などで手に入れた不動産を人に貸して賃貸収入を得ることを考えている人もいるでしょう。

日本では、1989年から物を売買した時には消費税がかかるようになりました。

導入当初の消費税の税率は3%でしたが現在は8%まで引き上げられました。平成26年4月分から賃料にかかる消費税も8%になっています。

不動産の賃貸料は、ある程度の大きな金額のやり取りになりますから、当然消費税の影響も大きいです。賃貸物件として物件を貸し出す時には、消費税がかかるかどうかも、しっかり考えなければいけません。

所有している物件を人に貸して、家賃収入をもらう場合、どのようなときに消費税がかかり、どのような時には消費税がかからないのでしょうか?

賃貸物件の家賃収入に消費税がかかる条件について説明していきます。

1. 不動産賃貸収入で消費税が課税されるもの

消費税は消費財にかかる税金です。

不動産賃貸収入に関わらず、消費税は基本的には、以下に該当する取引にかかります。

・国内での取引

・事業として取引を行う

・お金のやり取りが発生する

・譲渡貸付サービスを提供すること

基本的には、これらの取引をする時に消費税がかかりますが、不動産の賃貸の場合には、さらに細かいルールがあります。

もう少し細かく見ていきましょう。

 

1-1. 事業用の建物の賃料

事業用や店舗用として、不動産を貸し出した場合に消費税が課税されます。

例えば、お店のテナントとして建物の一室を貸し出したりする場合。事業用や店舗用に貸し出す場合には、敷金、礼金、管理費、共益費にも消費税がかかります。

事業用としての賃貸として考えられるケースとしては、オフィスビルの一室を借りて、事務所や店舗を営業する場合があります。

また、マンションの一室を事業用として貸し出す場合もあります。たとえば、マンションの一室で、ネイルサロンやエステサロンを開業したり、事務所として使うような場合です。

元々は住居用として作られたマンションでも、貸し出すときに事業用として契約すれば、その賃貸収入には消費税がかかることになります。

物件の見た目が住宅なのか、店舗なのかが問題なのではなく、借主が何の目的に使うのか、その用途を問われるということです。

1-2. 整地済み土地に関する賃料

消費税は、基本的に建物や設備にかかるものです。したがって土地には、消費税がかかりません。

建物は付加価値があると考えられますが、土地には付加価値がありません。建物は消費財ですが、土地は消費財ではないので、消費財でない土地には消費税はかからないという考え方です。

土地を貸した時に借主が得る権利には、地上権、地役権、永小作権などがあります。これらの権利を使って、借主がその土地から何らかの利益を得たとしても、土地の賃貸料そのものには消費税はかかりません。

消費税がかからないのは、地代だけではありません。土地を貸し付けたときの権利金や、更新料、名義書き換え料などにも消費税はかかりません。

ただし消費税がかからないのは、あくまでも「整地された更地」の場合です。

 

更地ではなく建物が建っている場合

土地の上に建物が建っている場合は、土地と建物を同時に借主に貸すことになりますから、 そもそも地代と建物の賃貸料を分けることはできません。

例えば家賃は5万円で、地代は2万円というふうに、地代と家賃を分けて借主からもらうことは現実的ではありませんし、できません。

従って、建物を貸し出す場合には、建物と土地全体の賃料に消費税がかかることになります。この場合は、土地にも消費税が課税されているという事になります。

 

駐車場として貸している場合

土地を駐車場として人に貸し付けている場合は、その土地を駐車場という「設備」として貸し出していることになりますので、消費税の課税対象となります。

駐車場は途中ではなく設備とみなされるのです。

たとえその土地が、きちんと整備されていなかったとしても、駐車するために使われれば、駐車場として貸し出したとみなされ、賃料に消費税が課税されます。

ただし、もともと更地として貸し付けた土地に、あとから借主が貸主の承諾を得て駐車場を整備した場合には、非課税になります。

消費税が課税されるのか、されないのかが、わかりくく、紛らわしいケースも多いので、注意が必要です。

 

1-3. 土地の貸出期間が1ヶ月未満だった場合

一ヶ月未満の土地の貸付の場合は、一時的な貸付という形になります。一時的な土地の貸付には消費税がかかります。

例えば2週間に一回だけ、賃料をもらってその土地を利用させるような場合も、一時的な土地の貸付にあたりますから、消費税がかかります。

 

1-4. 返還義務のない事業用建物の保証金や権利金、更新料など

事業用として建物を貸すときには、保証金や権利金がかかります。

また更新時には更新料がかかります。

これらの保証金や権利金、更新料などは、 賃貸契約が終わった後に返還する義務がありません。

しかし、返還義務のない、保証金や権利金、更新料には消費税はかかります。なぜかというと、これらの保証金や権利金、更新料から、貸主が対価を得たと考えられるからです。

また、賃貸契約が終了した時に返還してもらえる約束の保証金や、敷金については、対価にはあたらないと考えられるので、消費税はかかりません。

 

 

2. 自宅兼事務所の場合は?

住居用として不動産を貸し出す場合の賃料には消費税はかかりません。

例えば、自分の所有しているアパートなどの物件を、賃貸物件として人に貸す場合がこれにあたります。したがって、住居用のアパートを借りる時の家賃には、消費税が含まれていません。

しかし、在宅の仕事をしている人や、自宅で店舗を営んでいる人の場合は、すこしだけ事情が変わってきます。

アパートの一室を借りて、その部屋に住みながら、その部屋で仕事もしている場合には、その家は住宅用でもあり、事業用でもあるということになります。

このような場合には、事業用の部分については、消費税が課税されることになります。

例えば、その物件の60%程度を事務所として使用しており、残り40%を住居として使用している場合であれば、事業用に使っている60%の部分の賃料の消費税がかかることになります。

住居用と事業用の割合は、事業用として使用しているスペースの広さがどれくらいかによって決めることができます。

例えば、パソコンを使って在宅で仕事をしている人の場合には、部屋の一角に机を置いて、その場所だけで仕事ができます。パソコンと机だけの2畳分程度のスペースで仕事できる人もいるかもしれません。本棚や、その他作業スペースが必要な人の場合は4畳から6畳程度になるかもしれません。

このような場合は、机やパソコン、本棚を置いている場所を仕事用のスペースとして、その部分の面積を事業用として計算します。事業に使っているスペースの割合に対して、消費税がかかることになります。

自宅兼店舗のような形で事業をしている場合は、店舗用としてある程度の面積が必要ですから、事業用に当たる面積は、広くなるかもしれません。

また、在宅で出来る自営業の人が引っ越す場合には、住居用の物件を借りて、その部屋で今までやってきた仕事を続ける事になると思います。

普通のアパートやマンションなどは、住居用として貸し出されていることが多いですので、消費税が課税されないことを前提として、税抜きの家賃を提示することが多いです。

しかし、契約を結んでから、自営業の場合は事業用の部分に消費税がかかるということがわかったら、借主は、当初思っていたよりも多くの家賃を取られたと感じてしまいます。

後から税込みの高い価格を提示されたら、損をしたような気がして気分が良くありませんので、借主が自営業の場合は、事業用の部分には消費税がかかるということを最初に説明し、消費税分も込みで見積もりを出してから、契約するようにしましょう。

 

 

3. 家賃収入における消費税は居住用かどうかによる

消費税が課税されるのは、事業用、つまり、非住居用として物件を貸し付けた時です。住居用として貸し付ける場合には、賃料に消費税がかかりません。

したがって、アパートやマンションの一室を住居用として貸し出す時には、消費税はかかりません。また、住居用として貸し付ける場合は、敷金礼金などのお金にも税金はかかりません。

しかし、実際に貸し出す場合には、その物件を何に使うのかの判断は、借主に委ねられている部分が大きいです。

元々は居住用として物件を借りた人が、しばらくしてから、在宅で個人事業を始めるケースもあると思います。例えば自宅の一室を使ってネイルサロンを開いたり、フリーランスとしての仕事を受注するような場合がこれに当たります。

その物件を借りる時点で、住居用として契約をしたのに、その物件を使って自営業を始めてしまったら、最初の契約と実態が食い違ってしまいます。

大家さんに自営業をはじめることを相談してくれればよいのですが、黙って自宅での仕事を続けてしまうケースもあるかもしれません。

そのような場合でも、大家さんが部屋まで乗り込んで、借主が物件を何に使っているのか調べるわけにいかない場合もあると思います。

そのような場合でも、契約書などで「居住用」として貸し出すことになっていれば、消費税はかかりませんが、契約内容と利用の実態が食い違うのは、良いことでありません。

賃貸契約を結ぶときに「自営業をはじめるときは報告してほしい」と、借主に、ひとこと伝えておくようにしましょう。

 

 

4. 事業として賃貸を行っている場合は消費税が課税される

消費税を支払わなければいけない人、つまり納税義務者は、基本的には事業として賃貸を行っている人です。

サラリーマンの人が自分の家を事業用の事務所として、人に貸した場合、基本的にその家賃には消費税が課税されますが、その金額が1,000万円以下である場合には消費税を納税する義務はありません。

注意しなければいけないのは、1000万円以上利益が出たその年に消費税が課税されるわけではないということです。1000万円以上の利益を出した2年後から、消費税を課税されることになります。

2年前のことなんて覚えていない・・・という人もいるかもしれませんが、国税庁は覚えていますので、本人が忘れていても2年後から、しっかり消費税が課税されます。

消費税がかからないと思っていたのに、2年後から急に課税されると、支払いが大変ですので、忘れないように気をつけましょう。

 

 

5. 消費税の納税義務者の条件まとめ

消費税は、基本的には事業用として貸し出した建物にかかります。

土地の賃料には、基本的には消費税はかかりません。ただし貸出期間が1ヶ月未満の一時的な土地の貸付けや、駐車場として貸し出す場合には、消費税がかかります。

一方、住居用のアパートやマンションの賃料には、消費税はかかりません。

ただし、自宅兼事務所の用途で物件を使う場合には、事務所部分の賃料には消費税がかかります。

住居用として貸し出した部屋で、個人事業などの事業を行う人もいます。このような場合は、事業用として使用している部分の賃料に消費税が課税されます。契約と利用の実態が食い違っていると、トラブルの原因になる可能性もあるので注意しましょう。

サラリーマンが投資物件のオーナーになる場合は、アパートやマンションの一室を住居用として貸し出すケースが多いのではないでしょうか。

このような場合は、通常は消費税がかからないので、消費税のことを気にしなくても良い場合のほうが多いとは思いますが、借主が自宅兼事務所として利用するなど、消費税がかかるケースもありますので、注意しましょう。