事例紹介
Category 不動産
2018年07月24日 更新
不動産の相続税対策!法人化のメリットデメリットについて
相続税は税金の中でも高い税率になっているので、節税対策が必要な税金とされています。
現金や証券を相続した際には、相続額によっては高い税率が適用されるので、不動産など相続評価額が低くなる物に変えて対策する方法もあります。
さらに不動産を相続する際に、相続税対策として注目されているのは法人化する方法です。
確かに合法的に節税することはできるのですが、メリットの他にも、デメリットにも注意して法人化する必要があります。
ここでは不動産の相続税対策としての法人化について解説していきます。
この記事でわかること
1. かしこい不動産運用!相続税は法人化で節税できる
相続税の税金対策として、近年注目されているのは、「法人化」するという方法です。相続税の対策をする時のポイントは、グレーな方法や無理な借り入れをせずに、生前財産を次世代に移す事です。
相続税というのは、相続開始から10か月後には現金納付が必要になりますので、何も対策をしていないと多額の税金納付が必要になります。もし不動産を相続しただけであっても、現金があるかないかに関わらず相続税の納付義務が生じます。
そこで法人化(法人成り)が相続税対策として編み出されました。法人化は、相続税の節税に限らず、、相続税支払い資金を確保するのにも有効ですので、生前に行う事ができる相続税対策として有効です。
もちろんそのためには、法人化する方法や法人化する事によってどのように節税効果が出てくるのか知っておくと、自身にとって最適な方法で法人化を進めることができます。
項目別に法人化すると節税対策になる仕組みやメリットやデメリットを考えてみましょう。
2. 法人化で相続税の節税になる仕組みとメリットとは?
法人化をすることで、相続税の節税になるのにはいくつかの仕組みがあります。
法人化という節税方法のメリットは、法律的にグレーな方法を用いたり、過度な融資を受けずに会社を作るという仕組みを利用して、相続対策をすることができる点です。
メリットについて見ていきましょう。
2-1. 贈与税が無くなるので節税対策になる
引退を考えている本人が、不動産か引き続き収入を得てしまうと、相続をする際にも相続税を支払う必要があります。収入を得た時には所得税を払い、相続をした時には相続税を支払う必要があります。
しかし法人化して財産を法人に移すと、次世代には贈与税がかからずに財産の移行が可能になります。これが法人化の相続税対策になります。
この時のポイントは、引退する方を株主に含めない事です。株式を被相続人が所有していると、株式に相続税が課かるので、法人化のメリットが軽減されてしまいます。
2-2. 役員報酬を支払う事で財産を軽減する
法人化を行い、役員になっている相続する人に役員報酬を支払う事も節税対策になります。これは法人になる仕組みを利用したものです。
法人の場合は、役員が業務を行えば、役員報酬を受け取る事は全く問題なく、定期同額給与などのいくつかの条件を満たせば、法人税法上も会社経費となります。
会社経費が増えるということは、結果として財産の軽減につながり、結果として相続財産の相続評価額を下げることになります。
役員報酬を支払うと、実質的に財産を移動させることが可能で、移動させた財産は会社の経費として扱うことが可能になるのです。
通常の場合財産を譲渡すると、贈与税が課かりますが、業務を行った場合の報酬には、贈与という考えはありませんので、合法的な節税になります。
所得税として専従者給与という方法もありますが、条件が厳しいので、法人化して役員報酬を支払う方がスムーズに財産を移行することが可能です。
2-3. 相続評価額が下がる
個人所有の場合と、法人所有の場合では不動産の相続評価額も変わってきます。法人所有になると株式という形での相続になりますが、個人の場合では不動産として相続することになります。
この場合に不動産の評価額が法人所有の方が低くなります。3年という縛りはありますが、不動産の評価額が低くなるのは、相続税を低くするのに大きなポイントになります。
2-4. 生命保険を利用して対策をする
法人で生命保険を契約すると、個人で生命保険を契約する時とは異なるメリットがあります。
例えば弔慰金というものがあります。これは経営者が亡くなった時に、会社から残された家族に弔慰金が支払われるものです。
弔慰金の場合は、指定された上限金額まで非課税になるので、一つの相続税対策として取り入れることも可能です。
3. 不動産事業を法人化して相続税対策を行うまでの手順
それでは不動産事業を法人化して、実際に相続されるまでの手順を解説していきます。ただ法人化するだけでなく、ポイントとなる順番や注意点がありますので確認していきましょう。
3-1. 資本金は1000万円以下にして設立
資本金は1円から設定することが可能ですが、1,000万円以下にしておくことがポイントです。
法人を設立するには、法人用の印鑑を用意し、書類を提出することで、1週間ほどで設立可能になります。
この時に1,000万円以上の資金に設定すると、初年度から消費税の申告が必要になり、法人地方税も高くなるので、50万円から100万円ほどの資金で設立すると良いでしょう。
3-2. 相続人が株主になる必要
法人化すると株主を設定する必要がありますが、これは相続人がなります。
法人化する時の手順として、本人(被相続人)は株主にはなりません。もし株主になってしまうと、所有株式が財産として算出されるので、相続税が課かってしまいます。
相続税対策としての法人化の場合には、本人は株主に含めないことで、上手に財産の移行が可能です。相続人が同じ割合でも異なった割合でも株式を所有することは問題ありませんので、本人を含めずに株主を設定しておきましょう。
3-3. 相続人全員を役員にする
相続人に役員報酬を支払う事ができるので、相続人はすべて役員にしておきます。役員の場合は、従業員ではないので、勤務地や労働時間の拘束がありません。
3-4. 法人設立時に建物を売却
法人化による相続税への対策は2段階に分けられます。まずは法人を設立した際には、建物を法人に売却します。不動産による収益は、土地からではなく建物の家賃から発生しますので、建物を売却することで、所得を分散し税負担を軽減することができます。
3-5. 相続時には土地を売却
相続を実際にする時には、相続税を払う必要が生じますが、その時には土地を法人に売却します。この土地を購入するための資金は、銀行からの融資などによって賄う事になりますが、法人になっているので、この資金も経費として扱えます。
この2段階に分けた方法によって、財産をスムーズに移行させることが可能になります。
4. 法人化によるその他の節税効果
法人化をする事で、さらに他の節税効果も生まれます。
4-1. 日当
役員には、出張の際の日当を支払うこともできます。個人の場合では、日当を支払う事はできませんが、法人の場合には損金として扱えますので、個人には非課税になります。
4-2. 退職金
自営業の場合には、退職という考えがありませんが、法人化すると退職金を支払う事ができます。退職金は家族役員にも支払う事ができ、退職所得は所得税の中でも優遇されているので、法人化のメリットです。
5. 法人化によるデメリットと注意点
もちろん法人化することには、デメリットもありますので、その点を含めて法人化するのか考える必要があります。
5-1. 法人税
法人化することで、毎年法人税を支払う義務が発生します。法人事業税の均等割りは、赤字でも支払う必要が生じる税金で、最低毎年7万円になります。
節税対策になるとは言え、毎年支払うべき費用が発生しますので、法人化していくのか考慮する必要があります。
5-2. 会社設立に費用がかかる
株式会社を設立するのには、それぞれの事情に合わせて設立費用が発生します。
相続税対策で法人化する場合には、株式会社の設立になります。その場合、登録免許制で最低15万円、定款の認証に5万円、社印作成に数万円、行政書士や司法書士に依頼する報酬として数万円と、合計すると30万円ほどが会社設立に必要な費用になります。
会社を設立するだけでこれだけの費用がかかりますので、一つのデメリットになるでしょう。
5-3. 経理が必要
法人化すると、経理の必要も生じます。複式簿記での経理が必要になり、法人税の申告など、個人で事業をしている時には発生しない業務が必要になります。場合によっては、税理士に依頼をして作業を依頼することにもなります。
個人で事業をしている時には、発生しない事務処理と税理士への依頼費用が発生しまいます。自営業の場合の作業に比べて、事務処理も複雑になりますので、税理士への報酬も高くなってしまいます。
5-4. 事業廃止にも費用
一度法人になってしまうと、事業を精算したい場合にも費用が発生します。法人化する際に事業をたたむことを考えることは少ないかもしれませんが、頭に入れておきたいデメリットです。
5-5. 役員も決める必要
法人化すると、誰を役員にするのかも決定する必要があります。基本的には相続人を役員にすることができますが、相続をする際に権利がどの程度発生するのか、トラブルの元にもなりえます。
相続人が良く話し合って、誰が役員になるのか、報酬の条件などを決定しておくと良いでしょう。経営方針などトラブルの元になる原因は、早い段階でよく話し合っておくとスムーズに会社を経営していく事ができます。
6. 不動産経営のコツ!法人化による相続税対策まとめ
相続税対策としての法人化には、大きな効力があります。合法的に節税をするのには、効果的な方法ですが、デメリットや必要な手間や費用についても考えておきたいものです。
実際に法人化する前に、どのように対策をしていくのか話合っておくと、スムーズに手続きを進めることができます。所有する不動産が多いのであれば、相続税対策としての法人化を一度考えてみるのをオススメします。