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Category  不動産

2018年06月28日 更新

不動産所得における住民税についてまとめ

サラリーマンなどの仕事に就きながら、不動産を所有しており、その不動産から収益を得ている方もいらっしゃると思います。

会社員の場合、住民税は給料から自動的に天引きされるほどになっています。そのため、自分が住民税を支払っているという実感がない人も多いかもしれませんが、所得を得ている人は、なんらかの形で必ず住民税を徴収されることになっています。

住民税とは、自分が住んでいる自治体に、支払わなければいけない税金のことです。

不動産経営をしている場合には、不動産から得た所得分にも住民税はかかるのでしょうか?

今回は、不動産所得分にかかる住民税について説明していきます。

1. 不動産所得に住民税は課税されるか

不動産所得にも、住民税は課税されます。

不動産を所有しており、その不動産から利益を得た人は、確定申告が必要になります。

例えば自分の持っているマンションの一室を賃貸して家賃収入を得たり、持ち家を売った場合などがそれにあたります。

確定申告をした時の所得額と、控除額に応じて、住民税が課税されます。

 

 

2. 住民税の計算方法

では、実際どのようにして、住民税は計算されているのでしょうか。

2-1. 住民税の計算

住民税の計算方法は以下のとおりです。

都道府県民税額+市区町村民税額- 控除額=住民税額

 

住民税は、都道府県民税と市区町村民税の二つ合わせたものです。

 

住民税には、所得割と均等割があります。

所得割は都道府県民税が課税額×6%、市区町村民税が課税額の4%です。

均等割は、各自治体によって決められています。

たとえば札幌市の場合は、市民税が3,500円、道民税が1,500円です。

2-2. 住民税控除の計算

住民税額を計算するには、まず所得を求め、そこから控除額を引く必要があります。

 

2-2-1.所得を求める

まずは所得を求めましょう。

サラリーマンの場合は、給与所得から所得控除を引いた額が所得になります、確定申告を行っている場合は、所得金額の合計が所得にあたります。

 

2-2-2.基礎控除を求める

次に基礎控除を求めます。全ての納税義務者は一律で33万円が控除されます。

 

2-2-3.人的控除額を求める

さらに配偶者や扶養者、障害を持った方がご家族にいる場合は、配偶者控除や扶養控除、障害者控除を求めます。これらの、人にかかる控除を人的控除額と呼びます。

例えば、配偶者のいる家庭では、配偶者控除として33万円が控除されます。

 

2-2-4.社会保険料控除を求める

社会保険料控除を求めます。

社会保険料として支払った金額の全てが控除されます。

 

2-2-5.生命保険料控除を求める

生命保険に加入している人は、生命保険料控除も適用されます。

年間の生命保険料が20,000円以下の場合は支払保険料の全額、20,000円~40,000円の場合は支払保険料×1/2+10,000円、40,000円~80,000円の場合は支払保険料等×1/4+20,000円

80,000円以上は一律40,000円が控除額になります。

 

2-2-6.所得控除額を求める

2~5を足します。この金額が所得控除額になります。

 

2-2-7.課税金額を求める

1の所得から、6の所得控除額を引き算します。この金額が、課税金額になります。

 

2-2-8.調整控除額を求める

さらに、調整控除額を計算します。

これは所得税と住民税の控除額の差を埋めるために平成19年からスタートした制度です。

7の課税金額が200万円以下の場合は、「所得税と人的控除額の差の合計」と「課税金額」のどちらか小さい方に5%を掛けた金額が、調整控除額となります。

7の課税金額が200万円以上の場合は、「所得税と人的控除額の差の合計」から「課税金額ー200万円」を引いた金額に5%をかけた金額が、調整控除額となります。ただし、この金額が2500円未満の場合は、調整控除額は2500円になります。

前述しましたが、人的控除額とは、配偶者特別控除、特定扶養控除、一般扶養控除、基礎控除、障害者控除、など、人に対してかかる控除のことです。

 

2-2-9.住民税を求める

7の課税金額に、市民税と都道府県税の所得割の税率をかけ、市民税と都道府県税の均等割の金額を足し、調整控除額を引いた金額が、住民税になります。

たとえば、札幌市の場合であれば、市民税(均等割)が3,500円、道民税(均等割)が1,500円ですので、

(課税金額×6%+3500円)+(課税金額×4%+1500)-調整控除額=住民税

という計算になります。

この住民税は、一年間で納める金額です。この金額を、6月・8月・10月・1月の四期に分けて、翌年から一年かけて納付することになります。

 

2-3.投資物件には住民税はかからない

不動産投資から得た所得には住民税がかかりますが、しかし、投資物件そのものには住民税はかかりません。

例えば、世田谷区に住んでいる人は、世田谷区に住民税を支払わなければいけません。しかし、自宅が足立区にあり、世田谷区に投資物件を持っている人は、投資物件のある世田谷区には住民税を支払う必要はありません。

世田谷区に住民税を支払わなければいけないのは、世田谷区の投資物件に住んでいる住民、つまり借り主になります。

 

2-4. 所得控除額一覧

不動産経営で得た所得にも所得税がかかります。

サラリーマンをしている人が不動産経営で利益を得た場合は、サラリーマンの給与と不動産経営で得た所得を足した金額が、その人のその年の所得になります。

サラリーマンの場合は給料から自動的に税金が引かれますので、不動産経営などの副業を行っている人は自分自身で確定申告をし、副業の分の税金を支払わなければいけません。

税金を払いすぎている場合には、確定申告をすることで、払いすぎた文の税金が戻ってくることもあります。

家賃収入などを得ている人は必ず確定申告を行いましょう。

なお、家賃収入が20万円以下なら住民税がかからないという話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、20万円以下でも、家賃収入をえるなどの不動産経営をしている場合には確定申告が必要です。

副業の収入、つまり雑所得が20万円以下の場合は、確定申告が不要ですが、雑所得というのは、例えば講演会などを開いたり原稿を執筆するような、単発の仕事でもらった所得のことを指します。

しかし、不動産経営は雑所得には該当せず、確定申告が必要な業種に該当します。したがって20万円以下でも確定申告が必要ですので、注意しましょう。

 

 

3. 住民税の納税方法

このように、会社員などの職業についている人が副業として不動産経営をしている場合にも自分自身で確定申告を行う必要があります。

確定申告をするときに、確定申告書第2表の「住民税に関する事項」という欄があり、そこで住民税の支払い方法を選択することができます。

住民税の支払いの方法は「給与から差し引き」、「自分で納付」の2種類があります。

 

3ー1. 給与から差引き

「給与から差引き」に丸をした場合は、給与所得に不動産所得がプラスされた金額にかかる税金が、給料から天引きされます。

サラリーマンの人は、こちらを選択した方が支払いが楽に済むかもしれません。ただし、副業を行っている事が会社にばれますので、会社とのコミュニケーションは円滑にしておきましょう。

 

3ー2. 自分で納付

「自分で納付」に丸をつけると、 自分宛てに、住民税の納付書が送られてきます。その納付書を持って、金融機関や市区町村役場に足を運び、住民税を支払う形になります。

「自分で納付」を選択した人が、会社員だったりアルバイトをしている場合には、会社やアルバイト先も、給与支払報告書を市区町村に送付することになります。

市区町村はこの給与支払報告書を見て、今度は、会社やアルバイト先に、決定通知書と納付書を送付することになっています。

副業禁止の会社で働いている人などが、不動産経営で副収入を得る場合もあるかと思います。その場合に、「自分で納付」を選べば、自分のところだけに納付書が送られてきて、副業をしていることが会社にばれないかと思うかもしれませんが、会社にばれる可能性がありますので、気をつけましょう。

 

3-3. 住民税の納付方法

住民税は6月・8月・10月・1月の四期に分けて納付します。

住民税の納付方法は、各市区町村によって少しずつ違います。

例えば札幌市の場合には、 6月・8月・10月・1月の四期の納付書が、一つの封筒に入ってまとめて送られてきます。支払いは一期ずつでも構いませんし、 4期まとめて一括で払うこともできます。

支払い場所は、市税事務所や金融機関、 コンビニエンスストアなどが利用できます。また、各種手続きをすれば、クレジットカード払いや、携帯やスマートフォンを通じての納付することも可能です。

横浜市の場合は 6月・8月・10月・1月の四期の納付書が1枚ずつ送られてきます。 納付書をなくしてしまった場合には、ホームページから納付書をダウンロードすることも可能です。

納付方法は、各種金融機関、コンビニエンスストア、ペイジーなどを利用できます。

住民税の納付書の送付方法や、支払い方法は、各市町村によって違いますので、具体的な支払いの方法については、お住まいの市町村のホームページをご覧になるか、お住まいの地域の役場に、問い合わせてみると良いと思います。

なお、住民税を支払うのを忘れてしまいがちな人には、銀行口座からの自動振替がおすすめです。自動振替についても、自動振替お住まいの市町村が自動振替に対応しているかどうか、ホームページなので確認してみることをお勧めいたします。

 

4. 住民税以外に課せられる税金

不動産経営をしている人には住民税以外にも課せられる税金があります。

 

4ー1. 所得税

不動産経営から所得がある場合には、所得税がかかります。 所得税は家賃収入などの収入から。必要経費を引いた所得にかかります。

不動産所得とは、以下から得た収入を指します。

1.不動産の貸付

2.地上権などの権利の貸付

3.船舶や航空機の貸付

また、必要経費として認められるものには、以下のものがあります。

1.固定資産税

2.損害保険料

3.減価償却費

4.修繕費

4-1-1. 所得税の控除額

所得税の控除額の一覧は以下になります。

  • 所得額195万円以下 税率5%         0円 控除額:0円

  • 所得額195万円超〜330万円以下   税率10%             控除額:97,500円

  • 所得額330万円超〜695万円以下   税率20%             控除額:427,500円

  • 所得額695万円超〜900万円以下   税率23%             控除額:636,000円

  • 所得額900万円超〜1,800万円以下              税率33%             控除額:1,536,000円

  • 所得額1,800万円超〜        税率40%             控除額:2,796,000円

(国税庁ホームページより:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)

 

4ー2. 事業税

個人の場合であっても、所得の額が290万円を超えると個人事業税がかかります。 事業税は、所得から290万を引いた金額に税率をかけた金額になります。

個人事業税額=(所得額ー 290万円)×税率

所得は、収入から経費を引いた残りの金額を指しますが、経費を引いた残りの金額、つまり、所得が290万に満たなかった場合は、事業税は加算されない、ということになります。

家賃収入が多くても、経費が多ければ多いほど所得は少なくなり、事業税も安く抑えられるということになります。そのため、節税のためには、経費の計算がとても大切になります。

経費に該当しそうな出費があった際には、レシートや記録などを必ずとっておくようにしましょう。

また、所得が290万を超えた場合には、申告書を提出しなければいけません。申告書は毎年3月15日までに事業所のある都道府県に提出することになっています。

しかし、確定申告をすれば個人事業税の申告書も提出したことになります。

不動産経営をしている人は、確定申告は必ず、することになりますので、申告書だけを個別に提出するケースは少ないかもしれません。

事業税の納期は8月と11月です。

 

4ー3. 消費税

継続反復して利益を上げている場合は、事業者とみなされ消費税が課税されます。

ただし売上高が1000万円以下の場合は、消費税納税の義務が免除されます。

個人が行う不動産経営の場合には、事業者とみなされないケースがほとんどですので、消費税は納めないことも多いと思います。

投資物件を事業用として貸し出した場合には、賃料に消費税がかかります。 また、弁護士費用などにも消費税がかかりますので、消費税がかかるものについては、あらかじめ調べておくと良いでしょう。

 

 

5. まとめ

不動産経営で所得を得た場合には、所得に応じて住民税が課税されます。

不動産経営で所得を得ている場合には、確定申告の際に提出する、確定申告書Aの「所得金額の合計」が、その年の所得にあたります。

所得から控除額を引いた金額に、都道府県民税と市区町村民税の所得割の税率をかけ、均等割の金額を足し、そこから調整控除額を引いた金額が、一年間の住民税の納税額になります。

一年間の住民税の金額を、翌年の6月・8月・10月・1月の四期に分けて納付することになります。

不動産経営をしている場合には、必ず確定申告をする必要があり、所得に応じて住民税を支払わなければいけないルールになっています。

サラリーマンが副業として不動産経営を行っており、その所得が20万円以下であっても、確定申告の義務がありますので注意しましょう。