事例紹介

Category  不動産

2018年08月15日 更新

不動産の取得費にかかる法人税について

法人で不動産を取得した際には、各種税金が課税されます。

法人で不動産を取得した時には、どのような税金がかかるのでしょうか?また、法人税はどのように計算するのでしょう?

1. 不動産取得費に法人税はかかるか

個人でも法人でも、不動産を取得したときは、不動産取得税と登録免許税がかかります。

また、不動産取得税や登録免許税のほかに、印紙税、消費税などの税金もかかります。これらの税金について予め考慮しておかなければ、後から資金繰りに困ることもあるかと思います。不動産を取得する前に、これらのお金がかかることを頭に入れておくとよいでしょう。

 

1ー1. 不動産取得税

不動産取得税は、土地や家屋などを取得した時にかかる税金です。自分でお金を払って不動産を購入した場合も、無償で受け継いだ場合も、不動産取得税が課税されます。

不動産取得税が課税されるケースには、具体的には、贈与、売買、交換、新築、改築などがあります。

しかし、不動産を取得しても、不動産取得税がかからない場合もあります。

1.公的目的に使われる不動産

2.相続

3.法人の合併、分割

4.債権消滅による担保の移転として手に入れた場合

5.土地の価格が10万円以下

6.建物の価格が12万円以下

7.新築した建物の価格が23万円以下

これらのケースの場合は、不動産を取得しても、不動産取得税はかかりません。

不動産取得税の税率は決まっています。

・住宅:3%(平成33年3月31日まで)

・土地: 3%(平成33年3月31日まで)

・住宅以外の家屋(店舗など):4%

例えば1000万円の店舗を購入した場合は、1000万円×4%=40万円の不動産取得税がかかる計算になります。不動産の価格にもよりますが、バカにならない金額ですので、注意しましょう。

 

1ー2. 登録免許税

不動産を取得した場合には、登録免許税がかかります。

土地や建物などの不動産を取得したときには、登記を行います。登記を行う時に必要になる税金が、登録免許税です。

不動産取得の場合は所有権移転の登記という扱いになりますが、所有権移転にかかる登録免許税は以下の通りです。

  • 土地・建物の売買による所有権移転にかかる登録免許税:不動産の価格×1000分の20
  • 土地・建物の相続・法人の合併・共有物の分割による所有権移転にかかる登録免許税:不動産の価格×1000分の4
  • 土地・建物の贈与・交換・収用による所有権移転にかかる登録免許税:不動産の価格×1000分の20

国税庁ホームページより https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

家や建物を売買によって取得した場合には、1000分の20の登録免許税がかかるということになります。

例えば3000万円の不動産を取得した場合には、3000万円×1000分の20=60万円の登録免許税がかかります。

登録免許税は不動産の価格によっては、高額になる場合もありますので気をつけましょう。

 

1-3.  不動産の取得費になるもの

法人で不動産を取得した場合には、不動産取得費を経費として計上することができます。

不動産の取得費は土地建物の代金や建築費などの他に、様々な費用が含まれます。

取得費は、土地や建物の購入代金や、建築費などをあわせたものから、減価償却費を引いた金額で計算します。

 

1-3-1. 不動産の購入代金

土地や建物を購入した場合の購入代金は不動産取得費になります。

 

1-3-2. 建築費用

建物を建設した場合には、建築費用も不動産取得費になります。

[kanren postid=”1414″]

 

1-3-3. 購入手数料

土地や建物を購入するときに発生した購入手数料も不動産取得費になります。不動産会社を通じて土地や建物を買った場合には、仲介手数料はかかりますが、このお金も不動産取得費に含めることができます。

仲介手数料は、一般的に売買価格に対して3%プラス6万円になり、さらにこの金額に消費税が加算されます。

 

1-3-4. 設備費

土地や建物を買った後に、キッチンやトイレなどの設備を設置する場合があります。これらの設備にかかった設備費用も、不動産取得費に含まれます。

 

1-3-5. 改良費

購入したり譲渡された建物の使い勝手を良くするために、後からリフォームしたり、ちょっとした改築をする場合があると思います。この時にかかった改良費も、不動産取得費に含まれます。

 

1-3-6. 登録免許税

前述しましたが、不動産を取得した時には登録免許税がかかります。登録免許税は、不動産取得費になります。

 

1-3-7. 不動産取得税

こちらも前述しましたが、不動産を取得した時には不動産取得税がかかります。不動産取得税も不動産取得費に含まれます。

ただし、業務のために使う土地建物の場合は、不動産取得税を不動産取得費に含めることはできません。たとえば、店舗やオフィスなど、事業に使うための不動産を購入した場合には、不動産取得税は不動産取得費として計上できない、ということになります。

 

1-3-8. 特別土地保有税

ある程度の規模の土地を取得したり、持っている人に対して、特別土地保有税がかかります。特別土地保有税は投機目的などに土地が使われることにより、その土地本来の目的のために有効に使われなくなるのを防ぐために作られた税金です。

基本的に特別土地保有税は市町村税になりますが、東京都の場合は都税になります(23区)

しかし、平成15年以降に取得した土地ついては、特別土地保有税は課税されないことになりました。現在の日本国の経済状況を踏まえて、このような措置をとっているようです。

特別土地保有税を払っている人は、特別土地保有税を不動産取得税に含めることができます。

ただし、業務のために使う土地建物の場合は、特別土地保有税を不動産取得税に含めることはできません。

 

1-3-9. 印紙税

不動産を購入したり、贈与によって土地や建物を取得した場合は、役所に所定の書類に印紙を貼って提出しなければいけません。この印紙にかかるお金の事を印紙税と呼びますが、印紙税も不動産取得税に含まれます。

ちなみに、印紙税というものは、ある程度の収入があった時に、国に支払うお金です。お金のやり取りをするときには信用が必要となりますが、この信用を支えてくれているのは、法律です。 法律をしっかりと守るためには、様々な手続きや法律の整備などが必要となります。

法律や書類関係の整備や管理にもお金がかかる、ということから、一定金額以上のお金のやりとりが発生したときには、印紙税と言う形で国にお金を支払うことになっています。

なお、業務に使われる資産の場合は、印紙は不動産取得費にはなりません。例えば、仕事に使うオフィスとして不動産を取得した場合の印紙税は、不動産取得費に含めることができないということになります。

 

1-3-10. 立ち退き料

購入した建物に人が住んでいた場合、出て行ってもらうために立ち退き料を支払うことがあります。立ち退き料は、不動産取得費に含まれます。

 

1-3-11. 造成費用

埋め立てや土もりをしたり、土地をならしたりすることを、造成と呼びますが、造成にかかった費用も不動産取得費に含まれます。

 

1-3-12. 測量費

土地を買う前に測量を行う場合があります。測量にかかったお金も不動産取得費に含まれます。

 

1-3-13. 訴訟費用

不動産を取得するにあたって、土地や建物の所有権などを巡り、訴訟が行われることもあります。訴訟に勝って土地を手に入れた場合には、この訴訟にかかったお金も不動産取得費に含まれます。

 

1-3-14. 取り壊し費用

自分で建物を建てる目的で買った土地に、すでに建物が建っていた場合、その建物を取り壊す必要があります。建物を取り壊すにもお金がかかります。建物の取り壊しにかかったお金も不動産取得費に含めることができます。

ただし、取り壊し費用を不動産取得費に含めることができるのは、建物の取り壊しまでの期間が、大体1年以内で、土地の利用が購入の目的だとわかる場合に限ります。

 

1-3-15. 利子

不動産を買うために、ローンを組んだりして、お金を借りることがあると思います。ローン組んだ場合には、ローンにかかる利子も不動産取得費に含めることができます。

ただし、ローンの利子を不動産取得費に含めることができるのは、実際にその不動産を使い始める日までの間に発生した利子のみです。

 

1-3-16. 違約金

不動産を探している時には、物件選びに迷ってしまい、契約を破棄することもあると思います。例えば、一つ目に見た物件が気に入って契約を結んだけれども、その後に見つけた物件の方がさらに気に入ってしまい、一つ目の物件をキャンセルするような場合です。

一件目をキャンセルする時に、違約金が発生する場合があります。違約金が発生した場合には、違約金を不動産取得費に含めることができます。

これらの不動産取得費を、法人税を計算するときの損金(経費)として計上することができます。

 

2. 法人税の計算方法

法人税の計算方法は基本的にとてもシンプルなものです。

課税所得 × 税率 = 法人税額

というのが、 基本的な計算式です。

しかし実際に申告書を作成するとなると、様々な知識が必要となりますので、専門家の力を借りる人も多いです。

 

2-1.課税所得

課税所得は、

益金 - 損金 = 課税所得

という計算で求められます。

課税所得は、益金から損金を引いて求めます。基本的には益金は収益のことをさし、損金は、費用と損失のことをさします。

ここでやや難しい問題となるのは、課税所得と利益は違うということです。たとえば、一年間の収益が1000万円で、経費(費用)に400万円かかっていたら、残りの600万円が利益になる、と言うふうに、利益の計算はとても簡単です。

しかし、利益と課税所得は違います。また、益金と収益、損金と費用も、似ているようですが違います。

益金は法人が得た利益を指し、損金は法人が支払ったお金などマイナスのお金を指しますが、実際には、税法で定められた「別段の定め」によって、益金と損金を求めることになります。公正をきたすために、このような決まりになっています。これを、税務調整と言って、やや複雑なしくみになっています。

たとえば、会社を経営している人が、損金にするつもりで接待費の名目で飲食代を接待費で落とすことがあります。接待は仕事に必要な活動ですから、接待にかかるお金も当然、損金として計上して良いはずです。

しかし、接待の機会があまりにも多すぎるような場合には、飲食代金を損金として認められない場合があります。なんでもかんでも、損金に含めることが出来ると、不公平になるということです。

税務調整には、益金算入、損金不算入、益金不算入、損金算入の四つの方法があります。素人にはなかなか見極めの難しいところですので、自分で計算する自信のない人は、税理士さんに相談してみてください。

このページで説明した、不動産取得費も損金に含めることができます。

 

2-2.税率

法人税の税率は、法人の所得によって変わってきます。

普通法人の場合は、

・年間所得800万円以下 15%

・年間所得800万円以上 23.4%

・資本金1億円超以上 23.4%

法人の場合は所得に、上記の税率が課税されます。

 

2-3. 軽減措置制度

資本金が1億円以下で、年間の所得が800万円以下の場合には、軽減措置制度が適用されます。

 

2-4.法人税の計算例

益金が1000万円、損金が300万円の法人の場合には、

(1000万円―300万円)×税率15%=105万円

となり、法人税額は105万円になります。

 

3. 減価償却費の計算方法

減価償却費とは、時間が経つにつれて価値が減るものを経費として計上するときに使う名目のことです。

不動産の場合では、建物がこれにあたります。建物は時間が経つごとに劣化して価値が減るので、原価償却費として計上します。土地は時間が経っても価値は変わりませんので、減価償却費として計上はしません。

不動産経営からの収入がある場合や、不動産を売却する場合、不動産を取得した場合には、建物を減価償却費として計上します。

 

3-1. 土地と建物を分ける

前述したように、減価償却費として計上するのは建物のみです。従って、減価償却費を計算する場合には、土地と建物の価格を分けて考えなければいけません。

土地付建物を買った場合に、土地代と建物代が別々に明記されている場合は良いのですが、曖昧な場合は、土地と建物の価格を固定資産税評価額を使って計算します。

 

3-2. 耐用年数

耐用年数は建物の構造や用途によって変わってきます。

たとえば、木骨モルタル造の店舗用・住宅用建物の耐用年数は20年、木造の事務所なら24年、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所なら50年と言うふうに、耐用年数が決まっています。

詳しくは、国税庁のウェブサイトなどに詳細が載っていますので、参考にしてください。

国税庁ホームページ:耐用年数https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34354.php

 

また、築年数によっても、耐用年数は変わります。

築年数が耐用年数を超えている場合には、

耐用年数=法定耐用年数×0.2で求めます。

 

例えば、築年数20年の木骨モルタル造の店舗(耐用年数20年)なら、

20年×0.2=4年

耐用年数は4年になります。

 

築年数が耐用年数を超えていない場合には、

耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2で求めます。

 

例えば、築年数13年の木骨モルタル造の店舗(耐用年数20年)なら、

(20年-13年)+13年×0.2=4年

耐用年数は4年になります。

 

3-3. 償却率

国税庁の減価償却償却率表を見て、耐用年数から償却率を求めてください。

国税庁の減価償却償却率表
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf

例えば、平成19年4月1日以降に取得した耐用年数が4年の物件の場合は、定額法による償却率は0.25です。

 

3-4. 減価償却費の計算

償却率をもとめたら、以下の公式にしたがって、減価償却費を計算します。

償却率には、定額法と定率法がありますが、一般的には定額法で計算するケースが多いため、今回は定額法での計算方法のみを説明いたします。

 

3-4-1. 定額法

定額法は期間ごとに一定の金額を納税する方法です。定額法による計算方法は以下の通りです。

建物の取得価格×償却率=減価償却費

例えば建物の取得価格が2500万円で、償却率が0.25の場合は、

2500万円×0.25=625万円

減価償却費は625万円になります。

 

4. まとめ

不動産を取得した時には、法人でも個人でも、不動産取得税、登録免許税、印紙税、消費税などの税金がかかります。 不動産取得税や登録免許税の税率は、一律で決まっています。

法人税を計算する際に損金の算出が必要になります。不動産を取得した場合には、不動産取得税、登録免許税、印紙税などを、不動産取得費という名目で損金として計上できる場合があります。ただし取得した不動産を業務に使う場合には不動産取得費として計上することはできません。

その他に、不動産の購入代金、設備費、立ち退き料、造成費用、訴訟費用、取り壊し費用、違約金なども不動産取得費として計上できます。

不動産取得費のうち、建物の購入代金や建設費用は減価償却費として計上します。

法人税の税額を計算するときには税務調整が行われます。税務調整は特別な方法で計算が行われるため、素人では難しく感じることもあると思います。自分では良くわからないと言う方は、税理士さんなどのプロにお任せすると良いかもしれません。