不動産の時効取得に所得税がかかる?しくみを詳しく解説します!

不動産を一定の条件を満たすことによってタダで手に入れることができますが、それはどのような条件なのでしょうか?

またその際、所得税がどのくらいかかるのかについても気になるところです。

今回は不動産の時効取得とその際かかる所得税について解説します。

 1. 不動産を時効取得した際に所得税がかかる

例えば、土地を一定の条件を満たして占有すると時効取得といって占有した人のものになります。

ただし土地についてはタダで手に入れることができますが、税金については所得税がかかります。

詳細を下記以降で詳しく解説します。

 

1-1. 善意の占有と悪意の占有の違い

民法では時効取得について次のように定義されています。

 

「1 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

「2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」

引用:民法162条第2項(所有権の取得時効)

 

上記を要約すると1では、例えば土地を他人の物と知っていても(法律用語で「悪意」といいます。)平穏に、かつ公然と20年間、占有した者はその土地を手に入れることができます。

 

また2では例えば土地を占有開始時に、他人の物と知らなくて(法律用語で「善意」といいます。)かつ過失がない場合、平穏にかつ公然と10年間、占有した者はその土地を手に入れることができます。

 

つまり善意で占有した場合は10年、悪意で占有した場合は20年、土地を占有すると10年の違いはありますが自分の物にできるというわけです。10年や20年間、何事もなくそのまま平穏にきたのであれば、ほったらかしの状態にしておくのが悪いので本来の持ち主は保護するに値しないので、今後もその流れのままいきましょうという趣旨でつくられた法律になります。

 

1-2. 所得税の計算式

時効取得によって、土地を手に入れた場合はタダで手に入れた形にはなりますが、税金の計算上はタダで手に入れたから税金もタダという形には残念ですがなりません。

 

税金上の計算上はその土地の時価分の金額が利益として得たという考え方になるため一時所得として所得税を計算します。

例えば次のような条件で土地を手に入れた場合の所得税の計算式を記載します。

 

例:時価が1000万円の土地を時効取得した場合

 

時効取得した土地の価額(時価)ー 一時所得の特別控除額(年間最高50万円まで)×1/2=一時所得の課税対象となる金額

 

この計算式に数字をあてはめると下記のとおりとなります。

(1000万円-50万円)×1/2=475万円(所得税の一時所得として使用する金額)

仮に所得税の計算の際、個人の収入が上記の一時所得の部分しかなかったと仮定した場合、この475万円に所得税の速算表の税率をかけた金額が所得税の金額となります。

 

一時所得の特別控除額は他にも一時所得があって、もし50万円分をすでに使っていたらこの計算では特別控除額を差し引くことはできません。

また今回のケースの計算には住民税は考慮していないためご注意ください。

 

475万円×20%-42.75万円=52.25万円(所得税金額)

 

このように土地がタダで手に入っても時効取得の場合は、所得税がかかってしまうことにご注意ください。

 

1-3. 時効取得における「時価」はどう算出するか

時効取得における時価の算出は、まず時期から確認します。

これは時効の援用(のちほど解説します)をした時点で時価を算出することになっているので、まず時期は時効の援用をした時点となります。

 

次に金額の算出ですが、こちらは原則として相続税評価額でおこなってよいとなっています。

以上から次のような流れで時価の算出をします。

 

  1. 時効の援用をした時を確認する
  2. 時効の援用をした時点における相続税評価額

 

1-4. 法人が時効取得をする場合

個人が時効取得をする場合は先述したとおりとなりますが、法人が時効取得をした場合はどうなるでしょうか?

法人が時効取得をした場合は、取得の時期は個人の場合と変わらず時効の援用をした時となりますが、税金面の計算で個人とは違いがあります。

 

個人の場合は一時所得として所得税の計算をしますが、法人の場合は時効の援用をした時が属する会計期間に時価を益金算入して法人税を計算する形となります。

 

仮に時効取得した法人の決算月が3月だった場合で、時効の援用をした時も3月だったとすると決算月に益金算入となり、2ヶ月後に法人税等の申告と納付をしなければいけない形です。

 

土地の時価となりますので、金額としては高額になることが予想されますのでその分、法人税が上がる形になります。

この点が予想外の法人税額になってしまうケースもあるため注意しなければいけない点になります。

 

2. 時効取得とは

時効取得とはまとめますと、法人、個人に関わらず所有の意思をもって20年間他人の物と知っていて占有するか、もしくは所有の意思をもって他人の物と知らず、またそのことについても過失がない場合10年間占有することによって自分の物となることをいいます。

下記にそれ以外の詳細について解説します。

 

2-1. 「時効の援用」とは

結論からいうと、時効の援用とは時効の成立を相手側に主張することをいいます。

時期がきたら自動的に権利が発生するわけではありませんので、まずは時効の成立を相手側に主張しなければなりません。

 

なぜ自動的に権利が発生しないかというと時効の成立によって、本来の所有者の権利を侵害することになってしまいます。

 

中には他人の権利を侵害することを良く思わない人もいるかもしれません。

そこで時効による利益を受けるかどうかを権利を得た人に選択させるようにしたしくみが援用という形になります。

 

このしくみによって本来の持ち主が知らない間にいつのまにか土地を取られてしまうということがなくなり、権利の援用をもって土地がどのような状態か知ることができる形になります。

 

2-2. 時効取得の流れ

時効取得の流れについて解説します。

時効取得については時効の援用をしなければ権利が発生しないため、手順としてはまず時効が成立したとして、時効の援用を相手側に主張します。

 

その後、所有権移転の登記をするという流れになります。

所有権移転の登記は通常、単独ではできないため本来の持ち主と時効取得での取得者が共同でおこなう形になります。

 

その後、本来の持ち主側がすんなりと所有権移転登記に協力してくれない場合は裁判で争うことになります。

裁判後、時効取得が認められると最終的には本来の持ち主の協力なしでも単独で所有権移転登記をすることができます。

 

2-3. 時効取得の注意点

時効取得の際の注意点について2点解説します。

 

時効取得で例えば土地などを本来の持ち主から時効の成立によって時効の援用をして時効取得することになった場合、自動的に土地が自分の物になるわけではないので所有権移転登記を行わなければなりません。

 

その際、通常自分の物から他人の物にタダで土地などの所有権が移動してしまうので登記に協力的な人がほとんどいないため、裁判を必要とする場合が多く心理的な負担が大きい点が1点目の注意点になります。

なお裁判で時効取得が認められれば、単独での所有権移転登記が可能となります。

 

2点目は時効が完成したとしても、その土地が本来の持ち主から第三者に売買・贈与などによって所有権が移転し、所有権移転登記されてしまうと第三者に対しては時効の成立を主張することができません。

 

つまり時効取得できなくなってしまう点が注意点になります。

時効取得が完成していたらすみやかに所有権移転登記をすることが重要です。

 

2-4. 「払い下げ」との違い

国有地を取得する方法として払い下げという方法があります。

この方法では国に土地の時価の金額を支払って自分のものにする形となります。

国にいわば代金を支払って土地を譲渡してもらうという考え方になります。

 

時効取得では、タダで取得する代わりに、土地の時価分の利益を得たという考え方になりますので所得税がかかる形ですが、払い下げでは国に支払いをするため所得税はかかりません。

 

2-5. 登記簿謄本にはどう記載されるか

登記簿謄本には土地の取得原因と日付が記載される箇所があります。

ここに時効取得の場合は不詳と記載され、日付は時効の援用をした日付が記載されます。

そのため時効の援用については口頭で行うよりも日付がわかる内容証明郵便などで行うことが望ましい形になります。

 

3. 所得税以外に必要な費用

時効取得では、無料で土地を取得する形になるため、土地の時価と同じ分の利益を得たという考え方になるので所得税がかかるという話を先述しましたがその他にも費用がかかります。

ここでは所得税以外の費用について解説していきます。

 

3-1. 登録免許税

時効取得によって土地を取得した場合、登記をしないと第三者に取得を主張することができないためすみやかに登記をしておく必要があります。

そのため登録免許税を登記申請書に収入印紙などを貼りつけして法務局に納める形になります。

 

金額は取得した土地の固定資産税評価額の20 /1000が登録免許税の金額となります。

また登録免許税はもし司法書士に登記を依頼する場合は司法書士から報酬分と合わせて請求され、司法書士のほうで代理で納める形となるので司法書士に支払をする形です。

 

3-2. 不動産取得税

土地等を取得した場合、土地等の所在地の市役所や都税事務所等に取得日から60日以内に不動産取得申告書を提出しなければいけないことになっています。

こちらを提出すると都税事務所等で土地等の持ち主を把握することができるので不動産取得税の納付書がおくられてきます。

 

金額は都税事務所等で計算されます。

納付書については通常4ヶ月から6ヶ月くらいでおおむね届く形になりますので納付書が到着次第、納付してください。

 

3-3. 訴訟費用

時効取得については、本来の持ち主と一緒に登記をする形になりますが、本来の持ち主は登記に協力的なことは少なく通常は裁判になってしまうことが多いです。

そのため弁護士費用や訴訟費用がかかる形となります。

 

3-4. 司法書士報酬

時効取得による所有権移転の登記をするため、司法書士に依頼する場合は司法書士への報酬が必要となります。

また先述したとおり、通常は登録免許税の金額と報酬金額が一緒に司法書士から請求されます。

以上のように土地はタダで手に入れることができますが、その他の出費が意外と多い点にご注意ください。

 

4. 時効取得では所得税の時効(除斥期間)が適用されない理由

所得税の時効(除斥期間)は時効取得のケースの場合適用されません。

なぜならば所得税の時効(除斥期間)は中断がなく、時期がくれば自動的に消滅します。

 

しかし時効取得というのは本来の持ち主がいても、占有者が一定年数占有していれば占有者の物となるようにいわば当事者の間でもどちらが持ち主なのかわかっていないような状態です。

 

このような状態であっても所得税の時効(除斥期間)を認めてしまうと本来の持ち主と占有者が共謀して脱税行為をするケースも考えられます。

そのような脱税行為をふせぐため、時効取得については所得税の時効(除斥期間)は認められていません。

 

5. まとめ

ここまで不動産の時効取得に関しての詳細を解説しました。

以上から次の内容がわかりました。

 

  • 時効取得については土地はタダだが得税はかかる

 

  • 時効取得とは一定期間の占有によって他人の物が自分の物になること

 

  • 所得税以外に必要な費用の詳細

 

  • 時効取得では所得税の時効(除斥期間)が適用されないのは脱税行為を防ぐため

 

時効取得はこのように一見、得をしたように思いがちですが調べてみると意外に出費はありますし、精神的なダメージもありそうな形です。

このようにメリット、デメリットを調べることは財産形成していく際、とても重要なことになってきます。

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