不動産相続税の基礎控除について

不動産の相続税は、通常高額になる場合が多いです。相続税は、相続した全ての人にかかるのではありません。相続財産の合計金額が相続税の基礎控除の額を超える場合にだけかかります。不動産を中心に相続税と基礎控除と相続税対策について、詳しく見ていきましょう。

 1. 不動産の相続税の基本「基礎控除」とは?

1-1. 基礎控除とは相続税を支払わなくても良い相続財産の総額

相続税は、相続した全ての人にかかるのではありません。相続財産の合計金額が

相続税の基礎控除の額を超える場合にだけかかります。

相続税の基礎控除の額は、3000万円+(法定相続人×600万円)です。ここでは、相続の放棄をした人があっても、放棄がないとした場合の相続人の数のことです。また、相続人の中に養子がある場合は少し複雑になります。

「法定相続人」の数の中の養子の数については、制限があります。

1)被相続人に実子がある時  1人

2)被相続人に実子がない時  2人

平成26年度中に亡くなられた方は、約126万人で、平成27年度は、約129万人でした。課税対象になった被相続人の割合は、平成26年度が、4.4%なのに対して、平成27年度は、8.0%になりました。これは、基礎控除の額が、平成27年1月1日以後の相続から4割程度減額されたことによります。それでも、9割以上の方が、全相続財産が基礎控除より少ないか、相続の各特例を適用することにより、相続税を払う必要がなくなっています。

 

1-2. 相続税がかかる場合とかからない場合

相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額が、プラスになる時に発生します。基礎控除額以上の相続が発生する時には、相続税がかかります。

ここで、基礎控除額とは、「3000万円プラス600万円x法定相続人数」で計算します。例えば、相続人が2人の場合、3000万円プラス1200万円で4200万円となります。

相続税がかからない時とは、遺産の総額が基礎控除額より少ない場合です。このような時には、相続税の申告も行う必要がありません。ただし、相続税がゼロでも特例を利用する場合などは、申告が必要な時があります、注意してください。

 

1-3. 基礎控除額の計算方法

それでは、具体的に基礎控除額を計算して見ます。

相続人が子供3人と配偶者の場合の相続税の基礎控除

3000万円+(4人×600万円)= 5400万円

配偶者と亡くなった方の兄弟4人と相続人が相続の場合の相続税の基礎控除

3000万円+(5人×600万円)= 6000万円

相続人が実子1人、養子2人と配偶者の場合の相続税の基礎控除

3000万円+(3人×600万円)= 4800万円

※実子があるために、養子は1人まで算入可能です。

相続人が養子2人と配偶者の場合の相続税の基礎控除

3000万円+(3人×600万円)=4800万円

※実子がないので、養子の数は2人まで算入可能です。

相続人が配偶者以外に子供3人で、その中の1人が相続放棄をした時の基礎控除

3000万円+(4人×600万円)= 5400万円

※たとえ相続放棄があってもないものと考えて、「法定相続人の数」を計算します。

 

2. 相続税がいくらかかる?相続税の計算方法を復習

実際の相続税の計算は、結構複雑になります。例を使って説明します。

1)相続税の総額を計算する

はじめに相続税の総額がどのくらいになるか考えます。

父親が亡くなって、配偶者と子供二人(長男と長女)が相続人だとします。

遺産総額が、1億4800万円とします。

これから、基礎控除額を引きます。

基礎控除額は、3000万円+(3人×600万円)=4800万円となりますので、

課税対象の相続額の総額は、1億円となります。

2)法定相続分で分割したものとして、課税総額を計算する

配偶者は1/2なので、課税対象の相続額は5000万円です。

長男は1/4なので、課税対象の相続額は2500万円です。

長女も1/4なので、課税対象の相続額は2500万円です。

各人の相続税は、次の速算表から計算します。

相続税の速算表

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

 

配偶者は相続額は5000万円なので、課税額は、

5000万円 x 20% – 200万円 = 800 万円です。

長男は相続額は2500万円なので、課税額は、

2500万円 x 15% – 50万円 = 325 万円です。

長女も相続額は2500万円なので、課税額は、

2500万円 x 15% – 50万円 = 325 万円です。

相続税の総額は、800 万円 + 325 万円 +  325 万円 = 1450万円となります。

3)実際の相続が法定相続であっても相続税の総額が同じなら、次のような相続税の配分でも許可されます。

相続税の総額が1450万円のなので、これを法定相続通りに分割します。

配偶者は1/2なので、課税対象の相続額は725万円です。

長男は1/4なので、課税対象の相続額は362.5万円です。

長女も1/4なので、課税対象の相続額は362.5万円です。

4)実際の相続が法定相続ではない場合、配偶者が50%、長男が30%、長女が20%の時

配偶者は50%なので、課税対象の相続額は725万円です。

長男は30%なので、課税対象の相続額は435万円です。

長女も20%なので、課税対象の相続額は290万円です。

合計で、1450万円となります。

 

3. 不動産相続時には要チェック!基礎控除額と相続税対策!

基礎控除額だけでは足りない相続税の対策には、ほかにもいろいろ対策があります。

主な相続税対策は、基本的には次の3種類に分類できます。

1)相続財産そのものを減らす

相続財産の中で大きな比率を占めるのは、預貯金や現金と不動産です。これを相続人達に生前に贈与することで、相続財産を減らすことができます。

2)財産の評価額を下げる

預貯金や現金は財産の評価額を下げることはできません。しかし、不動産は時価よりもかなり低く評価されます。そこでこれから述べるような方法で評価額を下げます。

3)特例などさまざまな制度を利用する

相続に関してはいろいろな特例や優遇制度などがあります。これらをうまく利用して相続税の節税をしましょう。

 

3-1. 生前贈与

贈与税は、年間一人当たり110万円までは非課税になっています。子どもや孫など、毎年何人かに分けて何度も贈与することで、財産を減らすことができます。

また、一般的には、贈与税は相続税より高いと思われがちですが、贈与額が500万円であれば贈与税は、10%弱となります。財産額が2億円以上あるような相続の場合には、相続税率よりも贈与税が低くなる場合が多く、その分が節税となります。

 

3-2. 相続時精算課税を考えた生前贈与

「相続時精算課税」を利用すれば、同じ生前贈与でも2500万円までは特別控除となり非課税になります。ただし、この方法には条件がありますので、注意が必要です。また、この方法は、通常の生前贈与のように相続財産が減るわけではありません。単に、相続財産の前渡しということになります。それでも贈与した土地や株が値上がりした場合や不動産を貸すことにより得た収入に対しては、相続税はかかりませんので有効な方法です。

 

3-3. 住宅資金を子どもや孫に援助

一定の条件を満たせば、最高500万円、省エネ住宅の時は最高1000万円までが、非課税となります。

 

3-4. 教育資金を子どもや孫に援助

教育資金の一括贈与については1500万円までが非課税となります。ただし、税制の改正により特例や非課税枠が変化する可能性はあります。

 

3-5. 不動産の賃貸経営

建物や土地を貸すということは、被相続人以外の誰かが利益を得ているので、相続税は減額されます。これを、借地権割合・借家権割合による減額と言います。

借地権割合については、土地に対応して30~90%までで決定しています。具体的には路線価図に書いてあるアルファベットが借地権割合を示します。

アパートやマンションの建つ土地を貸家建付地と言います。貸家建付地は貸家建付地の減額の評価額に借地権割合を乗じて、さらに借家権割合を乗じます。

借家権割合は、一律30%で計算されますので、借家権が利用されている割合として、貸している貸家の部屋の床面積の割合である賃貸割合を乗じます。

貸家建付地の評価額=本来の評価額×(1-借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合)

貸家の評価額=固定資産税評価額-固定資産税評価額×30%×賃貸割合

となります。

 

3-6. 小規模宅地等の特例

亡くなった方が住んでいた住宅等を相続した時には、その住宅の評価額が大幅に小さくなる(80%〜50%)という規則があります。この特例に当てはまる人は少なく、主として同居親族か配偶者が相続すれば適用されます。住居なら80%が控除されますので、高額になります。細かい規定がありますので、税理士に相談してください。

 

3-7. 土地の分割相続

土地を二つに分割すると、土地の評価を下げられる場合があります。土地の評価が下がると相続税の課税対象財産が少なくなるので、節税対策になります。相続税は,相続財産遺贈財産が大きいほど税負担が大きくなります。

たとえば、二面道路の土地には、路線価が二つあります。二面道路の土地の場合,値段の高い方の路線価を正面路線価と言い、高い方の路線価の影響力が強い計算方式をもとに土地の評価をします。土地全体の評価は、路線価の高い方の路線価に引っ張られます。路線価が高くなるのは、一般的に二面道路は便利だという考え方から生じています。一方だけが路線に接する宅地に比較して高く評価されてしまうのです。このような土地を分割して、一方だけが路線に接する土地にすれば、土地の評価は、大きく下がります。

 

3-8. 生命保険の利用

遺族が受け取る生命保険では、「500万円×法定相続人の数」が非課税です。

生命保険というと、加入できる年齢ではないとあきらめる方も多いですが、実際には相続税の対策用として、90歳まで健康診断がいらずに加入できる生命保険があります。

一般的には「一時払い終身保険」という保険商品がこれにあたります。保険料を支払った時点で、終身において保険金額が保証されますので、元本割れ等のリスクもなく、安心して相続を行うことが可能です。

 

3-9. 法定相続人を増やす

子どもが1人しかいない時など、法定相続人の数が少ない時は、養子縁組をおこなうことで法定相続人の数を増やし、基礎控除額を増やすことが可能です。相続税対策として孫を養子にする例は多いです。

 

3-10. 配偶者控除の利用

1度限りですが、配偶者は、法定相続分または1億6000万円以下までなら相続税がかかりません。この制度を利用することにより相続税額を大幅に軽減できます。

 

3-11. 非課税財産の購入

墓地や仏壇等の祭祀財産は、相続税法上においては非課税扱いです。生前に仏壇や墓地を購入すれば、節税対策になります。

 

4. 基礎控除の注意点

相続税の申告は、故人が亡くなった日の翌日から計算して10ヵ月以内に、近所の税務署に行わなくてはなりません。それ以外には、次のようなことが注意点です。

一般に孫を養子にすることは生前の相続税対策として有効とされています。しかし、その数に上限があることには注意が必要です。

また、相続放棄をした相続人がいたとしても、基礎控除の金額には一切影響しません。

被相続人の子が 胎児であった場合についても規定があります。民法では「胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなす」と胎児にさえも相続権を認めています。胎児は相続税の基礎控除額の計算において、申告書の提出日までに生まれていない場合、法定相続人には含めず、いったん相続税の計算を行なうとされています。その後、胎児が生まれた時に法定相続人とされ、基礎控除の計算に含めることになります。

もし相続税申告書の提出期限後に胎児が生まれた時は、相続人の異動が生じたという扱いとなります。基礎控除額が増額したために伴う相続税額の過大納付分は、更正の請求をすることにより還付請求することができます。

 

5. 基礎控除以外にも知っておきたい特例(相続税対策)とは

5-1.  相続税の配偶者控除

亡くなった方の配偶者の場合には、実際に配偶者が受け取った遺産の金額が法定相続分の範囲内の時には税金がかからないという規則があります。また、法定相続分を超えて相続しても配偶者の相続分が1億6,000万円までは税金がかかりません(相続税法第19条2項)。夫婦同士は同世代の場合が多く、残された配偶者が比較的近い時期に故人になり再び遺産相続が起こる場合が多いためです。この控除の趣旨は短期に同じ資産に2度の相続税が課されることを配慮したものと言われています。

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配偶者控除額について具体的に説明すると、次のようになります。

配偶者控除額=相続税の税額×(次のABのいずれか少ない金額÷課税価格の合計)

ここで、

A:配偶者の法定相続分(相続分が1億6,000万円未満なら1億6,000万円まで)

B:配偶者の課税価格(配偶者が相続する財産分)

この配偶者控除を使う場合には、申告期限までに、配偶者の相続分を計算して、申告書を提出しておく必要があります。

 

5-2.  小規模住宅等の特例

3-6.小規模宅地等の特例のところで、説明しました。

 

6. まとめ

相続税は、相続財産の合計金額が相続税の基礎控除の額を超える場合にだけかかります。相続税の基礎控除の額は、3000万円+(法定相続人×600万円)です。相続額が基礎控除以下の場合は、相続税の申告も行う必要がありません。ただし、相続税がゼロでも特例を利用する場合などは、申告が必要な時があります、注意してください。また、相続税対策には、特例だけでなく、多くの方法があり、贈与税などを利用した、生前からの対策が必要です。

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